RIZIN 7.30 さいたまスーパーアリーナ(レポ):ケラモフ、朝倉未来を1R裸絞めで仕留めフェザー級王者に。アーチュレッタがバンタム級王者に。伊澤星花、秒殺防衛。鈴木千裕、ベラトール王者パトリシオを1R KO
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のむシリカ presents 超RIZIN.2 powered by U-NEXT(第2部・RIZIN)
2023年7月30日(日)さいたまスーパーアリーナ
レポート&写真:井原芳徳
※この記事では第2部・RIZINの試合レポートをお届けします。第1部・ベラトールは別記事でお伝えします。
ケラモフ、朝倉未来を1Rマウント肘→裸締めで仕留めフェザー級王者に
第8試合 MMA 第4代RIZINフェザー級(66kg)王者決定戦 5分3R
×朝倉未来(トライフォース赤坂/元THE OUTSIDER 65-70kg級・60-65kg級王者)
○ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン/オリオン・ファイトクラブ)
1R 2’41” 裸絞め
※ケラモフが王者に
昼はベラトール、夜はRIZINの2部構成で行われた超RIZIN.2の締めくくりの一戦には、昨年9月の第1回超RIZIN同様、RIZINの顔ともいえる朝倉未来が登場した。
朝倉兄弟の兄・未来は21年大晦日大会での斎藤裕との再戦で判定勝ちしリベンジに成功。昨年9月の第1回超RIZINではフロイド・メイウェザーとボクシング形式のエキシビションマッチを行い、右フックでダウンを喫したところでエキシは終了。その際のダメージで頭痛が続き、大晦日大会は回避した。4月の代々木大会では約1年5か月ぶりにMMAの試合を行い、前RIZINフェザー級王者の牛久絢太郎の組技を封じて判定勝ちした。
ケラモフは21年6月の東京ドーム大会で当時フェザー級王者の斎藤裕とのノンタイトル戦で判定負け。昨年4月には中島太一に1R三角絞めで勝利し、7月に山本空良に判定勝ち。今年4月の大阪大会では堀江圭功に2R裸絞めで一本勝ちし3連勝中だ。
未来×ケラモフは5月27日の東京・新宿での公開イベントで発表された。しかし6月24日の札幌大会でフェザー級王座の防衛戦を行う予定だったクレベル・コイケが、前日計量でオーバーし王座をはく奪された。試合は行われ、コイケが1Rに腕ひしぎ三角固めで鈴木千裕からタップを奪ったが、ルールによりノーコンテストとなり、王座は空位のままだった。7月9日の六本木ヒルズアリーナでの公開練習で、RIZINの榊原信行CEOは「このまま空位で中途半端で行くよりは、未来対ケラモフの勝者がベルトを巻いて、次、年内、クレベルと戦う。そういう流れがいい」と説明し、未来×ケラモフが第4代王者決定戦となった。
2か月前の対戦発表時、未来はケラモフを指名した理由について「クレベルが中堅(=鈴木)選手と遊んでいるんで、その間に俺はもっと険しい道を行ってやるよっていう、クレベルに対する試合です」と話していた。だがコイケとの距離が遠ざかる内容となってしまう。
1R、未来がサウスポー、ケラモフがオーソドックスで構え、お互い前手等でフェイントをかけるが、見合う状態が続く。すると中盤に入り、ケラモフが片足タックルを仕掛け、一発でテイクダウンに成功する。未来はケラモフに足を絡めることができず、ケラモフはハーフガードに近い状態からじわじわ登って、倒してから15秒ほどでマウントポジションを奪うと、未来の首を左腕で抱えつつ、重みのある右のパウンドと右肘を連打する。
この肘が効いたか?未来は顔をそむけて半分背中を見せると、ケラモフは逆らわず動かし、背後からパウンドを落とし、さらにロープ際で膝立ちの未来の背後から裸絞めを仕掛ける。ケラモフは足を未来の体に巻いていないが、腕だけで力強く絞め上げると未来はタップした。
未来は肩をガックリと落として退場した。ベルトを巻いたケラモフは「アゼルバイジャンで見ている皆さん、応援している皆さんに感謝しています。(ライト級GP優勝者の)トフィック・ムサエフに続きRIZINで王者になれました。トレーナーのおかげでもあります。これからも応援してください」と話した。今大会の最中には11月4日のRIZIN初のアゼルバイジャン大会開催も発表され、アゼルバイジャンの国会の副議長や在日大使といった政府関係者も来場しており、ケラモフにとっても負けられない試合だった。11月の大会を“凱旋興行”とするためにしっかり結果を残した形だ。
