ONE 5.4 ルンピニー(レポ):秋元皓貴、元K-1王者ウェイ・ルイに圧力かけ続けるも判定負け、6月のONE初戦控える野杁正明「倒さないとダメ」。澤田千優がONE 3連勝
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ONE Fight Night 22: Sundell vs. Diachkova
2024年5月4日(土)タイ・バンコク・ルンピニースタジアム
レポート:井原芳徳 写真:(C) ONE Championship
秋元皓貴の圧力振り切り判定勝ち。中継解説の野杁正明「倒さないとダメ」
第7試合 キックボクシング バンタム級(65.8kg) 3分3R
×秋元皓貴[ひろき](イヴォルブMMA/1位・元王者、元WBCムエタイ&MA日本フェザー級(57.15kg)王者)
○ウェイ・ルイ(中国/元K-1ライト級(62.5kg)王者)
判定0-3 (28-29/28-29/27-30)
秋元は31歳。07年にキックデビューし、19戦全勝の快進撃を続けWBCムエタイ日本王者となったが、14年に原点であるフルコンタクト空手に戻り、17年にJFKO全日本大会で優勝。19年からONEでキックに復帰。一時は5連勝し、21年12月にはチュー・ジェンリャンを圧倒。22年3月にカピタンに判定勝ちし、ONEの立ち技初の日本人王者となった。だが同年11月の初防衛戦でペッタノンに判定負けし王座から陥落した(ペッタノンはドーピング検査失格により王座が剥奪された)。その後、ジョナサン・ハガティーが王者となり、今年1月の日本大会での秋元の王座挑戦も計画されたが、ハガティーの怪我により実現しなかった。ONE MMAのランカーのジョン・リネカーとの特別ルールの試合も計画されたが、秋元は断っていたため、1年半ぶりの試合となる。所属先のイヴォルブMMAのシンガポールのジムが閉鎖したため日本に戻り、東京都足立区のPOWER OF DREAMを練習拠点にしている。セコンドにはPODの江川優生、中島千博がつく。
ウェイ・ルイは34歳。72戦69勝(26KO)3敗。15年に中国のWLF(武林風)で王者となり、17年2月にK-1に初参戦し、初代ライト級王座決定トーナメントで佐々木大蔵、クリスチャン・スペトゥク、平本蓮に勝利して王者となる。同年6月の初防衛戦ではゴンナパー・ウィラサクレックに判定勝ちしたが、18年3月の2度目の防衛戦の計量でオーバーし王座をはく奪され、卜部功也にKO負けした。その後はWLF、Glory of Heroesといった中国の大会に上がり続け20連勝中で、最近では昨年4月に東本央貴に判定勝ちしている。それから試合をしておらず、今年3月、ONEとの契約が発表され、ONEに初参戦した。
1R、秋元がオーソドックス、ウェイがサウスポーで構える。ウェイが右ジャブを振りつつステップして距離を取りながら左ミドルを秋元の腕とボディに的確に当て続けペースを握る。秋元も右ミドルを返す場面があるが、ヒット数で劣る。終盤、秋元が圧力を強め、右ストレートを当てると、ウェイはのけぞるが、ダメージ自体は小さい様子で、距離を取って追撃を封じる。秋元が蹴りを当ててもしっかりウェイが蹴りを返し続ける。記者採点はウェイ。ジャッジも3名ともウェイにつける。
2R、開始すぐから秋元は圧を強め、右ストレート、ミドルのヒットを増やし、ハイも当て巻き返す。だがウェイも距離を取り続け、連打は許さず、左アッパーと右フックの連打や、左ミドルを随所で返す。中盤にはお互いの左のパンチが相打ちになる場面もあり、次第はヒートアップしていく。少しウェイが持ち直したが、終盤になるとまたも秋元が圧力を強める。秋元がパンチとミドルと膝を当てる場面もあるが、序盤ほどヒットは伸びず、ウェイも細かくパンチを返し、はっきりした差はつけさせない。記者採点は迷ったが積極性で評価し秋元。だが去年ルンピニー大会が始まって以降、ONEではキックの試合においてもムエタイ式のテクニシャンも評価される傾向が強まっており、回りながらも随所で強打を見せ細かく返していたウェイについても不思議ではない。ジャッジは2者が秋元、1者がウェイにつける。
3R、秋元は変わらず前に出て、パンチとミドルを当てるが、空振りも多く、なかなかウェイを捕まえきれない。それでも右フック、左ボディ、膝等の手数で上回り、中盤過ぎ、秋元は左ミドルを強打し、ウェイの動きが一瞬止まる。終盤、秋元は引き続き右ミドルを連打する。秋元は前に出続けてパンチ、右ローを当て、ウェイは攻撃を少し返すものの回る展開が続く。記者採点は秋元。ジャッジは3者とも意外にもウェイにつける。記者採点は合計29-28で秋元。ONEのジャッジはやはりウェイにつけ、ウェイが判定勝ちした。
この採点についてU-NEXTでの生中継の解説を務めた野杁正明は、秋元の判定勝ちと予想したため「マジか」と最初は驚きつつ「(秋元に)めちゃくちゃなクリーンヒットがあったわけじゃなかったんで、試合をコントロールしていたウェイ・ルイ選手に軍配が上がったのかなと思いますね」と冷静に分析し「簡単に言えば倒せば勝ちなんで、倒さないとダメってことですかね」と、この日発表された6月8日のONEデビュー戦(対シッティチャイ)に向け気を引き締めた様子だった。下の画像はONEの公式のスコアカード。
