RISE 9.8 横浜BUNTAI(レポ/後半):志朗、田丸辰との接戦制し世界バンタム級王座初防衛。中村寛、中国の新鋭エン・ペンジェーとの死闘制す。チャド・コリンズ、麻火佑太郎を1R KOし65kgトーナメント優勝宣言
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RISE WORLD SERIES 2024 YOKOHAMA
2024年9月8日(日)神奈川・横浜BUNTAI
レポート&写真:井原芳徳 (那須川龍心戦ほか前半戦のレポートは別記事に掲載します)
志朗、田丸辰との接戦制し世界バンタム級王座初防衛
第13試合 メインイベント RISE世界バンタム級(55kg)タイトルマッチ 3分5R(無制限延長R)
○志朗(BeWELLキックボクシングジム/王者、元ISKAムエタイ世界同級王者、RISE -55kgトーナメント2020優勝)
×田丸 辰[とき](TRY HARD GYM/挑戦者、RISEスーパーフライ級(53kg)2位、元同級&フライ級(51.5kg)王者、RISE -54kgトーナメント2023優勝)
判定3-0 (長瀬50-49/北尻50-49/和田50-49)
※志郎が初防衛
今年4月、横浜文化体育館の跡地にオープンした横浜BUNTAIで初開催されたRISE WORLD SERIES。そのメインイベントには、今年3月のRISE ELDORADOのメインで不完全決着に終わった志朗と田丸辰のタイトルマッチが再び置かれた。
志朗は31歳。那須川天心との2度の対戦で名を高め、天心ボクシング転向後のRISE軽量級の主力として活躍。昨年7月のRISE -54kg世界トーナメント一回戦ではルペン・セオアネに判定勝ちしたが、8月の準決勝でクマンドーイに判定負け。12月の両国大会ではクマンドーイと同門のブンロンに1R KO勝ちした。今年3月のRISE ELDORADOのメインでは、-54kgトーナメント優勝者の田丸を相手に、RISE世界バンタム級(55kg)王座の初防衛戦を行ったが、1R終盤の偶発的なバッティングにより志朗が鼻を負傷し、2R開始早々にドクターストップがかかり、無効試合で終わっていた。
その後、6月15日の大阪大会では田丸がジョン・ヒョヌに35秒でKO勝ちすると、9.8 横浜での志朗に再戦を呼び掛けた。志朗も6月30日の後楽園ホール大会でクリスティアン・マンゾに判定勝ちすると「次は横浜で会いましょう」と回答し、7月10日の記者会見で、ベルトを懸けての再戦が正式発表された。
田丸は22歳。昨年3月の-54kgトーナメント予選で風音に判定勝ち。7月の一回戦ではクマンドーイに勝った実績のあるペッシラーを1R KO。8月の準決勝では大﨑一貴に判定勝ち。12月の両国大会での決勝ではクマンドーイに判定勝ちして優勝し、賞金1000万円を獲得した。予選枠から這い上がっての優勝が高く評価され、RISEの年間表彰「RISE’s PRIZE」の2023年のMVPにも選ばれ、300万円も獲得している。
試合は5Rに及ぶ接戦に。1R、志郎がオーソドックス、田丸がサウスポーで構え、お互い距離を取りフェイントをかけ合い、見合う状態が続く。田丸が左インローやミドルを時折当てるが、まだ攻撃が少ない。記者採点もジャッジ3者もイーブン。
2Rも同様で、1Rよりは少し増えたものの、まだお互い攻撃数が伸びない。田丸は左インロー、右ロー、左ボディ、志郎は右ボディストレートを当てるが、その先につなぐことができない。記者採点もジャッジ3者もイーブン。
3Rも均衡は崩れず。志郎が右インロー、ボディストレート、ストレート、田丸が左ミドル、インロー、ストレート等を当て、攻撃は増える。記者採点もジャッジ3者もイーブン。
4R、お互い攻撃を増やし、ストレート、ミドル、ローの応酬を繰り広げるが、まだ均衡が崩れない。片方が当てれば、すぐにもう片方もしっかり攻撃を返し、どちらも譲らない展開に。記者採点はイーブン。
5R、田丸が左インロー、ミドル、ストレートのヒットを増やす。志郎も右ストレート、ミドルを随所で返し、強打ではやや印象を残す。記者採点はイーブン。合計50-50でイーブン。ジャッジは3者とも5Rだけ志郎につけ、志郎の判定勝ちとなり、志郎がRISE世界バンタム級王座の初防衛を果たした。
