RIZIN 5.6 有明アリーナ(レポ):朝倉海、元谷友貴を3R KO。井上直樹下したアーチュレッタと7月にバンタム級王座決定戦。ブアカーオ、華麗テク魅せるも安保瑠輝也とドロー
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RIZIN.42
2023年5月6日(土) 東京・有明アリーナ
レポート&写真:井原芳徳
朝倉海、元谷友貴を3R KO。元ベラトール王者アーチュレッタと7月にバンタム級王座決定戦
第13試合 ダブルメインイベント2 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
○朝倉 海(トライフォース赤坂/元RIZINバンタム級王者、元THE OUTSIDER 55-60kg級王者)
×元谷友貴(フリー/元DEEPバンタム級&フライ級王者)
3R 2’25” KO (ボディへの左膝蹴り)
RIZINは4月29日の代々木競技場第一体育館大会に続き、大型連休終盤に有明アリーナでも大会を開催した。主催者発表で「14930人・満員」の観衆を集めた。
堀口恭司がフライ級転向のため返上したRIZINバンタム級王座を巡り、朝倉海 vs. 元谷友貴、井上直樹 vs. フアン・アーチュレッタが組まれた。この2試合が大会のダブルメインイベントとなり、勝者が7月末の首都圏での大会の王座決定戦に進む予定だ。
朝倉兄弟の弟・海は20年大晦日、堀口にリベンジを許しRIZINバンタム級王座から陥落。21年のバンタム級日本GPで渡部修斗、アラン“ヒロ”ヤマニハ、瀧澤謙太を下し決勝に進んだが、扇久保博正に敗れた。昨年7月の沖縄大会でヤン・ジヨンと戦う予定だったが、大会直前に右拳の怪我が発表され試合が中止となった。7月に手術し、今回約1年半ぶりに復帰する。今回に備えて米国の名門・シンジケートジムで1か月練習し、帰国後も同地で親しくなったフランス人のエリー・ケーリッシュ・トレーナーを日本に招き準備をしてきた。
元谷は21年9月のバンタム級日本GP 2回戦で瀧澤謙太に1R TKO負けし、大晦日のGPリザーブファイトでは金太郎に判定勝ち。昨年4月にアラン“ヒロ”ヤマニハを、7月に太田忍を、11月6に倉本一真を、いずれも判定で退け、大晦日大会では元UFCフライ級ランカーのホジェリオ・ボントリンに2R TKO勝ちし5連勝中だ。
1R、開始すぐからお互いのフックが交錯する。元谷が詰めて来ると、下がった海は右の飛び膝を当てて迎撃したが、元谷はすぐ組み付いて倒す。だが海はその先の攻めを許さずスタンドに戻す。海が元谷をコーナーに押し込んだ際、海の膝蹴りがローブローとなり一時中断する。ブレイクして再開するが、海が再び押し込んでそのまま終わる。
2R、海が圧をかけ元谷をコーナーに詰め右アッパーを当てる。だがまたもコーナー際で組んだ状態となると、元谷が押し返してから倒す。海は立つが、変わらず元谷はしがみつき、中盤にはコーナー際で倒して上になりトップキープする。しかしこれも海は脱出すると、元谷をコーナーに詰めて左ボディを当ててから右ストレートを当ててダウンさせる。元谷はすぐ立ったが印象を悪くする。海が元谷のグラウンド勝負を封じ、打撃を効かせてじわじわ流れを引き寄せるラウンドに。
3R、コーナーで押し込む攻防が続くが、海は押し込んだ状態から、膝を元谷のボディに当ててから離れる。すると元谷はステップして距離を取るが、海は元谷をコーナーに詰めると、右ボディフックをヒット。元谷は顔がゆがみ、苦し紛れに右フックを放ったが、海はカウンターで左のテンカオ(組まないで放つ膝蹴り)を元谷のボディに突き刺すと、元谷は前方にうずくまってダウンする。海は勝ちを悟って追撃せず、すぐさまレフェリーがストップした。
