ONE 2.25 ルンピニー(レポ):三浦彩佳、ONEで初のグラップリングマッチは強豪ケリーを“あやかロック”で追い詰めるも判定負け
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ONE Fight Night 7: Lineker vs. Andrade II
2023年2月25日(土)タイ・バンコク・ルンピニースタジアム
レポート:井原芳徳 写真:(C)ONE Championship
第2試合 サブミッション・グラップリング 女子119ポンド(約54kg)契約 10分1R
○ダニエル・ケリー(米国)
×三浦彩佳(TRIBE TOKYO MMA)
判定3-0
三浦は昨年、1月にション・ジンナンのMMA女子ストロー級王座に挑戦し判定負けした後、4月のダヤン・カルドソ戦で右肩を負傷しTKO負けして以来の試合となる。今回はONEでは初めて、打撃無しのグラップリングマッチで出場した。
ケリーは柔術黒帯の27歳。道着を着ないグラップリングの世界トップクラスの選手で、昨年3月からONEに参戦し、V.V Mei(山口芽生)を圧倒し時間切れドロー。11月のマリア・モルチャノバ(ロシア)戦では裸絞めで一本勝ちしている。三浦は今回の試合に備え、柔術の名門・カルペディエム三田に出稽古し、昨年のJBJJF全日本ノーギ柔術選手権黒帯優勝の竹浦正起の元で2か月間練習した。
前日計量で三浦は119ポンドジャストでクリアしたが、ケリーは2.5ポンド(1.13kg)軽い116.5ポンドでクリア。試合は体格で勝る三浦が、ケリーの技術にパワーと得意の袈裟固めで上手く対抗し健闘する内容に。試合場はムエタイの聖地・ルンピニーで行われたせいもあってか、ケージではなくリングとなっている。
序盤、立った状態で探り合ってから、ケリーが引き込みを狙うが、三浦はかわして、がぶってからコーナーに押し込む。するとケリーは引き込んで下になることに成功する。レフェリーは同じ体勢で中央に移し再開すると、すぐにケリーはリバースしてバックを狙う。三浦が首を抱えて得意の袈裟固めに持ち込もうとすると、ケリーはすぐ動いて三浦の背中に乗ろうとするが、そこから三浦は動きに合わせてケリーを反対方向に落とし、袈裟固めを取ることに成功する。そこから三浦は再三MMAの試合で一本を取ってきた、“あやかロック”とも呼ばれるVクロスアームロック(両足で相手の腕を挟んで極めるアームロック)を仕掛ける。ケリーはすぐ動くが、三浦は首を抱えたまま逃さず、袈裟固めに戻し、しっかり押さえながらVクロスを狙う。
中盤過ぎ、ようやくケリーは脱出すると、三浦のバックに回り攻勢へ。両足を胴に絡めたいが、三浦はもがき、完全にバックマウントを取らせない。するとまたも体をひねって袈裟固めに戻す。すぐ解けるが、三浦は立ち上がり、モハメド・スライマン・レフェリーはケリーを立たせスタンド勝負に戻る。ケリーはそれでも引き込むが、三浦はすぐ立ち、またもレフェリーはケリーを立たせる。この猪木アリ状態でのブレイクはMMA以上に早い。
終盤、それでもケリーは引き込みを繰り返し、ようやくマウントを取ることに成功すると、さらにバックマウントへ。MMAなら5分で一度休めるが、グラップリングは継続するため、ペース配分が違うせいもあってか、三浦は少し集中力も落ちて来た様子だ。するとケリーは今度は両足でガッチリロックして捕獲しつ続け、裸絞めを狙う。ケリーは三浦の顔面に手のひらを押しつけ、サミングスレスレの指先が目に入りそうな押しつけ方も一瞬し、レフェリーに注意されてすぐやめると、試合はそのまま続行する。ルールの隙間を縫うような攻め方も絡めると、その数秒後にはケリーの腕が三浦のアゴの下に入り、三浦は大ピンチに陥る。だが中継の解説を務めた竹浦氏も「ここの練習を一番やった」と話しているシチュエーションで、三浦はもがいて裸絞めを解き、最後はケリーがアゴの上を腕を押さえるような状態が続き終了する。
記者採点は三浦。通常なら裸絞めを極めかけたケリーにつけたいところだが、その直前の目に指を入れかける行為は、勝敗に大きく影響する悪質な行為だと判断した。とはいえレフェリーは軽い注意で留めたせいもあってか、ジャッジは3者ともケリーを支持した。三浦は判定に納得した様子だが、大苦戦のケリーも一瞬喜んだだけでその後は笑顔は無かった。
ノーコンテストから4カ月の再戦、アンドラージがリネカーとの死闘制す
第7試合 メインイベント ONE MMAバンタム級(65.8kg)王者決定戦 5分5R
×ジョン・リネカー(2位)
○ファブリシオ・アンドラージ(1位)
4R 終了時 TKO
※アンドラージが王者に
