ONE 9.22 ルンピニー(レポ):スーパーレック、計量オーバーもロッタンから肘でダウン奪い判定勝ち。生観戦の武尊「早くここで戦いたい」
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ONE Friday Fights 34: Rodtang vs. Superlek
2023年9月22日(金)タイ・バンコク:ルンピニースタジアム
レポート:井原芳徳 写真提供:(C)ONE Championship
第11試合 ムエタイ 140ポンド(63.5kg)契約 3分3R
×ロッタン・ジットムアンノン(ONEムエタイ・フライ級(61.2kg)王者、キック同級1位)
○スーパーレック・ギャットムーカオ[キアトモー9](ONEキック・フライ級(61.2kg)王者、ムエタイ同級1位)
判定0-3
ロッタンは19年にジョナサン・ハガティーを下してONEムエタイ・フライ級王座を奪取して以降、ゴンサルベス、ハガティー、ペッダム、ラシリ、タバレス相手に今年5月まで5度王座防衛に成功している。
スーパーレックは12~13年にルンピニーでスーパーフライ級とバンタム級で王者となり、19年から上がったONEでは12戦11勝1敗。21年2月にイリアス・エナッシに敗れて以降は7連勝中(他のプロモーションを含めれば9連勝)。今年2月にダニエル・プエルタス(ピュータス)とONEキックフライ級王座決定戦を行い判定勝ち。3月にはロッタンを相手に同王座の防衛戦を予定していたが、ロッタンの負傷欠場により流れ、代役のダニエル・ウィリアムスを相手に防衛に成功。6月にはナビル・アナンをKO。7月にはタギール・カリロフと対戦し勝利したが、計量でフライ級(135ポンド)を0.25ポンド(0.11g)オーバーしていた。
ロッタンとの仕切り直しの一戦は、当初のキックルールからムエタイルールに変わった。だが前日計量でスーパーレックが5ポンド(約2.27kg)オーバーしてしまう。140ポンド(63.5kg)のキャッチウェイトでのノンタイトル戦に変わり、試合時間も5Rから3Rに短縮した。またペナルティとしてファイトマネーの25%がロッタンに譲渡される。
1R、小柄なロッタンが圧をかけ、パンチ、肘を振う。だがスーパーレックは左前蹴り、左右のパンチのフェイントを絡めて距離を取りつつ、右ローを的確に当て続ける。中盤には右膝と右ローの連打も決め、さらにはロッタンの左ボディをかわしてから右ストレートを当て、テクニックで上回る印象だ。
だがロッタンも前に出続け、左の肘を当てると、スーパーレックは前頭部を切られる。スーパーレックは金色に染めた髪が赤くなり、次第に顔面にも血が流れ落ちるようになり、レフェリーはドクターチェックを要請する。だがチェックは短時間で、すぐに再開すると、ロッタンは笑顔でスーパーレックとタッチする。
再開後もロッタンは左肘、右フックをヒット。スーパーレックも右肘、右ロー、ハイ等をお返し。両者の一発一発ごとに場内は観客による大きな掛け声で包まれる。だがスーパーレックは出血が止まらず、目に血が入り、少し戦いにくそうだ。記者採点はロッタン。肘によるカットと、終盤の手数が好印象と判断した。
2R、ロッタンは変わらず左肘を振う、スーパーレックは顔が血で染まるが出血量は落ち着き、右ローを当てつつ、右の膝蹴りも増やすように。さらに左ボディフックも当て、じわじわロッタンを削る。するとロッタンはロープに詰められる場面が増え、攻撃を返せなくなる。終盤に入り、スーパーレックが右のテンカオを2連打してから、右の縦肘を当てると、ロッタンはダウンする。スーパーレックは倒れ際に右膝もヒット。場内は大きな歓声に包まれる。ロッタンはすぐ立ち上がり、両手を広げてダウン宣告に不服を示す。
ロッタンは前に出て反撃を狙うが、スーパーレックは右膝、右フックを返し、流れを変えさせず終了する。記者採点は8-10でスーパーレック。なお、このインターバル中には、ロッタン戦を熱望している武尊が客席で観戦している姿がONEの中継映像に映し出される。
3R、反撃を狙うロッタンは序盤からパンチをまとめつつ崩しを決める。だがスーパーレックもパワー差を活かし、ロープに押し込んで右膝を当てる。お互いしんどうそうだが、積極的に攻める状態は変わらず、場内の歓声は途絶えない。
とはいえ残り1分の終盤に差し掛かると、スーパーレックは回って距離を取り、逃げ切りモードに突入する。その中でスーパーレックは右ローを連打し、接近戦になれば膝と右フックを当て、ロッタンに攻撃を当てさせないようにしつつ、自分の攻撃を当て、優位を維持して試合を終える。ゴングが鳴ると、両者ともリング中央に座り込み、抱き合って称え合う。記者採点は僅差だがスーパーレック。合計27-29でスーパーレック。ジャッジ3者もダウンを奪ったスーパーレックを支持し、スーパーレックが判定勝ちした。