マイクを持った海は「去年怪我したんですけど、皆さんに支えられて帰って来れました。やっぱ朝倉兄弟のいるRIZIN最高じゃないですか」とアピール。続けて「次、アーチュレッタを俺がぶっ飛ばすんで会場に見に来てください」と話すと、RIZINの榊原信行CEOと、1つ前の試合で井上直樹に判定勝ちしたアーチュレッタがリングインした。榊原氏は「朝倉海とフアン・アーチュレッタのバンタム級タイトルマッチ、決定です。まだ日にち言えないですけど、7月決定です」と発表した。両選手は握手し、海が「Let’s fight now.」と言えば、アーチュレッタも「Let’s go.」と答え、両者構えてステップを踏んで、対戦が待ちきれない様子だった。
大会後の総括で榊原氏は7月の大会について「アーチュレッタと海のタイトルマッチは決まりなんですけど、ハミ出たことをしようと思っています。ベラトールのスコット・コーカー(CEO)とも画策していることもあるし、他にもいくつか、皆さんの想像の外側にあることを考えています。交通整理をして5月中に発表します」とコメントしている。
フアン・アーチュレッタ、井上直樹に打撃で差つけ判定勝ち
第12試合 ダブルメインイベント1 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
×井上直樹(セラ・ロンゴ・ファイトチーム)
○フアン・アーチュレッタ(米国/ザ・トレーニングラボ、HBアルティメット&グレイシーバッハ/ベラトール・バンタム級3位・元王者)
判定0-3 (石川=アーチュレッタ/橋本=アーチュレッタ/松宮=アーチュレッタ)
井上は21年のバンタム級日本GPで石渡伸太郎、金太郎に勝利し、大晦日の準決勝では優勝者の扇久保博正に判定負け。昨年7月の埼玉大会での瀧澤謙太戦は左膝の半月板損傷により欠場したが、大晦日に改めて組まれた瀧澤戦で2Rアームロックで一本勝ちし圧巻の強さを印象付けた。
アーチュレッタは18年からベラトールに上がり、20年9月にパトリック・ミックスに判定勝ちしバンタム級王者になる。21年5月、セルジオ・ペティスに判定負けし初防衛に失敗。昨年4月のバンタム級暫定王座決定戦兼バンタム級GP1回戦でもラウフェオン・ストッツに3R KO負けしたが、10月の再起戦ではエンリケ・バルソラに判定勝ち。大晦日のRIZINではキム・スーチョルに判定勝ちした。その後も日本に長期滞在し、日本のファンにも馴染み深い選手となっていた。今回もベラトールの派遣でRIZINに参戦する。
1R、井上が距離を取ってジャブを突いていると、アーチュレッタがタックルを仕掛けて来るが、井上は難なく潰して上になり、ハーフガードで押さえる。足を抜いてマウントを奪うと、パウンドを落とせばアーチュレッタは背中を向け、井上はバックを取り、執拗に裸絞めを狙い続ける。終盤、アーチュレッタが脱出し、左ジャブを当てると、井上はダウンする。最後は井上がアーチュレッタのパンチをスウェーして終える。
2R、井上はまたも倒してバックを取り寝技で主導権を握る。脱出されるとアーチュレッタのパンチをかわし、自分のパンチを当て、テクニック差を印象付ける。とはいえアーチュレッタも積極的にパンチを振るい続けていると、少しずつ被弾した井上はダメージが溜まり、中盤にはアーチュレッタの右ストレートをもらってダウンする。1Rはまだスリップダウンに近かったが、2Rは井上のダメージが明らかに大きい。アーチュレッタはバックを取り返し裸絞めを狙うが、井上は脱出する。グラウンドでのスクランブル状態が続くが、井上は序盤から一転して守勢に陥る。
3R、井上の前蹴りをアーチュレッタはつかんで倒し、立たれれも抱え上げて倒し、バックを取って裸絞めを狙う。井上も脱出しバックを取り返して裸絞めを狙うと、場内は沸く。だがアーチュレッタは脱出すると、終盤は長時間バックキープして裸絞めを狙い続け優位を印象付けて終える。記者採点はアーチュレッタ。2Rに奪ったダウンと、その後の試合の支配を評価した。ジャッジ3者もアーチュレッタを支持し、アーチュレッタが判定勝ちし、2団体制覇に一歩近づいた。
ホベルト・サトシ・ソウザ、スパイク・カーライルに判定勝ち
第11試合 MMA ライト級(71kg)(ノンタイトル戦) 5分3R
○ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル/ボンサイ柔術/RIZINライト級王者、元REALスーパーライト級(74.2kg)王者)