元UFCランカーのリネカーは、19年10月にONEに初参戦してから3連勝、2連続KO勝ちした後、昨年3月大会でバンタム級王者・ビビアーノ・フェルナンデスを2R KOしベルトを巻いた。アンドラージは中国の武林風等でのMMA・キックの試合で活躍後、20年からONEに参戦し、佐藤将光ら相手に5連勝した。昨年10月、アンドラージがリネカーの王座に挑戦したが、リネカーは計量で0.5ポンドオーバーし王座をはく奪された。アンドラージが勝った場合のみ王者となり、リネカーが勝っても王者になれない扱いとなった。試合は3R、アンドラージが左のテンカオでリネカーを下がらせたが、追撃のテンカオがローブローとなってリネカーが戦えなくなり、ノーコンテストとなっていた。それから4カ月を経て、両者とも試合を挟まずダイレクトリマッチが組まれた。
1R、リネカーが中盤にタックルを仕掛け、テイクダウンを奪う。アンドラージはコーナーを背にして立つが、リネカーがボディと顔面にパンチを連打し、印象を作る。リネカーはまたもタックルを仕掛けるが、アンドラージはすぐ立ち、左ジャブ、左テンカオを当てる。だがリネカーも前に詰めてパンチを返し、お互い激しく削り合う展開となる。終盤には右のカーフの蹴り合いに。アンドラージは少し足がフラつくが、最後前に出て、左右のストレートを連打し、リネカーをダウン寸前まで追い詰める。
2R、リネカーは最初から圧を強め、右フックをヒット。お互い右カーフを蹴り、もらったリネカーはタックルから押し込むが、アンドラージは突き放す。お互いダメージが溜まり、中盤以降、やや慎重に。パンチやカーフの手数はリネカーがやや上だが、アンドラージも随所でパンチや膝を返し続け、どちらも譲らない。
3R、2R中盤以降と同じような構図のスタンドの打撃戦が続く。リネカーの手数が上だが、クリーンヒットになかなかつなげられず、アンドラージもひるまず攻撃を返し続ける。最後はリネカーのタックルをアンドラージが切って上になり終える。
4R、リネカーが序盤に右フックを放つと、アンドラージはバランスを崩すが、すぐ持ち直す。中盤、アンドラージの左膝がローブローとなり、一時中断するがすぐ再開する。アンドラージは左テンカオを効かせるが、追撃につなげられず、リネカーもすぐ右フックを返し、変わらず両者譲らない。だが4R終了後のインターバル中、リネカーにドクターチェックが入る。リネカーは右まぶたをカットしており、ダメージもかなり溜まっており、リネカーのセコンドが試合を止めさせた模様で、アンドラージのTKO勝ちとなった。試合後すぐリネカーはアンドラージに歩み寄り、両者抱き合って称え合った。
タワンチャイ、左ローで秒殺KO勝ちしムエタイ70kg王座防衛
第6試合 コーメインイベント ONEムエタイ・フェザー級(70.3kg)チャンピオンシップ 3分5R
○タワンチャイ・PKセンチャイ(王者)
×ジャマール・ユスポフ(2位)
1R 0’49” KO (左ローキック)
※タワンチャイが初防衛
タワンチャイは18年にタイ国スポーツ局やルンピニーのMVPに選ばれる等活躍し、20年からONEに上がり、セーマペッチ、ニコラス・ラーセンをKO後、昨年9月、ペットモラコットに判定勝ちし、ムエタイ王座を獲得した。初防衛戦の相手・ユスポフはロシア連邦ダゲスタン出身、トルコ在住の39歳で、昨年7月にスモーキン・ジョー・ナタウットに判定勝ちし今回の王座戦につなげた。
1R、両者サウスポーで構え、タワンチャイが回って距離を取りつつ、左ローを当て、右前蹴りで突き放す。ユスポフの左ストレートをかわし、左に回り込むと、左のローをヒット。これがユスポフの膝の裏の上あたりにクリーンヒットすると、ユスポフは腱を痛めたか?元々足を痛めていたか?動きが止まって腰が沈み、レフェリーがストップした。ムエタイの聖地・ルンピニーでの初のONEファイトナイトで快勝したタワンチャイには、5万ドルのボーナスがONEから支給された。
第5試合 MMA フェザー級(70.3kg) 5分3R
○マーティン・ニューイェン(4位、元王者)
×レオナルド・カゾッティ
判定3-0
第4試合 キックボクシング バンタム級(65.8kg) 3分3R
○セーマペッチ・フェアテックス(ムエタイ1位)
×ジャン・チェンロン
判定3-0
第3試合 MMA フライ級(61.2kg) 5分3R
×エコ・ロニ・サプトラ
○ダニー・キンガド
判定0-3
第1試合 キックボクシング ライトヘビー級(102.1kg) 3分3R
×アンドレイ・ストイカ
○フランシェスコ・エクシェジャ
判定1-2
◆ボーナスバウト(上記の本戦前に実施)
MMA 女子アトム級(52.2kg) 5分3R
×リンダ・ダロー
○ビクトリア・ソウザ
判定0-3
サブミッション・グラップリング ライト級(77.1kg) 10分1R
×ウアリ・クルジェフ
○トミー・ランガカー
1R 2’58” ヒールフック
MMA ストロー級(56.7kg) 5分3R
○エイドリアン・マティス
×ズーラン・ジャーシー
1R 0’57” TKO