Krush 4.28 後楽園ホール(レポ):異例の当日綱引き抽選マッチ。ゴンナパー、復帰戦は2ダウン奪う完勝も塚本拓真が奮闘。Krush王者 稲垣柊、元K-1王者 林健太に判定勝ち。佐々木大蔵&ジン・シジュンは1R KO勝ち
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Krush.160
2024年4月28日(日)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
異例の当日綱引き抽選でカード決定。K-1×Krushスーパー・ライト級4対4マッチ
3月に大和哲也がK-1スーパー・ライト級(65kg)王座を返上し、9月以降の年内にK-1では王座決定トーナメントの開催を計画している。その出場者の査定試合として、4月28日のKrush.160では同級の4試合が行われた。題して「K-1vsKrush スーパー・ライト級」。だが対戦カードは当日まで未定。赤コーナー側にはK-1を主戦場にしている4選手、青コーナー側にはKrushを主戦場としている4選手、計8選手の出場だけが決まっており、対戦カードは試合当日の本戦第1試合開始前の18時からの綱引きによる公開抽選で決められた。赤コーナー側はジン・シジュン、佐々木大蔵、林健太、ゴンナパーの順に試合をすることが決定しており、それぞれの対戦相手の青コーナーの枠に稲垣柊、寺島輝、塚本拓真、FUMIYAの誰かが抽選で入るシステムだ。
Krushの宮田充プロデューサーは3月12日の記者会見で「格闘技をやっていると、修羅場や不測の事態や急きょ相手変更があったりしますが、それの究極の形だと思います。以前に全日本キックでやったことがあります。実際、100%・200%力を発揮する選手、ナーバスになって70%・50%ぐらいしか力を出せない選手がいます」「勝ちイコール、トーナメント決定ではないです。素晴らしい戦いが繰り広げられた場合は、敗者でもトーナメントに入るという可能性も全然あります」と説明。アクシデントがつきものの1DAYトーナメントを見据え、特殊なシチュエーションでの選手の総合力を査定するのが狙いだ。
当日18時からの綱引き抽選では、ロープがもつれて組み合わせがわかりにくくなってしまったものの、ジン・シジュン vs. FUMIYA、佐々木大蔵 vs. 寺島輝、林健太 vs. 稲垣柊、ゴンナパー vs. 塚本拓真という組み合わせとなり、2試合は豪快な1R KO決着、2試合は判定負けした選手も底力を見せる好勝負となる。
ゴンナパー、2ダウン奪う完勝も塚本拓真が健闘
第8試合 K-1×Krushスーパー・ライト級(65kg)4対4マッチ(4) 3分3R(延長1R)
○ゴンナパー・ウィラサクレック(タイ/ウィラサクレック・フェアテックスジム/元K-1&Krushライト級王者、元WPMF世界スーパーライト級王者)
×塚本拓真(K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)
判定3-0 (西村29-27/箱崎29-27/梅木30-26)
ゴンナパーは31歳。20年6月、篠原悠人に判定勝ちしてKrushライト級王座の3度目の防衛を果たして以来以来4年ぶりとなるKrush出場。K-1でKO負けした相手・篠原にリベンジすると、同年12月、林健太を下しK-1ライト級王者になる。21年7月の初防衛戦で朝久泰央に敗れ王座陥落したが、その後は4連勝。22年6月のTHE MATCHではRISEの白鳥大珠を、8月のK-1では岩崎悠斗をKOしたが、以降はブランクが続いていた。宮田氏の話によると、ゴンナパーはタイに戻り、練習を休んでいたが、今年1月、ウィラサクレック会長がジムを作る準備でタイに帰った際、ゴンナパーが復帰の意志を伝え、今回の復帰の場を用意したという。
塚本は26歳。昨年4月のKrushスーパー・ライト級王座決定トーナメント準決勝で小嶋瑠久に判定負けしたが、小嶋が怪我で決勝に進めず、リザーブマッチ勝者の佑悟も反則勝ちでダウンした際のダメージがあり、塚本が決勝に上がることとなり、稲垣柊に1R TKO負けした。異例の2試合でのダメージをしっかり抜き、今年1月の再起戦では近藤魁成から2度のダウンを奪って判定勝ちしている。
