MTGP Impact in Paris 6.24 パリ(レポ):復帰戦の武尊、サグデンを5R左ハイKOし「次はロッタンを倒しに行きたい」。白鳥大珠、2R右フックKO負け。大雅、ダウン奪い判定勝ち
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
大阪梅田中津 キックボクシング ジョウジム
キックボクシングで楽しく運動!燃焼!ストレス発散!初心者でも経験者でもしっかり指導。見学・体験大歓迎!
MTGP Impact in Paris(ムエタイグランプリ・インパクト・イン・パリ)
2023年6月24日(土/現地時間)フランス・パリ・ゼニスアリーナ
レポート:井原芳徳 試合・計量写真提供:(C)AbemaTV,Inc.
THE MATCHから1年、武尊が復帰戦で5R KO勝ち
第3試合 メインイベント ISKA K-1ルール世界ライト級(61kg)王座決定戦 兼 KGPライト級王座決定戦 61.2kg契約 3分5R
○武尊(team VASILEUS/元K-1スーパー・フェザー級(60kg)・フェザー級(57.5kg)・スーパー・バンタム級(55kg)王者、元Krushフェザー級(58kg)王者)※K-1 GYM SAGAMI-ONO KRESTから所属変更
×ベイリー・サグデン(英国/サギーズジム/ISKA K-1ルール世界スーパーライト級(63.5kg)王者)
5R 2’59” KO (左ハイキック)
武尊は昨年6月19日のTHE MATCH 2022東京ドーム大会で、長らく対戦を希望していた那須川天心との大一番に臨んだが、1R終盤に左フックをもらってダウンし3R判定負けし、連勝が35でストップした。試合8日後の記者会見で一時休養とK-1スーパー・フェザー級王座の返上を発表した。8月には右膝を手術し、11月1日にはSNSで「契約満了に伴い10月31日付でK-1及びKRESTとの契約を解除させて頂きました」と報告し「これからは一格闘家の武尊として 国や団体の垣根なく挑戦して 格闘技界が更にたくさんの人に夢やパワーを与えられる業界になるように 残りの人生、全力で戦います」と記した。12月25日のRISEとシュートボクシングの合同大会にも観戦に訪れ、早速団体の垣根を超える姿を披露していた。
休養期間中にはタイや米国で練習し、Twitterにも度々練習の動画をアップし、近い時期の復帰を示唆。3月末の会見で、1年ぶりの復帰戦がフランス・パリでのISKA世界王座戦となること、ABEMAと「専属PPVファイター契約」を結び、ファイトマネー以外に1試合ごとに最低1億円のABEMAからの報酬と、PPVの売り上げに応じた追加報酬も受け取ることが発表された。その後、ONEとの契約が明らかになり、5月9日で武尊自身の口から報告。念願のONEムエタイ・フライ級王者・ロッタン・ジットムアンノンとの試合に向け、今回はなんとしても負けられない試合となる。
武尊の再起戦の相手、サグデンは25歳のイギリス人。キック22戦15勝(3KO)6敗1分で構えはオーソドックス。15年にキックデビューし、17年のRoad to GLORY 英国65kgトーナメントで準優勝。19年までGLORYにレギュラー参戦し、ジャン・チェンロンに判定勝ちし、ザカリア・ゾウガリーに判定負けし、GLORYフェザー級(65kg)では3位まで浮上した。昨年3月に地元英国の大会で判定勝ちしISKA K-1ルール世界スーパーライト級(63.5kg)王座を獲得し、3月11日(英国時間)にも初防衛を果たしたばかりだ。昨年9月のK-1スーパー・フェザー級(60kg)王座決定トーナメント1回戦で横山朋哉と対戦予定だったが、練習中に右足首を骨折し、全治3カ月の診断を受け欠場していた。組み合わせ発表会見でK-1の中村拓己プロデューサーも「今回の外国人選手の中では優勝候補として注目しています」とコメントしていた実力者だ。3月の来日会見では「日本という限られた中で活躍した武尊に、世界に出ることの厳しさを教えたい」と豪語していた。
武尊は今週に入り現地入りし、前日計量では体重計の不調や会見開始の遅れといったドタバタもあった。今回は61kgの王座が懸かるが、フランスキックボクシング連盟の規定でタイトルマッチは200gの体重超過(キャッチウェイト)が認められている。武尊は本来の61kgより少し軽い60.9kgでクリア。サグデンは最初61.9kgだったが、再々計量を経て61.1kgにてクリアした。今の時代は1回目の計量でクリアすることが世界的に主流になっているが、ムエタイの本場タイでは1回目はオーバーし、計量会場周辺を走って再計量でクリアすることも日常茶飯事のため、サグデンもその感覚に近かったとしても不思議ではない。
ISKA K-1ルールは日本のK-1同様、肘無し、つかんでからの攻撃は無効のルールだが、ラウンドマスト判定となっている。今回の白鳥と大雅の試合も、基本的に同じルールで行われた。なお、当初発表は無かったが、武尊の試合には大会主催のMTGPの肘無しキックルール部門「KGP」の王座も懸けられている。
武尊に帯同したのはKRESTの渡辺雅和代表、友人の大岩龍矢と松倉信太郎の3人。武尊はいつもの入場曲「Touchin’ On My」で登場する。会場の規模は後楽園ホールと代々木競技場第二体育館の中間ぐらいといったところか。演出もシンプルで、長い花道入場が当たり前になった武尊が、ブレイク前夜に戻ったような光景から、再スタートの一戦が始まる。
【LIVE】
武尊 復帰戦 Impact In Paris/#武尊
vs.#ベイリー・サグデン
\日本が誇るカリスマの復帰戦!
