RIZIN 4.29 有明アリーナ(レポ):鈴木千裕、金原正徳に1R TKO勝ちしフェザー級王座初防衛。太田忍、牛久絢太郎との組み技勝負制す。日韓対抗戦でキム・スーチョル、神龍誠が快勝
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Yogibo presents RIZIN.46
2024年4月29日(月/祝)東京・有明アリーナ
レポート&写真:井原芳徳 中継:ABEMA、U-NEXT、RIZIN 100 Club、RIZIN LIVE、スカパー
鈴木千裕、金原正徳に1R TKO勝ちしフェザー級王座初防衛
第10試合 MMA RIZINフェザー級(66kg)タイトルマッチ 5分3R
○鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺/王者、KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級(65kg)王者)
×金原正徳(リバーサルジム立川ALPHA/挑戦者、元SRCフェザー級王者)
1R 4’20” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
※鈴木が初防衛
千裕は24歳。21年7月、KNOCK OUTの肘無しキックルールの王座を獲得後、MMAとの二刀流を宣言し、同年9月、RIZINに初参戦したが、昇侍に秒殺KO負け。だがそれ以降は山本空良、平本蓮、萩原京平、今成正和、中原由貴相手に5連勝。昨年6月の札幌大会で、クレベル・コイケのフェザー級王座に挑戦することになったが、コイケが計量オーバーで王座をはく奪され、試合ではコイケが1R序盤の腕ひしぎ三角固めでタップを奪ったが、無効試合となっていた。7月の埼玉大会では、ベラトール王者・パトリシオ・ピットブルを1R右フックでKO。11月のアゼルバイジャン大会では、地元出身の王者・ヴガール・ケラモフを、下からの蹴り上げとパンチの連打でKOし、まさかの王座奪取を果たした。大晦日大会の出場も計画されたが、ケラモフ戦での右拳の怪我により回避し、春の大型連休に初防衛戦が組まれた。
金原は41歳。03年にMMAデビューし、09年に初代戦極(SRC)フェザー級王者となり、その年の大晦日に山本“KID”徳郁に判定勝ち。14~16年にはUFCで1勝2敗の成績を残した。20年2月にRIZINに初参戦し、ビクター・ヘンリーにKO負けすると、引退を表明したが、21年10月のRIZINで復帰し芦田崇宏にTKO勝ち。その後も22年4月に摩嶋一整、昨年4月に山本空良に勝利。9月の埼玉大会では元王者・コイケとの寝技勝負を制して判定勝ちし、今回の王座挑戦につなげた。
試合前々日のインタビューで千裕が「1Rで倒せればいいんですけど、フルラウンドやっても全然いいですし、倒すチャンスは5回あると思うので、その中で倒せれば僕の勝ちです」、金原は「1回チャンスがあれば極められる」と話していた。試合は千裕が圧巻の破壊力で、1回目のチャンスをしっかりものにすることになる。
1R、千裕がプレッシャーをかけ、右フックを振うと、金原はタックルを合わせるが、切った千裕が押し返して金原をロープに押し込む。組んだまま膝の打ち合いとなると、千裕の膝がローブローとなり一時中断する。ブレイクして再開後、打撃の攻防が続く。千裕は左の前手を細かく動かしてフェイントをかけ続け、随所で右のカーフキックを当てる。金原はバランスは崩さないものの、少しずつダメージは溜まっていても不思議ではない。金原も時折の左右のパンチを返し、場内を沸かせる。
だが終盤、千裕が伸びのある左ボディフックを強打し、さらに右ストレートにつなげると、金原は少し下がり気味に。そのチャンスを逃さず、千裕はじりじりプレッシャーを強め、パンチの回転数を上げ、気づけば千裕らしさあふれる怒涛のパンチラッシュに。金原はスウェーやブロックで必死に耐えるが、千裕の連打をもらってついに倒れる。
