ONE 11.19(夜)シンガポール(レポ):秋元皓貴、ペッタノンに翻弄され王座陥落。青木真也、ヌルマゴメドフ軍団のイザガクマエフに86秒 TKO負け。岡見勇信&若松佑弥も1R TKO負け
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ONE Championship「ONE 163: Akimoto vs. Petchtanong」
2022年11月19日 (土) シンガポール・インドアスタジアム
レポート:井原芳徳 写真:(C)ONE Championship
日本勢1勝5敗。秋元・青木・岡見・若松・ミレーナ、なすすべなく完敗。品川朝陽も辛勝。平田樹は試合中止
今回のONEには秋元皓貴、青木真也、岡見勇信、平田樹、若松佑弥、品川朝陽、ミレーナ・カオリと、日本から7選手も出場。シンガポールでの大会ながら、普段無料のABEMAの中継も有料となることもあって、ONEのチャトリ・シットヨートンCEOも来日して記者会見を行うほどの、日本向けの力の入れようだった。
ところが前日計量では若松、品川、そして平田樹がオーバーし、平田の対戦相手のハム・ソヒが対戦を拒否したため、平田の試合は中止に。試合も日本勢1勝5敗と、大苦戦の結果となってしまった。
チャトリ氏は10月の来日時の会見で今後の日本大会の可能性について聞かれ「来年日本に戻ってきます。ただ、日本の選手はまだ世界レベルに達していない選手が多いので、奮起を期待しています」とコメントしていた。日本勢の壊滅的な結果は、日本大会開催を遠ざけることになりそうだが、来年もABEMAでは4大会くらいの日本向けPPV大会が放送される模様で、この中で這い上がり日本大会開催機運を高める選手が登場することを期待するしかなさそうだ。
秋元皓貴、ペッタノンに翻弄され王座陥落
第11試合 メインイベント ONEキックボクシング・バンタム級チャンピオンシップ 3分5R
×秋元皓貴(イヴォルブMMA/王者)※初防衛戦
○ペッタノン・ペットファーガス(タイ/3位)
判定1-2
※ペッタノンが王者に
秋元は愛知県出身の30歳。07年にキックデビューし、19戦全勝の快進撃を続けていたが、14年に原点であるフルコンタクト空手に戻り、17年にJFKO全日本大会で優勝。18年にONE直轄のシンガポールのジム・イヴォルブに移籍し、19年からONEでキックに復帰。2戦目でジョセフ・ラシリに判定負けしたが、それ以外の5試合は勝利し5連勝中。昨年12月には中国の強豪・チュー・ジェンリャンを圧倒し、3月のONE Xではカピタン・ペッティンディーアカデミーの王座に挑戦。右ローを効かせ、ミドル、ハイ、パンチで追い詰め5R判定勝ちし、ONEのスーパーシリーズ(立ち技部門)では初の日本人王者となった。
ペッタノンは37歳。タイのムエタイの2大スタジアム、ルンピニー、ラジャダムナンを主戦場にした後、約10年前からオーストラリアに渡り、以降は同地や中国の試合が中心となる。18年の中国の武林風67kg級トーナメントを制するとONEに参戦。20年9月のカピタン戦では開始6秒、右ストレートをもらいKO負けしたが、昨年9月の試合では中国のジャン・チェンロンをサウスポーからの左ミドル等の蹴りで翻弄して判定勝ちし、健在ぶりを示した。
1R、秋元はオーソドックスで構え、サウスポーのペッタノンにプレッシャーをかけ、パンチを振りつつ右ミドル、ローを当てる。ペッタノンも左ミドル、膝をお返しする。すると終盤、ペッタノンが左のテンカオのヒットを増やし、若干優位で終える。記者採点は僅差でペッタノンだが、前に出続けた秋元につけるジャッジがいても不思議ではない。
2R、ペッタノンは左ミドルを当てつつ、頭狙いの左膝も度々放ち、秋元を脅かす。秋元は執拗に前に出て、右ボディ、左ロー、右ハイを随所でお返しするが、ペッタノンはサークルケージの中を回り続けて連打を許さず、秋元はヒット数での差は埋められない。記者採点はペッタノン。