欧州最強の男にバックスピンキック右ストレート、膝など
技を組み合わせ果敢に攻める!#ABEMA PPVで国内独占生中継📡#武尊vs世界#アベマでvs世界— ABEMA格闘 (@Abema_Fight) June 24, 2023
1R、両者オーソドックスで構え、武尊は序盤から右のバックスピンキックを当てる。武尊は左右のローをヒットし、右フックも当てる。だがサグデンも右フック、左ボディを返す。終盤、武尊は右のテンカオを度々当てるようになると、サグデンは後退するように。さらに武尊は右のカーフキックも当て、攻撃を散らしやや優位に。体格で勝るサグデンの右フックで武尊が押されるようにバランスを崩す場面もあったが、最後は武尊が右のカーフを当てると、サグデンは足が流れ、早くも効いている様子だ。記者採点は武尊。
2Rは武尊が久々にらしさを発揮するラウンドに。武尊は右カーフ、膝を当てつつ、左ハイも当てると、場内はどよめく。武尊は圧を強め、サグデンは回って距離を取るように。サグデンは左足を引きずり気味で、右のカーフのダメージが大きい様子だ、武尊は時折笑顔を浮かべ圧をかけ、右フック、膝、左ハイを当て続ける。サグデンもパンチを細かく返しているが、武尊は圧をかけ続け、主導権を譲らない。記者採点は武尊。
すると3Rは武尊が圧倒的に差を示す展開に。武尊は変わらず前に出て、サグデンは回り続ける。すると武尊の右ボディが中盤に効き目を発揮し、サグデンは顔を歪める場面が増えるように。武尊は執拗に前に出て左ボディを効かせると、終盤、ついに左ボディでダウンを奪う。武尊はさらに前に出て左ミドルでダウンを奪う。残り時間はわずかで、最後も左ミドルを当てて終える。記者採点は10-7で武尊。
4R、武尊は序盤からサグデンを詰め、左ボディ、ミドル、右膝を当てる。サグデンは両手のガードが上がらなくなる。それでもステップで回りながら右フックを返す場面もあるが、武尊は変わらず前に詰め続ける。すると終盤、左テンカオでサグデンの動きを止め、パンチを当て続けたところでレフェリーはダウンを宣告する。最後も武尊がパンチを当て続け終える。記者採点は10-8で武尊。サグデンはKO負けしたことが無いだけあり驚異的な打たれ強さだ。
5R、武尊は4Rに続き蹴り足をつかむ行為で累積2度目の注意をレフェリーから受け、減点1となってしまう。それでも流れは変わらず、武尊がパンチの連打でサグデンをフラフラにし、レフェリーはダウンを宣告する。武尊は左ミドルを効かせ、右ハイをクリーンヒットするが、それでもサグデンは倒れず。最終ラウンドだが武尊は息切れせず攻め続けると、終了間際に左ハイをクリーンヒット。サグデンがロープ際で腰から崩れ落ちると、ついにレフェリーがストップした。武尊はコーナーに登って恒例のバック宙で喜びを表現した。
インタビューで武尊「5Rできて良かった。次に向けていい復帰戦になった」「次はロッタンを倒しに行きたい」
武尊はISKAのベルトを腰に巻き、KGPのベルトを肩に掛け笑顔を浮かべ、マイクを持つと「メルシー、ビバラフランス、サンキュー」等とフランス語も絡めてアピールし、フランスの観客も拍手した。最後はセコンドと、この日勝利したかつてのライバル・大雅と共に記念撮影した。
バックステージで武尊は「相手は強かったです。今まで戦った相手だったら絶対(もっと早く)KOしていたんで」「今まで日本で戦っていたんで、これから海外のチャンピオンを倒していきたいです」「世界のファンを増やし、世界中のファンを熱狂させたいです」と話した。