敗れた未来はバックステージでのインタビューで「マウントのキープ力は今までやった選手とは比べ物にならないぐらい強かったです」「背中がロープについた状態で、立てると思ったら、首がだんだん極まった感じでした」と試合を振り返り、「期待してくれたファンも多かっただろうし、遠くからチャンピオンになる姿を夢見ながら応援に来てくれた人たちに申し訳ないです」と謝った。完敗のショックが大きい様子で「今までの負けとは訳が違って」とも話し、今後について聞かれても「今は考えられない状況です」と答え、打倒コイケについても「そんなこと言ってる場合じゃないんで。考えていないです」と話した。
アーチュレッタ、扇久保博正とのレスリング勝負制しRIZIN王座奪取
第7試合 MMA 第5代RIZINバンタム級(61kg)王者決定戦 5分3R
○フアン・アーチュレッタ(米国/ザ・トレーニングラボ、HBアルティメット&グレイシーバッハ/ベラトール・バンタム級3位・元王者)
×扇久保博正(パラエストラ松戸/RIZINバンタム級日本GP 2021優勝、元修斗フライ級&バンタム級世界王者)
判定3-0 (松宮=アーチュレッタ/石川=アーチュレッタ/内田=アーチュレッタ)
※アーチュレッタが王者に
アーチュレッタと第5代RIZINバンタム級王者決定戦を行う予定だった元王者の朝倉海が、7月上旬に左膝の内側側副靭帯を損傷し全治6~8週間と診断されたため欠場し、代わって扇久保博正が代役で出場し、アーチュレッタと王者決定戦を行った。
扇久保は21年6月から大晦日にかけて行われたRIZINバンタム級日本GPで春日井“寒天”たけし、大塚隆史、井上直樹、朝倉海を下して優勝し、優勝賞金1千万円と王者・堀口恭司への挑戦権を獲得した。だが昨年9月の埼玉大会ではキム・スーチョルに判定負け。大晦日大会では1階級下のフライ級で堀口と対戦し判定負けしている。
その後、堀口がフライ級転向のためバンタム級王座を返上。5月の有明大会では事実上の王座決定トーナメント準決勝として、海×元谷友貴、井上×アーチュレッタが組まれ、海は元谷を3R左膝でKOし、アーチュレッタが井上に判定勝ちし、両者の王座決定戦が7月の超RIZINで行われる予定だった。
アーチュレッタは18年からベラトールに上がり、20年9月にパトリック・ミックスに判定勝ちしバンタム級王者になる。21年5月、セルジオ・ペティスに判定負けし初防衛に失敗。昨年4月のバンタム級暫定王座決定戦兼バンタム級GP1回戦でもラウフェオン・ストッツに3R KO負けしたが、10月の再起戦ではエンリケ・バルソラに判定勝ち。大晦日のRIZINではキム・スーチョルに判定勝ちした。その後も日本に長期滞在し、日本のファンにも馴染み深い選手に。前回の井上戦に続き3戦連続RIZINでの試合となる。
扇久保は大会3週間前の7月11日にオファーを受けての出場だったという。9月24日の埼玉大会に向けてフライ級での体作りに取り掛かろうとしていた矢先だった。17日の記者会見で扇久保は「家族(=RIZIN)がピンチの時は黙っている男はいない」と、緊急オファーを受けた理由を語っていた。
1R、アーチュレッタが序盤から片足タックルで扇久保を倒しハーフガードで押さえ続ける。中盤、扇久保は立つが、アーチュレッタはすぐにパンチを振りながら組み付いて倒す。終盤、アーチュレッタはトップで押さえ続けて終える。
2R、両者がコーナーに押し込む展開の繰り返し。離れては押し込む状態となり、どちらも一歩も譲らない。最後、扇久保が飛び蹴りを放つが、押し倒したアーチュレッタが上から少しパウンドを落として終える。まだ僅差だがここまでで評価するならアーチュレッタ優勢だ。
3Rも同様の展開から始まる。打撃も交錯するが差は乏しい。中盤、扇久保がローのフェイントからタックルを仕掛けると、アーチュレッタは切り、がぶった状態を維持する。終盤、アーチュレッタは背後に回り込むと、バックをキープしコントロールを続ける。両足で挟んでバックマウントにしたり、パウンドを当てたりもしないが、もがく扇久保をひたすら捕まえて反撃を封じる手堅い試合運びに徹する。最後はしっかり抱え上げて倒して攻勢を印象付け終了する。記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス0-0、ジェネラルシップ20-0の合計20-0でアーチュレッタ。ジャッジ3者もアーチュレッタを支持し、アーチュレッタが判定勝ちでRIZIN王座を奪取した。