千裕はパウンドを何発も当て続ける。金原は耐え、一瞬、千裕の腕をつかんで腕十字を狙うが、すぐに外される。千裕のパウンドを浴び続けた金原は、次第に抵抗する動きが鈍り、最後はリングサイドの福田審判部長が黄色のバトンをリングに投げ入れてストップを命じ、長瀬レフェリーがストップした。
見事1Rで金原を粉砕し初防衛に成功した千裕は「有明に稲妻落としてやったぜ。言ったよな1R KO勝ち、有言実行」と恒例のフレーズで今回も勝ち誇ると、「日本のRIZINを世界のRIZINに変えます」とアピールした。
太田忍、牛久絢太郎との組み技勝負制す
第9試合 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
×牛久絢太郎(アメリカントップチーム/K-Clann/元RIZIN&DEEPフェザー級王者)
○太田 忍(THE BLACKBELT JAPAN/2016リオ五輪・レスリング・グレコローマン59kg級銀メダリスト)※パラエストラ柏から所属先名変更
判定0-3 (橋本=太田 [D0-0 A0-0 G0-20 牛久減点20]/松宮=太田 [D0-0 A0-30 G0-20 牛久減点20]/石川=太田 [D0-0 A0-30 G0-20 牛久減点20])
牛久は22年10月の福岡大会でクレベル・コイケと2度目のフェザー級防衛戦を行ったが一本負け。昨年4月の代々木大会での再起戦では朝倉未来に判定負けした。6月から米国フロリダ州のアメリカントップチーム(ATT)に所属し現地で練習を積み、9月に萩原京平に判定勝ちした。その後、1階級下のバンタム級への転向を表明し、今回バンタム級初戦が組まれた。
レスリング五輪銀メダリスト・太田は昨年4月の倉本一真に27秒右フックでKO勝ちし、7月の超RIZIN.2では瀧澤謙太に1R TKO勝ちした。10月の名古屋大会では井上直樹との試合が組まれたが、直前にONEの元ランカー・佐藤将光に相手が変わり、判定1-2で惜敗。大晦日には元K-1の芦澤竜誠のMMAデビュー戦の相手を務め1R KO勝ちしている。
試合前々日のインタビューで太田は階級を落としてくる牛久のパワーについて聞かれ「レスリング時代のロシアとかキューバとかのバケモノに比べたら屁みたいなもん」と評していたが、試合ではレスリング銀メダリストのパワーを存分に見せつけることに。
1R、牛久がパンチを振るうと、太田は胴タックルを仕掛け、あっさりとテイクダウンに成功する。太田はトップキープし、立たれてもテイクダウンを繰り返し、主導権を維持する。太田はその先の攻めは少ないものの、パウンドを時折当て、牛久は防戦が続く。
2R、太田がタックルを繰り返して押し込み続けるが、なかなかてテイクダウンを奪えない状態が続く。すると終盤、太田が青コーナーに牛久を押し込んでから、首投げで倒しかけるも、牛久が背中に乗る中途半端な形になってしまう。太田は振り落とすために動くと背中をつけてしまう。牛久はサイドで押さえてから、マウント、バックと素早く移行すると、裸絞めを狙って太田を追い詰め一気に形勢逆転する。だが太田は幸いにもすぐ近くに自軍のセコンドがおり、鶴屋浩代表のアドバイスを聞きながら対処を続け、時間切れに持ち込む。
だが3R、勢いづいた牛久が逆にタックルを仕掛けるが、これが裏目に。太田は簡単に切ると、首と脇を抱えてコーナーに押し込む。牛久は逃げようとして体をひねると、背中を向けてしまい、太田に首をひねられる形となり、もがいた際にロープをつかんでしまう。太田は半身の牛久をがぶって制して、牛久の頭に膝を連打すると、牛久は今度はロープの外に体を出してしまい、反則を連発する。
ロープの中に牛久が戻るが、背中を向けたままで、太田がコーナーに詰めてパンチを連打し、瀧澤戦を思い出させる展開になる。中盤、太田はテイクダウンを奪ってトップキープし、パウンドを時折当て主導権を維持する。最後、牛久が立ち、コーナーを背にしてギロチンを仕掛けるが、極まりは浅く、太田が上で押さえたまま終わる。終了後、反則を繰り返した牛久にイエローカード(減点20%)が出される。記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス0-0、ジェネラルシップ0-20、牛久の減点20と合わせ、0-40で太田。ジャッジ3者も太田を支持し太田が判定勝ちした。