さらに武尊はABEMAの東京のスタジオとのやりとりで「5R制ということもあって(展開を)作りにくかったですけど勝てて良かったです。足を変なタイミングで上げるのでやり辛かったです。復帰戦だし、ヨーロッパのファンにKO見せたかったんで、強い選手が日本にいるんだよと見せられたと思います」「グローブが大きくて、拳は大丈夫だったんですけど、あんまり効かせられなかったです」「パンチが効かなくて、切り替えて蹴りで倒そうかなと。カウンターの右ハイは結構練習していたんで、左も入るかなと。お腹効いていたんで、ハイキック入るかなって蹴りました」「相手の(計量後の)リカバリーが凄くて、体の厚さを感じました」「1・2Rはこんな距離だったっけなって感じでしたけど、後半になってこんな感じだって試合勘が戻りました。5Rできて良かったです。次に向けていい復帰戦になったかと思います」と話した。
すると中継席の魔裟斗氏が「次はわからないけど、みんな楽しみなロッタンとのカードがあるからね」と話し、武尊は「この試合が終わったら言おうと思ったんですけど、僕はロッタンしか見ていないんで。次はロッタンを倒しに行きたいと思います」と明言した。ロッタン戦がONEのベルトを懸けた試合になれば5R制のため「5Rできて良かった」という言葉には予行演習ができて良かったというニュアンスも込められているだろう。
なお、少しK-1っぽさもあるデザインのKGPのベルトについては「僕も勝つまで(ダブルタイトルマッチだと)知らなかったんですけどもらいました」と話して苦笑していた。
白鳥大珠、念願の海外での試合も2R右フックKO負け(※裁定変更)
65.5kg契約 3分3R
―白鳥大珠(TEAM TEPPEN/RISEライト級(63kg)1位・元王者、RISE -61kgトーナメント2019優勝、RIZIN KICK -61kgトーナメント2021優勝)
―アレクシス・ソートロン[Alexis Sautron](フランス/WAKO欧州王者、FFKMDAフランス王者)
2R 無効試合
※ソートロンの2R KO勝ちから裁定変更(※詳細記事)
武尊は3月のカード発表会見で「日本にも素晴らしい選手がいるんで、一緒に世界で戦って日本の格闘技を世界に知らしめる大会したいです。参戦したい選手がいたら一緒に世界と戦いたいです」と話していたが、今回、武尊とも縁のある白鳥と大雅が共に「格闘技版チームジャパン」としてフランスに乗り込んだ。
白鳥と武尊はアマチュア時代、新空手の大会の決勝で戦い、当時19歳の武尊が15歳の白鳥に延長戦の末に勝利した過去がある。白鳥はその後プロデビューし、一時はボクシングに転向したが、18年から那須川天心のいるTEPEN GYMに所属し、RISEでキックに復帰。RISEで王者となり、19年のRISEの世界トーナメントで優勝し、62~65kgの戦線のトップ選手として活躍する。昨年6月のTHE MATCHで白鳥はK-1のゴンナパーにKO負けしたものの、以降は3連勝。今年3月のRISEでは武尊とKRESTで同門だったK-1の佐々木大蔵に完勝している。最近はライバルの原口健飛や直樹がGLORY等の海外勢と盛んに試合をしており、白鳥も海外勢との対戦に意欲的だったため、今回は海外に向けてアピールする機会となる。
対戦相手のソートロンは1996年11月25日生まれの26歳でキック戦績35戦25勝10敗。
【LIVE】
武尊 復帰戦 Impact In Paris/#白鳥大珠
vs.#アレクシス・ソートロン
\日本格闘界のプリンスが参上!
