ONE Championship 1.28 有明アリーナ(レポ):武尊、スーパーレックを中盤追い詰めるもあと一歩及ばず判定負けし引退示唆。青木真也、緊急出場のリネカーに1R勝利。秋山成勲1R KO負け。三浦彩佳、平田樹に判定勝ち
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
中野トイカツ道場
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ONE 165: Superlek vs. Takeru
2024年1月28日(日)東京・有明アリーナ
レポート:井原芳徳 リングサイドからの写真:(C)ONE Championship アリーナからの写真:井原芳徳
シンガポールを拠点とするONE Championshipのレギュラーシリーズの日本大会は19年10月の両国国技館大会以来、約4年ぶり3度目となる(Road To ONE等のローカルシリーズを除く)。大会の模様はABEMAにてPPV生中継された(第4試合までは無料)。
武尊、スーパーレックを中盤追い詰めるもあと一歩及ばず判定負け
第11試合 メインイベント ONEキック・フライ級(61.2kg)チャンピオンシップ 3分5R
○スーパーレック・ギャットムーカオ[キアトモー9](タイ/ギャットムーカオジム/王者、ONEムエタイ同級1位、元ルンピニー認定スーパーフライ級&バンタム級王者)
×武尊(team VASILEUS/挑戦者、ISKA K-1ルール世界ライト級王者、KGPライト級王者、元K-1スーパー・フェザー級・フェザー級・スーパー・バンタム級王者、元Krushフェザー級王者)
判定3-0
※スーパーレックが2度目の防衛
スーパーレックは28歳。12~13年にルンピニースタジアムでムエタイのスーパーフライ級とバンタム級の王座を獲得。16~17年には日本でヤスユキ、小川翔にKO勝ち。19年からONEに参戦すると、21年2月にイリアス・エナッシのONEキック・フライ級王座に挑戦し判定負け。その後はONE 8連勝、他団体含めると10連勝中。22年5月には内藤大樹に判定勝ち。昨年1月のONEキック・フライ級王座決定戦ではダニエル・ピュータスに判定勝ち。3月にダニエル・ウィリアムスをKOして初防衛した。その後も3連勝したが、9月にロッタンのONEムエタイ・フライ級王座に挑戦した際には、スーパーレックが計量オーバーし、ノンタイトル戦に変わり、2Rにスーパーレックが肘でダウンを奪い判定勝ちしている。
武尊は32歳。22年6月のTHE MATCH 2022で念願の那須川天心との大一番に臨んだが、ダウンを奪われ判定負けし、連勝が35でストップした。試合8日後の記者会見で一時休養とK-1スーパー・フェザー級王座の返上を発表。8月には右膝を手術し、10月末日をもってK-1およびKRESTとの契約を解除。昨年5月にONEとの契約を発表。6月のパリの再起戦ではベイリー・サグデンを5R終了間際に左ハイでKOした。9月にはロッタンとスーパーレックの一戦をルンピニーで生観戦していた。11月末に1月のONE有明大会開催とロッタンと武尊の一戦が発表されていたが、1月5日にロッタンが左拳を怪我したことを公表した。一方、スーパーレックは1月13日のONEファイトナイト18でエリアス・マムーディを相手に王座防衛戦を予定していたが、マムーディも負傷欠場することから、28日の有明大会で武尊と防衛戦を行うことが、5日に発表された。
1R、武尊がプレッシャーをかけ、スーパーレックが距離を取る構図の中で、武尊は右カーフ、左インローを当てるが、スーパーレックの右ローのヒット数が上回る状態に。スーパーレックはパンチやフェイントを織り交ぜて巧みに右ローを当てる。まだお互い崩れないが、最後は武尊の左足が流れ気味になり、スーパーレックの蹴り数が印象に残る。記者採点はスーパーレック。
