RIZIN 6.24 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ(レポ):計量オーバーのクレベル・コイケ、鈴木千裕を1Rで極めるもノーコンテスト。矢地祐介・上田幹雄・鈴木博昭・木村ミノル・大島沙緒里が1R勝利
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RIZIN.43
2023年6月24日(土) 北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
レポート:井原芳徳 写真提供:(C)RIZIN FF
RIZIN初の北海道大会の会場となった真駒内セキスイハイムアイスアリーナは72年の札幌冬季オリンピックの会場として札幌市南区にオープンし、収容人数は約1万人。06年にK-1の会場として使用され、新日本プロレスが度々使用している。今回のRIZINはナンバーシリーズのため試合場はリングとなる。
なお、RIZIN公式Youtubeの登録者数100万人突破を記念し、今大会の生中継はYoutubeで全試合無料配信された。
計量オーバーのクレベル・コイケ、鈴木千裕を1Rで極めるもノーコンテスト
第13試合 メインイベント MMA RIZINフェザー級(66kg)タイトルマッチ 5分3R
―クレベル・コイケ(ブラジル/ボンサイ柔術/元王者、元KSW&REBEL FC同級王者)
―鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺/KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級(65kg)王者)
ノーコンテスト(1R 2’59” 腕ひしぎ三角固め)
※前日公式計量でコイケは66.4kgで0.4kgオーバー、鈴木は65.95kgでクリア。コイケは王座を剥奪され、鈴木が勝った場合のみ公式記録となり、王者に認定される。コイケは0.5kg未満のオーバーのため20%減点(イエローカード相当)
コイケは20年大晦日のRIZIN参戦以降、カイル・アグオン、摩嶋一整、朝倉未来に連勝し、フェザー級王座挑戦権を獲得。一時はRIZINとの関係がこじれ、王座挑戦が保留となったが、昨年2月に戦列復帰すると、佐々木憂流迦、萩原京平を撃破。10月の福岡大会ではフェザー級王者・牛久絢太郎に2R裸絞めで一本勝ちしベルトを獲得した。大晦日大会ではベラトール・フェザー級王者・パトリシオ・“ピットブル”・フレイレに判定負けし、連勝が7でストップ。それから半年ぶりの試合が初防衛戦となる。4月29日のRIZINでは牛久 vs. 未来、斎藤裕 vs. 平本蓮が組まれ注目を浴びたが、コイケは牛久と未来の上位勢2名に勝利していることから、千裕との初防衛戦に意欲的だった。
千裕は18年、パンクラスの新人王トーナメントとなるネオブラッドトーナメントのフライ級で優勝。以降は計量失格をきっかけに、キックボクシングに転向し、21年7月、KNOCK OUTの肘無しルールの王座を獲得後、MMAとの二刀流を宣言した。同年9月、RIZINに初参戦し、昇侍に秒殺KO負けしたが、以降は同年11月の山本空良戦以降、平本蓮、萩原京平、今成正和、中原由貴相手に5連勝。昨年3月の平本戦ではパンチで大きなダメージを与え、大晦日の中原戦でも1R右フックでKO勝ちし、打撃力の高さを印象付けた。11月の今成戦では対グラップラーでの対処能力の高さも示し、コイケの柔術にどう対応するかが勝敗の鍵となる。
だが上記の通り、前日計量でコイケは0.4kgオーバーで王座はく奪となった。セレモニー計量でコイケは千裕を前にして涙を流しながら「みなさん、すみません。ごめんなさい。千裕、すみません。RIZIN、ごめんなさい」等と話し、何度も頭を下げ謝罪した。千裕は「ここまで来たら関係ないんですよ。世間が何と言っても俺がOKって言っているんで、正々堂々、全力でやりましょう。大丈夫、関係ない。僕たちはファイターなので、どんなことがあっても戦う。それが男なので。本物と本物、どっちが強いか、明日はっきりさせましょう」等と話して対戦を承諾し、度々コイケと握手して抱擁した。
大会当日の開会セレモニーでは、コイケは胸を張り観客に向け両手を広げてガッツポーズし、気持ちの切り替えはできている様子で、表情からも減量疲れは感じられなかった。なお、コイケは17年のKSWフェザー級タイトルマッチの際にも計量オーバーし、王座をはく奪された過去がある。
