RIZIN LANDMARK 3.6 東京(レポ):鈴木千裕、開始20秒の右ストレートで先手取り勝利、平本蓮はMMA転向2連敗。鈴木博昭、昇侍を72秒KO。吉成名高のKO勝ちに榊原氏「アッパレです」
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+WEED presents RIZIN LANDMARK vol.2
2022年3月6日(日) 東京都内・非公開
レポート:井原芳徳 写真提供:(C) RIZIN FF 中継:Exciting RIZINほか全9社でPPV配信(アーカイブ配信は3月13日(日)23:59まで)
RIZIN LANDMARKは10月に初開催された会場非公開・スタジオマッチ形式のRIZIN新シリーズ。1試合中止で全4試合のコンパクトな編成で、メインイベントでは朝倉未来 vs. 萩原京平が組まれた。U-NEXTで有料独占配信されたが、視聴申込が直前に殺到し、多くのユーザーがアクセスできず、1時間遅れでスタートするハプニングも話題になった。
2回目の今回は配信プラットフォームを増やし、前売と当日の料金に差をつける対策が取られた。試合場はリング。ケージ採用も検討されたが、会場への機材搬入の都合により、RIZIの通常のリングに落ち着いた。
鈴木千裕、開始20秒の右ストレートで先手、平本蓮はMMA転向2連敗
第5試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
○鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺/KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級(65kg)王者)
×平本 蓮(ルーファススポーツ/K-1甲子園2014 -65kg優勝)※The Pandemoniumから所属変更
判定3-0 (片岡=鈴木/柴田=鈴木/豊島=鈴木)
新生K-1育ちの平本は、20年の大晦日のRIZINでのMMAデビュー戦で萩原京平に寝技で攻め込まれ完敗。米国中西部ウィスコンシン州のルーファスポーツでの約3カ月の練習を経て、年末から日本に戻り、現在は石渡伸太郎氏がMMAコーチを務めるCAVEを練習拠点にしている。
23歳の平本に対し鈴木は22歳。16年末のRIZINのアマMMAトーナメントで優勝し、17年にパンクラスでプロデビューし、18年に新人王トーナメントにあたるネオブラッドトーナメントで優勝したが、計量失格のトラブルもあり、キックに転向。昨年7月のキック11戦目でKNOCK OUT-BLACKスーパーライト級王者になると、MMA復帰とキックとの“二刀流”を宣言した。9月のRIZINでのMMA復帰戦では、昇侍にわずか20秒でTKO負けしたが、11月のRIZIN TRIGGERでは山本空良に判定勝ち。1月22日のKNOCK OUTでは、ベイノアをKOしたこともあるタップロンと対戦し、開始早々からの猛ラッシュで主導権を握り1R KO勝ち。この勢いも買われ、平本の相手に選ばれた。
1R、平本が先に前に出るが、鈴木は下がって距離を取りつつ、開始わずか20秒、右ストレートを平本のアゴにクリーンヒット。平本は腰が落ちる。平本は1年3カ月ぶりの試合。試合勘の鈍りが出てしまったか? パンチの打ち合いとなり、平本も右ストレートを当てるが、鈴木は左右のフックを確実に当て続け、平本にダメージを与える。鈴木は両脇を差して反り投げで倒して、上から押さえ、パウンドを少し当てる。平本は脱出するが、顔を腫らし鼻血を出し表情も虚ろだ。
鈴木はコーナーに平本を押し込み続け、時折右肘を当てる。最後に離れ、平本が右フックを当て、少し鈴木がバランスを崩すが、すぐ持ち直して終える。ここまで鈴木が優位だ。しかし試合後のコメントで、1R序盤のパンチで両拳を痛めていたことを明かしており、そのせいでパンチ主体から組み主体に切り替わったようだ。
2R、開始すぐに平本の腫らした左まぶたにドクターチェックが入るが再開する。鈴木が平本を押し込み続け、平本も右肘を返すが、相変わらず表情が虚ろで、鈴木に押し込まれるだけでもしんどそうだ。鈴木は日本大学レスリング部やパラエストラ八王子&柏への出稽古が効いている感がある。膠着ブレイク後、再び鈴木が押し込み、またも膠着ブレイク。パンチと肘の応酬の後、鈴木が組み付いて、今度は押し込む前にテイクダウンに成功する。鈴木はサイドをキープし、時折肘を当てる。残り20秒でマウントを奪い、少しパウンドを落とし、背後でしがみついて終える。ここまで鈴木が優位だ。平本は消耗が激しく、普通ならもう少し最後の仕掛けを早めても良いところだが、両拳の負傷の影響か手堅い攻めに。