マイクを持った太田は「THE BLACKBELT JAPANの太田忍です。今日パンクラスの試合がありながら急いで駆けつけて下さった鶴屋さんありがとうございます」と話し、練習仲間に感謝の言葉を述べた後、「メイン早く見たいんで切り上げます」と話してマイクを終え、最後は鶴屋代表らと記念撮影した。上位陣の井上戦や、年内の王座奪取等、次戦に向けてのアピールは無かったが、試合内容で十分その素質を示したといえよう。
キム・スーチョル、中島太一を2R KO「私には大山(倍達)先生と力道山先生のDNAがいる」
第8試合 日韓対抗戦 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
×中島太一(ロータス世田谷/元パンクラス・バンタム級王者)
○キム・スーチョル(韓国/ROADジム・ウォンジュMMA/ROAD FC 63kgトーナメント2023優勝、元ROAD FCバンタム&フェザー級王者、元ONE MMAバンタム級王者)
2R 0’06” KO (左ストレート)
韓国勢との対抗戦3試合に登場の中島は、22年4月にRIZINに初参戦し、フェザー級でヴガール・ケラモフと対戦したが1R一本負け。その後はバンタム級に専念し、昨年4月、パンクラスで田嶋椋に判定勝ちし、パンクラス同級王座を防衛。9月のRIZINでは元修斗同級世界王者の岡田遼に判定勝ちした。RIZINに専念するため、11月にパンクラスの王座を返上している。
スーチョルは22年9月のRIZINで扇久保博正に判定勝ちし、大晦日大会ではフアン・アーチュレッタに判定1-2で敗れる。昨年は6~10月の韓国ROAD FCの63kgトーナメントでアレクセイ・インデンコ、ブルーノ・アゼベド、原口央に勝利し優勝し、RIZINに戻ってくる。
1R、ローの蹴り合いの後、スーチョルがタックルを仕掛け倒すが、すぐ中島は立つと、コーナーに押し込んでから倒す。これもすぐスタンドに戻り、中島がスーチョルをコーナーに押し込み、離れ際に右肘を放つ。その後は打撃戦で、スーチョルが右ストレートを時折当てるが、中島が右のカーフキックを当てていると、スーチョルは少しスイッチする場面もあり、効いている様子を見せる。
ところがこのスイッチもカーフの誘い水だったか?2R開始すぐ、中島が右のカーフを当てた直後、スーチョルはお構いなしに前に詰め、右と左のストレートをワンツーでクリーンヒット。アゴに食らった中島は倒れ、スーチョルがパウンドで追撃したところでレフェリーがストップした。
マイクを持ったスーチョルは日本語で「みなさん、ただいま。私には大山(倍達)先生と力道山先生のDNAがいると思います。今、私に勝てる選手、この世界、日本にいたら次の試合に連れてきてください。榊原社長、お願いします」と絶叫した。
神龍誠、イ・ジョンヒョンに1R一本勝ち。“扇久保先生”と超RIZIN.3で対戦
第7試合 日韓対抗戦 MMA フライ級(57kg) 5分3R
○神龍 誠(神龍ワールドジム/元DEEP&CFFCフライ級王者)
×イ・ジョンヒョン[Lee Junghyun](韓国/チームAOM)
1R 4’29” 肩固め
神龍は昨年4月のRIZIN大阪大会で北方大地に2R肩固めで一本勝ち。7月のベラトール埼玉大会では堀口恭司と神龍のベラトール・フライ級初代王者決定戦が行われたが、開始すぐのドクターストップで無効試合となった。大晦日大会では両者の仕切り直し戦がRIZIN初代フライ級王座を懸けて行われ、堀口が2R裸絞めで一本勝ちした。
ジョンヒョンはMMA 5戦4勝1敗の21歳でRIZIN初参戦。ROAD FCを主戦場とし、22年に山本聖悟に1R KO勝ちし、秋葉太樹に判定勝ちしている。12月の試合でも左ハイでKO勝ちしている。昨年はROAD TO UFCシーズン2に参戦したが、一回戦でマーク・クリマコに判定負けした。