2R、スーパーレックが右ローを執拗に当てていると、武尊は左足を引きずり気味に。武尊はローを嫌って距離を詰め、コーナーに詰め左ボディを当てると、場内はどよめく。だが中盤以降はスーパーレックが右ローを当て続け、主導権を維持する。武尊が時折左インローを絡めると、スーパーレックも少し嫌そうにするが、武尊のパンチは空を切るように。記者採点はスーパーレック。
流れが変わったのが3R。スーパーレックは右ローを当てるが、空振りした際にバランスを崩す場面もあり、武尊のローも効き目を発揮している様子に。中盤、スーパーレックが右ローを連打すると、武尊は圧力を強め、左ミドルをヒットする。するとスーパーレックはステップで距離を取って、右ローを連打してからハイにつなげるが、武尊が腕で受けながらも前に出る。武尊はスーパーレックをコーナーに詰め、左ボディを当てると、スーパーレックはうずくまる。武尊は左右のボディ等のパンチを当て続け、スーパーレックをダウン寸前まで追い詰める。武尊は左ミドル、三日月も絡めるが、スーパーレックは舌を出して笑顔を見せてから、右の前蹴りを当てて武尊を倒し、難を逃れる。武尊も攻め疲れがあり、ローのダメージもあり、力が入りきらず、ダウンは奪えず終わる。記者採点は武尊。
4R、武尊が前に出て、スーパーレックが回る構図が続く。武尊は左ボディ、ミドルを度々当て、顔面への右フックにもつなげるが、スーパーレックも右ロー、膝蹴り等を返す。中盤過ぎ、スーパーレックが膝を連打すると、武尊は笑顔を見せ挑発する場面も。終盤、武尊が左の三日月を当てると、またもスーパーレックは表情を曇らせステップで離れる。だが武尊は3Rのようにその先に持ち込めず、スーパーレックが距離を取って細かくジャブやローや膝を当て続け、手数差で上手く印象を作る。記者採点はスーパーレック。
5R、お互い消耗が激しい中で、武尊は前に出て、随所で右フックを当てると、場内はどよめく。だが武尊は手数が落ち、スーパーレックは距離を取りつつも、4R同様に右ロー、左右の膝蹴りを的確にヒットし、攻撃数では上回る。最後はスーパーレックがクリンチも絡め、前蹴りで距離を取り、武尊の反撃を封じて終える。5R制のムエタイで戦い慣れているスーパーレックが、点差を広げて迎える終盤の試合運びに長けている感がある。記者採点はスーパーレック。合計49-46でスーパーレック。ジャッジ3者も3Rのみ武尊につける同じ49-46の採点でスーパーレックを支持し、スーパーレックが判定勝ちした。
苦しみながらも王座防衛を果たしたスーパーレックは「日本の皆さんに私の技を発揮できて良かったです。武尊の強さに驚きませんでした。そういう評価の選手で、世界一根性のある選手です」と武尊を称えた、今後の試合について聞かれたスーパーレックは「(ONEの)チャトリCEOの指示に従います。ロッタン戦との再戦でも武尊との再戦でもやります」と話した。スーパーレックには5万ドル(約740万円)のボーナスがチャトリ氏から支給された。
敗れた武尊は涙声で「絶対勝って世界一証明して、みんなにパワーを与えたかったんですけど、今の体の限界でできることをやりました。絶対勝って、みんなに武尊についてきて良かったって思ってもらいたくて、死ぬ気で頑張ってきたんですけど。今、地震とかいろんあことがあって、苦しい人たちがいて、そういう人たちのために命がけで戦って、パワーを与えて、頑張れば絶対いいことがあると見せたかったんですけど、今、僕にできる限界はここまでです。これ以上もう僕は体作れません。今日集まっていただいてありがとうございました。僕を信じてずっとついてきてくれたファンの皆さんありがとうございました」と話し、引退を示唆した。武尊は四方に頭を下げ、土下座もしてリングを降りた。武尊は右ローをもらった左足のダメージが大きく、車椅子に乗って病院に直行した。