×スパイク・カーライル(米国/キングスMMAアナハイム/トレーニングラボ)
判定3-0 (石川=ソウザ/松宮=ソウザ/豊島=ソウザ)
サトシは昨年4月のRIZIN調布大会でジョニー・ケースに一本勝ちしライト級王座の2度目の防衛。大晦日大会ではベラトール・ライト級8位で元フェザー級王者のAJ・マッキーを迎え撃ち、得意の関節技を駆使したが、打撃でマッキーが印象を作り、サトシは判定負け。連勝と連続一本勝ちが5でストップした。
カーライルは12歳からレスリングを始め、18歳からMMAを始め、24歳の17年にプロデビュー。8勝1敗の好成績を残し、20年にUFCに上がり初戦は勝利したが、以降は2連敗。21年はLFA等のローカル大会で3連勝後、12月にベラトールに初参戦し、同じくUFC経験者ダン・モレットに3R裸絞めで一本勝ちした。昨年4月にRIZINに初参戦すると、武田光司に2Rフロントチョークで一本勝ちしている。
1R、カーライルが声を上げながら右ローを放っていると、ローに合わせサトシがタックルを仕掛けて倒し、サイドを取る。カーライルはブリッジで脱出したが、サトシはすぐ再び倒し、マウントを取って腕十字を狙う。これは防御されるが、下から三角絞めを狙う等、カーライルを寝技で追い詰め続ける。終盤、ロープ際で座った状態のカーライルを、サトシはがぶって押さえながらギロチンを狙うが、極まりきらず終わる。
2R、サトシは序盤からタックルで倒し、肩固め、三角絞め等を狙って主導権を維持する。だが極めには至らず、最後はカーライルが上から押さえて膠着して終わる。サトシは局面ごとに多様な技を出すが、極め急いでしまい、いつもより荒い感が否めない。
3R、サトシはタックルを仕掛けるが、疲れており倒せず、結局引き込んで下になる。だがその先に持ち込めず、終盤にはスタンドに戻りかけると、カーライルがオンブに。サトシも振り落とすことのないまま防御を続け終了する。記者採点はサトシ。ジャッジ3者もサトシを支持しサトシの判定勝ちとなった。
マイクを持ったサトシは「大晦日勝てなくてごめんなさい」と話して土下座し「もっと強くなってRIZIN、日本、守りたい」と宣言した。
RIZINキック本格始動の序章?ブアカーオ、華麗なテクニックで魅せるも安保瑠輝也とドロー
第10試合 キックルール(肘無し・つかんでからの攻撃は1回) 70kg契約 3分3R
△ブアカーオ・バンチャメーク(タイ/バンチャメークジム/K-1 WORLD MAX世界70kgトーナメント’04 ’06優勝、シュートボクシングS-cup 70kg ’10優勝、元WMC世界スーパーウェルター級王者)
△安保瑠輝也(MFL team CLUB es/元K-1 WORLD GPスーパー・ライト級(65kg)王者)※CLUB es/team ALL-WINから所属変更
判定0-0 (豊島30-30/佐藤30-30/豊永29-29)
ブアカーオは5月8日で41歳になる大ベテラン。ゼロ年代のK-1 WORLD MAXで魔裟斗のライバルとして活躍し、タイのムエタイ選手の外国での活躍の先駆者となる。旧K-1の経営破綻後はクンルンファイトやオールスターファイトといったアジア圏の大会を主戦場としつつ、弟子のスーパーボンをONEの王者にまで育て上げるなど、指導者としても評価を高めた。20年からコロナ禍に突入すると試合をしていなかったが、昨年7月にベトナムで約3年ぶりに試合復帰。素手のボクシング「ベアナックルファイト」やラジャダムナンワールドシリーズでの三浦孝太や佐藤嘉洋氏とのエキシビションマッチでも話題を呼んだ。日本での試合は13年10月のMAXムエタイ仙台大会での佐藤戦以来10年ぶりとなる。
ブアカーオは4月の会見で「RIZINとの関わりは今回だけではありません。長期的に良い関係を築きたいです」「タイの選手がRIZINに参戦できるチャンスを作る架け橋に私がなれればと思っています」とコメント。梅野源治がRIZINに提案した立ち技オンリーの大会開催に向け、ブアカーオの人脈は大事になりそうだ。