志郎は「(KOが多くて)時間が早まったので5Rやってちょうど良かったかなって思います」と話して苦笑し、「階級下から挑戦してくれた田丸君がいて防衛戦が成り立ったんでありがとうございます」と田丸に感謝の言葉を述べた。続けて「真のチャンピオンは防衛してこそで、これで胸を張ってRISE世界チャンピオンと言えます。今、60㎏とかが対世界が盛り上がっているので、伊藤代表、軽量級もよろしくお願いします。12月も出るかわからないですけど、自分含めてRISEの応援よろしくお願いします。これからも世界最強目指します」とアピールした。
ジャッジ3者とも5Rの志郎につけた採点について、志郎はバックステージでのインタビューで「さっき天心君と話したら、天心君(の採点では)は4を(志郎が)取ってたんですけど、4か5で取ったのは流血させたというのがありますね。鼻血出て目が腫れてたんで、見栄え的にもそうですし。なるべく自分の攻撃で終わるようにして、そうすれば見栄えが違うので、そこを4か5で意識したというのはありますね。そこでどっちかに振り分けるとしたら自分につけるしかないなと思ってましたね」と話し、延長の可能性についても「もしかしたらあるかなぐらいですね。でも1ポイント差では絶対取っただろうなという自信はあったので、精神的には自分の方が有利だったので、延長でも良かったと思います」と語った。
敗れた田丸は「ドローで延長だと思いました。正直、全員が5Rつけるほどの内容だったかなと思います」と不満を示しつつも「延長でギア上げてダウンを取って勝つプランを試合中に立てていたんですけど、心構え的に二流だったと思います」と反省した。
RISEの伊藤隆代表は「(前日)会見で『皆さんの想像を超える試合をして欲しい』と話したんですけど、そこは達成できなかったのかなと。ジャッジに聞いてみたら、4Rまでで40対40だったんですね。最後の5Rに(田丸が)鼻血が出てダメージの部分で志郎を取ったと。僕的には延長があってもいいかなと思いました。メインイベントで世界タイトルマッチということで緊迫感があり、駆け引きがあって、本人たちはやりにくかったと思うんですけど、そういう部分が見ている人に伝わるような選手になって欲しいと思いました。強いて言えばメインに対する欲はそこでしたね」とコメントし、両選手に気遣いつつも、少し不満の残る様子だった。
中村寛、中国のエン・ペンジェーとの死闘制す
第12試合 セミファイナル 61.5kg契約 3分3R(延長1R)
○中村 寛[かん](BK GYM/RISEライト級(63kg)王者、元DEEP☆KICK -60kg王者)
×エン・ペンジェー[Yuan Pengjie](中国/仏山温拿拳館)
4R 判定3-0 (小川10-9/北尻10-9/長瀬10-9)
3R 判定1-1 (小川30-29/北尻28-29/長瀬29-29)
中村は27歳。昨年4月、直樹に判定勝ちし、RISEライト王座を獲得。8月のアリシェル・カルメノフ戦は中村の左肩の脱臼により無効試合に終わったが、12月のアフマド・アコーダッド戦では2R左フックでKO勝ち。今年3月のRISE ELDORADOではK-1の与座優貴とのライト級王者対決を行ったが負傷判定負け。6月の地元大阪大会ではタリソン・フェレイラに3R左ハイでKO勝ちしている。
RISEでは来年、スーパーフェザー級(60kg)からライト級(63kg)の中間の61.5kg契約でのWOLRD SERIESトーナメントの開催を計画している。今回はその前哨戦・査定試合の位置づけとなる試合が61.5kg契約で2試合組まれた(もう1試合は常陸飛雄馬×カルメノフで常陸が判定勝ち)。原口の相手・ペンジェーは中国では39戦無敗、外国では5戦4勝1敗で、4月のタイでのタイ人とのムエタイでは判定負けしている。
1R、両者サウスポーで構えつつ、ペンジェーは時折スイッチも織り交ぜ、長いリーチを生かして左右のストレート、ジャブ、膝蹴りを当てる。中村は早くも左まぶたを腫らす。中村は左カーフキックを当て、少し相手をフラつかせるが、パンチは空振りが続いてしまう。記者採点はペンジェーだがイーブンもありうる。
2R、中村は前に出続け、パンチを振るうが、ペンジェーはかわし、随所で左右の膝を叩き込む。中盤過ぎ、中村が右フックでペンジェーをひるませるが、終盤にはペンジェーも左フックで中村をひるませ、やや優位で終える。記者採点はイーブンだがペンジェーもありうる。