第10試合 コーメインイベント ONEサブミッショングラップリング・ライト級(77.1kg)チャンピオンシップ 10分1R
○ケイド・ルオトロ(米国/Atos/王者)
×トミー・ランガカー(ノルウェー/Wulfing Academy/挑戦者)
判定3-0
※ルオトロが防衛
ルオトロがスタンドの攻防の後、潜り込んで足関を狙いながら下になると、リバースしてバックを奪う。ルオトロはハーフに移ってからもコントロールを続ける。中盤過ぎにはルオトロがダースチョーク、アームロック等を立て続けに狙ってランガカーを追い詰める。ランカガーが足関を狙う場面もあったが、最後はルオトロが三角絞めを仕掛けて終了。度々チャンスを作ったルオトロが判定勝ちし、王座防衛を果たした。ルオトロは5万ドルの勝利者ボーナスを獲得した。
青木真也、緊急出場のリネカーに1R裸絞めで勝利
第9試合 MMA ライト級(77.1kg) 5分3R
○青木真也(フリー/元ライト級王者)
×ジョン・リネカー(米国/アメリカン・トップチーム/バンタム級1位・元王者)※セージ・ノースカット(米国/チーム・アルファメール)から変更
1R 3’00” 裸絞め
青木は40歳。昨年3月のONEで秋山成勲に2R TKO負けし連勝が4でストップ。その2カ月後のONEではグラップリングでケイド・ルオトロに判定負け。11月にはMMAでザイード・イザガクマエフに86秒TKO負け。10月のONEではマイキー・ムスメシとグラップリングで戦い、「アオキロック」とも呼ばれる変形アキレス腱固め(ストレートフットロック)を極められ一本負けした。現在4連敗中、MMA 2連敗で、青木は11月末の試合発表記者会見で「ベストパフォーマンスを世界最高峰の舞台で、世界最高峰とされる相手の中でできるのは、これが最後だと思います」と話していた
ノースカットは27歳。空手をベースとするストライカーで、15~18年にUFCに上がり、19年からONEに上がり1勝1敗。今年5月にアフメド・ムジタバに1Rヒールフックで一本勝ちしている。21年4月のONEで青木と戦う予定だったが、ノースカットが新型コロナウイルス感染後の後遺症を理由に欠場していた。
なお、当日大会が始まってメインカードに突入し、青木戦の4試合前のタイミングで、驚きの発表が行われる。ノースカットの欠場と、2階級下のONEバンタム級1位で元王者のジョン・リネカーに青木の相手が変更になったとアナウンスされた。ノースカットはセコンド2名がビザの問題で来日できないことを理由に試合を拒否したと自身のInstagramで明かしている。
リネカーは今大会で欠場者が出た場合のバックアップファイターとして来日していた。リネカーについてはRISEの中村寛が大会5日前のXに「今週末の電撃参戦。体重もグローブも合わせて、オープンフィンガーまで買って楽しみにしてたのに、決定寸前でポシャった。世の中凄く見える選手も、蓋開けたら戦闘民族気取りの損得勘定ビジネスマンばっかり。ジョンリネカーいつか沈めたる」と記していたことでも話題になっていた。
リネカーはさすがに準備不足と体格差は明白で、試合は青木が圧倒する展開に。1R、青木はじわじわ前に出て、タックルを仕掛けてロープに詰めると、脇を差してから横に崩して上になる。青木はハーフで押さえ、首を抱えながらパスガードしてマウントを奪う。場内が青木コールに包まれる中、青木はコーナー際でマウントをキープしてパウンドを連打してリネカーを追い詰める。リネカーが背中を向けると、青木は裸絞めを極める。リネカーが立ってオンブになったところで、リネカーがタップした。青木は涙を流しながらコーナーに登り勝利を喜んだ。