対する元K-1スーパー・ライト級王者の安保もRIZIN初参戦。近年は21年9月のK-1ウェルター級王座決定トーナメント決勝で野杁正明に敗れたが、昨年6月のTHE MATCH 2022ではRISEの山田洸誓に判定勝ちし、本格的な試合はそれ以来となる。野杁との再戦が組まれないことや活動の幅を広げること等を理由に今年1月、K-1との契約を自ら解除。2月のBreakingDownでは16年前に引退していたシリル・アビディ氏と対戦しKO勝ちしているが、4月の会見で安保が話した通り、RIZINでのブアカーオ戦が事実上の「安保瑠輝也第2章の始まり」となる。
1R、開始すぐから安保が積極的に攻め、左ボディを強打しつつ、顔面狙いのパンチやハイにつなごうとする。ブアカーオはブロックし、時折左右のミドル、右ローをヒット。終盤には安保のパンチをスウェーでかわし、左ボディを強打し、場内をどよめかせる。ブアカーオは時折蹴り足をつかんで倒し、じわじわ流れを引き寄せる。記者採点はイーブン。
2R、ブアカーオは圧を強め、時折左のミドル、膝を強打。パンチの打ち合いで被弾しつつも、自分のパンチもしっかり当て返し、左ボディも絡めて安保を削る。安保の後ろ上段廻し蹴りをスウェーでかわしてから右ミドルをヒット。ブアカーオの一個一個の高度なテクニックに場内が沸きあがる。安保はK-1時代よりも実質1階級上の戦いということもあってか、パワーの面で差が出てきた感がある。だが終盤、ブアカーオも少し疲れたか、攻撃が減ってしまう。記者採点はイーブン。ジャッジは豊永氏のみ意外にも安保につけ他2人はイーブンだ。
3R、ブアカーオは左ミドルを効かせ、右フックを立て続けにヒット。安保も打ち合いで返すが、中盤からは空振りが増え、ブアカーオがかわしてから左のミドルやハイを当て、安保を翻弄する。ブアカーオもヒットが減るが積極性で上回り、安保は疲れてほとんど攻撃が出せなくなる。記者採点はブアカーオ。ジャッジは豊永氏のみブアカーオにつけ他2人はイーブンだ。
記者採点の合計は30-29でブアカーオ。最近のK-1やRISEの採点傾向なら3Rはブアカーオにポイントが付きそうだが、正味の与えたダメージは小さいため、MMAとの兼任の審判団が採点するRIZINキックの従来の傾向に沿えば、イーブンもありうるだろう。やはりジャッジはブアカーオに厳しく、2者が30-30、1者が29-29とし、0-0のドローで終わった。安保も健闘したが、ブアカーオの攻守一体の衰え知らずのムエタイ技術が印象に残る試合だったのではないだろうか。
YA-MAN、MMA初戦は三浦孝太のタックル切り膝→パウンドで1R TKO勝ち
第9試合 MMA特別ルール フェザー級(66kg) 5分2R
×三浦孝太(BRAVE)
○YA-MAN(TARGET SHIBUYA/RISEライト級(63kg)9位)
1R 3’13” TKO (レフェリーストップ:左膝蹴り→グラウンドパンチ)
三浦はサッカー元日本代表で“キング・カズ”こと三浦知良の次男。21年大晦日のRIIZNでプロデビューし、昨年9月に超RIZINでのムエタイの選手との試合を合わせ、MMA 2連勝中だ。キックボクサーのYA-MANは中村寛、皇治、芦澤竜誠らに勝利した実績がある。1年前から長南亮代表のTRIBEや朝倉兄弟のいるトライフォース赤坂でMMAの練習を積み今回MMAデビューする。試合時間は通常より1R短い5分2Rとなっている。
三浦のセコンドには那須川天心の父・弘幸氏、YA-MANのセコンドには長南氏がつく。客席では天心も見守る。1R、YA-MANがノーガードで詰めると、三浦が右のスーパーマンパンチを放ってからタックルを仕掛け、テイクダウンを奪う。YA-MANが立てば三浦は飛びついてギロチンを仕掛ける。YA-MANは三浦を抱えたままロープ際まで運んで、押し込んで振りほどいて外し、対策ができている様子だ。三浦は執拗にタックルを仕掛け、倒してパウンドを落としてからバックを取りかける場面もあるが、YA-MANは脱出する。それでもタックルを仕掛ける三浦に対し、YA-MANはタックルを切って押さえ込みつつ、パンチや膝を当ててじわじわとダメージを与える。中盤にはYA-MANが三浦のタックルを潰して三浦に背中をつけさせ、トップキープするように。そこから鉄槌と肘を当て、少しずつ自分の流れに引きずり込む。