試合はコイケが千裕を圧倒する内容に。1R、千裕が慎重にプレッシャーをかけながら、右ローを放つ。パンチが交錯すると、1分過ぎにコイケがタックルを仕掛け、ロープ際で倒すことに成功する。コイケはハーフからマウントにあっさりと移り、パウンドと肘を落とす。千裕はもがき、強打はもらわないが防戦が続く。
コイケはもがく千裕をコーナー付近まで運び、逃げにくい状態を作ると、マウント状態から三角絞めを極める。さらに腕も取って腕を極めたところで千裕はタップ。コイケが一本を取ったが、規定によりノーコンテストとなり、RIZINフェザー級王座は空位のままとなった。試合後、コイケは千裕に歩み寄って改めて謝り、千裕の手を上げて称えた。千裕は号泣しながら退場した。
コイケ「すぐタイトルマッチで」、榊原CEO「彼には何の選択権もない」
マイクを持ったコイケはまず、日本語とポルトガル語で計量オーバーについて謝罪したが、続けて日本語で「榊原さん、自分もすぐタイトルマッチでよろしくお願いします。来月の超RIZIN、10月の名古屋、相手誰でも、いつでも待ってます。すみませんでした」とアピールし、最後は「1、2、3、ポペガー」と恒例のフレーズを叫びリングを降りた。計量オーバーの翌日に早速タイトルマッチを希望したことに対して批判の声も少なく無さそうだが、今日圧倒的な強さを見せたことで、タイトル戦線に不可欠な存在であることは十二分に示したのは確かだ。
大会終了後の総括で榊原信行RIZIN CEOも「クレベルがタイトルマッチに近い所にいるのは間違いない」「最右翼だ」と認めつつも「挑戦権を得たわけではない。7月(30日の超RIZIN.2)の(ヴガール)ケラモフと(朝倉)未来の試合も含めて、タイトルをどこでどうするか考えたいです」と慎重姿勢を示した。さらに「勝ったら次はタイトルマッチをやらせてあげるよとは一言も言っていないです。だったら400g落としてタイトルマッチをやれば良かったわけで(王者ではない)彼には何の選択権もないです。千裕が受けてくれたから勝っただけで」とも話し、計量オーバーしたコイケの先走ったアピールへの不快感をにじませた。
なお、コイケはバックステージでのインタビューでも「今はベルトが無いですが僕がチャンピオンです。ずっと勝ち続けています。計量オーバーして自分に負けただけです」「朝倉選手とケラモフ選手の勝った方とタイトルを懸けたいです。朝倉選手とはできれば大晦日に戦いたいです」とポルトガル語で豪語している。
矢地祐介、ザック・ゼインを1Rで仕留めRIZIN 2連勝
第12試合 MMA ライト級(71kg) 5分3R
○矢地祐介(フリー/元修斗環太平洋&PFCフェザー級王者)
×ザック・ゼイン(米国/マウイ柔術/RIZINハワイトライアウト2022選出選手)
1R 2’50” 裸絞め
矢地は21年9月に武田光司に判定勝ちし、大晦日にホベルト・サトシ・ソウザの持つライト級王座に挑戦し2R一本負け。昨年4月はルイス・グスタボに2R TKO負けしたが、10月の福岡大会ではボイド・アレンをグラウンドで押さえ続け判定勝ちした。12月のINOKI BOM-BA-YE×巌流島では木村“フィリップ”ミノルとキックルールで対戦しわずか66秒でKO負けし、半年ぶりの試合となる。
ゼインは昨年8月のハワイでのRIZINトライアウトで選抜された選手。10月の福岡大会でRIZINに初出場し、武田に1R腕十字で一本負けしている。その試合以前にも昨年は米国のローカル大会で4試合しいずれもフィニッシュ負けしており、元UFCのルイス・ペーニャに1R三角絞めで、ベラトール参戦中のイスラム・マメドフに1R裸絞めで敗れていた。矢地としては完勝して今年後半の再浮上につなげないといけない試合となる。
1R、開始すぐから矢地がゼインの蹴り足をつかんで倒して、上から押さえる。立とうとしたゼインにしがみつき、コントロールを続ける。すると中盤、抱え上げて倒すと、バックを取り、裸絞めを極めてタップを奪った。
矢地は「どうも、お祭り男のヤッチ君です。7月の超RIZIN、暇なんで、オファー待っています」と笑顔でアピールした。
上田幹雄、関根“シュレック”秀樹を秒殺KOしRIZIN初勝利
第11試合 MMA ヘビー級(120kg) 5分3R
×関根“シュレック”秀樹(ボンサイブルテリア/JBJJF全日本柔術選手権2016アダルト黒帯無差別級優勝/118.85kg)
○上田幹雄(BRAVE/極真会館全世界空手道選手権2019優勝/109.8kg)
