THE MATCH 6.19 東京ドーム(レポ:メイン):世紀の一戦は那須川天心の完勝。1R左フックでダウン奪い判定勝ち「武尊選手がいたからこれだけ強くなれた」
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
格闘技医学会
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Yogibo presents THE MATCH 2022
2022年6月19日(日)東京ドーム
レポート:久保与志 試合見所紹介・写真:井原芳徳
中継:ABEMA PPV ONLINE LIVE(4404円、ABEMAプレミアムに登録すれば20%引きの3516円)
※THE MATCH 2022ルールはキックボクシング。肘打ち無し、つかんでからの膝蹴りは1回のみ有効。蹴り足をつかんでからの1回の攻撃は天心×武尊のみ有効。天心×武尊のみ5ジャッジ制。天心×武尊、海人×野杁、原口×山崎のラスト3試合のみラウンドごとに採点を発表するオープンスコアリング方式を採用。
那須川天心 vs. 武尊、キックボクシング史上最高のビッグマッチは天心の判定勝ち
第15試合 メインイベント 58kg契約(試合3時間前62kg) 3分3R(延長1R)
○那須川天心(TARGET/Cygames/RISE世界フェザー級(57.15kg)王者、ISKAフリースタイル世界フェザー級(57kg)王者、ISKAオリエンタル世界バンタム級(55kg)王者、元RISE同級王者/57.95kg)
×武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST/K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級(60kg)王者、元同フェザー級(57.5kg)&スーパー・バンタム級(55kg)王者、元Krushフェザー級(58kg)王者/58.00kg)
判定3-0 (小川30-28/秋谷30-27/豊島30-28/梅木30-28/箱崎29-28)
15年8月1日のBLADEの-55kgトーナメントで天心が優勝後、K-1同級王者の武尊との対戦を希望してから約7年。幾多の波乱を経て、ようやくキックボクシング界の両巨頭の対決が実現した。当初は天心が対戦を呼び掛けていたが、そのことで天心のRISE・RIZINサイドと、武尊の所属するK-1の関係が悪化し、天心の気持ちは冷めていく。しかし両雄が無敗街道を突き進むほど、ファンから実現の声が高まり、いつからか武尊が天心戦を希望するコメントを繰り返すようになる。
するとコロナ禍突入初年の20年の大晦日のRIZINさいたまスーパーアリーナ大会を武尊が突如訪問し、天心の試合を観戦したことをきっかけに実現ムードが一気に高まった。昨年3月のK-1での武尊のレオナ・ペタス戦には、逆に天心が訪問。RIZINの仲介で、6月13日の東京ドームでの武尊と天心の対戦が計画されたが、武尊がレオナ戦で右拳を負傷し実現しなかった。天心は今年4月のキックボクシング引退とボクシング転向を控え、残された試合はその時点で2試合となっていたが、天心が引退を先送りし、昨年12月24日の記者会見で、両者の今年6月の対戦が正式発表された。
今年春に試合の場は東京ドームと発表され、チケットが発売されると6万近い券が即完売に。フジテレビでの生中継が当初発表されたが、フジとの契約に至らず放送中止となった件も含め、試合以外でも話題の多い大会となった。結局、RISEとK-1をこれまで放送していたABEMAのPPVのみで生中継されることに。天心×武尊以外の15試合もK-1対RISE等非K-1の対抗戦の図式で、K-1側の“開国”は今回限りなことから、全試合が貴重な顔合わせとなった。王者クラスのカードが主体で、肘無しキックルールの各階級の真の日本一を決めるような大会にもなった。
