ONE 9.27 ルンピニー(レポ):武尊、1Rダウン奪われるも2R左フックで逆転KO勝ちしロッタンに「レッツファイト」と呼びかけ。秋元皓貴&小笠原瑛作は判定負け。陽勇は判定勝ち
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ONE Friday Fights 81
2024年9月27日(金)タイ・バンコク・ルンピニースタジアム
レポート:井原芳徳 試合写真提供:(C)ONE Championship
武尊、ダウン奪われるも2R左フックで逆転KO勝ち、ロッタンに「レッツファイト」と呼びかけ
第4試合 キックボクシング フライ級(61.2kg) 3分3R
○武尊(team VASILEUS/2位、ISKA K-1ルール世界&KGPライト級王者、元K-1スーパー・フェザー級・フェザー級・スーパー・バンタム級王者、元Krushフェザー級王者)
×タン・ジン[Thant Zin](ミャンマー)
2R 2’47” KO (左フック)
武尊は33歳。22年6月のTHE MATCH 2022東京ドーム大会での那須川天心との大一番で判定負けし、連勝が35でストップ。この試合を最後にK-1を離れ、昨年5月にONEとの契約を発表。6月のパリの再起戦ではベイリー・サグデンを5R左ハイでKO。今年1月のONE日本大会でのスーパーレックのONEキック・フライ級王座に挑戦し、ボディ攻撃で苦しめたが、右ローキックを効かされ判定負けした。
敗戦直後は引退を示唆したが、3月の著書発売記念イベントでは年内の復帰に意欲を示し、6月には米国での合宿を敢行。スーパーレック戦で骨折した左膝も順調に回復した。ONEは夏から秋にかけて今年2回目の日本大会を計画していたが延期となり、ルンピニーでの「ONE Friday Fights」シリーズの豪華版大会が、武尊の再起戦の舞台となった。
対するタン・ジンは19歳。5人きょうだいの末っ子で、父親も兄たちもラウェイの選手なことから、タンもラウェイを6歳から始める。日本でのラウェイの大会にも上がっていた兄のトゥン・ルイン・モーが失明し、手術費を稼ぐために頑張っているという。ONE Friday Fightsではオープンフィンガーグローブ着用のムエタイルールでタイ人と2戦し、2月に2RでTKO勝ちし、8月に74秒でKO勝ちしている。
1R、お互い中央付近で前傾姿勢で構えつつ、右ローをヒットする出だし。武尊が右カーフを当てると、タンはロッタンのように手を振って挑発する。タンは伸びのある左ストレート放つが、武尊はかわす。終盤、武尊が右カーフを当てていると、タンは少しバランスを崩す。だがタンは前に出ると、左と右のパンチを振ってからのスリーで放った左ストレートが炸裂し、真っすぐ下がっていた武尊はダウンしてしまう。最後、武尊は左の三日月蹴りを当てるが、逆転にはつなげられない。記者採点は8-10でタン。
2R、武尊が左ジャブを当てるが、タンも左ジャブを返す。武尊は右カーフを放つが、タンはかわすと、舌を出し挑発する。それでも武尊が右カーフ、ローを当てていると、蹴りを嫌ったタンが前に出るようになるが、武尊にとっては理想の展開で、パンチの打ち合いの中で左フックを当てると、タンがふらつく。すると中盤、武尊は圧を強めてパンチを増やしつつ、右膝蹴り、左三日月蹴りも絡めて追い詰める。タンはローも嫌ってかサウスポーに切り替える。ラウェイで鍛えられたタンはなかなか倒れなかったが、終盤、武尊が、左前蹴りをボディに当てて、ついにダウンを奪う。最後は武尊がブロックするタンにパンチを当て続け、左フックでダウンを奪うと、タンは立ち上がれず、レフェリーがストップした。武尊は昔からの恒例であるコーナーからの宙返りのパフォーマンスを繰り広げた。
勝利者インタビューで1Rのダウンについて聞かれた武尊は「1R、ダウン、フラッシュ気味でそこまでダメージはなかったです。怪我明けで足を心配しすぎて下に集中し過ぎました。でも修正します。大丈夫です。思ったよりパンチがあったんで2Rから作戦を変えました」と試合を振り返った。