三浦は脱出したが、しつこくタックルに行くと、またもYA-MANが切りつつパンチで迎撃する。すると立ち際にYA-MANが三浦の顔面に左膝をクリーンヒット。後ろに倒れた三浦に、YA-MANがパウンドを連打したところでレフェリーがストップした。
YA-MANはMMAへの高い順応度を印象付けての勝利。マイクを持ったYA-MANは「三浦選手、格闘家としてのキャリアは全然自分が上なのに、対戦受けてくれてありがとうございました。片やどうしようもないお父さんがいて、三浦選手のお父さんは凄くて、僕が伝えたいのはどんな環境でも頑張れば大きい舞台で活躍できるということです。三浦選手は生まれが凄いですけど、ここに立っているのは自分で自分の道を選んでいるからで、選ばなければここに立っているかわからないじゃないですか。結局自分次第だと今日は伝えたかったです」と、三浦も立てるアピールを繰り広げ観客から拍手を浴びた。さらに「あと芦澤、ごちゃごちゃうるさい。また大人数の前でボコボコにしてやろうか。まずはMMAちゃんと練習しろよって感じですね」と話し、芦澤とのMMAルールでの再戦に意欲を示した。
堀口恭司のライバル候補・ジョン・ドッドソン、RIZIN 2戦目は竿本樹生に判定勝ち
第8試合 MMA フライ級(57kg) 5分3R
○ジョン・ドッドソン(米国/ジャクソン・ウィンクMMA/元UFCフライ級1位・バンタム級8位)
×竿本樹生(BRAVE/ZSTフライ級王者)
判定3-0 (石川=ドッドソン/橋本=ドッドソン/松宮=ドッドソン)
ドッドソンは11年のUFC TUFバンタム級トーナメントでT.J.ディラショーを下して優勝しUFCと契約。デメトリアス・ジョンソンと2度のフライ級王座戦を争いいずれも敗れた。UFCフライ級縮小の影響もあってバンタム級に階級を上げたが、負けが込み、20年8月の試合を最後にUFCを離れた。大晦日にRIZINに初参戦すると、所英男を1R KOしインパクトを残した。最近はベアナックルFC(素手のボクシング大会)にも並行参戦している。現在38歳。
竿本は昨年3月のRIZIN大阪大会で宇田悠斗に判定勝ちして以来約1年ぶりの試合。16年からZST・DEEP等の試合合わせ14連勝中だが、これまで戦った相手とは大幅にレベルが上の選手との試合が用意された。
1R、両者サウスポーで構え、ドッドソンが圧をかけ、時折一気に距離を詰め、左ボディフックや膝蹴りを当ててから顔面狙いのパンチを振り回す。竿本はクリーンヒットをもらわず距離を取り続ける。竿本は右ボディやバック肘を当てるが、クリーンヒットとはならない。
2R、ドッドソンが同様に随所で前に詰め、パンチをまとめる展開が続く。竿本は時折押されるような形でスリップする。竿本はクリーンヒットはほとんどもらわないが、攻撃を返せず守勢が続く。
3R、ドッドソンがスタンドで主導権を維持し、竿本はタックルから打開を図るが、ドッドソンはギロチンで迎撃する。竿本はギリギリで防御して脱出したが、スタンドに戻ってからも、ドッドソンが主導権を譲らず終了。ドッドソンが攻めあぐねつつも差を示し判定勝ちした。
摩嶋一整、芦田崇宏に1R一本勝ちしRIZIN初白星
第7試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
×芦田崇宏(BRAVE/元DEEPフェザー級王者)
○摩嶋一整[かずまさ](毛利道場/元Rebel FCフェザー級王者)
1R 4’43” ヴォンフルーチョーク
芦田はDEEPで活躍後、20年9月にRIZINに初参戦し、萩原京平に1R一本勝ちしたが、以降は金原正徳、カイル・アグオンに連敗。昨年8月のDEEPでは今成正和に判定勝ちし、10月のRIZIN福岡大会では中田大貴に判定勝ちしている。