ベルトを巻いたアーチュレッタは「今日RIZINのベルトを取りました。ベラトールのベルトも取りに行きます。覚悟してください」とアピールした。
伊澤星花、ロペスをギロチンで秒殺
第6試合 MMA RIZIN女子スーパーアトム級(49kg)タイトルマッチ 5分3R
○伊澤星花(フリー/王者、RIZIN同級トーナメント2022優勝、DEEP JEWELSストロー級王者)
×クレア・ロペス(フランス/グレートブリテン・トップチーム)
1R 1’04” フロントチョーク
※伊澤が初防衛
伊澤は昨年4月に浜崎朱加との再戦で勝利しRIZIN女子スーパーアトム級王座を獲得し、7月から12月にかけて行われたRIZIN女子スーパーアトム級GPではパク・シウらを下し優勝した。今年3月には元DEEPバンタム級暫定王者のCOROと入籍し、東京学芸大学教職大学院を修了。5月6日のRIZIN.42での山本美憂戦が、美憂の負傷で大晦日大会に延期となったため、5月28日のDEEP JEWELSに出場すると、アム・ザ・ロケットを寝技で圧倒し1R三角絞めで一本勝ちし、MMAデビュー以来の連勝を10に伸ばした。
ロペスは17年にMMAデビューし12戦8勝4敗の34歳。ここ2年はフロリダのCombate Globalに上がり4戦3勝1敗の好成績を残し、4月の代々木大会でRIZINに初登場すると、RENAの打撃に苦しんだものの、3R終盤に両足でRENAの左足を挟んで膝をひねる形での膝十字固めを極めて勝利し、このインパクトが評価され2戦目で王座挑戦のチャンスを得た。
試合は今回も伊澤が絶対王者ぶりを見せつける内容に。1R、伊澤が開始すぐからタックルを仕掛けて倒し、コーナー際でハーフガードで押さえつつ、ロペスの首を抱える。ロペスは立ち上がるが、伊澤は首を抱えた状態を維持すると、コーナーを背にしながら胸を張って、ギロチンチョークで絞め上げる。これが完全に極まり、ロペスは体が脱力し、レフェリーがストップし伊澤が腕を外すと、ロペスは意識を失ったまま倒れた。
マイクを持った伊澤は「強かったですよね。女子格闘技も一本で勝てればスカッとしますよね。RIZINもDEEP JEWELSも大好きです。もっと女子格闘技を見てもらいたいです。世界の強い選手を倒して女子格闘技が面白いと伝えたいです」とアピール。最後はパートナーのCOROと共に東京・金町で今月オープンしたRoys GYMが来月入会金無料になることを宣伝し、観客を和ませた。
鈴木千裕、ベラトール現王者・パトリシオ・ピットブルを1R 右フックKO
第5試合 MMA 70kg契約 5分3R
×パトリシオ・“ピットブル”・フレイレ(ブラジル/ピットブル・ブラザーズ/ベラトール・フェザー級王者、元ライト級王者)
○鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺/KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級(65kg)王者)
1R 2’32” KO (右フック)
パトリシオはパトリッキーの弟。2010年からベラトールに上がり続け、14年以降はフェザー級で王座戴冠後、2度の返り咲き、通算8度の防衛を果たした。その間、19年5月にはマイケル・チャンドラーを破りライト級との同時2階級制覇を達成。昨年10月にフェザー級王座奪還を目指しライト級王座を返上した。昨年4月にAJ・マッキーを下しフェザー級王座を奪還。10月にアダム・ボリッチに判定勝ちし初防衛した。大晦日のRIZINではRIZINフェザー級王者のクレベル・コイケの寝技を封じ打撃で優位を維持し判定勝ちしている。今年6月にはセルジオ・ペティスもベラトール・バンタム級王座に挑戦したが判定負けし、3階級制覇はならなかった。