1R、神龍が左ハイを当てると、ジョンヒョンは蹴り足をつかんで倒す。神龍は下になるとすぐに足関を狙い、極まらないとみるや固執せず上になる。神龍はトップに戻りつつもサイド、バックと素早く動いてコントロールを続けると、裸絞めを狙う。これはジョンヒョンがギリギリで対処したが、その後も神龍がコントロールを続けると、最後は肩固めを極めタップを奪った。
完勝の神龍はマイクを持ち「榊原さん、今、扇久保さんっていますか?超RIZINでどうですか」と話し、7月28日の超RIZIN.3での扇久保博正戦を希望した。神龍はパラエストラ松戸出身で中学時代から扇久保に指導を受けていた。
扇久保はリングに登場すると「誠、俺を殴れるのか」と問いかけ、神龍は「あえて言わせてください。扇久保先生、俺はあなたを超えます」と回答した。すると榊原CEOは「2人の間で色々あったと聞いてるけど、行けるの?」と両者に問いかけ、両者が「行けます」と答えると、榊原氏は「7月28日、超RIZINで決定です」と対戦を承諾した。
倉本一真、ヤン・ジヨンの打撃に苦しむも減点の影響でスプリット判定勝ち
第6試合 日韓対抗戦 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
○倉本一真(リバーサルジム新宿Me,We)
×ヤン・ジヨン[Yang Jiyong](韓国/チェジュ・チーム・ザ・キング)
判定1-2 (橋本=倉本 [D0-0 A0-30 G20-0 ジヨン減点20]/石川=ジヨン [D0-50 A0-30 G20-0 ジヨン減点20]/松宮=倉本[D0-0 A0-30 G20-0 ジヨン減点20])
倉本は22年前半のRIZINで加藤ケンジと魚井フルスイングに連勝したが、同年11月、バンタム級トップ集団の一人・元谷友貴に判定負け。昨年4月の代々木大会では太田忍にわずか27秒でKO負けした。今回1年ぶりの試合となる。
ジヨンはキック11勝1敗でWAKO韓国王座を獲得後MMAに転向し、ROAD FCで勝利を重ねた。22年7月のRIZIN沖縄大会では朝倉海の欠場により代役出場した昇侍に3R裸絞めで一本勝ち。11月のRIZIN 2戦目では魚井フルスイングを2R左ストレートでKOした。昨年はROAD FCで5戦4勝1敗し、日本の平澤宏樹、高橋謙斗にも勝利している。
1R、倉本がタックルを仕掛け、コーナーに押し込み、倒せずにいると、引き込んで下になり、足関を狙う。ジヨンは対処してスタンドに戻すと、サウスポーからの左ストレート、ハイを当てる。終盤、倉本がパンチのフェイントから、片足タックルを仕掛けて倒し、コーナー際で押さえる。最後、倉本がマウントを取りパウンドを当てるが、すぐに終わる。ここまでジヨンが若干だが優勢か。
2R、倉本が右フックを放つと、ジヨンが左膝蹴りを合わせ、倉本は右まぶたから出血する。ジヨンはギロチンを仕掛けるが、極まりは浅くスタンドに戻る。倉本はまたもコーナーに押し込んでから足関を狙う。極まりは浅い状態が続くが、倉本が足をつかみ続けていると、ジヨンが抜こうとしてロープをつかみ、レフェリーからイエローカードをもらう(減点20%)。膠着ブレイク後、ジヨンが左ストレートと膝を当てると、倉本の出血が激しくなり、ドクターチェックが入る。再開後は最後に倉本が倒して上になるが、その先は無く終わる。減点はあるが、ここまでジヨン優勢だ。
3R、ジヨンが左ストレートを当て、倉本にダメージを与える。倉本はタックルで押し込むが倒せない状態が繰り返される。終盤、後の無い倉本が組んだ状態からの離れ際に回転肘を放つが、空振りしてスリップしてしまう。ジヨンは立った倉本を追いかけてパンチを連打し、引き込んでギロチンを仕掛け一本を狙う。対処した倉本は最後、上からパウンドを落とすが、ジヨンも蹴り上げで対抗して、そのまま終わる。記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス0-30、ジェネラルシップ0-20、ジヨンの減点20と合わせ、合計0-30でジヨン。ジャッジは減点があったため割れたが、2者が倉本を支持し、倉本が判定勝ちした。
