Krush 11.25 後楽園ホール(レポ):松谷綺が女子アトム級王者に「菅原美優選手を倒せるのは自分しかいない」。稲垣柊、スーパー・ライト級王座初防衛。壬生狼一輝、松山勇汰が豪快KO勝ち。壽美引退セレモニーも
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Krush.155
2023年11月25日(土)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
稲垣柊、小嶋瑠久に判定勝ちしスーパー・ライト級王座初防衛
第9試合 Krushスーパー・ライト級タイトルマッチ(65kg) 3分3R(延長1R)
○稲垣 柊[しゅう](K-1ジム大宮チームレオン/王者)
×小嶋瑠久[るーく](ARROWS GYM/挑戦者)
判定3-0 (豊永30-28/箱崎30-28/西村30-29)
※稲垣が初防衛
昨年、佐々木大蔵がK-1の王座獲得に専念することを理由にKrushスーパー・ライト級王座を返上し、今年1月から第9代王座決定トーナメントが行われた。稲垣は1月の一回戦で東本央貴を3R左ストレートでKOすると、4月には準決勝で寺島輝を2R左ストレートでKOし、決勝では塚本拓真をパンチと膝の連打で1Rで粉砕し、チャンピオンベルトを巻いた。稲垣はトーナメント3試合ともKO勝ちで、さらに9連勝・4連続KO勝ちと勢いに乗る。
小嶋もトーナメントに参戦し、一回戦で松本篤人に判定勝ちし、準決勝で塚本拓真に判定勝ちした。だが、塚本戦で左まぶたを腫らしドクターストップがかかり決勝に進めなかったため、今回、稲垣の挑戦者に選ばれた。稲垣も小嶋も4月のトーナメント以来の試合となる。
1R、サウスポーの稲垣に対し、オーソドックスの小嶋の右インローが、開始早々ローブローとなり中断する。再開後、お互い慎重な戦いが続くが、その中で小嶋の右ミドル、三日月蹴りが、終盤にかけてヒットが増え、若干優位になる。とはいえまだ稲垣もひるむほどにはならない。攻撃の少ない稲垣は、右足の甲・小指あたりにテーピングをしており、痛めていた可能性がある。記者採点は僅差ながら小嶋としたが、まだイーブンでも不思議ではない。
2R、小嶋は変わらず右ミドルを当てているが、中盤にパンチが交錯すると、稲垣の左フックがさく裂し、小嶋は下がってしまう。その後、クリンチが増える一方、小嶋の右ミドルのヒットが減り、稲垣の右ジャブ、左ストレート、ミドルのヒットが増えやや優位に。記者採点は稲垣。
3R、稲垣が右ジャブを当てていると、小嶋は鼻血を出すように。中盤、小嶋も右ストレート、左ボディを当て返すが、稲垣もパンチを返していると、終盤、稲垣が右ジャブ、左ミドル、ストレートのヒットを増やしてやや優位で終える。記者採点は稲垣。合計329-28で稲垣。ジャッジ3者も1~2点差で稲垣を支持し、稲垣が判定勝ちで初防衛に成功した。
ベルトを巻きマイクを持った稲垣は「満員の中で防衛出来て、最低限の防衛はできましたが、見ての通りお客さんがすぐ帰ってしまって、しっかり締めれなかったです。強くなって戻って来ます」と話し、少し悔し気にコメントした。バックステージで来年の目標について聞くと「しっかり倒して言いたかったんですけど、K-1 GROUPにいる以上、K-1のベルトに近付ける試合をしたいです」と話した。ちなみにこの日のKrushは前売段階でチケットが完売していた。
松谷綺が女子アトム級王者に「菅原美優選手を倒せるのは自分しかいない」
第8試合 第4代Krush女子アトム級(45kg)王座決定戦 3分3R(延長1R)
×奥脇奈々(エイワスポーツジム/BOM女子ピン級(45.53kg)王者)
○松谷 綺[きら](ALONZA ABLAZE)
判定0-3 (梅木26-30/箱崎26-30/西村25-30)
※松谷が王者に
K-1女子アトム級王者でもある菅原美優がKrush同級王座を返上し、山田真子×松谷綺で第4代王者決定戦が組まれたが、山田が負傷欠場し、代わって約3週間前のオファーで奥脇が王座戦に臨んだ。