1R 0’22” TKO (レフェリーストップ:左ハイキック)
関根は8月13日で50歳になるベテラン。21年大晦日のRIZINでシビサイ頌真に、昨年4月に貴賢神にTKO勝ち。7月のスダリオ剛戦では左フックをもらってわずか53秒KO負けしたが、本来反則となる後頭部への殴打だった。12月には極真会館(松井章奎館長)の07年の世界大会準優勝者・ヤン・ソウクップと巌流島ルールで対戦し3Rで勝利し、今回も極真会館出身のストライカーと対戦する。
上田は極真会館の19年の世界大会で優勝し、日本人として16年ぶりに世界王者になる快挙を成し遂げた。昨年4月のRIZINでのMMAデビュー戦では髙阪剛を蹴りで追い詰めるも、右のクロスカウンターをもらい逆転KO負け。昨年12月のGRACHANでソン・ムジェを左ハイキックで12秒KOし、MMA初勝利をあげた。4月29日のRIZIN代々木大会に出場予定だったが、相手のカルリ・ギブレインがブラジルからの出国手続きに不備があり来日できないことが理由で試合中止となっていた。
1R、上田は開始すぐから左ミドルを効かせ、左ハイもヒット。関根は打撃を嫌って組みついて来るが、上田は頭を押さえ右膝蹴りをヒットし突き放す。さらに上田は前蹴りを当てて関根をロープ際まで下がらせ、左右のストレートをヒットする。最後は関根がフラフラで横を向いたところで左ハイキックを叩き込むと、長瀬レフェリーがストップした。
上田は「1年前このRIZINで初戦を迎えましたが、多くの方々の期待を裏切る結果でした。空手の強さと自分の強さを証明するためMMAの舞台に上がりました。この1年、死に物狂いで稽古しました。勝てて良かったです。ヘビー級で日本のトップを取ってから世界に行きたいです。自分ならできると思っています。皆さん応援してください。押忍」とアピールした。
アリスター・オーフレイムがリングイン。榊原CEO「積極的な話はしていない」
関根×上田のヘビー級戦後後、PRIDE、K-1、DREAM、UFCのヘビー級戦線で活躍したアリスター・オーフレイムがリングインし「初めてRIZINに来ました。榊原さんの作るイベントは美しいです。日本のファンの皆さん、僕のキャリアを支えてくれてありがとうございます」と話した。アリスターは現在43歳。21年でUFCを離れ、昨年10月にGLORYでバダ・ハリに判定勝ちしたが、禁止薬物の陽性反応が出たため無効試合となっていた。
当然ギャラが高いので、アリスターとの契約について榊原CEOは「条件次第」と慎重で「RIZINで新しくなった(格闘技)ファンはアリスターを知らないと思うんですよね。上田君とかスダリオとかシビサイだったり、アリスターと向こうを張れるような期待の持てる選手が生まれ、条件が合ったらというぐらいで、積極的な話(=交渉)はしていないです」と話すに留まった
鈴木博昭、朝倉未来推薦の西谷大成を1R KO
第10試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
○鈴木博昭(BELLWOOD GYM/元シュートボクシング世界スーパーライト級(65kg)王者)
×西谷大成(トライフォース赤坂)
1R 0’56” TKO (レフェリーストップ:左フック→グラウンドパンチ)
シュートボクサーの博昭は21年10月にRIZINでMMAデビュー後2戦2勝したが、昨年7月の沖縄大会で平本蓮と打撃戦の末に判定1-2で惜敗。11月の名古屋大会では青井人を打撃で苦しめるも、寝技で攻め込まれ判定負けしている。現在38歳。
西谷はYoutubeでの「朝倉未来1年チャレンジ」の企画育ちの26歳で、現在も未来のいるトライフォース赤坂で練習する。3年前にMMAプロデビュー後からDEEPを主戦場にし11戦6勝5敗。5月7日の後楽園大会で高野優樹に判定勝ちし2連勝中だ。裸絞めやダースチョークで4度一本勝ちしており、極めの強さが持ち味だ。
今回は未来が弟子の博昭戦を提案し、RIZINもマッチメイクした。試合発表時、博昭は「聞けば、未来君からの指名があったという話を聞いて、こりゃ舐められてんなと率直に思いました」と不快感を露わにしていたが、未来らの思惑を見事潰すことに成功する。
1R、開始すぐから西谷が詰めてタックルを仕掛け、10秒足らずでテイクダウンを奪う。西谷は首を抱えるが、その際に博昭は防御しながら立ち上がる。西谷は組もうとして前に出続けるが、博昭は回って距離を取る。すると西谷は右の飛び膝蹴りで襲い掛かるが、博昭はロープを背にしながら左フックで迎撃すると、これが西谷の顔面にクリーンヒット。ダウンした西谷に、博昭がパウンドをまとめたところでレフェリーがストップした。