1R、ゴンナパーがサウスポーからの左ミドルを序盤から強打しつつ、左ストレートもヒットし主導権を握る。塚本も中盤に右ストレート、ミドルを返す場面もあったが、ゴンナパーの勢いは止まらず、終盤、ゴンナパーが左ストレートでダウンを奪う。その直後にもゴンナパーが左ストレートでダウンを奪うと、最後はパンチの連打で追い詰め、塚本は耐える。ポイントは10-7でゴンナパーに。
2R、ゴンナパーが左ストレート、ミドルを随所で当てるが、塚本は耐えつつ、自分の右ミドル、ハイ、ストレートをお返し、ゴンナパーのヒットの方がやや多いが、塚本も追い上げゴンナパーを削るように。記者採点はイーブン。
3R、塚本はゴンナパーをロープやコーナーに詰め、右ストレート、ミドル、ハイ、膝のヒットを増やし、ゴンナパーを苦しめるようになる。だがゴンナパーも耐え、左ミドル、膝、ストレートをお返し。一進一退の攻防に場内は沸きあがる。終盤、塚本の右ストレートでゴンナパーはのけぞるが、離れると崩しを絡め、塚本の反撃を封じて逃げ切る。記者採点は塚本。合計29-27でゴンナパー。ジャッジ3者もゴンナパーを支持しゴンナパーが勝利したが、塚本の健闘も光る一戦だった。
バックステージでのインタビューでゴンナパーは「久々の試合で動きが鈍かったです。塚本のパンチは重かったですが、もっと大きい選手と戦ってきたので、耐えられると思いました。どんどん試合をしてK-1王者に帰り咲きたいです。タイにできたウィラサクレックジムもよろしくお願いします」と話した。
宮田P「塚本がゴンナパーを下がらせただけでも綱引きをやった価値があった」
宮田プロデューサーによると、ウィラサクレック・ウォンパサー会長は今日の試合を見て、ゴンナパーを本来の1階級下のライト級に戻して戦わせることも検討しているという。宮田氏は「ゴンナパーはすぐ試合を組みたい。まだまだこんなもんじゃないとファンの皆さんもわかっていると思う。ムエタイの選手は試合をどんどんして取り戻していく」「連休明けに会見があるんですけど、7月7日のK-1でライト級で戦うこともあると思う。ゴンナパーは昔みたいにK-1でムエタイの強さを見せて欲しい」と期待たっぷりに語った。
さらに宮田氏は「塚本選手が光りましたね。3Rに返したのは大したものでした。ちょっと涙腺が緩みましたね。久々にこみ上げるものがありました。18時にゴンナパーとの試合が決まってから怖かったと思う。塚本がゴンナパーを下がらせただけでも(綱引きを)やった価値があったと思う。これからの塚本が楽しみです」と語った。
Krush王者・稲垣柊、元K-1王者・林健太を圧倒し判定勝ち
第7試合 K-1×Krushスーパー・ライト級(65kg)4対4マッチ(3) 3分3R(延長1R)
×林 健太(FLYSKY GYM/Tmile Gym/元K-1ライト級王者、元Bigbangスーパーライト級王者)※FLYSKY GYMから所属変更
○稲垣 柊[しゅう](K-1ジム大宮チームレオン/Krushスーパー・ライト級王者)
判定0-3 (西村26-30/水谷27-30/梅木27-30)
林は29歳。20年12月にゴンナパーに敗れてK-1ライト級王座から陥落して以降、勝ち負けを繰り返し、22年に小嶋瑠久、不可思に連勝し、昨年3月のK’FESTAで大和哲也のK-1スーパー・ライト級王座に挑戦したが判定負けに終わった。試合はそれから1年ぶりとなる。
稲垣は24歳。22年、佐々木大蔵がK-1の王座獲得に専念することを理由にKrushスーパー・ライト級王座を返上し、23年年1月から王座決定トーナメントが行われ、稲垣は東本央貴、寺島輝、塚本拓真をKOし新王者となる。昨年11月の初防衛戦では小嶋瑠久に判定勝ちしている。
1R、サウスポーの稲垣が回って距離を取りつつ、右ジャブ、左ストレートを的確に当てて主導権を握る。中盤、バッティングとローブローのダメージを林は負うが、大きく引きずらず再開する。だが終盤、稲垣が左ストレートでダウンを奪い、その後もパンチを当て続け林を追い詰める。