ベイノア、米国修行からの復帰戦は井上雄策に判定勝ち
第5試合 MMA ライト級(71kg) 5分3R
○“ブラックパンサー”ベイノア(極真会館/元RISEウェルター級(67.5kg)王者、元J-NETWORK同級王者、極真会館全日本ウェイト制2018軽量級優勝)
×井上雄策(リバーサルジム川口REDIPS/MAJESTIC)
判定3-0 (松宮=ベイノア[D0-0 A0-0 G20-0]/橋本=ベイノア[D0-0 A0-0 G20-0]/石川=ベイノア[D0-0 A0-0 G20-0])
RISEで活躍してきた空手家・ベイノアは21年MMAデビューし、大晦日大会では武田光司に腕十字で一本負け。22年はキックルールで海人と和島大海に連敗し、大晦日のRIZINでは宇佐美正パトリックに1R KO負けした。昨年からサンノゼのアメリカン・キックボクシング・アカデミー(AKA)で長期修行を敢行し、1年4カ月ぶりの試合に復帰する。
井上は元パンクラス・ライト級2位の35歳。18年7月に江藤公洋に敗れて以降、YouTubeチャンネル『マッスルグリル』で人気を博し、登録者数は40万人を超える。昨年10月のRIZIN名古屋大会で5年ぶりに復帰すると、渡慶次幸平に1R TKO勝ちし、今回復帰2戦目となる。
1R、離れた間合いのスタンドの攻防が終始続き、ノアが時折サウスポーに切り替えつつ、ステップで距離を取りながら、ミドル、ローを当て、ハイにもつなげようとする。ノアも慎重で攻撃数は伸びないが、井上は攻撃が返せない。
2Rも同様でノア優位だが、どちらも攻撃が少ないと、中盤に長瀬レフェリーから積極的に攻めるよう注意が出される。だがそれでも変わらず終わる。インターバル後には両選手に消極的だとして警告が出される。
3R、井上が前に出れば、ノアはステップで距離を取り、井上は攻められない。ノアも蹴りを時折当てるが、回る時間が増えたことでヒットが減る。場内はブーイングが飛ぶ異例の状況に。終盤、少し組みの展開にもなるが、グラウンドにはならず、ノアは反撃を許さず終了する。記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス0-0、ジェネラルシップ20-0、合計20-0でノア。ジャッジ3者もノアを支持し、ノアが判定勝ちした。
コレスニック、中原由貴に判定勝ちしRIZIN 3連勝
第4試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
×中原由貴(マッハ道場)
○ビクター[ビクトル]・コレスニック(ロシア/タイガームエタイ/Kuznya/セルビアンBC&ロシア・オープンFCフェザー級王者)
判定0-3 (松宮=コレスニック[D0-0 A0-30 G0-20]/橋本=コレスニック[D0-0 A0-30 G0-20]/石川=コレスニック[D0-50 A0-30 G0-20])
中原はGLADIATOR、パンクラス、ONEを経て22年にRIZINに参戦し、関鉄矢、原口央相手に連勝したが、大晦日大会では鈴木千裕に1R KO負けした。昨年9月には白川陸斗に判定勝ちしている。3月のカード発表会見で中原は「剛毅會でやってきた空手と、今までやってきたレスリングとボクシングが融合してきたので、結果で有明アリーナを湧かせます」と話していた。
コレスニックはサンボをベースとし13年にMMAデビュー。ロシアやセルビアの大会で5連勝後、昨年5月にRIZINに初参戦し、ライト級で岸本篤史をカーフキックで倒しTKO勝ち。10月の名古屋大会では適性階級のフェザー級で高木凌を打撃で圧倒して判定勝ちしている。今回もフェザー級で強さを見せつける。
1R、サウスポーの中原、オーソドックスのコレスニックが終始スタンドの攻防を続ける。お互いパンチでひるませる場面を作り、中原も攻撃を当てていたが、全体的にはコレスニックの右ストレート、ミドル、ハイが度々当たり、手数で上回る。2Rも基本的に似た構図で、中原も攻撃を返す場面があるが、コレスニックが手数多く攻め続ける状態が続く。