ストレートを得意とする相手に
ボディを打っていく#ABEMA PPVで国内独占生中継📡#武尊vs世界#アベマでvs世界— ABEMA格闘 (@Abema_Fight) June 24, 2023
1R、サウスポーの白鳥に対し、オーソドックスのソートロンがプレッシャーをかけ、右ストレートを積極的に振るう。白鳥は右ジャブで距離を取りつつ、左右のロー、右ボディをヒットする。だがソートロンは変わらず前に出ると、白鳥の頭を押さえながら右膝をヒット。後半に差し掛かり、白鳥の右フックへのカウンターの右フックを当ててダウンを奪う。白鳥はすぐ立ち、頭のダメージは小さい様子だが、眉間から出血している。ソートロンは前に出てパンチ、膝で積極的に攻め、主導権を維持する。記者採点は8-10でソートロン。
2R、ソートロンは変わらず前に出て、右ストレート、ミドルを当てる。後半に入ると、白鳥が前に出てパンチを当てるように。だが終盤、白鳥のパンチの連打をソートロンは頭を振ってかわしてから、左フックをヒット。ソートロンがプレッシャーをかけ続けると、ソートロンはサウスポーにスイッチして距離を詰めてから、またも白鳥の右フックのカウンターで右フックを当ててダウンを奪う。白鳥はロープの隙間から外に吹き飛ぶように倒れ、すぐさまレフェリーがストップ。白鳥は完敗に終わり、武尊に勝利のバトンをつなぐことができなかった。
大雅、契約体重・相手変更の一戦は終始圧倒し判定勝ち
第1試合 66.5kg契約 3分3R
○大雅(TRY HARD GYM/元K-1スーパー・フェザー級(60kg)王者、元Krushスーパー・バンタム級(55kg)王者)
×ポール・カーポウィッツ[カポウィック](フランス/UKMF英国ライト級王者)
判定
大雅は14年11月、現体制のK-1の旗揚げ大会のスーパーファイト、15年4月のK-1 -55kg初代王座決定トーナメント決勝で武尊と対戦し、いずれも武尊が勝利している。2人のライバル関係はK-1の復興のきっかけとなった。18年3月のK’FESTA.1のメインイベントでの3度目の対戦が計画されたが、契約トラブルにより大雅らTRY HARD GYM勢はK-1を離れ、RISEやRIZINを主戦場にしていた。20年には大雅が兄のHIROYAと共に運営するYouTubeチャンネルと武尊のチャンネルで共演し、リングの外では交流していた。RIZINで大雅は19年に白鳥と2度戦いいずれも黒星。原口健飛や中村寛には敗れたが、21年11月以降は梅野源治ら相手に3勝1分負け無しだった。しかし3月のRISEの試合の前日、減量苦の影響で肺の2箇所が破ける縦隔気腫(じゅうかくきしゅ)となり、一馬戦を欠場した。
今回対戦予定だったウマハメド・ファレスが欠場し、現地入りしてから相手が変わる事態に。代役のカーポウィッツは別の選手のセコンドのため来場していた選手。12年9月に来日し、NJKFでのWBCムエタイ・インターナショナル・スーパーライト級王座決定戦で大和哲也に5R判定負けしている。現在34歳で戦績25戦17勝7敗1分。大雅は契約体重も当初の61.7kgから66.5kgに変わり、大雅はほぼ減量無しの66.5kg、カーポウィッツは65kgでクリアしている。
【LIVE】
武尊 復帰戦 Impact In Paris/#大雅
vs. #ポール・カポウィック
\「VS世界」の初陣は🇯🇵
武尊選手のかつての"ライバル"大雅選手!相手のボディにしっかりと打って
ダメージを与えていく#ABEMA PPVで国内独占生中継#武尊vs世界#アベマでvs世界— ABEMA格闘 (@Abema_Fight) June 24, 2023
1R、両者サウスポーで構え、大雅はプレッシャーをかけ、左ローを随所で当てる。中盤、大雅は左ボディフックを強打する。カーポウィッツは時折スイッチし、回って距離を取り続け、右ミドルを当てる場面もあるが、攻撃が少ない。終盤、大雅は圧をかけ続け、主導権を維持して終える。記者採点は大雅。カーポウィッツは大雅と体格は変わらず、体も緩んではいないものの、大雅の圧力に対応しきれていない。
2R、大雅は変わらず圧をかけ、バックハンドブローを空振りさせてから、左フックをヒット。その後も左フック、左ローを着実に当てる。後半に入ると、カーポウィッツはローをもらうと足を引きずるように。終盤、大雅は左ハイを当て、左フックでのけぞらせる。最後は大雅がノーガードで挑発しつつパンチとローを当て圧倒する。記者採点は大雅。
3R、大雅はこれまで同様に主導権を維持し、圧をかけ、左のフック、ローを当てる。カーポウィッツは防戦一方。カーポウィッツは右まぶたから出血する。最後、大雅が左ストレート、膝のラッシュで、終了間際にダウンを奪う。最後は大雅のパンチラッシュをカーポウィッツが耐えて終える。記者採点は10-8で大雅。合計30-26で大雅。ジャッジも大雅を支持し、大雅が判定勝ちした。