3R、今度は平本が右フックを当てて押し込むが、すぐに鈴木が押し返し、右膝を当てる。平本は防戦一方だ。鈴木はなかなか倒しきれないものの、逆に体力には余裕がある様子だ。平本は倒され際にロープをつかむ場面もあり、レフェリーから注意を受ける。膠着ブレイク後も平本が右フックを当てるが、力が入りきらない。その後も膠着ブレイクに度々なるが、鈴木がすぐに組み付いて押し込む展開を繰り返し主導権を維持する。最後は平本が肘を当て、鈴木の投げを潰して上になるが、パウンドを少し落としただけで終了する。記者採点は鈴木。ジャッジ3者も順当に鈴木を支持し、鈴木の判定勝ちとなった。
鈴木の試合前の評価は決して高くなかったが、MMAはプロだけでも通算10戦し、パンクラスのネオブラを制しておりMMAの経験値では平本よりもずっと上。キックでは6連続KO勝ち中。平本の休養中にMMAとキック合わせて5試合経験しており、試合勘・総合力の差の出た感のある試合だった。
勝利者インタビューで鈴木は「キックボクシングではKO一択で行けたんですけど、MMAは難しいですね。まだ未熟で、KOできる技術を持ってないんで、次、絶対KOできるよう頑張ります」と話し、今後については「朝倉未来選手が引退するまでの間に戦えるよう、実力を付けて上がっていきます。二刀流を体現します。チャンピオンになるんで応援お願いします」と話した。最後は「たぶん親指折れました」とつぶやいた。
平本蓮「自分に足りないのは総合格闘技の試合経験とはっきりわかりました」、鈴木千裕「腕治ったら木や鉄を殴って強化するしかないです。昭和と一緒ですよ」
MMA 2戦2連敗となってしまった平本は「負けましたけど負けてないです。死ぬ気でやってきたんで、後悔無いです。這い上がります」と再起を誓い、リングを降りた。大会後のインタビューでは「自分に足りないのは総合格闘技の試合の経験とはっきりわかりました。今年はどんどん試合していこうと思います。死に物狂いでやります」等とコメントした。大会総括でRIZINの榊原信行CEOも「ドクターチェックをした上ですけど、圧倒的に足らないのはMMAの実戦経験だよね。来月の大会から早速戦う機会を提供したいと思っています」と話した。
大会後のインタビューで鈴木は「平本選手はキックボクサーじゃなくイチMMA選手として強かったです。予想以上に打撃が上手くて自分の形が取れなかったです。K-1選手なので肘は使わないと思っていましたけど、使ってきてやりにくかったです」と平本を称え、「圧を掛けられましたけど、前回のタップロン選手に似ていて、そこまで焦らなかったです」とも話した。氷で冷やしている両拳については「(折れたのは)開始早々の打ち合いだと思います」「両手折れました。ボクシンググローブじゃなくオープンフィンガーグローブだとパワーがあり過ぎて耐えられないんですよね。でも骨の1・2本くれてやろうと思っていたので、しょうがないです。勝利への代償です。折って勝ったならいいですよ」「腕治ったら木や鉄を殴って強化するしかないです。昭和と一緒ですよ」と笑顔であっけらかんと話した。
鈴木博昭、わずか72秒で昇侍を粉砕。ミスターLANDMARK宣言し海外勢・鈴木千裕との対戦に意欲
第4試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
×昇侍(KIBAマーシャルアーツクラブ/元パンクラス・ライト級王者)
○鈴木博昭(BELLWOOD FIGHT TEAM/ボンサイ柔術/元シュートボクシング世界スーパーライト級(65kg)王者)
1R 1’12” TKO (レフェリーストップ:左フックでダウン後)
昇侍は38歳、鈴木は37歳のベテランストライカー対決。昇侍は昨年9月のRIZINで鈴木千裕を開始わずか20秒でKOし、大きなインパクトを残したが、11月のTRIGGER 1stのメインイベントでは萩原に2R TKO負けしている。鈴木は10月のLANDMARK Vol.1のMMAデビュー戦で奥田啓介に1R TKO勝ちしたものの、大晦日のRIZIN.33では萩原にグラウンドで押さえ込まれ続け判定負け。萩原に負けた選手同士の対戦となる。