千裕は18年、パンクラス・ネオブラッドトーナメント・フライ級で優勝。以降は計量失格をきっかけに、キックボクシングに転向し、21年7月、KNOCK OUTの肘無しルールの王座を獲得後、MMAとの二刀流を宣言した。同年9月、RIZINに初参戦し、昇侍に秒殺KO負けしたが、以降は山本空良、平本蓮、萩原京平、今成正和、中原由貴相手に5連勝。今年6月の札幌大会ではフェザー級王者・コイケの挑戦者に抜擢され、1R中盤に一本負けしたものの、コイケの計量オーバーにより無効試合となっていた。
パトリシオはパトリッキーのセコンドとして来日し、練習拠点のトライフォース赤坂で朝倉未来の練習相手も務めていたが、試合の予定は無かった。今回は両者とも緊急オファーを受けての出場で、フェザー級より4㎏近く重い70kg契約での試合となる。
1R、千裕は得意の打撃を活かすべく、序盤から圧をかけ、積極的にパンチを振るい、左フックなどを当てる。最初の勢いが落ちると、パトリシオは距離を取り、しばらく見合う状態となる。
だが千裕は中盤、左の三日月蹴りを2発当てた後、再び圧を強めパンチを振るう。パトリシオはステップでかわすが、それでも千裕は追いかけ、ロープ際に詰める。パトリシオの左フックをもらうが、千裕はひるまず右フックを振るうとこれがパトリシオにクリーンヒットし、前のめりでマットに倒れる。千裕が追撃のパウンドを落としかけたところでレフェリーがストップした。その瞬間、会場はこの日一番の大歓声に包まれ、千裕はトレーナーの五味隆典のようにコーナーに上って大喜びした。
マイクを持った千裕は「言ったよな。超RIZINに雷落としてやったぜ。1位だぜ。まだか。前回滅茶苦茶悔しかったからやり返しました。みんなの応援のおかげです。子供イベントやります。お菓子配ります」とアピールした。
とはいえ今回は両者とも急に決まった試合で、パトリシオにとってはアウェーでの戦いだった。バックステージでのインタビューで「パトリシオから再戦を求められたら?」と聞かれると千裕は「一言で、イエス、やります」と笑顔で即答した。さらに「世界に通用すると自信になった」「沖縄合宿で練習した(UFCの)平良達郎君からいい刺激もらっている。僕も世界を相手に戦いたい」とコメントし、米国でのベラトールに乗り込むことにも意欲的だった。パトリシオも大会後のツイートに「千裕おめでとう。しかし物語は続きます。ベラトールで会いましょう」と記し、ホームのベラトールでの再戦を希望している。
RIZINの榊原CEOも大会後の総括で「70kgだしショートノーティス(=緊急出場)だしパトリシオにも凄い感謝しているけど、プロモーターの立場なら、こんなゴッドアングル(=面白い展開)を使わない手はないし、オファーをしてくる可能性はある。そうなればスコット(・コーカー・ベラトール代表)と話し合い、気持ち良く送り出したい」と話し、千裕のベラトール参戦を後押しする方針を示した。
なお、この試合後には、RIZIN.44(9月24日(日)さいたまスーパーアリーナ)での牛久絢太郎 vs. 萩原京平の一戦、11月4日のアゼルバイジャン大会の開催が発表されている。
ムサエフ、急きょ出場のアキラを2R KO
第4試合 MMA ライト級(71kg) 5分3R
○トフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン/オリオン・ファイトクラブ/ベラトール・ライト級3位、RIZNライト級GP 2019優勝)
×アキラ(武蔵村山さいとうクリニック/&MOSH/パンクラス・ライト級王者)
2R 1’11” KO (左フック)
ムサエフはルイス・グスタボ戦が計画されていたが、グスタボの怪我によりアキラが抜擢された。カード変更の相次いだ今回の超RIZIN.2の中で、アキラは比較的早いものの、大会3週間前の8日の試合発表だった。
ムサエフは19年のRIZINライト級GP優勝者。21年6月のRIZIN東京ドーム大会でのRIZIN初代ライト級王座決定戦でホベルト・サトシ・ソウザに1Rに三角絞めで一本負けした。昨年1月にベラトールとの契約を発表し7月のベラトール初戦でシドニー・アウトローに27秒KO勝ち。今年3月のベラトール・ライト級GP一回戦では3Rにアレクサンダー・シャブリーの右前蹴りをもらった際にろっ骨を骨折しTKO負けしていた。