摩嶋は修斗・パンクラス・海外の試合で6連続一本勝ちの後、20年8月にRIZINに初登場したが、斎藤裕に2R TKO負け。21年3月にはクレベル・コイケに2R三角絞めで一本負けし、昨年4月には金原正徳を寝技で追い詰めるも3Rに逆転を許しTKO負けし、現在3連敗中だ。
1R、開始すぐ摩嶋が足を掛けて倒して上になるが、芦田は下から密着して防御し、摩嶋は攻められない。だが終盤、摩嶋は右腕を枕にして肩固めのプレッシャーをかけつつ、両足を抜いてマウントを奪う。さらにそこから片膝を相手の腹に置くニーオンザベリーポジションに移って、ヴォンフルーチョーク(変形肩固め)を極めて芦田を落とした。マイクを持った摩嶋は「これから山口にベルトを持って帰ります」とアピールした。
佐々木憂流迦、ボイド・アレンを寝技で封じ判定勝ち
第6試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
○佐々木憂流迦[うるか](セラ・ロンゴ・ファイト・チーム/元修斗環太平洋バンタム級(60kg)王者)
×ボイド・アレン(南アフリカ/ファイトフィット・ミリティア/エイペックスジム/元EFCフェザー級王者)
判定3-0 (松宮=佐々木/橋本=佐々木/石川=佐々木)
佐々木は昨年2月の静岡大会でクレベル・コイケに2R裸絞めで一本負けして以来1年3か月ぶりの試合。ここ5戦は瀧澤謙太に勝利した以外4敗と苦戦している。
アレンは10月の福岡大会でライト級で出場し矢地祐介に寝技で押さえ込まれ判定負けした選手。今回は本来のフェザー級でRIZINに再登場する。
1R、序盤から佐々木が片足タックルでテイクダウンを奪い上になる。アレンは下から足関、三角絞めを狙うが、佐々木は対処する。最後、佐々木は猪木アリ状態で立った位置からアレンの顔面を連続で踏みつけるが、ロープをつかんだ状態で放ってしまう。
2R、佐々木はまたも序盤から胴タックルを仕掛けて簡単に倒して上になる。佐々木はサイドも奪い、上から押さえ続け、アームロックを狙ったりパウンドを落として攻勢を維持する。攻めあぐねるが、最後は1R同様にアレンの顔面を踏みつけて終える。
3Rも佐々木が序盤からタックルで倒し、サイドで押さえ続ける。トップ、ハーフに戻っても押さえ続け主導権を維持するが膠着状態が続く。残り20秒で豊永レフェリーがようやくブレイクするが、目立つ攻防はお互い作れず終了。佐々木が手堅く判定勝ちした。
ロシアから初参戦のビクター・コレスニック、岸本篤史をカーフでKO
第5試合 MMA ライト級(71kg) 5分3R
×岸本篤史(BRAVE)
○ビクター・コレスニック[Viktor Kolesnik](ロシア/タイガームエタイ/Kuznya/セルビアンBC&ロシア・オープンFCフェザー級王者)
2R 2’57” TKO (レフェリーストップ:左カーフキック)
岸本は大学時代にボクシングで国体準優勝の実績を残し、高校時代の同僚だった芦田崇宏を追いかけ26歳からMMAに転向。17年のデビュー後はGRAHCANやDEEPに出場し、昨年7月のRIZIN沖縄大会では渡慶次幸平に1R TKO勝ち。12月のGRACHANでは渡辺和幸に1R TKO勝ちしている。
コレスニックはRIZIN初参戦の27歳のロシア人。サンボをベースとし13年にMMAデビューし30戦23勝6敗1分。ロシアやセルビアの大会で5連勝中だ。
1R、サウスポーの岸本に対し、コレスニックが右ミドル、ハイ、左カーフキックを度々当て主導権を握る。終盤、岸本の左フックがさく裂し、コレスニックは後退したが、コレスニックはタックルを仕掛け倒し、パウンドを当て、バックから裸絞めを狙う。だが岸本は脱出し、左フックを当て挽回する。
2R、インターバルをまたぐと、カーフキックをもらっていた岸本の右足の状態が悪化する。コレスニックは執拗に左のカーフキックをヒットしていると、岸本は足を引きずるようになり、最後はコレスニックが左のカーフで岸本をダウンさせたところで、すぐさま長瀬レフェリーがストップした。
山本アーセン、3年ぶり試合は伊藤裕樹をレスリングで圧倒し判定勝ち
第4試合 MMA フライ級(57kg) 5分3R
×伊藤裕樹(ネックスイチムエ/元THE OUTSIDER 50-55kg級王者)