奥脇はラジャダムナン認定ミニフライ級王者である奥脇竜哉の姉で26歳。きょうだいで子供のころからムエタイを習い、21年12月にはMIREYに判定勝ちしムエタイの王座であるBOM女子ピン級(45.53kg)王座を獲得。昨年6月のK-1女子大会でK-1 GROUPに初出場し、森川侑凜に判定勝ち。今年4月のKrush女子大会では山田に判定負け。最近では10月1日のBOMでMARIに判定勝ちしている。戦績21戦7勝13敗1分。
松谷は11戦8勝1敗2分の20歳。昨年6月の初代K-1女子アトム級王座決定トーナメント準決勝で菅原に判定負けしてプロ初黒星を喫したが、以降は昨年11月に優に判定勝ちし、今年4月にウォン・ガヨンに判定勝ちすると、7月のK-1では元K-1女子アトム級王者のパヤーフォンに延長判定勝ちしている。
1R、松谷がスピード差を活かしてフェイントをかけ、随所で右ミドルをヒットし主導権を握る。奥脇も左ミドル等を返すが攻撃が少ない。すると終盤、松谷が右の前蹴りを奥脇のアゴに当てて倒すと、岡田レフェリーはダウンを宣告する。ミドルキックの軌道からハイキックに変化し、アゴに前蹴りの形で当たり、そのまま足で押し倒すような形となり、ダメージは小さく見えたため、一般的なキックボクシングやムエタイならスリップとなる可能性のほうが高い。岡田レフェリー自身の要請で、リプレー検証が行われるが、覆らずダウンと認めることを梅木審判部長はマイクでアナウンスする。ただしK-1ルールの第11条 採点基準に「ジャッジがダメージの少ないフラッシュダウンであると判断した場合には減点1ポイントになる場合もある」と記載されているため、合計点を見る限り、梅木・箱崎の2名のジャッジは1Rを10-9とつけたようだ(KrushもK-1も同じルールを採用。K-1 GROUPはラウンド毎の採点は非公開)。再開後、松谷はラッシュを仕掛けるが、追加のダウンは奪えず終わる。
2R、松谷が変わらず右ミドル、ストレート、前蹴りを当て続け圧倒。終盤にはパンチの連打でも下がらせ、終了間際には左ハイでダウンを奪う。
3R、松谷は自在にパンチ、飛び膝、ミドル等を当て続け、変わらず圧倒し、最後も左ハイでフラつかせ、パンチラッシュで追い詰め終了。松谷が点差を広げ判定勝ちし、念願のKrushのベルトを巻いた。
松谷は「奥脇選手、急きょにも関わらずオファーを受けてくれてありがとうございます。菅原選手を倒せるのは自分しかいないので、次、菅原選手とK-1で倒したいです。来年、K-1のベルトを懸けて組んでもらえるとうれしいです」とアピールした。
壬生狼一輝、ピンチ乗り越え心直を2R KO
第7試合 バンタム級(53kg) 3分3R(延長1R)
○壬生狼一輝(力道場静岡/元Krush&大和バンタム級王者)
×心直(REON Fighting sports GYM/元KNOCK OUT-REDスーパーフライ級王者)
2R 0’54” KO (右ストレート)
壬生狼は昨年12月のK-1初代バンタム級王座決定トーナメントの準決勝で、優勝者の黒田斗真に判定0-2で惜敗今年は6月のK-1で白幡裕星に判定勝ちし、8月のKrushでは日韓対抗戦の大将を務め、パク・ヒョンウをKOした。
心直はKNOCK OUTを主戦場にし、9月のK-1横浜アリーナ大会でK-1 GROUPに初参戦したが、Krushバンタム級王者の池田幸司の右テンカオをもらい2R KO負けしている。カード発表会見で心直は壬生狼を「K-1 GROUPで城戸康裕と壬生狼一輝だけは笑ったことがない」と挑発し、壬生狼も「K-1 GROUPに色物は二人いらん」と言い返していた。
1R、心直が序盤、サウスポーからの左ミドルを随所で強打し、順調な滑り出し。だが中盤、壬生狼が右のパンチを絡めつつテンカオを当てると、心直は前回の試合同様、苦しそうな様子を見せる。終盤は壬生狼が手数多く攻めやや優位に。記者採点は壬生狼。