天心は千葉県出身の23歳。ジュニア時代から頭角を現し、14年7月、15歳でRISEでプロデビューし、キック41戦41勝(28KO)、MMA 4戦4勝(3KO)、ミックスルール1戦1勝(1KO)、全戦績46戦46勝(32KO)、無敗の快進撃を続けた。4本の王座を獲得し、3度のトーナメントを制し、村越優汰、ロッタン、堀口恭司、内藤大樹、スアキム、志朗、江幡塁、クマンドーイらトップ選手を下してきた。最近では4月のRISEで同門の風音に判定勝ちしている。
武尊は鳥取県出身の30歳。11年9月、20歳でプロデビュー。6戦目で京谷祐希にドクターストップ負けしたが、以降は無敗で、通算41戦40勝(24KO)1敗。Krush -58kg王座獲得を皮切りに、14年から始まった新生K-1では3階級を制覇した。これまで大雅、瀧谷渉太、小宮山工介、ヨーキッサダー、村越、レオナらトップ選手に勝利。試合は昨年3月のレオナ戦以来1年半ぶりだ。
対戦ルールは体をつかんでからの膝蹴りは1回、蹴り足をつかんでからの攻撃は1回有効の、いわゆる「ワンキャッチ・ワンアタック」ルールで、近年対戦を熱望していた武尊が天心に譲歩した形に。契約体重も武尊が天心に合わせて2kg低い58kg契約での試合となる。試合3時間前62kg契約という条件も加えられ、17:18のの計量では、天心が61.95kg、武尊が61.75kgでクリアした。
大会は12:30にオープニングファイト、13:00に開会式が始まり、メインの天心×武尊の入場は21:00。両選手が登場すると、東京ドームに集まった56,399人(主催者発表)満員の観衆の割れんばかりの歓声で包まれる。レフェリーは今大会を共催したRISE・RIZIN・K-1の3団体でレフェリーをしている豊永稔氏が務める。ジャッジは公平度を高めるため通常の3人より2人多い5ジャッジ制で、RISEから小川実氏、秋谷益朗氏、K-1から梅木良則氏、箱崎雄三氏の2人ずつ、RIZINから豊島孝尚氏の1人が派遣された。
21時7分にゴングが鳴る。1R、いきなり左ストレートを見せた天心に、武尊は右ミドルをリターンする。天心はステップを刻みながら左ハイ、スーパーマンパンチ。さらに飛びヒザから左ストレートで追う。天心のジャブをもらい少し笑顔を見せる武尊だが、天心のジャブに反応が間に合っていないか。天心のバックハンドブローに武尊は強引に距離を詰めて右ミドル。ラウンド終了間際に武尊の右ストレートの打ち終わりにドンピシャで左ストレートを合わせてダウンを奪う。記者採点は10-8で天心。オープンスコアも5者共に10-8。
2R、左ボディから入った天心はさらに左ミドルで追撃。前に出る武尊に合わせて胴回し回転蹴りも見せる天心。距離が詰まったところでかなり強い当たりでバッティングになり中断。右目がかなり腫れて塞がりかけているように見える。再開後、前蹴りで距離を制しながら左ストレートを当てる天心。武尊は合えてダイレクトの右から入って相打ち覚悟の一発を狙っているか。武尊が天心を投げてしまい再び中断。やはり天心が先にジャブをヒットさせ、クリンチからバックに回る。記者採点は10-10も天心寄りのラウンドの印象。オープンスコアはジャッジ1名のみが武尊につける意外なスコアもあったが、武尊は劣勢を覆すには3Rにダウンを奪い返すか倒さないと厳しくなる。
3R、武尊の前蹴りに右フックを被せる天心。武尊はヒジで押すようにしてラフファイトもしかけ、テンカオから右フックで襲いかかる。前蹴りから入る武尊に、天心は見事な右アッパーから左ストレート。笑いながら追いかける武尊だが、カウンターを決めていくのは天心。武尊の強打は空を切り続けるが、残り10秒で強引にしかけて右フックをヒット。しかし最後までダメージを与えるビッグヒットを当てることは出来ず、世紀の一戦は幕を閉じた。記者採点は10-9、トータルスコア30-27で天心。判定は5-0、勝者が告げられると両雄は涙を滲ませながら言葉を交わした。天心はキックボクシング42戦42勝(28KO)無敗でボクシングに転向する。
天心の試合後のマイク「武尊選手がいたからこそ俺はこれだけ強くなれた」「こうやってまた“THE MATCH 2”やりましょう!絶対にやった方が良いよ!」