3R、ペッタノンは変わらず左ミドル、膝をヒット。秋元はしぶとく前に出るが、ペッタノンの右前蹴りで後ろに下がってしまい印象が悪い。秋元は空手仕込みのバックスピンキックを当てるが当たりは浅い。終盤、ペッタノンは左テンカオを出した後に左ストレートもヒット。テクニシャンぶりを発揮する。記者採点はペッタノン。
4R、ペッタノンは左ミドルを当て続けつつ、顔面とボディに左膝を打ち分け、秋元を翻弄する。秋元の脇腹は真っ赤になっており、右肘も痛そうだ。秋元は強引にパンチの連打から右ミドルを当てる場面もあるが、その先が続かない。記者採点はペッタノン。
5R、ポイント大差をつけているペッタノンは、変わらず回って距離を取り続け、随所で左ミドル、膝を的確に当て、前に出る秋元を翻弄する。中盤、秋元の右前蹴りがローブローとなり、ペッタノンのファウルカップがずれ、元に戻すために一時中断する。1分ほどで再開しても、流れは変わらず。終盤、ペッタノンはステップして距離を取り流し気味になり、随所で蹴りを当て続け終了する。
記者採点はペッタノン。合計45-50でペッタノン。ジャッジはなぜか1者が秋元を支持したが、2者が順当にペッタノンを支持し、ペッタノンが判定勝ちでベルトを奪取。秋元は完敗で王座から陥落した。
ペッタノンにはロッタンがセコンドにつき、スーパーボンとも練習したことを試合後話した。ムエタイ発祥国の威信をかけ、日本人選手からの王座奪還のためにONEが誇るタイ人王者たちが総力を結集し、ペッタノンが秋元対策を完璧に遂行した感のある試合だった。
第10試合 コーメインイベント キックボクシング ヘビー級GP決勝 3分3R
○ローマン・クリークリャ(キック・ライトヘビー級王者)
×イラジ・アジズプール
2R 1’28” KO (パンチ連打)
※クリークリャが優勝。キック・ヘビー級王者に
青木真也、ヌルマゴメドフ軍団のイザガクマエフに86秒 TKO負け
第9試合 MMA ライト級 5分3R
×青木真也(イヴォルブMMA/5位、元王者)
○ザイード・イザガクマエフ(ロシア/4位)
1R 1’26” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
青木は19年3月のONE初の日本大会のメインイベントでエドゥアルド・フォラヤンに勝利し、ライト級ベルトを奪還したが、1か月半後、クリスチャン・リーに敗れ王座から陥落。以降は4連勝したが、3月のONE Xで秋山成勲に2R TKO負けした。5月のONEにはグラップリングルールで参戦しケイド・ルオトロに判定負けしている。現在39歳。
イザガクマエフはロシア連邦のダゲスタン共和国出身で、同郷の元UFCライト級王者・ハビブ・ヌルマゴメドフと約15年間練習仲間だった。MMA戦績21勝2敗の28歳。今年1月からONEに参戦し、ジェームズ・ナカシマに一本勝ちし、9月にはジャン・リーポンに判定勝ち。ヌルマゴメドフ同様、テイダウン、グラウンドコントロールの技術が高く、これまで試合後に青木戦を熱望してきた。
1R、サウスポーの青木がムエタイ式の高い構えから左ミドルを連打するが、体格で勝るイザガクマエフは動じずプレッシャーをかけ、左ジャブ、左ローを当てる。イザガクマエフはオーソドックスとサウスポーのスイッチを繰り返しつつ、じわじわプレッシャーをかけて下がらせると、オーソドックスから右ボディストレートを当てる。打撃戦ではイザガクマエフが数段上。さらにサウスポーに切り替え、右ジャブを振りつつ左カーフキックをヒットする。
するとイザガクマエフは今度はオーソドックスに切り替え、青木をかく乱させると、右フックをアゴにクリーンヒット。青木は崩れ落ちダウンする。イザガクマエフは自軍付近の金網際で押さえつつ、パウンドを何発もヒット。青木は得意の関節技に持ち込む余裕は無く防戦一方となる。すると青木は力無く背中を向けてうつぶせになり、背後からイザガクマエフが右のパウンドを連打したところで、モハメド・スライマン・レフェリーがストップ。イザガクマエフの完勝に終わった。青木は秋山戦に続きこれでMMA 2連敗となってしまった。