1R、鈴木がサウスポーに構え、序盤から軽めだが左フック、左膝を当てて先手を取ると、次第に左ハイ、左フックを強く当てるようになり、左フックでダウンを度々奪う。組んできた昇侍を鈴木が潰し、顔に膝を当てると、朦朧とした様子で立ち上がった昇侍に、左フックをクリーンヒット。昇侍が腰から崩れ落ちたところで、すぐさま豊永レフェリーがストップした。
鈴木は寝技に行く前に、立ち技で培った打撃スキルで昇侍を圧倒。勝利者インタビューでは「RIZIN LANDMARK 2勝しているんで、海外でLANDMARKをやると聞いているんで、海外産品種に食いつきたいです。ミスターLANDMARKとしてね」とアピールした。
大会後のインタビューで鈴木は、メインイベントの鈴木千裕と平本蓮の勝者との対戦に意欲を示し、榊原CEOは「平本が行っても千裕が行っても、スタイル的にも噛み合いそうで面白いと思います」と話した。
吉成名高、2R TKO勝ち。“仲直り”の榊原氏「アッパレです」
第3試合 キックルール(肘有り・つかんでからの攻撃は1回) 52.5kg契約 3分3R
○吉成名高(エイワスポーツジム/BOMフライ級王者、WBCムエタイ・ナイカノムトム・スーパーバンタム級王者、元WBC・IBF・WMCムエタイ世界ミニフライ級王者、元ルンピニー&ラジャダムナン認定ミニフライ級王者)
×白幡裕星(Battle-Box/元KNOCK OUT-RED&MuayThaiOpenスーパーフライ級王者)※橋本道場から所属変更
2R 1’02” TKO (レフェリーストップ:左フックで2ダウン後)
吉成は21歳。ムエタイでは日本人で初めてルンピニー&ラジャダムナンの2大王座を獲得。10月のRIZIN横浜大会で石川直樹に1R TKO勝ちし、RIZIN 4連続KO勝ち。12月のBOMではスーパーバンタム級(55.33kg)でタイ人選手に判定勝ちし11連勝に。大晦日のRIZINでの那須川天心との対戦を見据えた階級アップでの試合だったが「大晦日に肘無し55kgでは心技体が準備できない(今回のカード発表会見での発言)」と思い、天心戦のオファーを断った。榊原CEOは年末の会見で吉成に苦言を呈したが、「言い回しが感情的になりすぎた」と謝罪し、今年に入っての話し合いで和解し、再び吉成はRIZINに登場する。
RIZIN初参戦の白幡は19歳で15戦11勝3敗1分。約2年前からはREBELS(現KNOCK OUT)を主戦場とし、昨年2月にスーパーフライ級王者に。昨年9月にサンチャイ・TEPPEN GYMに判定負けして以来の試合。その後、橋本道場を離れ、1月から元プロボクサー・K-1ファイターの渡辺一久氏率いるBattle-Boxに移っていたが、吉成のいるエイワスポーツジムを練習拠点にしていた。さらに今回は両者とも大会10日を切っての試合発表のため、心技体の整い具合がやや気になるところだ。
1R、両者サウスポーに構え、白幡の右のパンチを吉成がかわしつつ、左ミドル、ローを当てる。終盤、白幡も左右のミドルを返す。最後、吉成は圧を強めるが、目立った攻撃は出せない。ここまでまだ両者慎重か。記者採点はイーブン。
2R、序盤から白幡が前に出て勝負に出るが、右フックで詰めたところで、吉成がスピードで上回る右フックをカウンターで合わせてダウンを奪う。白幡はすぐ立ち、パンチラッシュで詰めるが、吉成は組んでムエタイ流の崩しで封じる。再び白幡が詰めて左フックを放つが、吉成がかわしながら左フックをクリーンヒット。再びダウンさせたところで、真後ろに倒れた白幡を見た豊永レフェリーがすぐさまストップ。吉成のKO勝ちとなった。
勝利者インタビューで吉成は「今回、色んな件があったんですけど、色んな方が動いてくれたおかげでRIZINに戻って来ることができました。裕星選手は何度か一緒に練習をしたことがある後輩で、今回色んな思いがあったんですけど、裕星選手、強い選手なので、これから活躍して欲しいです」とコメント。続けてリングサイドで見ていた榊原氏がマイクを持ち「おめでとうございます。素晴らしかったです。アッパレです。色々ありましたけど仲直りしたんで、未来目指して頑張りましょう」と吉成を激励した。最後に吉成は「自分の中では清算したんで次に進んでいこうと思います。これからも自分のスタイルを貫いてKOの山を築いていけるよう頑張ります」と爽やかにアピールした。
バンタム級・伊藤空也、判定勝ちも「求められているものができなくて悔しい」
第2試合 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
×魚井フルスイング(和術慧舟會HEARTS)