3Rもコレスニックが打撃で優位を維持する。中盤、ようやく中原が目先を変え、タックルを仕掛けるが、ダメージと消耗の影響もあってか、簡単に切られる。最後は中原が飛びつきギロチンで引き込むが、コレスニックは防御して終了する。記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス0-30、ジェネラルシップ0-20、合計0-50でコレスニック。ジャッジ3者もコレスニックを支持し、コレスニックが判定勝ちした。
篠塚辰樹、初のベアナックル戦は1R KO勝ち
第3試合 ベアナックルルール 58.9kg契約(スーパーフェザー級相当) 2分5R
○篠塚辰樹(MASTER BRIDGE/剛毅會/元Krushフェザー級(57.5kg)王者)
×ジャスティン・マルティネス[Justyn Martinez](米国/31 Six マーシャルアーツ)
1R 1’33” KO (右ストレート)
篠塚は25歳。中学からボクシングを始め、インターハイではベスト8入りし、プロボクシングでは4戦3勝1敗。18年にRISEでキックデビューし9戦した後、21年3月からK-1 GROUPに上がり、2戦目の21年12月に新美貴士のKrushフェザー級王座に挑戦したが2R KO負け。怪我の療養等を経て、昨年3月に復帰し林勇汰、佑典をKOすると、11月には森坂陸に判定勝ちし、Krushフェザー級王座を獲得した。平本蓮の練習仲間としても知られ、平本の推薦で大晦日のRIZINに参戦すると、オープンフィンガーグローブ着用キックルールで冨澤大智と対戦し、パンチで2ダウンを奪い判定勝ちした。3月26日付でK-1 GROUPとの契約が終了し、Krushのタイトルも返上しての初戦が、米国の素手のボクシング大会・BKFC(ベアナックル・ファイティング・チャンピオンシップ)のルールの試合となった。
BKFCは18年に米国で旗揚げ。拳にはバンデージのみ着け、ボクシング同様に立った状態でのパンチのみが有効。ボクシングの元世界王者やUFCの元王者・ランカーが多数参戦し、これまで80大会が行われている。米国でこのルールの試合が認可された州中心に開催され、英国やタイにも進出している。今年2月にRIZINの榊原信行CEOがフロリダの大会を視察した際、篠塚と平本も同行し、篠塚はBKFC挑戦に意欲を示していた。BKFCからもRIZINを通じて篠塚に対し、4月27日(現地時間)のBKFC初のロサンゼルス大会への参戦オファーがあり、篠塚は参戦を承諾していた。だが、29日のRIZIN.46のYA-MAN×鈴木の中止により、大会のテコ入れのため、篠塚出場のBKFC提供試合がRIZINのリングで行われることになった。
対戦相手は調整が難航し、結局、当日の開会式の前に発表された。ジャスティン・マルティネスは30歳。レスリングをベースに、アマMMAで2戦2勝後、22年4月のBKFCでプロデビューし、その後もレギュラー参戦し、戦績は3戦2敗1無効試合。
1R、ゴングが鳴ると、背の低いマルティネスが、頭を下げて左右のフックを振り回して前に詰めて来る。篠塚は下がったが、離れると、左ジャブ、右ストレートを的確に当てる。マルティネスも右ストレートをを返すと、篠塚は笑顔を浮かべつつ、ガードを下げて挑発し場内を沸かせる。すると篠塚がプレッシャーをかけ、マルティネス左フックを空振りした直後 右ストレートを当てる。マルティネスはダウンし、BKFC派遣のニック・ベレンス・レフェリーがカウントを数えるが、立ち上がれず、篠塚のKO勝ちとなった。マイクを持った篠塚は「みんなどうだった?ベアナックル最高でしょ。またやるから楽しみにしてね」とアピールした。
初来日のノジモフ、1年ぶり復帰の山本空良を圧倒
第2試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
×山本空良[そら](POD/PFC/元Fighting NEXUSフェザー級王者)
○イルホム・ノジモフ[ナジモフ][Ilkhom Nazimov](ウズベキスタン/タイガームエタイ)