勝利者インタビューで青木は、試合を引き受けた理由を聞かれ「何でやったかって(ONEのCEOの)チャトリに12年世話になって、友達だったのが社長と従業員になって、糞嫌いになったけど、そいつに『お願いします』と言われたら、やるしかねえだろ」と話し、観客から拍手を浴びた。20年間プロの格闘技をやって、ここで戦う思いを聞かれると、青木は「20年やってきました。万感の思いです。一言、ありがとう、それだけです」と話した。最後にチャトリ氏から5万ドルのボーナスが支給されることが発表されると、「コソボだよ、コソボ。分かんねえか、先輩。僕がONEを愛したように、ONEは僕も愛して欲しい」と話した。「コソボ」とはセコンドについた早稲田大学の先輩でプロレスラーのケンドー・カシンが、25年前に新日本プロレスから受け取った賞金の一部をコソボに寄付したことに由来している。
ホルツケン、ミックスルール1R目のボクシングで秋山成勲をKO
第8試合 特別ルール 187.25ポンド(84.94kg)契約 3分3R
×秋山成勲(チームクラウド)
○ニキー・ホルツケン(オランダ/チーム・ホルツケン・ヘルモン/元GLORYウェルター級(77kg)王者)
1R 1’14” TKO (レフェリーストップ:右ストレート)
※オープンフィンガーグローブを着用し、1R目はボクシング、2R目はムエタイ、3R目はMMAで争われる。決着はKOまたは一本のみで、時間切れの場合はドローとなる。
48歳の秋山は、昨年3月のONEシンガポール大会で青木真也に2R TKO勝ちして以来の試合。日本での試合は14年9月のUFC埼玉大会でのアミール・サダロー戦以来9年半ぶりとなる。
ホルツケンはオランダ出身の40歳のキックボクサー。09年のK-1 MAX世界トーナメント準々決勝でブアカーオに判定負けした過去があり、13年12月のGLORY東京大会でのウェルター級(77kg)トーナメントで優勝して以来10年ぶりの来日となる。その後GLORYで同級王座を獲得し3度防衛。18年からONEに上がり8戦勝4敗で、22年3月、昨年6月と2連敗中だ。13年~18年にはプロボクシングを並行し15戦14勝(11KO)1敗で、負けた相手はWBC世界スーパーミドル級1位の選手で、今回はミックスルールの1R目のボクシングルールで差を示すことに。
1R、ホルツケンがプレッシャーをかけ、秋山はパンチを嫌って組みに行くと、ホルツケンが左フックをアゴに当ててダウンを奪う。ホルツケンは秋山をコーナーに詰め、右ストレートで再びダウンを奪ったところで、オリヴィエ・コスト・レフェリーがストップした。ホルツケンは5万ドルの勝利者ボーナスを獲得した。
グレゴリアン、シッティチャイをKO「日本で勝ててうれしい」
第7試合 キック 156.5ポンド(70.99kg)契約 3分3R
○マラット・グレゴリアン(アルメニア/ヘマーズジム/フェザー級(70.3kg)2位、元K-1スーパー・ウェルター級(70kg)王者、元GLORYライト級(70kg)王者)
×シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ/シッソンピーノンジム/フェザー級(70.3kg)3位、ONEムエタイ同級2位、元GLORYライト級王者、元ルンピニー認定ウェルター級王者)
3R 1’20” KO (右膝蹴り)
グレゴリアンは15年7月、K-1スーパー・ウェルター級(70kg)初代王座決定トーナメントで3試合連続KO勝ちで優勝して以来、約8年半ぶりとなる日本での試合。その優勝から5カ月後、シッティチャイと中国のクンルンファイトで初めて戦い、判定0-2で敗れた。その後はGLORYで16年3月、同年12月、18年8月に戦い、いずれもシッティチャイが判定勝ちしたが、19年5月の5度目の対戦でグレゴリアンが初めて勝利し(判定勝ち)、GLORYライト級(70kg)王座を奪取している。その後、両者とも20年からONEに移籍し、揃ってチンギス・アラゾフとスーパーボンに敗れ、王座への道を阻まれている。両者とも32歳という点でも共通する。4年半ぶり6度目の対戦が日本でのONEで実現する。