アキラは36歳のベテラン。10年に修斗でデビューし、13年からパンクラスに上がり続け、18~20年は4連敗と苦しんだ時期もあったが、20年10月からは6戦5勝1敗と好調。RIZINでも阿部大治、鈴木琢仁に勝利し、昨年3月のRIZINでは大原樹理に判定1-2で惜敗したが、9月のパンクラスでのライト級暫定王者決定戦では松本光史を3R左スーパーマンパンチからのパウンドで返り討ちにした。今年4月の王座統一戦では正規王者の久米鷹介に5R判定1-2の僅差で勝利し、1年ぶりにRIZINに登場した。
1R、ムサエフがサウスポーのアキラに対し、右ストレート、フック、ボディ、ハイを度々ヒットする。アキラは一度パンチでダウンしたが、その後は強打をもらっても耐え続ける。被弾覚悟でパンチを返すが、ヒットは少なく当たりは不十分で、最後までムサエフの勢いは落ちない。
すると2R序盤、アキラがパンチを振って突進してくると、かわしたムサエフがアキラをロープに詰めパンチを連打する。アキラはダメージが溜まり、最後はムサエフが左フックをカウンターで当て、アキラがダウンしたところでレフェリーがすぐにストップした。
太田忍、瀧澤謙太に1R勝利
第3試合 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
×瀧澤謙太(Fired Up Gym)
○太田 忍(パラエストラ柏/16年リオ五輪レスリング・グレコローマン59kg級銀メダリスト)
1R 4’54” TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチ連打)
瀧澤は21年のRIZINバンタム級日本GPで今成正和、元谷友貴に勝利しベスト4に残ったが、大晦日の準決勝で朝倉海に判定負け。昨年大晦日大会では同じく日本GPベスト4だった井上直樹と対戦したが、2Rアームロックで一本負けした。
太田は20年大晦日のRIZINでのMMAデビュー戦で所英男に一本負け。21年9月に久保優太、大晦日に祖根寿麻相手に連勝後、昨年7月に元谷友貴に判定負けした。4月の代々木大会での倉本一真との元レスリング対決では、開始27秒で右フックで倉本をKOした。
1R、お見合いが続く中で、瀧澤が右のバックスピンキックを当てる。太田はすぐ蹴り足をつかんで倒そうとするが、瀧澤は引き抜いて脱出する。中盤、太田はタックルを仕掛けると、ジャーマンで倒す。
太田は立った瀧澤を背後からコーナーに押し込み、度々倒そうとする。太田の組力が強いせいもあってか、瀧澤はロープの隙間から顔を外に出す場面が多く、内田レフェリーから度々注意される。すると終盤、瀧澤がコーナーに向いて背中を向けた状況で、太田が背後からパンチを連打する。強打は乏しいが、瀧澤が逃げられない状態が続いたところで、レフェリーがストップした。瀧澤はダメージが無い様子で、レフェリーに不満を示した。
太田は「まずは対戦していただいた瀧澤選手ありがとうございます。また一本取れなかったです。ストライカーみたいな試合しちゃたね。榊原社長、9月か10月、出してください。次は一本取るんで。瀧澤選手はバンタム級(日本GP)のベスト4なんで、もうちょっと上の選手とやる権利があるんじゃないでしょうか。来年チャンピオンになりたいんで、朝倉海選手の復帰戦でもいいです。このあと(同門の先輩の)扇久保さんが勝って、返上してもらってチャンピオンになりたいです」とアピールした。
イゴール・タナベ、RIZIN初戦は阿部大治を1Rヒールフック葬
第2試合 MMA ミドル級(84kg) 5分3R
×阿部大治(フリー/元DEEP&パンクラス・ウェルター級王者、元J-NETWORKライトヘビー級(79.38kg)王者)
○イゴール・タナベ(ブラジル/セラヴィー)
1R 4’34” ヒールフック
阿部は昨年、RIZINウェルター級でストラッサー起一、マルコス・ヨシオ・ソウザ、田村ヒビキ相手に3連勝。今年2月、DEEPでの同級王座防衛戦では、1Rから鈴木槙吾のパンチをもらってダウンし、2Rにギロチンを極められ一本負けしベルトを失っている。今回はキックボクサー時代よりも上のミドル級(84kg)で出場する。
タナベは23歳。7歳からブラジリアン柔術を始め、21年と22年にはJBJJF主催全日本大会で階級別と無差別級の両方で優勝。昨年10月のHEATでMMAデビューし清水洸志に1R三角絞めで勝利し、12月のINOKI BOM-BA-YE×巌流島ではメルヴィン・マヌーフに1Rヒールフックで勝利。5月の有明大会の際には、今後RIZINに参戦することを表明していた。