すると試合を見ていたロッタンがリングに登場し、武尊が笑顔で「ロッタン、アイム・レディ、レッツファイト」と呼びかけると、ロッタンは「今日の試合は簡単すぎです。僕は簡単じゃないよ」と言い返し、両者頭をつけて笑顔でにらみ合いを繰り広げ、観客を沸かせた。なお、ロッタンは11月8日(現地時間)のONE 169 米国アトランタ大会でのジェイコブ・スミスとのONEムエタイ・フライ級王座防衛戦を控えている。(※武尊のバックステージでの談話は別記事に掲載しています)
秋元皓貴、エナッシにダウン奪われ判定負けし3連敗
第3試合 キックボクシング バンタム級(65.8kg) 3分3R
×秋元皓貴[ひろき](イヴォルブMMA/POWER OF DREAM/2位・元王者、元WBCムエタイ&MA日本フェザー級(57.15kg)王者)
○イリアス・エナッシ[Ilias Ennahachi](オランダ/モロッコ/元フライ級王者)
判定0-3
秋元は31歳。キック19戦全勝の快進撃を続けた後、14年に原点であるフルコンタクト空手に戻り、17年にJFKO全日本大会で優勝。19年からONEでキックに復帰。22年3月にカピタンに判定勝ちして5連勝すると共に、ONEの立ち技初の日本人王者となる。だが同年11月の初防衛戦でペッタノンに判定負けし王座から陥落(ペッタノンはドーピング検査失格により王座剥奪)。その後、ジョナサン・ハガティーが王者となり、今年1月の日本大会での秋元との防衛戦も計画されたが、ハガティーの怪我により実現しなかった。昨年、所属先のイヴォルブMMAのシンガポールのジムが閉鎖したため、秋元は日本に戻り、東京のPOWER OF DREAMを練習拠点にしている。5月の1年半ぶりの試合では元K-1ライト級(62.5kg)王者・ウェイ・ルイと対戦し、優勢に進めたかに見えたが判定負を喫した。
エナッシは28歳。19年、ペッダムにKO勝ちしてONEキック・フライ級初代王者に輝く。21年2月にはスーパーレックに判定勝ちし2度目の防衛。23年1月にスーパーレックとの再戦が組まれたが、エナッシが体重を作れず王座をはく奪される。その1か月後の2月に1階級上のバンタム級でアリアスガー・ゴドラティサラスカンに2R KO勝ちしている。
エナッシは元々階級が下だったが、並ぶと秋元より少し大きく見える。1R、エナッシは距離を取りつつ、前手での左ジャブ、フック、ボディを随所で的確に当てる。秋元は前に出続けるが、なかなかヒットできず、終了間際にエナッシが左フックをこめかみに当ててダウンを奪う。秋元は立ったが少しフラつく。再開後すぐに終了する。記者採点は8-10でエナッシ。
2R、エナッシは左ボディを当てつつ左ハイにつなげ、秋元を脅かす。秋元も左ミドルを返し、変わらず前に出ていると、中盤過ぎには左フックを当て、エナッシをフラつかせる。さらに右ハイもヒット。終盤も秋元が前にて続ける。秋元は強打はないが、エナッシは攻撃ができなくなる。記者採点は秋元。
3R、逆転を狙う秋元は前に出続け、左ミドル、フックを当て、優位に進める。エナッシはステップとクリンチで秋元の攻撃を寸断し続ける。秋元は積極的に攻めるが、ダウンは奪えず終わる。記者採点は秋元。合計28-28で、マスト判定はダウンを取ったエナッシ。ジャッジ3者もエナッシを支持し、エナッシが判定勝ちし、秋元は3連敗となってしまった。
小笠原瑛作、リッティデットに右ハイでダウン奪われ判定負け
第2試合 ムエタイ 132ポンド(59.87kg)契約 3分3R
×小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺/KNOCK OUT-REDフェザー級(57.5kg)王者・元同スーパーバンタム級(55kg)王者、WPMF世界スーパーバンタム級王者、元ISKA K-1ルール世界バンタム級王者)
○リッティデット・ソー・ソンマイ[Rittidet Sor.sommai](タイ)