1R、グレゴリアンがオーソドックスで構えて前に出るが、シッティチャイはサウスポーで右ジャブを突いて右に回って距離を取り、左ミドル等の蹴りを随所で当て、主導権を握る。
2R、グレゴリアンは圧力を強め、最初こそシッティチャイは攻撃が減ったが、次第にシッティチャイが左ミドルを増やし挽回する。だがグレゴリアンは前に出続け、右ボディを随所でお返し。右インロー、左フック、左アッパーも絡めると、シッティチャイの表情は次第に曇る。すると終盤、グレゴリアンがさらに圧を強め、左インローも絡めつつ、パンチのヒットを増やし、首相撲からの右膝を当てて倒す。ダウンかと思われたが、オリヴィエ・コスト・レフェリーは両手を左右に広げ、ダウンカウントはせず、タイムを支持し、グレゴリアンに対し首相撲のジェスチャーをしてから、指1本を立てて注意する。どうやら組んでからの膝を連打したと判断したようにも見えるが、間違いなく膝は1発だけだった。
3R、グレゴリアンが右インローを当てると、シッティチャイはスリップする。最後はグレゴリアンがローを連打してから、右テンカオを当ててダウンを奪うと、動けないシッティチャイを見たオリヴィエ・コスト・レフェリーはストップし、グレゴリアンのKO勝ちとなった。
グレゴリアンは「前回勝ってから8年間必死に練習し、今回はKOできました。日本で勝ててうれしいです」と話し、5万ドルの勝利者ボーナスを獲得した。
第6試合 MMA フェザー級(70.3kg) 5分3R
○ゲイリー・トノン(米国/イヴォルブMMA/チーム・ヘンゾ・グレイシー/1位)
×マーティン・ニューイェン(オーストラリア/ベトナム/キルクリフFC/3位)
1R 4’41” 裸絞め
1R、開始すぐからトノンがタックルで倒し、マウントを奪うと、裸絞めを狙いながらバックマウントを奪い、足4の字ロックでガッチリと捕獲する。ニューイェンは耐え続けたが、残り30秒にトノンが裸絞めを極めてタップを奪った。トノンには5万ドルのボーナスを獲得し「帰ったら日本のトイレを買います」と話した。
階級下げた三浦彩佳、平田樹を押し込み押さえ続け判定勝ち
第5試合 MMA 女子アトム級(52.2kg) 5分3R
×平田 樹(フリー)
○三浦彩佳(TRIBE TOKYO MMA)
判定0-3
三浦がストロー級から1階級下のアトム級に落とし、平田との日本人女子MMAの主力同士の対決が日本大会で実現する。
平田は22年8月のリン・ホーチン戦で判定勝ちしたが、アトム級リミットを4ポンド(1.81kg)オーバーしてしまう。22年11月の元RIZIN女子スーパーアトム級王者・ハム・ソヒ戦でも計量で0.5ポンド(220g)オーバーしてしまう。平田はONEで3度目の計量オーバーのため、ソヒは平田に反省を促すため対戦を拒否した。23年3月に仕切り直しの試合が組まれると、ソヒがボディ狙いの打撃で平田を苦しめ判定勝ちしている。
三浦は21年1月のONE 6戦目でション・ジンナンのONE MMA女子ストロー級王座に挑戦し判定負け。続く4月のダヤン・カルドソ戦では右肩を負傷しTKO負け。22年2月にグラップリングマッチで強豪のダニエル・ケリーと対戦し接戦の末に判定負けした。23年11月のメン・ボー戦では、開始すぐに寝技に引き込み、得意のVクロスアームロック(通称・あやかロック)で一本勝ちし、2年半ぶり勝利に涙を流して大喜びした。
1R、三浦が序盤から平田を押し込み、首投げを狙い、平田が耐える。三浦は離れると、一瞬下になって引き込もうとしたが、平田は対処して押さえて頭に膝を当てると、三浦はすぐスタンドに戻す。三浦のメン・ボー戦の戦法には平田も対応してきている様子だ。しかしその後は三浦が執拗にコーナーに押し込み、テイクダウンを狙う展開が続く。三浦は1階級上から落としてきたため、パワーでは上回る様子。だが平田も対処し、背後の三浦に右肘を連打する場面も。三浦ペースだがまだ大差はない。