すると2R、心直が左ミドルを連打してから、左ストレートを当てると、壬生狼は後退する。心直は追撃しパンチラッシュを仕掛けるが、壬生狼も打ち合いに応じると、この中で右テンカオをヒット。壬生狼は心直の左ストレートをかわしてから右ストレートを当ててダウンを奪う。心直は倒れたまま動けず、壬生狼のKO勝ちとなった。
マイクを持った壬生狼は「2回連続KOじゃ。ちょっと危ない場面もあったが全然大丈夫じゃ。心直に勝ったんで、池田選手、もうそろそろいいじゃろ?今度RISEで試合決まっとるけど、勝ってもらって、わしとやってもらって、12月にチャンピオンになったほうと(ベルトを)懸けてやろうや」とアピールし、最後は「やる気、元気、一輝!」と観客と共に叫んだ。
第5代Krush女子フライ級王者・壽美 引退記念セレモニー
8月に引退を表明した壽美[ことみ](NEXT LEVEL渋谷/第5代Krush女子フライ級王者)の引退セレモニーが行われた。壽美はキック通算戦績16戦12勝(2KO)4敗。K-1 GROUPでは10戦行い、19年8月のヨセフィン・ノットソン戦以外の9試合で勝利し、20年11月にはK-1女子フライ級王者・KANAにも勝った実績がある。
引退セレモニーではジムのOGでトレーナーでもあるグレイシャア亜紀、紅絹の両氏、同僚の小林愛三、練習仲間藤野恵実や、家族・スポンサーが花束を贈呈。マイクを持った壽美は「もっとキックをやりたかったです。K-1チャンピオンになりたかったです」と涙を流しながら話し、「皆さんも今を大切に生きて欲しいです」とメッセージを送り、10カウントゴングを聞いた。
松山勇汰、西元也史を2R KO。髙橋直輝の王座挑戦を熱望
第6試合 スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
×西元也史(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)
○松山勇汰(TEAM TOP ZEROS/LARA TOKYO/K-1甲子園2020 -60kg優勝)
2R 2’31” KO (3ダウン:左ストレート)
西元は昨年12月、中島千博のKrushスーパー・フェザー級王座に挑戦したが判定負け。4月の中国の武林風での試合では勝利したが、7月大会では後に中島を破って新王者になった髙橋直輝に敗れている。
松山は19歳の新鋭。昨年からKrushのリングでは4連勝中で、ここ3戦はSOUL、岡嶋形徒、チャン・ウヒョクを連続KOし勢いに乗る。
1R、サウスポーの松山に対し、西元が中央側で構えプレッシャーをかける構図が続くが、松山は下がったり回りっぱなしにはならず、随所で左ミドルを強打する。西元もパンチや左右のローを時折当てるものの、まだ距離が遠く、強打は乏しい。記者採点はイーブン。
すると2R、試合は一気に動く。松山はギアを上げ、左テンカオを増やしつつ、左ハイにつなげ、西元をフラつかせると、左ストレートでダウンを奪う。松山はさらに左ストレートでダウンを奪うと、最後もパンチと膝の猛ラッシュからの左ストレートでマットに沈めた。
完勝の松山は「西元選手に勝ったんで、次、髙橋チャンプとタイトルマッチどうですか?」とマイクアピールした。
第5試合 スーパー・ライト級(65kg) 3分3R(延長1R)
○寺島 輝[ひかる](TANG TANG FIGHT CLUB)
×FUMIYA(E x F)
1R 2’13” KO (3ダウン:右ストレート)
1R、開始すぐ、FUMIYAの右ローがローブローとなり一時中断する。だが再開直後、FUMIYAが右の飛び膝で寺島をコーナーに下がらせ右フックでダウンを奪う。その後もFUMIYAが右テンカオやパンチで寺島を下がらせるが、打ち合いの展開で寺島が左右のフックを当て返しダウンを奪い返す。するとFUMIYAのダメージが大きく、寺島が右フックで再びダウンを奪うと、最後も右ストレートでマットに沈めた。