2R、稲垣が変わらず右ジャブ、左ストレートを度々当て主導権を維持する。林は崩れず、前に出続け、パンチが交錯する場面で時折右フックを返すものの、稲垣のパンチをもらい続ける状態は変わらない。記者採点は稲垣。
3R、稲垣がパンチを当て続け優位を維持する。途中、稲垣の左ローが2度ローブローとなり、箱崎レフェリーから警告が出される。中盤に林も右テンカオを連打して稲垣を下がらせる場面もあったが、終盤は稲垣が右ハイも当てつつ、パンチを当て、反撃を封じて終える。記者採点はイーブン。合計27-30で稲垣。ジャッジ3者も稲垣を支持し、稲垣が判定勝ちした。
マイクを持った稲垣は、ローブローを謝罪した後、「スーパーライト級が空位になって、僕が世界を取らないと始まらないと言ってて、トーナメント決まるかわからないですけど、しっかり準備して僕がベルト巻きます」とアピールした。
佐々木大蔵、寺島輝を1R KOし連敗を3でストップ
第6試合 K-1×Krushスーパー・ライト級(65kg)4対4マッチ(2) 3分3R(延長1R)
○佐々木大蔵(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST/元Krushスーパー・ライト級&ライト級王者)
×寺島 輝[ひかる](TANG TANG FIGHT CLUB)
1R 2’19” KO (右ストレート)
佐々木は33歳。寺島とは22年6月のKrushスーパー・ライト級王座防衛戦で戦い、佐々木が3R KO勝ちしている。続く22年9月のK-1で大和哲也のK-1王座に挑戦し判定負けし、連勝が10でストップすると、昨年3月のRISEでは白鳥大珠に判定負けし、6月のK-1でもパコーンに延長判定1-2で惜敗し、上位勢との戦いで苦戦が続いている。
寺島は26歳。昨年のKrushスーパー・ライト級王座決定トーナメントでは初戦で蓮實光に判定勝ちしたが、4月の準決勝で優勝者の稲垣柊にKO負けした。昨年11月の再起戦ではFUMIYAをKOしている。
1R、開始すぐから佐々木が前に手で、寺島をコーナーに詰めると、左ストレートをクリーンヒットして先手を取る。中盤、寺島が前に出て右ストレートを返す場面もあったあが、その後も佐々木がプレッシャーをかけ続けると、終盤、コーナーに詰めて右ストレートを2連続でクリーンヒットし、寺島をKOした。
マイクを持った佐々木は「ただいま」と第一声を放ち、「10連勝から3連敗、凄い暗闇の中というか、続けてきて良かったなって思います」と話して涙を流し「今日の結果で9月、K-1トーナメント、つかめるんじゃないかと思うんで、今に満足することなく地道にコツコツ積み上げたいです。これからもサポートお願いします」とアピールした。
ジン・シジュン、FUMIYAを1Rで粉砕
第5試合 K-1×Krushスーパー・ライト級(65kg)4対4マッチ(1) 3分3R(延長1R)
○ジン・シジュン[Jin Sijun](韓国/KTKアジア ウェルター級王者、大韓キックボクシングCKSミドル級王者)
×FUMIYA(E×F)
1R 2’48” KO (右フック)
※ジンが計量250gオーバー。1R減点1、グローブハンデ(Krush選抜選手8オンス、ジン10オンス)、ファイトマネーから20%減額
シジュンは33歳。30戦20勝(10KO)8敗2分。昨年7月のK-1両国大会でK-1に初参戦し、不可思と対戦したが、バッティングによる負傷判定でドローで終わっていた。今回の「K-1vsKrush」が3月に発表された後、シジュンは参戦を志願し、メンバーに加えられた。
FUMIYAは29歳。24戦11勝(11KO)13敗と負け越しているが、勝った試合は全てKO勝ち。昨年8月に近藤魁成に1R KO勝ちしたが、11月には寺島輝から先制ダウンを奪いながらも1R KO負けした。当初この「K-1vsKrush」に入っていなかったが、K-1陣営のシジュンの追加参戦により、FUMIYAに声がかかり、FUMIYAも快諾した。