1R、阿部が左ジャブのフェイントを絡めつつ右ストレートを当て、序盤からダウンを奪う。タナベがタックルで倒しても、その先の攻めを許さず、スタンドに戻す。その後のタナベのタックルも切り、阿部が右のパンチを当て、主導権を維持する。だが終盤、タナベがタックルで倒すと、すぐ下になってしまったが、足を取ってヒールフックを極めると、阿部が悲鳴を上げ、レフェリーがストップした。
タナベは「初めてのちゃんとした打撃戦、きついですね。本当に楽しかったです。セコンドの良太郎さん、(宇佐美正)パトリックのおかげです。その中で一番支えてくれるのは、いつも言うんですが奥さんです。10月も試合できるんで組んでください」とアピールした。日本語だけでなくポルトガル語、英語でもアピールした。2か国語はよくいるが、3か国語は異例だろう。
伊藤裕樹、朝倉未来が送り込んだヒロヤを打撃で苦しめ判定勝ち
第1試合 MMA 58kg契約 5分3R
○伊藤裕樹(ネックスイチムエ/元THE OUTSIDER 50-55kg級王者)
×ヒロヤ(トライフォース赤坂)
判定2-1 (松宮=伊藤/内田=ヒロヤ/石川=伊藤)
伊藤は朝倉兄弟が活躍したTHE OUTSIDERで50-55kg級王者となったことがある。プロデビュー後はDEEPを主戦場とし、21年から上がったRIZINでは杉山廣平、中村優作、宮城友一にKO・TKO勝ち。昨年夏からのDEEPフライ級GPに出場し、8月に原虎徹、12月にビョン・ジェウンに勝利したが、2月の準決勝では本田良介に判定負けしベスト4に終わっていた。5月のRIZINでは3年ぶりに復帰した山本アーセンにレスリングで攻め込まれ判定負けし2連敗中だ。
ヒロヤはRIZIN初参戦の25歳。17~19年に大阪のWARDOGにレギュラー参戦し、20年に始まった「朝倉未来1年チャレンジ」企画をきっかけに未来から指導を受けるようになり、DEEPに主戦場を移した。DEEPでの戦績は11戦5勝6敗。昨年5月にひろと、10月に新垣健司に一本勝ちしたが、今年5月の後楽園大会ではフライ級GP 2回戦で敗退した安谷屋智弘に寝技で攻め込まれ判定負けしている。
今回は6月のRIZIN札幌大会で同じ未来チャレンジ出身の西谷大成が鈴木博昭に1R KO負けしたことから、RIZINへの敵討ちを未来とRIZIN 榊原CEOに志願し、DEEPにおいても格上の伊藤との試合が用意された。
1R、ヒロヤがタックルを繰り返し、引き込んで下になったり、バックを取りかけるなどする場面があるが、伊藤は全ての局面ですぐに脱出を続ける。伊藤はスタンドではサウスポーからの左ストレート、左ボディストレートを的確に当て、左のハイやミドルも絡めて優位に進める。
2R、ヒロヤが押し込み続け、中盤に倒して上になるが、伊藤はその先の攻めを許さずスタンドに戻す。終盤、伊藤が左ストレート、ボディを的確に当て、ヒロヤを後退させる。最後は伊藤がタックルで倒して上になって終える。ここまで伊藤優位だ。
3R、序盤に伊藤がパンチと膝のラッシュでヒロヤを追い詰め、倒してバックを取る。中盤、ヒロヤが脱出し、バックドロップで倒し、上になるなど、寝技で反撃し場内を沸かせる。だが終盤、ヒロヤが投げに失敗し、潰して伊藤が上に。最後もヒロヤのタックルに伊藤がギロチンで迎撃して、優位を維持して終える。記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス30-0、ジェネラルシップ20-0の合計50-0でヒロヤ。ジャッジは意外にも割れたが、2者が順当に伊藤を支持し、伊藤が判定勝ちした。
マイクを持った伊藤は「圧勝して言うことを考えていましたが、ヒロヤ選手が強くて飛んじゃいました。でもRIZINは甘い舞台じゃないので、強くなったらまたやろうぜ。ヒロヤ選手の気持ちが伝わった試合でした。ヒロヤ選手に拍手を送ってあげてください。最後にヒロヤ選手に一言。引退お疲れ様でした」と話した。
※第1部・ベラトールは別記事でお伝えします。
ベラトール 7.30 さいたまスーパーアリーナ(レポ):パトリッキー、緊急出場のホベルト・サトシ・ソウザを3R KO。堀口恭司×神龍誠は開始わずか25秒で無効試合に