マイクを持った博昭は「正直、久しぶりの勝ちで心からうれしいです。チームのみんなありがとう」と素直に勝利を喜ぶと、最後は「次も怪物君の試合、乞うご期待、また会おう、ハハハハハ」と“怪物キャラ”になってアピールした。
鈴木宙樹、梅野源治を2R飛び膝でKO
第9試合 キックルール(肘有り・つかんでからの攻撃は1回) 62.5kg契約(ライト級相当) 3分3R
×梅野源治(PHOENIX/BOMライト級王者、元ラジャダムナン同級王者、元WPMF世界・WBCムエタイ世界・同インターナショナル・スーパーフェザー級王者、元M-1フェザー級王者、元WPMF日本&WBCムエタイ日本スーパーバンタム級王者)
○鈴木宙樹[ひろき](クロスポイント吉祥寺/元REBELS-BLACK -60kg級王者)
2R 2’34” KO (右飛び膝蹴り)
梅野は昨年3月のRIZIN大阪大会で皇治戦で判定負けの採点が発表された際に「やばいだろ」と不満を露わにし、多くのRIZINファンから揶揄されたが、その話題性を逆手に取り、ツイート等でも「やばいだろ」のフレーズを多用し、人気を高めた。得意の肘有りルールでのRIZIN出場を望むツイートも繰り返し、昨年7月のKNOCK OUTでは大谷翔司の額を右肘打ちで切り裂きTKO勝ち。10月のRIZIN福岡大会では念願の肘有りルールで試合が組まれたが、トレント・ガーダムに1R開始すぐに左ローでTKO勝ちし、肘は出せずにいた。大晦日の平本蓮のボクシングエキシビションマッチの相手を務め最後はKOされたが、公式戦はガーダム戦以来8か月ぶりとなる。現在34歳。
鈴木千裕の1歳上の兄・宙樹は現在26歳。19年にREBELS -60kg級王者となり翌年に1度防衛。21年にボクシングに転向し1戦して1R KO勝ちしたが、千裕の活躍に刺激されキックに復帰した。昨年10月のKNOCK OUTでの復帰戦では西岡蓮太に判定負けし、キック14戦目で初黒星。12月にはタイ人のモンダム・ウィラサクレックを2R KO。今年2月のONEルンピニーではイランのファリヤ・アミニプールに判定1-2で惜敗したが、4月のKNOCK OUTではREITO BRAVELYに判定勝ちしている。
1R、梅野は序盤からプレッシャーをかけ、左ミドル、右ローを当てるが、まだ当たりは浅め。宙樹も左ミドルを返し、組めば崩しを決める。終盤、梅野の左インローで、宙樹は少しバランスを崩す。宙樹も左フックを当てると、梅野は少しバランスを崩すが、両足をマットでこするジェスチャーで、滑ったかのようにアピールする。梅野は左肘も当て、宙樹は右まぶたを少しカットするが、傷は浅い。記者採点は梅野としたがまだイーブンでも不思議ではない。
2R、梅野は執拗にロー、左ミドルを当てるが、宙樹も大崩れせず、時折パンチを返す。とはいえ梅野の左ミドルの蹴りが当たる状況が続き、若干優位で終盤を迎える。だが突然波乱が起こる。梅野がローを当て、宙樹が嫌った素振りを見せてロープ際まで下がるが、梅野が前に詰め右の縦肘を振るってガードの開いたタイミングで、右の飛び膝を梅野の顔面にクリーンヒット。ダウンした梅野は意識が飛んだまま動けず、宙樹の逆転KO勝ちとなった。梅野は肘有りルールで日本人に負けたのは今回が初となる。
宙樹は「鈴木千裕のお兄ちゃんの鈴木宙樹です。僕はこれまで(肘無しの)キックボクシングをやって来て、1か月前にムエタイの練習を始めました。今日も肘で切られたりりしましたけど、会長、試合を組んだ宮田さん(=KNOCK OUTプロデューサー)に感謝します。梅野選手ありがとうございます。梅野選手勝てたことは誇りになります。これからもキックボクシングでRIZINに上がったりKNOCK OUTのベルトを取ります。今日は弟が絶対に勝ってチャンピオンになります」とアピールした。
木村“フィリップ”ミノル、ロクク・ダリを立ったまま失神KO。榊原CEO「木村選手はドーピング検査をしています」
第8試合 キックルール(肘無し・ワンキャッチワンアタック) 73kg契約(ミドル級相当) 3分3R
○木村“フィリップ”ミノル(ブラジル/Battle Box/元K-1スーパー・ウェルター級(70kg)王者、元Krushウェルター級(67.5kg)王者)
×ロクク・ダリ(コンゴ民主共和国/TRI.H Studio/元GRANDウェルター王者)