3R、同様の構図で、ペンジェーは変わらず膝を当て続け、パンチも絡める。中村はしぶとく前に出続けていると、終盤、左ボディを効かせつつ、左フックを度々強打し、ダウン寸前まで追い詰める。記者採点は中村。合計29-29でイーブン。ジャッジは三者三様で延長へ。
延長R、変わらず中村が前に出て、ペンジェーは膝、前蹴りで応戦する。中盤から中村の左フックが炸裂する頻度が上がる。ペンジェーもパンチを返すが、中村やや優位で終わる。記者採点は中村だがイーブンもありうる。ジャッジ3者とも中村を支持し、中村が死闘を制した。
マイクを持った中村は「しょっぱい試合ですみません。無敗と言われている選手とやれて実力が示せたんで、文句なしで来年トーナメント開催してもらえるように一から頑張ります。一から生活環境を変えます」と話した。
バックステージでの中村の話によると、1Rにもらったパンチで目がふさがり、ほとんど見えない状態で戦っていたという。「生活環境を変えます」と話した件については、現在、練習が週2日しかできていないことから、スポンサー集めを強化する意味だと説明した。
一方、敗れるもインパクトを残したペンジェーは「これからも日本で試合したいです。57kg、60kgでも戦えます。大雅と戦いたいです。ベルトも取りたいです」と継続参戦に意欲的だった。
チャド・コリンズ、麻火佑太郎を1R KOし65kgトーナメント優勝宣言
第11試合 スーパーライト級(65kg)(ノンタイトル戦) 3分3R(延長1R)
○チャド・コリンズ(オーストラリア/ストライクフォース/RISE世界スーパーライト級王者、WMC・WMO・WBCムエタイ世界同級王者)
×麻火佑太郎(PHOENIX/4位)
1R 2’22” KO (右ストレート)
12月21日の幕張メッセ大会で行われる65kg 1DAYトーナメントに向けての査定マッチとして、チャド・コリンズ vs. 麻火佑太郎、中野椋太 vs. イ・ソンヒョンが今大会で組まれた。コリンズはトーナメント出場が内定しており、この試合では麻火が査定対象となる。
コリンズは29歳。不可思、海人、中野椋太、直樹、笠原弘希に勝ったことがあり、ムエタイでは昨年、WMC&WBCムエタイの世界王座を獲得。昨年12月のRISE両国大会ではGLORY王者でもあるペットパノムルンを5Rの死闘の末に判定で下し、RISE世界スーパーライト級王座を獲得した。ところが3月のRISE ELDORADOではGLORY推薦で初来日したミゲール・トリンダーデにわずか95秒でKO負けしてしまった。6月29日のオーストラリアでのルンキット戦では2R KO勝ちし、ムエタイのWMOの王座を獲得。半年ぶりのRISEで前回の悪印象をできるだけ拭って12月のトーナメントに勢いづけたいところ。
麻火(あさひ)は24歳。長野出身でテコンドーをベースとし、KNOCK OUTで古村匡平、大谷翔司、RISEで木村“ケルベロス”颯太に敗れたが、22年12月以降、RISEで北井智大、マサ佐藤、KENTA、野村太一に勝利。4月のONEではONE 8連勝中だった元ラジャダムナン王者のセクサンからダウンを奪って判定勝ち。7月26日のRISE後楽園大会ではフランクちゃんを2R KOし、連勝を6に伸ばすと、9月大会でのコリンズまたはイ・ソンヒョンとの対戦を希望し、世界王者・コリンズとの試練の一番が用意された。
1R、サウスポーの麻火に対し、オーソドックスのコリンズが開始すぐからプレッシャーを強めて距離を潰し、ロープに詰めてパンチ、ロー、ミドル等を当て続ける。中盤過ぎ、コリンズはパンチ等で追い詰め、右ハイでダウンを奪う。麻火は立ったがダメージが溜まっており、最後はコリンズが右ボディストレートを2連打してからの右ストレートで麻火をKOした。
マイクを持ったコリンズは「シャーク・イズ・バック。12月のトーナメントももちろん優勝します。集大成のように考えています。RISEで戦うのがうれしいです」と涙目になりながらアピールした。
イ・ソンヒョン、中野椋太との接戦制す
第10試合 スーパーライト級(65kg) 3分3R(延長1R)
×中野椋太(誠至会/RISEウェルター級(67.5kg)王者、S1世界ウェルター級王者、元WBCムエタイ日本統一・NJKF同級王者)
