KNOCK OUT 11.5 後楽園ホール(レポ):初の肘有りOFGマッチ大会。小笠原瑛作&不可思、ウィラサクレック勢のムエタイ技術に手を焼き判定負け。重森陽太、独立2戦目で初勝利「人生変えます」。古村匡平、バットマンからダウン奪い判定勝ち
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MAROOMS presents KNOCK OUT 2023 vol.5 “RED ZONE”
2023年11月5日(日) 後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
KNOCK OUTが肘有りOFGマッチオンリー大会を初開催。11月から国内立ち技OFGマッチは新たなフェーズへ
宮田充氏が退任し山口元気氏がプロデューサーに復帰してから初のKNOCK OUTは、「RED ZONE」のサブタイトルが付き、本戦全試合がオープンフィンガーグローブ(OFG)着用のREDルール(肘有りキックルール)で実施された。ONEムエタイルールと同じ形式で、8月のONEルンピニー大会でKNOCK OUT-REDフェザー級王者の小笠原瑛作がこのルールで1R KO勝ちしたことが反響を呼び、今回の企画が実現した。
9月の会見で山口氏は「僕は20年ぐらい前から、ムエタイはOFGでやるのが一番いいと唱えてきましたが、賛成してくれる人はいませんでした。時代の流れでOFGルールでやりたいという声も増え、だいぶ認知され、いつかやりたいと思っていたんですけど、宮田さんが辞められるタイミングが一番いいかなと思いました。あとこの間、瑛作がONEに行ってOFGで戦い、KOボーナスもつき、試合内容が格段に面白くなりました。初めて試合を見た日本人関係者の方も喜んでいたのを見て、瑛作の試合が終わった瞬間に、このコンセプトで行こうと思いました。OFGだとしっかり組めて、その中で肘やパンチを打ちやすくなります。スリリングで(組む)理由があるのがOFGのムエタイだと思っています」と、今回のOFGマッチの経緯や長所を説明した。
瑛作は今大会のメインイベントに登場。セミファイナルには元KNOCK OUT王者でK-1を主戦場とする不可思、その一つ前の試合には現KNOCK OUT王者の重森陽太が登場し、タイ人との試合経験も豊富な3人がタイ人選手と対戦した。KOボーナスもメインイベント100万円、その他の試合は30万円と増額した。
なお、今月11月14日のシュートボクシングでもONEのOFGムエタイのメインイベント3連勝中のスーパーボールを招へいして笠原弘希が迎え撃つ。19日にはRISEのOFGマッチから発展したOFGマッチオンリーの新大会「FIGHT CLUB」で、YA-MANと朝倉未来が対戦することも発表されたばかり。立ち技OFGマッチが今月から国内で、競技性・興行の両方で新たなフェーズに入る。
※REDルールは肘有りキックルール、BLACKルールは肘無し・ワンキャッチワンアタックのキックルール。本戦はオープンフィンガーグローブ(OFG)、プレリミナリーファイトはボクシンググローブを着用
小笠原瑛作、ウィラサクレック推薦のウィンのムエタイ技術に手を焼き延長判定負け
第8試合 メインイベント OFG-RED フェザー級(57.5kg)(ノンタイトル戦) 3分3R(延長1R)
×小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺/KNOCK OUT-REDフェザー級(57.5kg)王者・元同スーパーバンタム級(55kg)王者、WPMF世界スーパーバンタム級王者、元ISKA K-1ルール世界バンタム級王者)
○ウィン・シットチェニイム[Win Sitchenim](タイ)
4R 判定0-3 (センチャイ9-10/少9-103/北尻9-10)
3R 判定1-1 (センチャイ28-29/少30-29/北尻29-29)
瑛作は当初、ジャオスアヤイに勝った実績のあるパンサックが相手として発表された。だが10月6日のONEルンピニー大会で、パンサックが2R KO負けし相手変更となった。ウィンはウィラサクレック・ウォンパサー氏の推薦で初来日した23歳。ムエタイ戦績85戦65勝(25KO)20敗。構えはオーソドックス。KNOCK OUTからのプレスリリースによると「ボクシングアジア大会優勝」の実績があるという。