1R 1’08” KO (左フック)
(9月2日追記) 木村はドーピング検査の結果、陽性と判明し、無効試合に裁定が変更となっている。(※詳細はこちらの記事参照)
木村は16年9月のRIZINでMMAルールでチャールズ・ベネットと対戦しわずか7秒でKO負けして以来となるRIZIN出場。21年12月に和島大海に敗れた試合を最後に、ボクシングへの転向を理由にK-1を離れ、昨年12月末のアントニオ猪木氏追悼大会では矢地祐介とキック+MMAのミックスルールで対戦し、1R目のキックルールで矢地をわずか66秒でKOした。今年3月のKNOCK OUTでは72kg契約を1.75kgオーバーしたが、クンタップ・チャロンチャイに32秒でKO勝ちしている。今回は73kg契約での試合となる。
ダリはGRACHANを主戦場にしつつRIZINにも上がり、20年8月のRIZINではキックルールで海人と対戦し判定負けしている。21年11月のRIZINではMMAルールでベイノアと対戦し3R KO負けしている。最近では12月のGRACHANで林RICE陽太とMMAルールで約70kgのライト級で対戦し判定勝ちしている。
1R、木村がプレッシャーをかけ、序盤から左ボディを強打し先手を取る。ダリをロープに詰め、ガードの上からでも構わずパンチを当て続ける。すると木村はさらに左ボディを強打する。ダリは動きが止まりガードが下がると、木村は左ボディの軌道から左フックをクリーンヒット。ダリは立ったまま失神し、巨木が倒れるように前のめりでマットに沈んだ。
衝撃的なKO勝ちを果たした木村は「RIZINファンの皆さんお久しぶりです。7年ぶりだったんですけど僕の事覚えてくれている人いますか?ずっとみんなの前で戦いたかったんで幸せです。これからRIZINのキックを盛り上げます。ブアカーオでも安保(瑠輝也)でも誰でもかかってこい。引き続き僕の試合を楽しみにしてください」とアピールした。
なお、敗れたダリは、大会前々日の会見と当日の入場時、「アンチステロイド」と書かれたシャツを着用し、木村のステロイド使用疑惑を皮肉っていた。この件について榊原CEOは大会後の総括で「木村選手は今日もドーピング検査をしています。彼はそういうことは一切ないということなので、検査結果を待って証明できるといいなと思っています」「検体は米国の検査会社に送ります。結果が出るのは1か月後です」と話した。RIZINでのドーピング検査自体は「タイトルマッチやグランプリでは全部やっています」とのことだ。
久保優太、MMA経験勝る木下カラテの組みを封じ判定勝ち
第7試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
○久保優太(PURGE TOKYO/BRAVE/元K-1ウェルター級(67.5kg)王者)
×木下カラテ(和術慧舟會HEARTS)
判定2-1 (豊島=木下/松宮=久保/石川=久保)
久保は昨年11月の名古屋大会で奥田啓介に1R TKO勝ちし、MMA 2戦目で初勝利をあげて以来の試合。
木下はRIZIN初参戦でMMA 13戦6勝(6KO)6敗1分。修斗を主戦場としてきたが、5月7日のDEEPでDEEPに初参戦し、畠山祐輔に1R右フックでKO勝ちしている。フルコンタクト空手をベースとし、勝った試合は全てKO決着で、うち5試合は1R KO勝ちだが、1R KO負けも3試合ある。
1R、両者サウスポーで構え、MMA経験で上回る木下はタックルを仕掛け組み勝負を狙うが、久保は突き放しつつ右膝をボディに当てる。中盤、見合う状態の中で、またも木下はタックルを仕掛けると、今度はテイクダウンに成功する。だが久保は追撃を許さずスタンドに戻し、随所でローを当てる。終盤の打撃戦はお互い慎重で攻撃が少ないが、最後、久保の左ストレートが当たると、木下の腰が落ち、最後はコーナーに詰めて終える。ここまで久保がやや優位だ。
2R、久保が左ストレートを当てれば、木下は組んで顔面に左膝を当て、久保をひるませる。中盤、久保が右テンカオ、左ローを効かせ、木下は下がるが、前に出た久保に木下はタックルを仕掛けて、テイクダウンに成功し、上から押さえる。お互いダメージを負った打撃戦から少し休むような状況に。グラウンドで膠着し、豊永レフェリーがブレイクをかける。終盤、久保がワンツーでの左ストレートをヒット。組んできた木下のボディに左膝を当てる。ここまで久保が打撃の有効打差でやや優位だ。