○イ・ソンヒョン(韓国/RAON/RISEスーパーライト級1位、元RISEミドル級(70kg)&ライト級(63kg)王者、RISE KOREAウェルター級(67.5kg)王者、KTK −70kg級王者)
判定0-3 (小川29-30/豊永29-29/秋谷29-30)
チャド・コリンズ×麻火佑太郎とともに、この試合も12月の65kg世界トーナメントの査定マッチとして組まれた。
中野は28歳。22年5月、稲井良弥に2R KO勝ちしRISEウェルター級王者となる。22年8月にチャド・コリンズに1R KO負けし、昨年7月にイ・ソンヒョンに2R左バックハンドブローでKO勝ち、12月にペトル・モラリに判定負け。4月の後楽園大会では稲井を相手に王座初防衛戦を予定していたが、稲井の欠場により中止・延期に。6月の大阪大会での宇佐美秀メイソン戦は負傷判定ドローで終わっていた。
ソンヒョンは33歳。昨年3月のRISE ELDORADOで海人に判定負けしRISEミドル級(70kg)王座から陥落。それから1カ月後の韓国での試合でKO勝ちし、7月にウェルター級(67.5kg)に階級を下げて中野と対戦したがKO負け。今年3月のRISE ELDORADOではスーパーライト級(65kg)に落として白鳥大珠からダウンを奪い判定勝ちしている。
1R、ソンヒョンが中央側から圧をかけ続け、右ストレート、ロー等を当てるが、まだ手数が伸びない。中野は左ミドル等を時折返すが、やや消極的な感がある。記者採点はイーブン。
2R、中野は左右のミドルを当てるが、ソンヒョンの右ロー、左ボディ、左フックのヒットの多さがやや印象に残る展開に。中野は大崩れはしないが、少しずつ削られているように見える。記者採点はソンヒョン。
3Rもソンヒョンがプレッシャーをかけ続け、左ジャブ、右ストレート、右ロー等を的確に当て続ける。中野は攻撃が少ないまま終わる。記者採点はソンヒョン。合計28-30でソンヒョン。ジャッジも2者がソンヒョンを支持し、ソンヒョンが判定勝ちした。
白鳥大珠が1R KO勝ち
第9試合 スーパーライト級(65kg) 3分3R(延長1R)
○白鳥大珠(TEAM TEPPEN/2位、元ライト級(63kg)王者、RISE -61kgトーナメント2019優勝、RIZIN KICK -61kgトーナメント2021優勝)
×ファーパヤップ・GRABS[Farphayap GRABS](タイ)
1R 1’43” KO (右膝蹴り)
白鳥は28歳。12月のRISE両国大会でザカリア・ゾウガリーに3R左膝蹴りでKO勝ち。3月のRISE ELDORADOでは、65kg世界トーナメント(12月21日の幕張メッセ大会で実施)の査定試合でイ・ソンヒョンと対戦したが3R終盤にダウンを喫し判定負け。6月の大阪大会では中野椋太に勝ったペトル・モラリに判定勝ち。65kgトーナメント出場内定をRISEの伊藤隆代表から獲得した。
ファーパヤップは札幌のGRABSでムエタイのトレーナーを務めつつ、同地でのBOUTに参戦し、昨年3月大会では高木亮を1R KOし、6月大会では森本一陽に3R KO勝ちしている。戦績203戦162勝36敗5分。
1R、両者サウスポーで構え、白鳥が左ボディフック、ボディ狙いの左前蹴り等を的確に当てる。中盤、白鳥は右ボディを効かせて下がらせると、左ストレートとボディ狙いの右膝蹴りを連続でヒットしダウンを奪う。倒れたファーパヤップは動けず、白鳥のKO勝ちとなった。
マイクを持った白鳥は「今、格闘技界、暗い話題ばかりですけど、RISEって最高な舞台なんだと広めたくて、悪い流れを断ち切るような試合を見せたいと思って臨みました」と、RIZINの平本蓮を巡るドーピング騒動を意識するようにコメントし、「12月の世界トーナメント、日本人が盛り上げないとダメでしょ、原口選手。俺は負けてから、ずっと追いかけ続けているけど、俺ら日本人でもっと盛り上げて、幕張の会場を満員にしたいです。世界最高峰のトーナメント、ぜひ来てください。僕も12月までに必ず強くなってきます」と、客席にいる原口健飛を見つめつつアピールした。
RISE 9.8 横浜BUNTAI(レポ/前半):那須川龍心、RIZINでMMAで戦ったシン・ジョンミンを2R KO、元K-1の國枝悠太、元RISE王者の梅井泰成からダウン奪い判定勝ち