2R 3’39” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
山本喧一氏の次男・空良は一時はRIZINで3連勝したが、22年7月にウガール・ケラモフに判定負け。同年11月にFighting NEXUSで横山武司に判定負けし、NEXUSの王座から陥落。昨年4月のRIZIN代々木大会では金原正徳に判定負けした。6月の地元札幌大会は怪我のため出場を回避。その後、タイ、ハワイでの武者修行を重ね、1年ぶりに試合復帰する。
ノジモフは6歳よりボクシングとテコンドーを習い、柔道や空道を練習していたこともある。15年にMMAデビューし、18~22年に7連勝。昨年3月のUAEウォリアーズではカザフスタンの選手にわずか8秒でKO負けしたが、11月のRIZINアゼルバイジャン大会では蹴り技主体でカメルーンの選手を苦しめ判定勝ちし、今回の初来日につなげた。
1R、空良がタックルを仕掛けると、切ったノジモフがコーナー際でギロチンを仕掛ける。空良は防御していたが、レフェリーのアクションコールを聞くと、飛びついてノジモフの胴に両足を巻きつける。これが裏目となり、ノジモフはテイクダウンを奪うことに成功する。下になった空良は足関と腕十字を狙うが、ノジモフは対処し、時折パウンドを当て、優位を印象付ける。インターバル後、ノジモフにロープつかみの反則で警告が出される。
2R、ノジモフが左ボディストレートを的確に当て、空良のタックルを潰して上になる。ノジモフはスタンドに戻ると、パンチを何発も当ててから、左膝蹴りでダウンを奪う。コーナーを背に下になった空良が、パウンドで追撃するノジモフに三角絞めを仕掛け、場内を沸かせるが、すぐにノジモフは脱出する。スタンドに戻り、ノジモフがパンチラッシュから右ストレートを強打しダウンを奪う。ここで止めてもいいぐらいだったが、ノジモフが上になり、肘とパウンドを当て続け、ようやくレフェリーがストップした。マイクを持ったノジモフは「66kgのチャンピオンになります」とアピールした。
高木凌、西谷大成を1R KOし「千裕勝ったぞ」
第1試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
○高木 凌(パラエストラ八王子/パンクラス・フェザー級1位)
×西谷大成(JAPAN TOP TEAM)※トライフォース赤坂から所属先名変更
1R 4’04” KO (右ストレート)
高木は鈴木千裕の練習仲間。21年にパンクラスでデビューしパンクラス6勝1敗。22年12月の5戦目で新居すぐるにアームロックを極められ一本負けしプロ初黒星を喫したが、昨年は3月に遠藤来生を、7月に中田大貴を、いずれもスタンドの打撃でKOした。10月の名古屋大会でRIZINに初参戦すると、ビクトル・コレスニックに圧倒され判定負けしている。
西谷はYoutubeでの「朝倉未来1年チャレンジ」出身。DEEPで6勝5敗後、昨年6月の札幌大会でRIZINに初出場したが、1R開始早々、鈴木博昭に飛び膝蹴りを放った際にカウンターの左フックを被弾しTKO負けしている。昨年11月のOFG着用キック大会・FIGHT CLUBでは山口裕人を1R KOしている。今回の高木戦は3月23日の神戸大会で組まれていたが、西谷が2月18日のBreakingDownでのキックルールの試合で、YURAにKO負けしたため延期となっていた。
1R、サウスポーの西谷に対し、高木が右ハイ、ストレート、左ジャブを的確に当てる。西谷がタックルで倒しても、すぐに立ち続ける。すると終盤、高木がプレッシャーをかけ、西谷をコーナーに詰めると、ガードを下げて雄たけびを上げて誘ってから、西谷が左ストレートで前に出て来たところで、高木が右ストレートをクリーンヒットし、見事一撃KOした。
マイクを持った高木は「19歳から格闘技をやって、RIZIN目指してて、自分のことを知らない人が盛り上がっててうれしいです。西谷選手がこんなに見てもらったんで。西谷選手はズレたりせずまたDEEPとかで頑張ってください。千裕勝ったぞ。ゴー」と話した。