綱引き抽選の結果、追加発表の2名が戦うことになるが、シジュンが計量オーバーながらも実力差を見せつけることに。1R、FUMIYAが距離を取り、左右のカーフ、ローをシジュンの前足に当て続け、順調に試合を進めていたが、終盤、シジュンがFUMIYAをロープ際に詰めてから、右のオーバーハンドフックをクリーンヒットしダウンを奪う。FUMIYAは立ったもののダメージは大きく、止めてもいいような状態だったが、西村レフェリーは試合を続行すると、シジュンがコーナーに詰めてパンチを連打し、最後も右フックでマットに沈めた。
シジュンは「これがKrushですよね。いい試合ができたと思います」とマイクで話した。宮田プロデューサーはシジュンについて「勝ったけど計量クリアできなかったので、当分起用は無いと思う」と厳しくコメントした。綱引きマッチはK-1側の4戦3勝1敗で終わった。
第4試合 スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
×岡嶋形徒(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)
○松本涼雅(月心会チーム侍)
3R 2’03” KO (右フック)
岡嶋と松本の一戦は1月のKrushで組まれていたが、岡嶋が右下蜂窩織炎となりドクターストップがかかり中止となっていた。
客席でteam ALL-WIN時代の先輩・安保瑠輝也が見守る中、松本が強さを見せる試合に。1R、松本が右のカーフを絡めつつ、左ミドル、前蹴り、ハイ、膝、ジャブを的確に当て続けて主導権を維持する。記者採点は松本。
2R、岡嶋が前に詰めてパンチや飛び蹴りを当てる場面もあるが、全体的には松本の1R同様の右ロー、左ジャブ等攻撃が多く当たり続ける展開で変わらない。
3R、岡嶋は必死に前に出てパンチを振るい、連打する場面もあったが、松本はかわすと、右ハイを効かせてから、カウンターの右フックをクリーンヒットし、岡嶋をKOした。
第3試合 フライ級(51kg) 3分3R(延長1R)
○長野 翔[かける](K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)
×小浦 翼(K-1 GYM横浜infinity/元プロボクシングOPBF東洋太平洋ミニマム級王者・元日本同級1位)
判定3-0 (30-24/30-25/30-24)
小浦は29歳。小学生から極真空手を始め、高校から始めたボクシングではOPBF東洋太平洋ミニマム級王座を獲得し、プロ18戦15勝(10KO)2敗1分の好成績を残した。昨年2月の日本ミニマム級王座決定戦で計量失格すると、キックに転向し、12月のKrushでプロデビューしたが、白幡裕星の左ミドルをもらい続けて失速し判定負けしている。
長野は19歳。K-1アマチュア チャレンジAクラスで3度優勝し22年8月にプロデビューした生え抜き。プロ唯一の黒星は昨年5月の現Krushフライ級王者・大夢戦でプロ6戦5勝1敗。現在2連勝中で、1月大会では西林翔平に判定勝ちしている。
試合は長野が小浦を圧倒することに。1R、長野の伸びのある右ストレートが終盤に小浦の顔面を捉え、小浦はダウンする。その後も小浦はパンチをもらいフラつき続ける。
2R、長野は左ジャブでまたもダウンを奪う。小浦はダメージが大きく、1Rのダウン以降、クリンチを繰り返し、2R終盤には減点1を科される。
3R、小浦はクリンチが多く、警告を受け、長野は攻めあぐねるが、反撃を許さず判定勝ちした。
第2試合 バンタム級(53kg) 3分3R(延長1R)
○坂本寿希(リーブルロア/元KROSS×OVERスーパーバンタム級王者)
×鈴木太尊(谷山ジム小田原道場)
判定3-0 (30-28/30-28/30-28)
第1試合 スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
×立基[りき](K-1ジム目黒TEAM TIGER)
○天野颯大[そうた](キング・ムエ/K-1甲子園2021 -60kg優勝)
判定0-2 (29-30/30-30/29-30)
プレリミナリーファイト スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R
△上垣内[うえがいと]一成(月心会ラスカルジム)
△茶圓吏久[ちゃえん りく](K-1ジム蒲田チームアスラ)
判定1-1 (30-29/30-30/29-30)