勝ち名乗りを受けたイザガクマエフは肩で青木を抱え、試合前とは一転して謙虚に青木を称えた。勝利者インタビューでイザガクマエフは「試合前はトラッシュトークをしましたが、青木はレジェンドです。アイラブユー青木」と話しつつ、最後はライト級王者・クリスチャン・リーへの挑戦を熱望した。イザガクマエフには5万ドル(約700万円)のボーナスがONEから授与された。
3年ぶり試合の岡見勇信、アウンランサンに1R TKO負け
第8試合 MMA ミドル級 5分3R
×岡見勇信(EXFIGHT)
○アウンランサン(ミャンマー/ミドル級&ライトヘビー級王者)
1R 1’42” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
岡見は現在41歳。19年からONEに上がり、同年10月の両国国技館大会でアギラン・ターニに判定勝ちして以来3年ぶりの試合。今年1月にはミドル級に階級を上げてレアンドロ・アタイデスと対戦予定だったが、アタイデスの新型コロナウイルス感染により試合が中止となっていた。今回はアタイデス戦前から対戦を希望していたアウンランサンと対戦したが、2階級制覇王者の壁は高かった。
1R、サウスポーの岡見に、アウンランサンが右ミドルをヒット。岡見は序盤から片足タックルを仕掛けるが、倒しきれないと判断したか?すぐに引き込むようにして下になる。アウンランサンは寝技に付き合わず、間もなく立ち上がる。アウンランサンがプレッシャーをかけ、岡見が後退すると、岡見はまたもタックルを仕掛けるが、真っすぐ入ってしまったところに、アウンランサンが左膝蹴りを合わせ、顔面にもろにもらった岡見はダウンする。アウンランサンは上からパウンドをコツコツと当て続け仕留めにかかる。最後はハーフで押さえながら連打したところで、ハーブ・ディーン・レフェリーがストップ。岡見は完敗に終わった。
試合後、アウンランサンは1週間前に亡くなった元UFCファイターのアンソニー・ジョンソンの遺影を掲げ、ジョンソンへの追悼の言葉と、ミャンマー国民を励ますメッセージを述べた。
計量オーバーの若松佑弥、ウ・ソンフンに1R TKO負け
第7試合 MMA フライ級 5分3R
×若松佑弥(TRIBE TOKYO MMA/3位)
○ウ・ソンフン(韓国)
1R 2’46” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
※若松が計量で135ポンドのフライ級リミットを4ポンド(1.81kg)オーバー 。139ポンド契約で試合実施。若松はファイトマネーの40%をウに譲渡する
若松は5連勝の後、3月のONE Xでフライ級王者のアドリアーノ・モラエスに挑戦し、3Rギロチンチョークで一本負けして以来の試合となる。9月29日のONEで試合が決まっていたが、対戦相手のワン・シュオの体重オーバーで試合が中止となっていた。
対するソンフンは大阪で開催されているWARDOG CAGE FIGHTにも上がっていた選手で、今年2月のヨッカイカー戦ではわずか18秒、右ストレートでKO勝ちし5万ドルのパフォーマンスボーナスを獲得したが、4月のウィンドソン・ラモス戦では判定負けしている。
若松は上記の通り計量でオーバーし、減量のために髪を切り、坊主頭で入場する。1R、ソンフンはいつもと違いサウスポーで構えるが、接近戦で若松が左フックを合わせ、一瞬ソンフンをスリップさせる。中盤からソンフンはオーソドックスとのスイッチを繰り返すように。オーソドックスになった場面では、若松が左フックを当てる。
だがパンチが交錯すると、ソンフンの右フックが軽めながら立て続けにヒットする。若松は効かされたか?少し後退してしまうと、ソンフンは隙を逃さず、追いかけながらサウスポーに切り替え、左のオーバーハンドフックを連続でヒットし、若松をダウンさせる。