2Rも同様に三浦が押し込み続けるが、1Rよりも差が明確になり、平田は終始コーナーから脱出できず、時折マットに尻がつき、頭がロープの外に出かける場面も。三浦はその中でパウンドも随所で当て攻勢を印象付ける。
3Rも三浦が押し込み続ける。三浦は階級を落としたが、減量の影響は感じさせないスタミナだ。中盤過ぎ、一度ブレイクがかかるが、終盤も三浦が押し込んで倒し、押さえ続けて終了。三浦が平田を完封し判定勝ちした。三浦は勝利を告げられると、涙を流し、四方に頭を下げた。平田は三浦と握手をして退場した。
若松佑弥、キンガットに判定勝ちしリベンジ
第4試合 MMA フライ級(61.2kg) 5分3R
×ダニー・キンガット(フィリピン/チーム・ラカイ/2位)
○若松佑弥(TRIBE TOKYO MMA/4位)
判定0-3
若松は18年9月のジャカルタ大会でのONEデビュー戦でキンガットに判定負けしており、今回地元日本で約5年ぶりのリベンジ戦に臨む。若松は続く19年3月のONEで元UFCフライ級王者のデメトリアス・ジョンソンに敗れたが、その後は21年12月のフー・ヨン戦まで5連勝し、22年3月にONEフライ級王者のアドリアーノ・モラエスに挑戦し、3Rギロチンチョークで一本負けした。22年9月の再起戦はワン・シュオの体重オーバーで中止となり、その2カ月後の試合は若松が計量で4ポンド(1.81kg)オーバーした上、ウ・ソンフンに1R TKO負けし、ランキングから落ちてしまう。23年7月のルンピニースタジアムでの試合の計量でも0.5ポンド(220g)オーバーしてしまうが、試合はシェ・ウェイ(当時フライ級5位)に1R TKO勝ちした。
キンガットはフィリピンをMMA界を代表する選手の一人で、若松と同じ28歳。若松に勝利後も、和田竜光と仙三に判定勝ち。19年10月の日本大会でのフライ級GP決勝ではジョンソンに判定負け。その後は2勝1敗で、最近では23年2月にエコ・ロニ・サプトラに判定勝ちしている。
1R、開始早々に若松がタックルで倒して上になるが、パウンドを落とそうとスペースを作ると、キンガットは脱出してタックルを仕掛けて上になる。だがキンガットがバックを狙うと、若松は返して上になり、スタンドに戻す。だが中盤過ぎ、キンガットがタックルで倒し上になる。キンガットはまたもバックを狙うが、若松は脱出すると、背後から押さえ、パウンドを連打し、攻勢を印象付ける。
2Rも両者トップとバックを取り合う一進一退の展開に。どちらも支配時間はほぼ同じに。
3Rも接戦となるが、若松ががぶった状態から頭に膝を当て、序盤に印象を作り、終盤には押さえてパウンドを落とし、最後も左フックを当てる等して、積極性を示して終了する。記者採点は若松。ジャッジ3者も若松を支持し、若松が判定勝ちでキンガットへの約5年越しのリベンジを果たした。
第3試合 キック ヘビー級 3分3R
○ラーデ・オパチッチ[Rade Opacic](セルビア/KBKSチーム)
×イラジ・アジズプール[Iraj Azizpour](イラン)
判定3-0
長身のオパチッチが左ミドル、背の低いアジズプールがオーバーハンドフック主体で攻める構図が続く。お互い攻めきれず強打の少ないまま終わったが、蹴りの的確さで上回ったオパチッチが判定勝ちした。
山北渓人、マスンヤネと寝技勝負も判定負け
第2試合 MMA ストロー級(56.7kg) 5分3R
○ボカン・マスンヤネ(南アフリカ/Coach Quan University/2位)
×山北渓人(リバーサルジム新宿Me,We/元パンクラス・ストロー級王者)
判定3-0
ONE 3月1日 カタール大会ではMMAストロー級王者・ジャレッド・ブルックスが1位のジョシュア・パシオを相手に防衛戦を行う。同じストロー級で日本人とランカー絡みの注目カード2試合が組まれた。