第4試合 ライト級(62.5kg) 3分3R(延長1R)
○龍華(ザウルスプロモーション/K-1甲子園2019&2020 -65kg優勝)
×岩﨑悠斗(ARROWS GYM/元J-NETWORKスーパーライト級王者、元S-BATTLE KICKライト級王者)
2R 0’53” KO (左ハイキック)
1R、前に出続ける岩﨑に対し、龍華はサウスポーで回って距離を取りながら、左のミドル、インロー、カーフを随所で当てる。龍華がやや優位だが、まだフラつかせるほどの攻撃は無く、岩﨑も右ストレートやミドルを返し、はっきりした差はつけさせない。
2R、岩﨑が序盤から右ストレート等をまとめるが、バッティングで一時中断する。再開後、龍華がやや近めの距離ながら左ハイを当たると、側頭部にクリーンヒット。岩﨑はダウンする。岩﨑は立ち上がったが、三浦レフェリーはダメージが大きいと判断しストップした。
マイクを持った龍華は「このところいい結果が出せませんでしたが、応援してくれる人たちのおかげで勝てました」と涙を流しながら話した。
第3試合 スーパー・ライト級(65kg) 3分3R(延長1R)
○川﨑聖亮朗[しんいちろう](HIGHSPEED GYM)※川﨑真一朗 改め。月心会ラスカルジムから所属変更
×斉藤雄太(K-1ジム五反田チームキングス)
3R 1’18” KO (右カーフキック)
1R、スピードと反応で劣る斉藤に対し、川﨑が右ストレート、ミドル、ロー、ハイ等を的確に当て続け主導権を握る。2Rも同様に川﨑がパンチと蹴りを当て続け、右カーフキックも効かせる。すると3R、右のカーフで2ダウンを奪ったところでレフェリーがストップした。
マイクを持った川﨑は「5年4か月勝ち星がありませんでした。心が折れかけましたが、たくさんの人に支えられてここまで来れました。来月で32歳になりますけど、あと少し格闘技をやりたいです」と話した。
第2試合 スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
×友尊(TEAM K/BLUE DOG GYM/元NJKFスーパーフェザー級王者)
○目黒翔大(優弥道場)
判定0-3 (西村29-30/山根29-30/金子29-30)
1R、両者サウスポーで構え、目黒が終盤、友尊をコーナーに詰め、パンチと膝で追い詰める。2Rもやや目黒優位だが、友尊は持ち直し、右のバックハンドブローを返す場面も。だが3Rは目黒がまたも手数多く攻め友尊を苦しめ判定勝ちした。
第1試合 スーパー・バンタム級(55kg) 3分3R(延長1R)
×豊田優輝(BELLWOOD FIGHT TEAM/K-1カレッジ2019 -60kg優勝)
○“狂拳”迅(WIZARDキックボクシングジム)
2R 2’46” KO (右フック)
1R、狂拳が終盤、サウスポーの豊田に右ストレートを当ててダウンを奪う。2Rにも狂拳は右ストレートでダウンを奪う。豊田は左膝、ミドル等を随所で返し、少し持ち直したかに見えたが、終了間際、豊田に左ミドルを空振りさせた後、右フックをクリーヒットし、またもダウンを奪ったところでレフェリーがストップした。
プレリミナリーファイト第3試合 フェザー級(57.5kg) 3分3R
○渡邉 陸(POWER OF DREAM)
×神谷勇輝(SUNRISE GYM)※ARROWS GYMから所属変更
2R 2’17” KO (右ストレート)
プレリミナリーファイト第2試合 バンタム級(53kg) 3分3R
○紀空[きら](K-1ジム五反田チームキングス)
×今村流星(KINGS)
判定0-3 (25-30/25-30/25-30)
プレリミナリーファイト第1試合 スーパー・ライト級(65kg) 3分3R
○哲志(K‐1ジム五反田チームキングス)
×石川優斗[まさと](K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)
判定2-0 (30-29/30-29/29-29)