判定0-3
瑛作は29歳。対日本人だけでなく長年タイ人との試合を重ね、昨年3月のKNOCK OUT代々木大会で元ルンピニー3階級制覇王者のロンナチャイに判定勝ち。昨年8月にONE Friday Fightsに初参戦し、ヨードウィッタヤをわずか32秒、右フック一撃でKOした。11月のKNOCK OUTではONEムエタイ同様のオープンフィンガーグローブ(OFG)着用の試合でウィンに延長判定負け。昨年12月のONE 2戦目はチョーファーに2R右ストレートでKO負けし2連敗したが、4月のONEではソーンスックノーイに判定勝ち。6月のKNOCK OUTではONE Friday Fightsで現在3勝3敗のデーングリアングライとOFG着用ルールで対戦し判定勝ちしている。
リティデットもONE6戦でONE Friday Fightsで3勝3敗の選手で27歳。3勝全てKO勝ちで、最近では4月にスリヤンレックに判定負けしている。
1R、瑛作はサウスポーで構え、左インロー、ミドルを当て、リッティデットも右インロー、ミドルを返す。中盤、リッティデットは組み際に左肘を当てる。瑛作は左前蹴りでリッティデットを倒す。終盤も蹴り主体で、リッティデットは重みのある右ミドルを当てて印象を作る。瑛作は右まぶたから少し出血する。記者採点はリッティデット。
2R、瑛作が左ミドルを放つが、リッティデットは蹴り足をすくって倒す。リッティデットは変わらず右ミドルを当てると、瑛作は少し体が流れてしまう。リッティデットは距離を取って回り、瑛作の攻撃を交わし続けると、終盤には伸びのある右ハイを当ててダウンを奪う。最後も左肘を当て好印象を作る。記者採点は8-10でリッティデット。
3R、逆転を狙う瑛作は圧を強め、パンチを振り回す。リッティデットはクリンチと崩しとバックステップで瑛作の攻めを寸断する。中盤過ぎから、リッティデットは右ミドルも随所で当てるように。終盤、瑛作はやや疲れて来た様子で、攻撃が当てられなくなり、バックブローも空振りし、反撃できず終了する。記者採点はリッティデット。合計26-30でリッティデット。ジャッジ3者もリッティデットを支持し、瑛作はONE 2勝2敗の五分に戻ってしまった。
陽勇、ONE初戦は判定勝ち
第1試合 キックボクシング フライ級(61.2kg) 3分3R
○陽勇[ひゅう](チーム・メディ・ザトゥ/TEAM3K)
×ユセフ・サード[Youcef Esaad](アルジェリア)
判定3-0
陽勇は21歳。22年、新極真会等が参加するJFKO全日本フルコンタクト空手道選手権で優勝し、同年末にキックデビューし8戦8勝(2KO)。RISEで昨年12月に基山幹太に判定勝ちし、今年3月にはK-1から参戦した龍華に判定勝ち。7月の修斗大阪大会でのキックルールでのCKC 2024 -63kgトーナメントでは2連続KO勝ちし優勝している。今回ONEと本戦契約し、ONE Friday Fightsに初出場した。
1R、陽勇がサウスポーで構え、オーソドックスのサードに対しプレッシャーをかけると、左の三日月蹴りを繰り返し当てて下がらせる。中盤以降も左のボディストレート等を当て主導権を維持する。終盤、陽勇の左の蹴りに対し、サードが右フックをカウンターで当てる場面もあるが、その先にはつながらず、陽勇が積極的に攻め続けて終える。記者採点は陽勇。
2R、陽勇が変わらず前に出て、左の三日月蹴りを変わらず当てる。お互い蹴りがローブローになり、中断が繰り返される。終盤も陽勇が詰め続け、左ミドル、ボディ、ストレートを当て優位に進める。記者採点は陽勇。
3Rも陽勇が攻め続け優位を維持する。ロープやコーナーに詰め、左ストレート、ボディ、ミドル、前蹴り等を随所で当てるが、これまで戦った日本人選手よりも打たれ強く、ひるませるほどにはならず終了する。記者採点は陽勇。合計27-30で陽勇。ジャッジ3者も陽勇を支持し、陽勇が判定勝ちした。
スーパーボン、ナタウットを1R右肘一撃KO