山北はレスリングで専修大学時代の2017年に国体で準優勝し全日本選手権にも出場。MMA転向後はアマチュアで10連勝し、20年2月にプロデビューし同年のネオブラット・トーナメント・ストロー級で優勝。21年2月のRoad to ONE渋谷大会では修斗のランカーの安芸柊斗に2R TKO勝ち。パンクラスの上位ランカーを次々撃破すると、22年7月にはRIZINにも出場している北方大地に判定勝ちし、パンクラス・ストロー級王者となった。23年3月にONEに初参戦すると、元ONEストロー級王者・アレックス・シウバとの寝技勝負を制して判定勝ちし、プロデビュー以来の連勝を8とした。5月にはONEに専念するためパンクラスの王座を返上した。
マスンヤネは19年からONEに上がり、澤田龍人、レネ・カタランに連勝したが、22年4月にブルックスに1R裸絞めで一本負け。23年4月には箕輪ひろばに判定勝ちしている。19年7月にパンクラスに参戦し、荻窪祐輔に判定勝ちして以来の日本での試合となる。
1R、サウスポーのマスンヤネに対し、オーソドックスの山北が右ミドルを当てるが、山北が右フックを振るうと、マスンヤネはタックルを合わせ、肩でかついでから倒す。マスンヤネはトップで押さえ続ける。終盤、山北が足を登らせ腕十字を仕掛けるが、マスンヤネは立ち上がりながら抱え上げ、コーナーに押し込んで防御する。最後はマスンヤネが山北をマットに下してから、上四方で押さえ、山北の頭に少し膝を当てて終える。
2R、序盤からマスンヤネが上になると、ハーフとトップを行き来しながら押さえ続け、時折パウンドを当てる。山北は脱出できず終わる。
3R、スタンドでマスンヤネがバックステップで誘うと、山北が右ミドルを放ち、マスンヤネは蹴り足をつかんで倒す。山北は下になるとすぐに足を登らせて三角絞めに入りかけるが、マスンヤネは外し、上で押さえる。終盤、マスンヤネはバックを奪い、裸絞めを狙って山北を追い詰める。山北は防御し脱出し、最後は足関を狙うが、対処され終了する。記者採点は最後に裸絞めで追い詰めたマスンヤネ。ジャッジ3者もマスンヤネを支持し、山北はプロMMA初黒星を喫した。
箕輪ひろば、バラートに押し込まれ続け判定負け
第1試合 MMA ストロー級(56.7kg) 5分3R
×箕輪ひろば(STF/3位、元修斗世界ストロー級王者)
○グスタボ・バラート(キューバ/アメリカン・トップチーム/4位)
判定1-2
箕輪は20年のONE参戦以降、リト・アディワン、アレックス・シウバに判定勝ちしたが、22年1月にジャレッド・ブルックスに判定負け。23年4月にはボカン・マスンヤネの再三のローブローに苦しみ押さえ続けられ判定負けし2連敗となっている。
バラートはキューバ時代にレスリングで12年のロンドン五輪に出場。19年からONEに上がり、和田竜光ら相手に3連敗後、21年7月に澤田龍人に判定勝ちしているが、反則を連発する内容だった。22年4月には猿田洋祐と対戦し、サウスポーからの左フックで2度ダウンを奪い判定勝ちしている。続く22年10月にシウバに判定2-1で勝利して以来1年3か月ぶりの試合となる。
1R、スタンドの攻防でお互い慎重に攻め、中盤、バラートがタックルから抱え上げるが、箕輪は倒れず耐える。その後もバラートはしつこく押し込み、抱え上げて倒し、立たれてもすぐ押し込む。箕輪は防戦が続く。
2R、序盤にバラートが押し込みつつ左ボディを放つが、ローブローとなってしまい、箕輪はダメージが大きく一時中断する。再開後、バラートがボディへのパンチを連打して前に出て、そのまま押し込む時間が続き、バラート優勢で変わらない。
3R、序盤こそ箕輪が右テンカオを当てたり、中盤に押し返す場面もあったが、基本的には長時間バラートが箕輪を押し込む構図で変わらない。バラートは一度テイクダウンも奪い、主導権を維持する。ジャッジは意外にも割れたが、2者が順当にバラートを支持した。