3R、久保がタックルを繰り返すが、木下は突き放し際に左のサッカーボールキックを当てる。木下は右フックを当てつつ、タックルを仕掛け組み勝負を狙い続けるが、疲れとダメージが溜まっており、力が入りきらない。久保はテイクダウンを防御し、離れ際に左肘を当てるが、またも木下が組み付くと、今度はテイクダウンに成功する。すると木下はすぐサイドポジションを奪い、顔面に膝を当てる。久保はクロスガードの中に戻し、木下が攻めあぐね、残り30秒でブレイク。最後、木下がまたも倒すが、その先に持ち込めず終わる。記者採点はダメージ50はイーブン、アグレッシブネス30は打撃の有効打差で久保、ジェネラルシップ20はイーブンで合計30-0で久保。接戦のためジャッジは割れたが、2者が久保を支持し、久保の判定勝ちとなった。
マイクを持った久保は「2R調子に乗ったら3Rバテてしまいました。MMAに来て負けて、何やっているんだよと思われていますけど、これから見ていてください。これからトップになって、RIZINフェザー級でチャンピオンになります。馬鹿にしている奴を見返してやるから。この野郎」と熱弁し、「パッキャオさんの相手、開いています」ともアピールした。
なお、この後の木村の試合の終了後、休憩時間に入る前、今大会を欠場した地元札幌の山本空良がリングイン。空良は「試合予定だった久保選手、申し訳ございませんでした。怪我とはいえ地元で試合できず心が苦しいです。ここから北海道で育って上に行きます。練習や試合をさせすぎだとか心配されますけど、格闘技が無いと自分は何もなくなるので、ここで頑張らせてください」とアピールした。
大会序盤には地元北海道勢が多数出場。大島沙緒里が地元札幌のソルトを秒殺
第6試合 MMA 女子52.5kg契約(ストロー級相当) 5分3R
○大島沙緒里(AACC/DEEP JEWELSアトム級(47.6kg)王者、DEEP女子ミクロ級(44kg)王者)
×ソルト(マルスジム/パンクラス女子ストロー級王者)
1R 1’16” Vクロスアームロック
今大会では北海道出身選手のカードが多く組まれ、ソルト、遠藤来生、山川賢誠といった北海道を拠点とする選手が出場し、後藤丈治、新居すぐる、飯田健夫、熊谷麻理奈といった首都圏にいる選手も久々に故郷のリングに立った。
大島は20年、にっせーに勝利しDEEP女子ミクロ級(44kg)王者となり、21年にはDEEP JEWELSアトム級(47.6kg)王座を獲得。これまでパク・シウと1勝1敗で、RIZINでは浅倉カンナ、山本美憂にもスーパーアトム級(49kg)で勝利している。最近では2月の韓国での試合で韓国の選手に一本勝ちしている。今回はストロー級相当の52.5kg契約。大島は「52.5kgですが試合をすることを自分自身で決めました。自分を信じて勝つ為に覚悟を決めて準備します。小さくてもやれるんだという所を皆さんにお見せします」との意気込みをRIZINから発表していた。大島は身長149cmなのに対し、ソルトは167cmと、18cmも長身だ。
ソルトは札幌出身の32歳。元自衛官で、退官後に地元のすすきののラウンジで働いていた時に客の格闘技関係者から試合観戦に誘われたことがきっかけで格闘技に興味を持った。キックとMMAの両方でアマチュアの試合を重ね、昨年1月にMMAプロデビューしたばかりだが、既に5戦し3勝2敗。昨年12月のパンクラスでは女子ストロー級王者のKARENとのノンタイトル戦で判定勝ちすると、4月のベルトを懸けての再戦でも判定勝ちし初のベルトを巻いた。
1R、大島はソルトの左ミドルをつかんでからコーナーに押し込み、払い腰で倒し、袈裟固めでガッチリと押さえる。そこから右のパウンドを連打すると、両足でソルトの左腕を挟んでVクロスアームロックを極めタップを奪い、無傷で完勝した。
マイクを持った大島は「体格差大丈夫か?と周りに言われほど不安になりましたが、なんとか極めきることができました。ソルト選手が試合を受けてくれなければ、北海道で試合できませんでした。ソルト選手には感謝しています。私には双子の娘たちがいますが、格闘技で目標があります。これからも上を目指して頑張ります」とアピールした。
新居すぐる、飯田健夫との友人対決で1R KO勝ち
第5試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
○新居すぐる(HI ROLLERS ENTERTAINMENT/パンクラス・フェザー級4位)
×飯田健夫[たてお](フリー/修斗フェザー級世界3位)
1R 2’32 KO (右ストレート→右サッカーボールキック)