第12試合 ムエタイ フェザー級(70.3kg) 3分3R
○スーパーボン・シンハーマウィン(1位、キック暫定王者・元正規王者)
×ジョー・ナタウット(2位)
1R 1’43” KO (右肘打ち)
スーパーボンは34歳。昨年12月にムエタイ・フェザー級王者のタワンチャイに挑戦したが判定負け。今年4月にはマラット・グレゴリアンとのキック同級暫定王者決定戦で判定勝ちしている。この2試合もとONE Friday Fightsのメインイベントで、今回も同様。通常のナンバーシリーズやFight Nightシリーズとの区分は曖昧になっている。
ナタウットは35歳のベテラン。タイで活躍後、13年から米国で活躍し、18年からONEで参戦しているが、スーパーボンとはまだ戦っていない。22年1月からのここ5試合は1勝4敗だが、うち1試合が対アラゾフ、2試合が対タワンチャイで、6月のONE 167でタワンチャイの王座に挑戦し判定負けして以来の試合となる。
1R、ナタウットもミドルを蹴るが、スーパーボンはうまくブロックしたりかわしたりしつつ、自分の左ハイ、右ミドルを力強く当て、印象を作る。中盤、スーパーボンが圧力を強めると、ナタウットはパンチを連打してきたが、打ち終わりにスーパーボンは左肘打ちを当てる。するとナタウットは右まぶたをカットする。スーパーボンは右前蹴り、左ミドルを当てつつ、じりじりプレッシャーをかけ続けると、ナタウットは右ボディ、左フックを振ってくるが、スーパーボンはカウンターで右の縦肘をヒットする。ダウンしたナタウットはなんとか立ったもののフラついていて表情が虚ろで、レフェリーがストップ。スーパーボンが無傷で完勝した。
試合後のインタビューでスーパーボンは昨年12月に敗れたタワンチャイとの再戦を希望した。スーパーボンは5万ドル(約700万円)の本戦グレードのボーナスを獲得している。
ジャオスアヤイ、スリヤンレックとの死闘制し判定勝ち
第5試合 ムエタイ 133ポンド(60.33kg)契約 3分3R
○ジャオスアヤイ・モー・クルンテープトンブリー
×スリヤンレック・ポー・イェンイン
判定3-0
ジャオスアヤイは19~22年にK-1 GROUPで卜部弘嵩、江川優生らと戦い、昨年から始まったONE Friday Fightsでは4勝2敗で、最近では3月にプンルアンに1R KO勝ちしている。
スリヤンレックも19~20年にK-1 GROUPに上がり、武居由樹、軍司泰斗に敗れた。その後、大分のBRAVELY GYMのトレーナーになりつつ、昨年からONE Friday Fightsに上がると。メインイベンターを度々務め同大会8戦6勝(5KO)2敗。勝っても負けても毎試合35万バーツ(約150万円)のボーナスを獲得し、総額1200万円を超える。6月大会でもポンペットを1R KOした。
今回もスリヤンレックが期待通りの死闘を見せる。1R、スリヤンレックが積極的に攻め、中盤に左右のボディを当てるが、右フックに合わせてジャオスアヤイがカウンターの右フックを当ててダウンを奪う。だがスリヤンレックはすぐ持ち直し、その後の打ち合いで右フックを当ててジャオスアヤイをひるませて挽回する。
2Rも激しいパンチの打ち合いとなり、中盤過ぎにジャオスアヤイの左ジャブでスリヤンレックがひるむが、ロープに跳ね返り、尻もちはつかずダウンを免れる。終盤にはスリヤンレックがパンチのヒットを増やして巻き返し、ジャオスアヤイの飛び膝にも右フックで迎撃して押し倒し、好印象を作る。
3R、スリヤンレックは必死に前に出てパンチ、肘を振い、場内を沸かせる。中盤、ジャオスアヤイが左ハイを当てると、スリヤンレックはフラついて片膝立ちとなるが、すぐ立ったためレフェリーはダウンとみなさない。その後もスリヤンレックはパンチを当て続けるが、随所でジャオスアヤイもパンチを返し、逆転を封じ終了する。同時に両者座って抱き合って健闘を称え合った。判定の結果、ジャオスアヤイが勝利したが、スリヤンレックも大きな印象を残す一戦だった。