○伊藤空也(BRAVE/元GRACHANバンタム級王者)
判定0-3 (豊島=伊藤/柴田=伊藤/片岡=伊藤)
魚井は修斗、RISE等含め5連敗中だったが、昨年11月の故郷兵庫でのTRIGGER 1stでは獅庵に1R TKO勝ちした。伊藤は20年9月のGRACHANバンタム級王座決定戦で獅庵に判定勝ちしたことがある。昨年のRIZINバンタム級日本GPに参戦し、一回戦で金太郎に判定負けしたが、激しい打ち合いで印象を残した。10月のLANDMARK Vol.1でも試合が組まれたがコロナに感染し欠場していた。12月のGRACHANでは手塚基伸に1R腕十字で一本負けしGRACHANのベルトを失っている。
1R、伊藤がオーソドックスで構え圧を掛け、魚井がサウスポーで左に回って距離を取る構図。両者なかなか手が出ず、お見合いが続く。中盤過ぎ、魚井が左ハイ、テンカオを連続で出すが、伊藤は対処する。終盤、魚井が左のオーバーハンドフックを当てるがクリーンヒットにはならず。伊藤は右ミドル、右フックからタックルを仕掛けて倒し、コーナー際で上から押さえて終える。最後に少し試合が動く。
2R、伊藤は1R同様に圧をかけ、またも右ミドル、右フックの連打からタックルを仕掛ける。今度は倒せず、押し込んで膠着しブレイクがかかる。伊藤はまたも右ミドルをきっかけに距離を縮め、今度は胴タックルから抱え上げてテイクダウンを奪う。伊藤は中央付近でトップをキープする。魚井は下から伊藤の左脇を抱え続け、伊藤にパウンドを打たせず、自分の鉄槌を下から当てるが当たりは浅い。最後、伊藤が立ち上がり、一発踏みつけを当てて終える。ここまで伊藤がやや優位だ。
3R、魚井がパンチを振るうが、伊藤が右ハイから組み付いて倒し、中央付近でまたも上に。伊藤がハーフで押さえ続ける。中盤、魚井が脱出するが、またも伊藤が倒して上に。魚井はギロチンを狙うが極まらず、伊藤が押さえ続ける。膠着が続き、残り1分に福田レフェリーはブレイクをかけるが、伊藤がまたも右ミドルからタックルを仕掛ける。魚井はアームロックを狙いながら引き込むが、最後は伊藤が外して上で押さえて終える。記者採点はテイクダウン、トップキープで主導権を長時間保った伊藤。ジャッジ3者も順当に伊藤を支持した。
勝利者インタビューで伊藤は「カウンターで当てるつもりが安全な試合をしてしまい、求められているものができなくて悔しいです」と反省した。
ベテランCORO、関西の新鋭・増田拓真に辛勝
第1試合 MMA 63kg契約 5分3R
○CORO(K-Clann)
×増田拓真(reliable)
判定2-1 (片岡=増田/豊島=CORO/豊永=CORO)
両者RIZIN初参戦。COROは10年にプロデビューした33歳のベテラン。CAGE FORCE、パンクラスを経て17年からDEEPを主戦場とし、最近では石司晃一に判定負けし、東修平、橋本ユウタ、RYUKIに一本勝ちしている。増田は兵庫出身の25歳。大阪でのパンクラス、DEEP、GLADIATORを主戦場にし、デビュー戦こそ敗れたが以降は7連勝している。
1R、増田が飛びついて右フックを当てる。COROは組み付いて押し込むが、増田が払い腰で倒し、サイドで押さえる。COROはトップに戻すと、下からギロチンを狙うが極まらない。増田は外すと上から押さえ続け終える。ここまで増田が若干優位か。
2Rも増田が右ストレートを当てると、COROは組み付くが、増田が押し込み、ジャーマンスープレックスも放ち、中盤にテイクダウンに成功しトップキープする。COROは足を登らせるが、増田は対処し、押さえ続けて鉄槌や肘を時折当てる。COROも下から右肘を当てる場面もあるが、背中をつけた状態が続いて印象が悪い。
3R、増田がパンチを連打すると、またもCOROが組み付き、今度は倒すことに成功し、コーナー際でトップをキープする。中盤、増田が立ち、COROが押し込み、執拗にテイクダウンを狙うが、増田は耐え続ける。COROは終了10秒前、ようやく突き放して打撃に切り替えるが、右フックを一発当てたところで終了する。記者採点は迷ったが2Rまで主導権を長時間保った増田。ジャッジは割れ、2者がCOROの1Rのギロチンと3R最後の右フックを評価したか?COROを支持し、COROの判定勝ちとなった。
マイクを受け取ったCOROは「つまらない試合で、正直、どっちかわからなくて、勝ったと思っていません。次チャンスがあれば見せれるんで頑張ります」と反省のコメントを残してリングを後にした。