若松はすぐ立ち上がるが、力なく後退し、ソンフンは追いかけてパンチを当て続け、若松を倒すと、すぐマウントポジションを奪う。ソンフンが何発もパウンドを当て続けたところで、オリヴィエ・コスト・レフェリーがストップ。若松の完敗に終わった。
第6試合 MMA バンタム級 5分3R
○クォン・ウォンイル(4位)
×マーク・アベラルド
3R 3’45” TKO (レフェリーストップ:膝蹴り)
第5試合 キックボクシング ヘビー級 3分3R
×ブルーノ・チャベス
○アフメド・クリッチ
判定0-3
第4試合 MMA ライト級 5分3R
○アフメド・ムジタバ
×アブラーオ・アモリム
1R 4’32” 三角絞め
品川朝陽、計量オーバーもONE初白星
第3試合 ムエタイ ストロー級 3分3R
○品川朝陽(PKセンチャイムエタイジム)
×ルイ・ボテーリョ
判定2-1
※品川が計量で125ポンドのストロー級リミットを1ポンド(0.45kg)オーバー 。126ポンド契約で試合実施。品川はファイトマネーの20%をボテーリョに譲渡する
吉成名高の練習仲間・品川は、Road to ONEでの勝利を経て、昨年12月にONE本戦に初参戦し、ジョセフ・ラシリに1R KO負けして以来約1年ぶりとなるONE登場。今年9月にはBOMでタイ人選手に4R KO勝ちしている。
1R、ボテーリョがプレッシャーをかける時間が長いが、品川は左の前手前足のフェイントでボテーリョに入らせない。終了間際にボテーリョが左ボディ、右フックを当てるが、すぐ時間切れに。記者採点は最後の攻めでボテーリョとしたが、品川のジェネラルシップを評価するジャッジがいても不思議ではない。
2R、お互い右ミドルを当てつつ、クリンチも増えると、どちらも膝を当てる。なかなか均衡が崩れないが、終了間際、品川の右ハイをボテーリョがかわすと、右フックを当ててから品川を金網に詰め、パンチをまとめて終える。記者採点はボテーリョ。
3R、変わらずボテーリョがプレッシャーをかけ続けるが、品川は右ミドル、左膝を随所でヒット。中盤にはタイミングをズラして右ストレートを当てるが、右ミドルの直後にボテーリョも右フックを当てる。接戦が続いたが、終盤、品川が少し圧をかけ返すと、右フックを当ててボテーリョを倒す。通常のキックボクシングならダウンとなりそうだが、ボテーリョはすぐ立ったため、ムエタイ基準でダウンとはならず。とはいえ品川は好印象を残すことに成功する。
記者採点は品川。合計28-29でボテーリョ。接戦のラウンドが続いたためジャッジは割れ、2者が品川を支持し、品川の判定勝ちに。品川は計量失敗したものの、大量参戦した日本勢7選手のうち、ただ一人勝利をものし、希望の光を照らした。
第2試合 グラップリング 女子ストロー級 10分一本勝負
×ミレーナ・サクモト(TREE BJJ)
○ビアンカ・バシリオ
0’42” 裸絞め
両者ONE初戦。サクモトは日本人とブラジル人のハーフで栃木出身の21歳。ブラジリアン柔術黒帯で三重のTREE BJJに在籍する。対するバシリオは今年の柔術世界選手権(ムンジアル)優勝者で、グラップリングでも2019年のADCCで優勝しているトップ選手。
試合は実績で勝るバシリオがレベルの違いを見せつける形に。開始すぐ、バシリオは左手でサクモトの首を払って崩し、がぶってから押さえ、すぐさまバックマウントへ。両足でガッチリ捕獲すると、サクモトの首元に左腕を回し、最後は両手の平で組むパームトゥパームの形で絞め上げタップを奪った。
第1試合 MMA フェザー級 5分3R
○キリル・ゴロベッツ
×ブルーノ・プッチ
判定3-0
ONE 11.19 シンガポール:秋元皓貴、青木真也、岡見勇信、ミレーナが計量クリア。ハム・ソヒ、3度目の計量オーバーの平田樹との対戦拒否。若松佑弥と品川朝陽もオーバー