ウィンのセコンドにはウィラサクレック勢がつく。試合はウィンのムエタイスキルに瑛作が手を焼く内容に。1R、両者サウスポーで構え、瑛作が細かく動きつつプレッシャーをかけ、左ローを当てると、ウィンはオーソドックスに切り替える。瑛作は変わらず前に出て、左右のロー、右ボディ等を随所で当て、優位に試合を進める。記者採点は瑛作。
2R、ウィンは右ミドルのヒットを増やし、時折大きな炸裂音を場内に響かせる。瑛作も執拗に左右のローを当て、右ボディも絡めるが、ウィンは耐える。すると終盤、ウィンの右ストレートがさく裂し、瑛作は後退する。瑛作もパンチを返すが、強打とはならない。記者採点はウィンだがイーブンの可能性はある。
3R、瑛作は必死に前に出て、ロー、ボディフックを当てるが、ウィンはクリンチで寸断する。最後、ウィンは膝、ミドルのヒットを増やしてやや優位で終える。記者採点はウィン。合計28-29でウィン。ジャッジは三者三様で延長に突入する。
延長R、序盤こそ瑛作が前に出てパンチを当てたが、中盤からはウィンが距離を取り、左ミドルを当て、組めば膝を当て、崩しも絡め主導権を維持する。記者採点はウィン。ジャッジ3者もウィンを支持し、ウィンが判定勝ちした。
不可思、デンサヤームに判定負け
第7試合 セミファイナル OFG-RED スーパーライト級(65kg) 3分3R(延長1R)
×不可思(クロスポイント吉祥寺/元KNOCK OUT・REBELS-MUAYTHAI・WPMF日本スーパーライト級王者、元RISE・Bigbangライト級王者)
○デンサヤーム・ウィラサクレック(タイ/ウィラサクレック・フェアテックスジム/M-1 JAPANスーパーウェルター級王者、True4U CPトーナメント優勝)
判定0-3 (秋谷28-30/北尻28-30/センチャイ27-30)
不可思は3月のKNOCK OUT代々木大会でバズーカ巧樹にREDルールでKO勝ちして以来となるKNOCK OUT登場。最近では7月のK-1でジン・シジュンと戦ったが、3Rにバッティングでシジュンが出血し、負傷判定の結果ドローに終わっていた。不可思は今回のOFG-REDオンリーの大会開催を聞き参戦を志願した。
デンサヤームも7月のK-1で鈴木勇人にKO負け。8月にタイのFAIRTEX FIGHTでOFGの試合に出場し判定勝ちし、既にこの形式を経験している。デンサヤームはセコンドのウィラサクレック会長らと共に陽気にダンスを踊りながら入場。試合ではK-1ルールと違い組みの制限の少ないルールのため本領を発揮する。
1R、サウスポーのデンサヤームに対し、不可思がオーソドックスで圧力をかける。だがデンサヤームは組んでの膝、肘、フックを当て、終盤にはコーナーに詰めてパンチを連打し不可思を追い詰める。不可思は右インローを時折当てるが流れを変えられない。記者採点はデンサヤーム。
2R、不可思はしつこく前に出るが、デンサヤームは組んで膝、肘を的確に当て、再三崩しも決め、主導権を維持する。記者採点はデンサヤーム。
3R、デンサヤームは回って距離を取りつつ、左ミドルを当て続け、ミドル一撃で吹き飛ばす場面も。組めば変わらず膝を当てる。不可思は前に出てパンチを時折当てるが、まとめきれず終了する。記者採点はデンサヤーム。合計27-30でデンサヤーム。ジャッジ3者もデンサヤームを支持し、デンサヤームが判定勝ちした。
重森陽太、独立2戦目で初勝利「人生変えます」
第6試合 OFG-RED 61kg契約 3分3R(延長1R)
○重森陽太(Eight Weapons/KNOCK OUT-REDライト級(62.5kg)王者、元WKBA世界同級王者、元新日本フェザー級&バンタム級王者)
×ルンペット・センチャイジム[Rungpetch Saenchaigym](タイ/センチャイムエタイジム/元ルンピニー認定スーパーバンタム級王者)
2R 2’08” TKO (コーナーストップ:左肘打ちによる額のカット)
重森は2月にラジャダムナン認定ライト級王者・ジョームに挑戦したが判定負け。5月に新日本キックおよび伊原道場稲城支部から退会。その後、KNOCK OUTへのレギュラー参戦を表明し、8月の後楽園で2年ぶりにKNOCK OUTに参戦したが、バットマンに判定負けした。
ルンペットは91年9月16日生まれの32歳。戦績127戦91勝31敗5分。中野のセンチャイムエタイジムのトレーナーで、10年前の日本でのルンピニー認定スーパーバンタム級タイトルマッチで一戸総太に勝利している。
1R、体格で勝る重森が右ミドルを随所で当てる。ルンペットも右ローを絡める。終盤、重森が三日月、ボディストレートも絡め、最後に右ストレートを効かせると、パンチラッシュでダウンを奪う。