やったぞー!俺、勝ったんだよ!今日は皆さんお集まりいただき本当にありがとうございます。僕の最後の試合、そして僕と武尊選手の試合。こんなに長い間待ち続けてくれたファンの皆さん、そして叶えてくれた武尊選手、本当に本当にありがとうございます。僕も武尊選手もずっと試合したかったですし、でもなかなか実現しなくて恋人みたいな感じで、好きになったりフラれたり人生色々あるんですけど、こうやって最後に満員の東京ドームという舞台で戦えて、僕は本当に幸せです。皆さんそれを見に来てくれて、歴史の証人になってくれて本当にありがとうございます。
武尊選手がいたからこそ俺はこここまで強くなれたし、ここまでキックボクシングを続けてられたし。ぶっちゃけコロナの時期になった時に、やりたい相手がいるんだけど戦う相手がいない、戦えない。そういった大人の事情だったり問題があってここまで実現しなかったんですけど、皆さんが動いてくれたおかげ、皆さんがこうやって一つになろうとしてくれたおかげで、こうやって今日この場に立てたと思います。本当に僕達ファイターは幸せです。皆さんありがとうございます。
俺、今日でキックボクシング、そうだ終わりだ、これでキック引退なんですよ。今日の興行、どうでしたか?最高に楽しくないすか!?こうやって長い間みんなが一つになって、こうやって一個の興行が出来て、俺すげえ幸せだったっす。こんなことはもうないと思うし、今日勝って初めて自分で強いって思えました。今まで本当に自分が最強って思えなかったんですけど、何か俺すげえ嬉しいっす。本当に幸せです。皆さんありがとうございます。
今日で僕はキックボクシングは終わりなんですけど、これからもこうやって色んな団体が一つになっていけば、日本だったり世界だったり色んなスポーツあるんですけど、その中でも格闘技ってすげえパワーを与えられる競技だと思うんで。皆さんぜひ格闘技に興味を持って。そして団体の皆さん、僕はもうここでいなくなっちゃうんですけど、これからも協力していただけたら嬉しいです。こうやってまた“THE MATCH 2”やりましょう!絶対にやった方が良いよ!大人の事情なんて分かんないんで。皆さんでこういう大会を何度も何度もやって、キックボクシング・格闘技を盛り上げましょう。俺、格闘技大好きっす。本当にありがとうございました
そして最後、今日は何の日だ?父の日だ!父親、いつもありがとう。色々あったけど最高のプレゼント渡せたと思う。最高の親孝行出来たと思う。最高の息子だろ?俺。今日はこれで終わります。ありがとうございます。格闘技最高!
武尊「心から申し訳無い」
敗れた武尊はバックステージのインタビュースペースに登場したが、涙声で落ち込んだ姿で、「この試合を実現するために動いてくれた人たち、支えてくれた人たち、対戦相手の天心選手に心から感謝しています。僕を信じてついてきてくれたファンの人たち、K-1ファイター、ジムのみんなには本当に心から申し訳無いと思っています。以上です。ありがとうございました」とだけ話し、質問には答えず退席した。
RISE対K-1は6勝5敗でRISEの勝ち越し。「K-1最強」の今後は…
大会のそのほかの15試合のレポート記事は下の2ページ参照。K-1対RISE等非K-1の対抗戦の勝敗は、9勝7敗で非K-1勢の勝ち越し、RISE対K-1は6勝5敗でRISEの勝ち越しに終わった。ラスト3試合に登場したKREST勢は3人全敗で、そこまでの13試合で勝ち越していたK-1勢が、ラスト3試合で逆転される結末となった。K-1は現王者のうち武尊、野杁正明、金子晃大といった主力級の3人が敗れる事態に。4月のRISEとの対抗戦の発表会見でK-1の中村拓己プロデューサーは「スタンスは変わらないです。今回は特別です」と話し、今回限りの開国と明言していた。これまでの路線を継続し力を蓄えるにせよ、早急なリベンジ目指し開国に路線変更するにせよ、K-1が最強と証明できなかったことは、今後のK-1のイメージ戦略に重くのしかかりそうだ。
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