なお、秋元はこの試合後の夜、Instagramに投稿し「そして最高の試合をしてくれたWei Rui選手ありがとう!彼は人としても選手としてもとても素晴らしかった!」と記しつつ「しかし今回の試合のジャッジに関しては納得出来ていません、私は自分が勝ったと思っています。結果を見直して欲しいですが、覆る事は無いと思いますのでリマッチやダイレクトリマッチを希望します!」と、抗議と再戦の意思を示している。
澤田千優がONE 3連勝
第4試合 MMA 女子アトム級(52.2kg) 5分3R
○澤田千優(team AKATSUKI/修斗女子アトム級世界王者)
×ノエル・グランジャン[Noelle Grandjean](タイ/フランス)
判定3-0
澤田は26歳。レスリングでは名門の埼玉栄高、青山学院大に進学し、18年全日本社会人選手権優勝等の実績がある。MMAに転向し、21年に修斗でプロデビューしMMA 8戦7勝1分。22年11月に小生由紀に判定勝ちし初代修斗女子アトム級世界王者となる。昨年2月のONEフライデーファイトでONEに初出場し、サナーズ・ファイアズマネシュに2Rアームロックで一本勝ち。その後ABEMAの海外武者修行プロジェクトで渡米し、名門・チーム・オーヤマにて練習を積みつつ、5月にはフロリダで試合をし、アナ・パラシオスにし判定勝ち。12月の修斗では中村未来に1R腕十字で一本勝ちし、修斗女子史上初の王座防衛に成功した。3月9日のONE Fight NightではONE MMA 女子アトム級5位ではジヒン・ラズワンに判定勝ちしたが、ラズワンがアトム級リミットより5ポンド(2.27kg)、澤田が1.25ポンド(0.57kg)オーバーしての試合で、澤田はランキングに入れず、ラズワンは5位に残ったままだ。
グランジャンは28歳。フランス系の選手らしく柔道がベースで、タイのプーケットでMMAの練習をし、22年からONEに上がり3戦2勝1敗。澤田がラズワンに勝った大会で、グランジャンはビクトリア・ソウザに判定勝ちしている。
試合は澤田の完勝に。セコンドには松嶋こよみと良太郎がつく。1R、澤田がサウスポーで、グランジャンがオーソドックスで見合う状態が続き、中盤に澤田は2度目のタックルで捕獲すると、背後に回ってから崩して倒し、立たれてもすぐに片足タックルで倒し、ハーフガードで押さえる。グランジャンは下から腕を回して密着するが、澤田はマウントに近いハーフの状態で押さえ続けながら、スペースを作って時折肘とパウンドを当てる。最後、澤田は立ち際にグランジャンの顔面に膝を当て、しっかり印象を作る。
2R、澤田はまたも序盤からテイクダウンを奪い、グランジャンがもがいてもしっかり押さえ続ける。澤田は1R同様にマウントに近いハーフをキープし、時折パウンドを当てる。終盤、澤田はマウントに移行し、その後はトップポジションまで戻るが、押さえ続けて反撃を封じる。
Saved by the bell Chihiro Sawada moves to 3-0 in ONE in DOMINANT fashion! @chiiiiiiiiro_
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3R、澤田はグランジャンの右ミドルをキャッチして、このラウンドも序盤から上になる。澤田はサイドでガッチリと押さえ、顔面に膝と肘を当てる。中盤過ぎ、澤田ががぶりになっても膝を連打するが、その隙にグランジャンは立ち上がり、足をつかみにきた澤田に対し、腕十字を仕掛ける。グランジャンのようやくのチャンスに、場内は湧くが、澤田は対処して、ハーフで押さえる。終盤、澤田がパスガードを狙うと、逃れようとしたグランジャンが背中を向けてしまい、澤田はバックを取る。澤田はマウントとバックの中間のポジションで左右のパウンドを連打し、ハーブ・ディーン・レフェリーは止めようと見守るが、結局止めずに終わる。記者採点は澤田。ジャッジ3者も澤田を支持し、澤田が判定勝ちした。
市川奈々美は35秒一本負け
第2試合 サブミッション・グラップリング 132ポンド(59.87kg)契約 10分1R
×市川奈々美(Arete BJJ)
○ビアンカ・バジリオ[Bianca Basilio](ブラジル)
1R 0’35” 裸絞め
市川は36歳。ブラジリアン柔術と柔道の黒帯で、バンコクに住み幼稚園で働きながら選手活動をし、ONEには初参戦。日本でのノーギグラップリング大会のQUINTETには出ているが、道着ありの試合が主体だ。バシリオは19年のADCCグラップリング世界選手権、22年のIBJJF柔術世界選手権(ムンジアル)で優勝した強豪で、ONEのグラップリングではミレーナ・サクモトに一本勝ちし、マイキー・ムスメシの姉のタンミに判定負けしている。
試合はバジリオの完勝に。開始すぐ、市川が組みに行き、バジリオも応じると、市川が押してきたところでバジリオはギロチンチョークを仕掛ける。バジリオはそのままがぶって押さえてから、素早く市川のバックに回り込み、バックマウントで捕獲すると、裸絞めで絞め落とし一本勝ちした。バジリオは「タンミにリベンジしたい。MMAもやりたい」と話していた。
その他の主な試合結果
第11試合 メインイベント ONEムエタイ女子ストロー級チャンピオンシップ 126.5ポンド契約 3分5R
○スミラ・サンデル(王者)
×ナタリア・ディアチコワ(挑戦者)
2R 2’59” TKO (左ボディフックからのパンチと膝の連打)
※サンデルが計量1.5ポンドオーバーし王座はく奪。ディアチコワが勝利した場合のみ王者認定。サンデルのファイトマネーの30%をディアチコワに譲渡
第6試合 MMA フライ級 5分3R
○リース・マクラーレン(4位)
×フー・ヨン(5位)
判定2-1