○山本アーセン(KRAZY BEE/SPIKE22)
判定0-3 (豊島=山本/松宮=山本/佐藤=山本)
伊藤は昨年7月の沖縄大会で宮城友一にTKO勝ちして以来のRIZIN登場。その後はDEEPフライ級GPに出場し、8月に原虎徹、12月にビョン・ジェウンに勝利したが、2月の準決勝では本田良介に判定負けした。山本美憂の長男・アーセンは20年8月大会で加藤ケンジに1R KO負けして以来約3年ぶりの試合。
1R、アーセンのタックルを切った伊藤が、バックに回り、オンブとなるが、アーセンは前方に振り落とす。アーセンがコーナーに伊藤を押し込むが膠着しブレイクがかかる。途中、伊藤はロープつかみがあり、レフェリーはラウンドインターバルの際に警告を出す。中盤、アーセンはタックルから抱え上げて叩きつけ、サイドから押さえて膝を当てて攻勢に。伊藤は脱出し、バックを狙い、下からギロチンを仕掛けるが、精度が荒く、アーセンは脱出を続ける。
2R、アーセンが組み付き、ジャーマン等でテイクダウンを奪い、サイドから膝を当てる場面も作り、レスリング力の差を見せつけ主導権を維持する。終盤にはアーセンが倒して上からパウンドを肘を当てる。伊藤は三角絞めを狙うがアーセンは対処する。
3R、アーセンが変わらず組み付き続け、大半はコーナーに押し込む時間だが、時折テイクダウンも奪い、伊藤をコントロールする。終盤、ブレイクがかかるが、伊藤のパンチをかわし、最後はテイクダウンを奪って上から押さえて終了する。伊藤には再三のロープつかみでイエローカードが出される。記者採点はアーセン。ジャッジ3者もアーセンを支持し、アーセンが文句なしの判定勝ちを果たした。
マイクを持ったアーセンは「言いたいことがあって絶対に勝たなきゃと思いました。自分は悪口を言われていいけど、もうちょっとお互い愛し合って。この言葉でピースにできるわけじゃないけど、愛し合っていきましょう。文句言うより優しい言葉をかけ合って、日本が一つになることを願います」とアピールした。
柔術強豪・横山武司、山本琢也に秒殺一本勝ち
第3試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
×山本琢也(パラエストラ千葉/修斗世界フェザー級2位、元GRACHANライト級・フェザー級王者)
○横山武司(teamセラヴィー/スウェルズ柔術ジム/Fighting NEXUSフェザー級王者)
1R 1’24” 腕ひしぎ十字固め
※山本が計量1.6kgオーバー。レッドカード1(50%減)からスタート。横山が勝った場合のみ公式記録とし、横山が負けるか引き分けた場合ノーコンテストとなる。
山本は14年にGRACHANでデビューし、長岡弘樹、岸本泰昭、鍵山雄介といったベテランを下し、2階級を制覇する。21年10月にRIZINに参戦し、白川陸斗の右フックからのサッカーボールキックでKO負けして以降、試合から遠ざかったが、昨年夏にGRACHAN王座を返上。1月の修斗では山本健斗デリカットに2R TKO勝ちしている。
横山はRIZIN初参戦。4歳の時から伝統派空手を習い、中学から始めたブラジリアン柔術では19年にJBJJF全日本選手権黒帯アダルト・フェザー級優勝。同年のJBJJF東京オープンの黒帯無差別決勝でクレベル・コイケとも対戦し三角絞めで敗れている。昨年2月のFighting NEXUSでMMAプロデビューすると3戦続けてフィニッシュ勝利し、11月のNEXUS後楽園大会で山本空良のNEXUSフェザー級王座に挑戦し判定勝ちしている。
山本が計量で1.6kgオーバーしたが、横山は問題なく完勝する試合に。1R、開始すぐに横山が引き込むような形で下になり、腕十字を狙う。山本は一度外したが、横山は再び仕掛けると今度はガッチリ極まる。山本が悲鳴を上げ、横山の一本勝ちとなった。
ウズベキスタンから初参戦のラマザン・テミロフ、浜本“キャット”雄大を1Rで粉砕
第2試合 MMA 57.5kg契約 5分3R
○ラマザン・テミロフ[Ramazan Temirov](ウズベキスタン/ムラドフ・レギオンチーム)