新居と飯田は91年1月生まれで揃って北海道出身。新居はRIZIN発表の談話で「対戦相手は北海道で高校の柔道やってた頃からの親友で、お互い地下格闘技から始まり、東京にでた時も北海道出身として必ず成り上がろうと誓いあった仲間です。そんな仲間と人生賭けて戦えるのは僕の誇りです。必ず倒して僕が前に進みます」、飯田もTwitterで「タイトルマッチ負けてからずっと引退しようか迷ってたけどもう少しだけ格闘技を続けます。対戦相手は高校生の頃からの友達。なぁなぁな試合はしない。友達だから出来る最高の闘いをする」と記している。
新居はRIZINでは中村大介、山本空良に連敗したが、パンクラスでハンセン玲雄、高木凌相手に1Rアームロックで連勝中。飯田は4連勝後、3月に修斗世界フェザー級王者のSASUKEに挑戦したが2R KO負けしている。
1R、スタンドの打撃戦が続く中で、飯田はノーガード戦法を貫く。その中で新居が時折パンチを振るって前進していると、中盤、左フックが炸裂する。飯田がロープ際まで下がると、新居が追いかけ右ストレートを当て、飯田はマウスピースを吐き出す。さらに新居が右ストレートを当てると、飯田は頭からマットに突っ込むようにしてダウン。新居がダメ押しの形で右のサッカーボールキックを当てたところでレフェリーがストップした。
マイクを持った新居は「友達とチャンスを潰し合うので、練習していても色んな気持ちがあったんですけど、たくさんの人の応援があって、試合ができて、勝つことができて、ありがとうございます。アームロックでずっと勝っていましたが、僕は打撃でも戦えます」とアピールし、最後は「健夫、戦ってくれてありがとう。愛しているよ」と、担架で運ばれる飯田にメッセージを送った。
関鉄矢、地元勢の遠藤来生を圧倒
第4試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
○関 鉄矢(SONIC SQUAD/元ZSTフェザー級王者)
×遠藤来生[らいき](パワーオブドリーム/パンクラス・フェザー級9位、元PFCバンタム級王者)
判定3-0 (内田=関/松宮=関/片岡=関)
関はRIZINとDEEPに並行参戦し、昨年は5月に原口央に判定勝ちしたが、7月に中原由貴に判定負けしている。
遠藤は山本喧一氏が札幌で運営するパワーオブドリームの主力の31歳でRIZIN初参戦。パンクラスのランカーで、昨年7月にはRyoにKO勝ちしたが、今年3月には高木凌にKO負けしている。
1R、序盤の打撃戦でリーチで勝る関の右ストレートが当たり、遠藤は腰が落ちる。遠藤はすぐスタンドに戻し、中盤、打撃戦が続くが、お互い強打は乏しい。終盤、遠藤が押し込み、脇を差して倒しかけるが、関は逆に潰す。関がクリンチから右肘を当て、最後は首相撲からの右膝蹴りで遠藤をダウンさせ、好印象で終える。
2Rも打撃戦が続く中で、関が右ストレート、首相撲からの左右の膝蹴りを的確にヒットする。中盤の組みの展開でも関が押し込んだり潰したりして優位に進める。終盤、関の首相撲からの左膝がローブローとなり一時中断する。再開後、打撃戦が続くが、有効打は乏しく終わる。ここまで再三ダウンを奪った関ペースの内容だ。
3R、関はまたも序盤から右ストレートで遠藤をダウンさせる。中盤にも右ストレートでダウンさせ、右ハイも当て、パンチを当て続け遠藤を圧倒する。終盤には関ががぶった状態で遠藤を押さえて頭に膝を当てる。関もしぶとく組み付き、離れればパンチを振り回し、不屈の闘志を見せるが、最後も関が左右のパンチを当て続け終了する。記者採点はダメージ50、アグレッシブネス30、ジェネラルシップ20全て関で100-0で関。ジャッジ3者も関を支持し、関が判定勝ちした。
後藤丈治、故郷でツイスター極め「ここからバンタム級荒らす」
第3試合 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
×トレント・ガーダム(オーストラリア/タイガームエタイ&MMA)
○後藤丈治(TRIBE TOKYO MMA/修斗バンタム級世界4位)
2R 2’34” ツイスター
ガータムはタイ在住のオーストラリア人。RIZINでは18年8月にビクター・ヘンリーに三角絞めで敗れ、20年2月には井上直樹に判定負けし、昨年10月の福岡大会では梅野源治とキックルールで対戦したが、開始早々にもらったローキックで右足を負傷し、わずか21秒でTKO負けしていた。