2R、重森が開始すぐから右フックでダウンを奪う。ルンペットはダメージは小さく、前に出て来るが、重森は前蹴りで突き放しつつ、左肘と左ジャブを連続で当てると、ルンペットはひるみ、額から出血しドクターチェックが入る。止血が続いたが、ルンペット陣営からタオルが投入されストップがかかり、重森のTKO勝ちとなった。
マイクを持った重森は「私はずっとスランプに陥っていました。辛いこともありましたが、応援してくれた人たちのおかげで頑張れました。今日は(新日本キックの)伊原(信一)代表も来てくださってありがとうございます。新日本キックから出て大きな舞台で試合をしてこいと背中を押していただきました。あと試合中に『人生変えるぞ』と声が飛んで来た言葉が滅茶苦茶響きました。人生変えます」とアピールした、
古村匡平、強豪バットマンから終了間際に逆転のダウン奪い判定勝ち
第2試合 OFG-REDライト級(62.5kg) 3分3R(延長1R)
○古村匡平(FURUMURA-GYM/大和ムエタイ・スーパーライト級王者)
×バットマン・オーアッチャリヤー(タイ/元ルンピニー&BBTVライト級王者)
判定3-0 (北尻29-28/センチャイ29-28/和田29-28)
古村兄弟の兄・匡平は昨年1月の髙橋亨汰戦以来となるKNOCK OUT参戦。今年は福岡で1試合、タイで3試合の計4試合し3勝(3KO)1敗。最近では9月のタイでのプロムエタイ協会のタイトルマッチで判定負けしている。今回は当初、ルンセンタワとの試合が発表されたが、ONEルンピニー大会でバットマンに1R KO負けした。バットマンは8月のKNOCK OUTで重森陽太に勝利していたため、今回再び来日することになった。
バットマンは19年11月にはルンピニー認定ライト級王座を獲得し、20年にはタイBBTV(7チャンネル)スタジアムのMVPに選ばれ、21年3月にはBBTVライト級王者となる。ONEルンピニーでは2月、4月と判定負けしたが、いずれもメインイベントで、OFGで激しく打ち合って会場を沸かせており、上記のとおり9月にはKO勝ちしている。
1R、バットマンが序盤からスピードのある右ハイ、ローを的確に当てる。古村の左のパンチをかわしつつ、自分の左ボディ、ストレートもヒット。攻撃は少ないが正確さで印象付ける。記者採点はバットマン。
2R、バットマンは蹴りを当てつつ、崩しも絡め、古村を翻弄しようとする。だが古村は左インロー、右カーフを随所で当て、バットマンの足は少し流れるように。記者採点はイーブン。
3R、バットマンは首相撲からの膝蹴り、崩しで古村の反撃を封じる展開に。だが古村は右ローを随所で当て、パンチも絡めてバットマンにダメージを蓄積させると、終了間際にバットマンをロープに詰め、右ボディストレートを効かせてからの左右のフックの連打でまさかのダウンを奪う。これで古村がポイントを逆転し判定勝ちした。
第5試合 OFG-RED バンタム級(53.5kg)(ノンタイトル戦) 3分3R(延長1R)
×乙津 陸(クロスポイント大泉/KNOCK OUT-REDバンタム級王者)
○サンチャイ・TEPPEN GYM(タイ/TEPPEN GYM/元ラジャダムナン認定ミニフライ級王者)
判定0-3 (秋谷28-30/北尻29-30/少29-30)
8月に心直に勝利しKNOCK OUT-REDバンタム級王者となった乙津は「11月に出る予定では無かったんですけど、OFGの試合と聞いてめっちゃやりたいと思って受けました」といい、初のOFGマッチに臨んだ。
1R、乙津がプレッシャーをかけ、サンチャイが距離を取る構図ながら、サンチャイの方がやや積極的にパンチを振るい、右フックを随所で当てる。乙津もパンチを返すが慣れないタイ人相手で慎重な様子だ。記者採点はイーブンだがサンチャイにつく可能性はある。
2R、お互い慎重で、中盤にはセンチャイ・レフェリーが両者に攻撃を促すように。サンチャイは右ミドルを増やしやや優位に。終了間際、サンチャイのバックスピンキックがローブローとなり一時中断する。記者採点はイーブン。
3R、乙津は前に出てパンチを振るうが、疲れて来たサンチャイは組み付き、そのまま倒す場面を繰り返す、逃げ切りモードに。記者採点はイーブン。合計30-30でイーブン。ジャッジ3者ともサンチャイにポイントを振り、サンチャイの判定勝ちとなった。
第4試合 OFG-RED スーパーウェルター級(70kg) 3分3R(延長1R)