勝ったスーパーレックはリング上でのインタビューで「とてもうれしいですが、まず体重を落とせなかったことを謝ります。今日は勝ち負けに関係なく、ムエタイ史に残る激闘をしようと思いました」と話し、今後について聞かれると「階級をバンタム級に上げるかについてチームで話し合いたい」と答えた。
ロッタン×スーパーレック終了後、ABEMAの中継のインタビューに応じた武尊は「複雑な気持ちもあるんですけど、強かったですね」と第一声を発し、本命のロッタンの敗戦に少し戸惑っている様子だった。
だが続けて「お互い気持ちが強くて、ONEの興行全体通してですけど、生きるか死ぬかの戦いをする選手ばかりだったんで、凄い元気をもらって、ここで戦いたいなと思いましたね、余計に。今日の大会を見て感動しました。日本の大会は凄く盛り上がっているし、いい試合たくさんあるんですけど、そことはまたちょっと違う、命を懸けた戦いをしていて、僕のやりたい戦いはこういう戦いだなっていうのを思ったので、早くここで戦いたいです」と話し、初めて生観戦したONEの試合に感銘を受けていた。
また、東京の中継席で解説と務めた志朗は「武尊選手が将来的にOFGで戦いたいのか気になりました」と質問すると「ダウン率が高く、みんな体がボロボロになり、スポーツというよりか、動物と動物の命の奪い合いじゃないですけど、それぐらいの気迫を感じたんで、凄く魅力的に感じました」と答え、OFGムエタイの戦いに前向きな姿勢を示した。
スーパーレックは大一番を制したものの、前回7月に続き今回も体重をオーバーしており、勝利者ボーナスはもらえなかった。ONEのフライ級(135ポンド/61.2kg)は、ロッタンが体重を増やし、スーパーレックがギリギリまで絞って戦う状態だ。バンタム級だと145ポンド/65.8kgとなり、通常のムエタイ・ボクシングだと2階級分の差がある。今回スーパーレックが5ポンド(2.27kg)オーバーし140ポンド(63.5kg)で戦ったが、通常のムエタイ・ボクシングだと1階級上で戦ったのと同様の状態だった。
ムエタイの試合が大多数を占めるONEのルンピニー大会では、本来のONEの階級の間のキャッチウェイトの試合が大幅に増えた。MMAオンリーで始まったONEの階級区分は、UFC等米国のMMAのユニファイド(統一)ルールと同じ区分を採用している。欧米人選手が多数を占めた2010年ごろまでのUFCは、70.3kgのライト級以上しかなく、WEC等他団体ではライト級未満は全て10ポンド(4.5kg)刻みだった。小さい階級になるほど4.5kg差は大きな負担になる。今年に入りほぼ毎週金曜ルンピニーで大会を開催し、タイ等アジアの選手によるムエタイの試合が大半となったONEの現状を考えると、選手の実力を活かし、計量オーバーを減らすためには、階級区分の見直しが必要にも思える(5ポンド(2.27kg)刻みだと細分化され過ぎるという声もあるため、7ポンド(3.18kg)程度の刻みもアリだろう)。だが、ONEは北米のUFCファン層を強く意識したONE Fight Nightシリーズも並行しているため、改善は難しそうな状況だ。
武尊はK-1ではスーパー・フェザー級(60kg)で戦い、昨年6月の那須川天心戦では58kg契約で戦った。ONEの計量システムの場合、水抜きが難しいため、適性体重の基準が変わってくるが、パワーで勝る海外勢と戦うなら、ロッタンと同じフライ級の61.2kgだと、少しパワーアップが必要になるだろう。
主な結果
第10試合 ムエタイ 140ポンド(63.5kg)契約 3分3R
○セクサン・オークワンムアン
×アミール・ナセリ
判定3-0
第9試合 ムエタイ 138ポンド(62.6kg)契約 3分3R
○ムアンタイ・PKセンチャイ
×ヨードレックペット・オーアトチャリア
判定3-0
第8試合 ムエタイ バンタム級(65.8kg) 3分3R
○クラップダム・ソー・チョーピャッウータイ
×タイソン・ハリソン
1R 終了時 TKO (ドクターストップ)
第7試合 キックボクシング ストロー級(56.7kg) 3分3R
○プラジャンチャイ・PKセンチャイ(ONEムエタイ暫定ストロー級王者)
×アクラム・ハミディ
判定3-0
第5試合 ムエタイ 140ポンド(63.5kg)契約 3分3R
○スアキム・ソージョートンプラジン
×サマン・アシュリ
1R 2’15” KO (左ストレート)