後藤は札幌出身。北海道大学経済学部在学時からパンクラスを主戦場にし頭角を現し、卒業後は上京し長南亮代表のTRIBEに移籍。修斗の上位戦線で活躍し、魚井フルスイング、ダイキ・ライトイヤー、加藤ケンジといったRIZIN出場経験者にも勝利している。昨年11月に須藤拓真にヒールフックで一本負けして以来の試合となる。
1R、序盤からガーダムがタックルを仕掛けてテイクダウンに成功し、トップ、ハーフと移る。後藤はスタンドに戻し、テイクダウンを奪うが、ガーダムはさほど抵抗せず倒れつつギロチンを極める。後藤は間一髪で頭を引き抜くが、ガーダムは今度は下から足を登らせ、三角絞めを狙う。ガーダムは下からの攻めを徹底する。すると終盤、後藤は脱出すると、立ち上がり際にサッカーボールキックをヒット。スタンドの打撃戦では右ストレートを当てる。終了間際に左フックをクリーンヒットしてガーダムをダウンさせ、パウンドを当てたところで時間切れとなる。最後の最後に後藤が印象を残すラウンドに。
2Rもガーダムは組み狙いで、序盤から倒すと、マウントポジションを取りながらギロチンを狙う。だが後藤は外すと、下から胴絞めをしつつ、ガーダムの上体と首をひねるツイスターを極めるとガーダムがギブアップ。後藤が見事逆転に成功した
マイクを持った後藤は「全然こんなもんじゃないんで。TRIBEもそうだし、俺もそうですけど、ここからバンタム級荒らしていくんで。以上」とシンプルに力強くアピールした。
萩原京平の後輩・栗山葵が一撃KO勝ち
第2試合 MMA 女子バンタム級(61kg) 5分3R
×熊谷麻理奈(ウィラサクレックムエタイ札幌ジム/ホーストカップ日本女子スーパーライト級(63kg)王者)※トリスタージムから所属変更
○栗山 葵(SMOKER GYM)
1R 2’48” KO (左フック)
両者RIZIN初参戦。熊谷は札幌出身の35歳。アマチュアボクシングで12年に全日本選手権準優勝の実績があり、その後キックに転向しプロで20戦近く経験。18年からはMMAも並行し、2年前からは上京しDEEP JEWELSを主戦場とする。
栗山は19年にMMAデビューしDEEP JEWELSを主戦場としてきた選手。今年2月には敗れたものの中井りんの相手も務めた。萩原京平のいる大阪のSMOKER GYMに所属する選手でストライカータイプで、ボクシングとムエタイをベースとする熊谷との打撃戦を制することに。
1R、熊谷がオーソドックス、栗山がサウスポーで構え、お互い見合う状態が続く。長身の熊谷が左ジャブを振り続け、栗山は入りにくそうな状態が続いたが、随所で右ストレートを当てる。すると中盤、熊谷が右ストレートを振って詰めて来たところで、栗山がカウンターの左のオーバーハンドフックをクリーンヒット。熊谷がこれ一発でダウンすると、ダメージが大きく、すぐにレフェリーが試合をストップした。
第1試合 キックルール(肘無し・ワンキャッチワンアタック) 57.5kg契約(フェザー級相当) 3分3R
○山川賢誠(Kickboxing Academy Sapporo/RISEフェザー級6位)
×平野凌我(MTS/RISEフェザー級3位)
2R 1’22” TKO (3ダウン:左ストレート)
オープニングファイト
第4試合 MMA ライト級(71kg) 5分2R
○渡辺トシキ(パワーオブドリーム)
×安海健人(ALMA FIGHT GYM BASE/修斗ライト級新人王2022)
1R 1’07” 膝十字固め
第3試合 MMA 55kg契約(フライ級相当) 5分2R
×丸山大輝(マルスジム)
○早坂優瑠[すぐる](CORE QUEST KUSHIRO)
1R 3’33” 肩固め
第2試合 キックルール(肘無し・ワンキャッチワンアタック) 61.5kg契約(ライト級相当) 3分3R
○愛翔[あいと](Kickboxing Academy Sapporo)
×小出龍哉(TEAM TEPPEN)
1R 0’55” TKO (レフェリーストップ:左フック)
第1試合 キックルール(肘無し・ワンキャッチワンアタック) 58kg契約(フェザー級相当) 3分3R
―星久保将城[しょうき](Kickboxing Academy Sapporo)
―がんばれ!ふるかわくん(GRABS)
ノーコンテスト (判定3-0 (28-26/28-27/28-27))
※前日公式計量で星久保が59.6kgで1.6kgオーバー、ふるかわくんは57.6kgでクリア。ふるかわくんが勝った場合のみ公式記録となる。星久保は0.5kg以上のオーバーのため減点2(レッドカード相当)