×クンタップ・チャロンチャイ(タイ/BTC GYM/KNOCK OUT-REDスーパーウェルター級(70kg)王者、元WMC世界・WMAF・M-1同級王者)
○MASATO BRAVELY(BRAVELY GYM/元M-1 JAPANスーパーウェルター級王者、元WPMF日本ウェルター級王者)
判定0-2 (秋谷28-29/センチャイ29-29/和田28-29)
1R、お互いゆったりとしたスピードで試合が進むが、終了間際、MASATOが右膝蹴り、右ボディフックを効かせると、少しクンタップは苦しそうに。
2R、クンタップの首相撲に寸断される場面もあるが、MASATOが変わらず右ボディ、顔面へのパンチ、肘、膝を的確に当て、優位に進める。
3R、首相撲の展開が繰り返され、お互い肘、膝を当て、クンタップも巻き返すが、最後までMASATOも攻撃を返し、譲らぬまま終了。MASATOが点差を守り判定勝ちした。
第3試合 OFG-RED スーパーバンタム級(55kg) 3分3R(延長1R)
○壱[いっせい]・センチャイジム(センチャイムエタイジム/元KNOCK OUT-REDスーパーバンタム級王者、元ルンピニー日本バンタム級王者)
×片島聡志(Kick Life/元WPMF世界&日本スーパーフライ級王者)
判定3-0 (和田30-25/板倉30-25/秋谷30-25)
壱は8月のKNOCK OUT-REDスーパーバンタム級王座防衛戦で古村光に判定負けして以来の再起戦。片島は53戦28勝(6KO)20敗5分、33歳のベテラン。KNOCK OUTの前身のREBELSでも常連だった。
1R中盤、首相撲の展開で片島が左肘を当て、壱は右眉の上あたりを出血する。すると終盤、壱は積極性を増し、終了間際、片島の右ローのタイミングで、サウスポーからの左ストレートを当ててダウンを奪う。
2R、壱の出血はおさまり、壱は左ミドルを強打しつつ、前に出て、左の肘も随所で当て、優位に進める。記者採点は壱。
3R、開始すぐに壱が左ミドルを効かせてから左肘打ちでダウンを奪う。片島は鼻血が増え、中盤にドクターチェックを受ける。再開後、片島は前に出て、右ストレートを当てて逆転を狙うが、壱が耐えきり、点差を守り判定勝ちした。
第1試合 OFG-RED スーパーフェザー級 3分3R(延長1R)
×鷹大[たかひろ](ウィラサクレック・フェアテックス西川口/元WPMF日本フェザー級王者、元WMC世界&WPMF日本スーパーバンタム級王者)
○優翔(team NOVA)
3R 2’29” KO (右膝蹴り)
鷹大は今回K-1 GROUPから参戦するが、ムエタイで3本の王座を獲得した実績がある。KNOCK OUT側が今回のOFGマッチをウィラサクレックジムに提案したところ、鷹大が名乗りを上げたという。優翔は以前「ユウト・ヌンポンテープ」の名前で日本とタイで戦っていた21歳で、今回がKNOCK OUT初参戦となる。セコンドにはK-1の里見柚己と龍斗がつく。
1R、鷹大が前に出て、優翔が距離を取る構図で、お互い蹴り主体の攻防で差は乏しい。終盤、優翔が前に手を出すと、鷹大の右目に指が入り、一時中断する場面も。
2R、優翔の圧力が強まり、蹴り以外にも右ストレート、ボディストレートも当たり出すように。終盤にはパンチをもらった鷹大が鼻血を出すようになり、優翔の積極性がさらに上がる。
3R、優翔がパンチ、ミドル等を的確に当て続け、鷹大を追い詰めると、終盤、右テンカオをクリーンヒットしダウンを奪う。鷹大はダメージが大きく、うずくまったまま動けず。優翔のKO勝ちとなった。
優翔は「今回世界チャンピオンを取っている選手に勝ったので、タイトルマッチやりたいです」とアピールした。
プレリミナリーファイト
第4試合 BLACK スーパーフェザー級(60kg) 3分3R
○羽黒慈夢[じむ](クロスポイント大泉)
×旭野 穂[みのる](キャピタルレイズ fightingGlaNz池袋/元KROSS×OVERスーパーフェザー級王者)※野良犬道場から所属変更
1R 2’44” KO (左膝蹴り)
第3試合 BLACK フェザー級(57.5kg) 3分3R
×福田拓海(クロスポイント大泉)
○祐輝(OU-BU GYM)
1R 2’07” KO
第2試合 RED 61.5kg契約 3分3R
○折戸アトム(PHOENIX)
×塚本勝彦(TORNADO)
判定3-0
第1試合 BLACK スーパーライト級(65kg) 3分3R
○木村亮彦(クロスポイント大泉)
×吉田圭佑(ウィラサクレック幕張支部)
判定3-0