×浜本“キャット”雄大(クロスポイント大泉/Fighting NEXUSフライ級王者)
1R 4’06” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
浜本はキックボクサー時代の17年の大晦日のRIZINで那須川天心にKO負けして以来5年半ぶりのRIZIN参戦。20年にMMAデビューしMMA 7戦5勝2敗。昨年はFighting NEXUSで4戦全勝し、11月に平井総一朗に2R TKO勝ちしNEXUSフライ級王者となった。テミロフはRIZIN初参戦の26歳で17戦15勝2敗。
1R、テミロフが開始すぐから圧をかけ続け、左右のフックを随所でヒット。バックスピンキックでも浜本を脅かす。浜本は回り続けるが、少しずつ被弾する。終盤、テミロフが左フックで浜本をダウンさせると、最後はパウンドラッシュでフィニッシュし完勝した。
元DEEP☆KICK王者・木村“ケルベロス”颯太、K-1離脱の城戸康裕に逆転勝ち
第1試合 キックルール(肘無し・つかんでからの攻撃は1回) 69kg契約 3分3R
×城戸康裕(TEAM ONE/元Krush・WBKF世界スーパーウェルター級王者、元MA日本ミドル級王座)※谷山ジムから所属変更
○木村“ケルベロス”颯太[そうた](心将塾/元DEEP☆KICK -65kg王者)
判定0-3 (佐藤28-30/豊島28-30/豊永28-30)
城戸はゼロ年代のK-1 WORLD MAX、10年代の新生K-1のスーパー・ウェルター級(70kg)戦線の両方で活躍し現在40歳。17年のK-1同級王座決定トーナメント決勝では、現ONE王者のチンギス・アラゾフに判定負けするも左ストレートでダウンを奪っている。21年3月の同級王座決定トーナメントでは準決勝で現王者の和島大海に判定負け。昨年は2試合ともBigbangで行っており、11月のBigbangでジョージに判定勝ちすると、12月にK-1との契約が満了したことを発表した。今年2月には皇治が主催するNARIAGARIでウェルター級の高橋幸光と対戦し3分1R時間切れドローに終わっている。また、デビュー時から在籍した谷山ジムを離れ、皇治率いるTEAM ONE所属に変わった。今回のRIZIN参戦も皇治のアシストで実現した。
木村はDEEP☆KICK、RISEを主戦場とする22歳。昨年12月のDEEP☆KICKでは竹内皇貴をKOし-65kg王座を防衛(その後返上)。4月1日の大阪大会でRIZINに初参戦し、進撃の祐基を3R KOした。その試合は66.5kg契約だったが、今回はさらに重い69kg契約となる。
1R、オーソドックスで前に出る木村に対し、城戸はサウスポーで構えて回って距離を取り、度々コーナーを背負うが、左ハイ、右ストレート、右バックハンドブローを随所で当てる。木村は攻めにくそうだ。記者採点は城戸だが、まだ木村はダメージが小さいため、RIZINキックの従来の傾向に沿えばイーブンもありうるだろう。ジャッジは3者とも10-10とつける。
2R、木村は変わらず圧をかけ、パンチと膝をまとめる場面もあるが、城戸はダメージが小さい。城戸は右ジャブ、左ローを随所で当てる。だが1Rほどの強打は乏しい。終盤には城戸の左ローが2度ローブローとなる。記者採点はイーブン。ジャッジは3者とも10-10とつける。
3R、木村のパンチのヒットが増えたが、城戸もパンチを返す。中盤には木村の膝がローブローとなり一時中断する。終盤、木村が前に出続け、城戸は左ミドルで応戦していたが、城戸の左ミドルの直後、木村が左右のフックを連続で当てると、前にふらついた城戸がマットに片手をついてしまう、長瀬レフェリーはダウンを宣告する。城戸はダウンではないと抗議するが、間もなく試合終了となる。記者採点は8-10で木村。合計28-29で木村。ジャッジは3者とも28-30とつけ、木村の逆転勝ちとなった。
RIZIN 4.29 代々木第一体育館(レポ):朝倉未来、牛久絢太郎との接戦制す「男はやる時やりゃいいでしょ」。斎藤裕、平本蓮を寝かせられずも打撃封じ判定勝ち