RIZIN 12.31 さいたまスーパーアリーナ:那須川天心、江幡塁を圧倒1R KO。ケイプ、朝倉海を粉砕。浜崎朱加、ハム・ソヒに惜敗。RENAはリベンジ成功
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RIZIN.20
2019年12月31日(火)さいたまスーパーアリーナ
レポート&写真:井原芳徳
第15試合 RIZINバンタム級(61kg)王座決定戦(肘有り) 5分3R
×朝倉 海(トライフォース赤坂/元THE OUTSIDER 55-60kg級王者)
○マネル・ケイプ(アンゴラ/AKAタイランド)
2R 0’38” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
※ケイプが王者に
朝倉兄弟の弟・海(かい)は8月のRIZIN名古屋大会でRIZIN&ベラトール・バンタム級王者(当時)堀口恭司を68秒でKOする波乱を起こした。続く10月の大阪大会では佐々木憂流迦をわずか54秒でKO。その試合後、堀口がリングに上がり、大晦日のRIZINで堀口のRIZIN王座を賭けて再戦することを両者が約束した。
しかし堀口が右膝の靭帯断裂で欠場することになり、長期欠場となることから王座も返上。海は大晦日、ケイプと王座決定戦を行うことになった。両者は昨年5月の福岡大会で対戦し、判定1-2の接戦で海が勝利している。
海は12月4日のカード発表時「堀口選手の欠場は残念ですけど、堀口選手が万全の状態で、もう一度戦いたいです」と話し「僕がチャンピオンになってRIZINを引っ張ります」と宣言。今大会のメインイベントを志願し承諾された。公開練習では1年半前のケイプ戦について「あの時は僕の技術が無かった」と振り返った。8月の名古屋でケイプが水垣偉弥をKOした試合について「ボクシングが上手くなっている」と評価。だが海自身も今年春からプロボクシング元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・内山高志さんの元でボクシングを学んでからパンチの質が向上。堀口・憂流迦を連続KOしており「僕のほうが間違いなく伸びている」「普通にやれば勝てます」と勝利に自信を示していた。
だが試合はケイプの圧勝に。ケイプは水垣戦同様にシューズを履いている。1R、ケイプがサウスポーに構え、回って海の圧力をかわしつつ、左右のフック、左ハイをヒット。ケイプは途中からオーソドックスに変え、海も左ミドル、右フックを当てるが、ケイプはすぐ右ストレートを返し、主導権を維持。終盤、ケイプはバックブローの前腕を当て、少し海をひるませる。
2R、海が左ストレートを当てるが、さらに連打を放ってガードが甘くなったところで、ケイプが右ストレートを当てて、海をダウンさせる。ケイプは上からパウンドをラッシュ。海は意識を保てていたが、ケイプは何発も上から右のパウンドを当て続けたところでジェイソン・ハーゾグ・レフェリーが止めた。
見事、番狂わせを果たしたケイプは、カード発表会見のスカイプでも再三口にしていた「ナンダヨ」のフレーズを改めて叫び、「幸せです。絶対に王座を獲れると信じていました。ありがとう。ずっと日本にいたいです。心は日本人です」とアピール。期待された海の戴冠を封じたものの、陽気なキャラクターで日本のファンのハートをつかんでいた。
敗れた海はバックステージでのインタビューで「勝てると思っていたので、ただただ悔しいです。パンチに対する反応も(ケイプは)良くて想定外でした。思ったより動けなかったです。強かったです」「自分でも力んでいる感じがありました」「ここ2戦ああいう勝ち方して、過信していた部分も多少あったのかなと思います」「負けたままでは終われないので、必ずリベンジしてベルトを巻きます」とコメント。兄の未来は弟の試合について「予想していた最悪な展開になりましたね。憂流迦選手に比べるとケイプは反応がいいので、力まないように言ったんですけど、自分の攻撃に意識が行って、動きが悪かったですね」と評した。
第14試合 RIZIN キックルール 56kg契約 3分3R(延長1R)
○那須川天心(TARGET/Cygames/RISE WORLD SERIES 2019 -58kg Tournament優勝、RISE世界フェザー級(57.15kg)王者、ISKAフリースタイルルール世界フェザー級(57kg)王者、ISKAオリエンタルルール世界バンタム級(55kg)王者)
×江幡 塁(伊原道場本部/KNOCK OUTスーパーバンタム級(55.5kg)王者&WKBA世界スーパーバンタム級(55.33kg)王者)
1R 2’46” TKO (3ダウン:左フック)
天心は9月のRISE WORLD SERIES -58kgトーナメント決勝で志朗に判定勝ちし優勝して以来の試合。昨年の大晦日のRIZINでは、フロイド・メイウェザー・Jrとのボクシング非公式戦を行い話題を呼んだが、今年の大晦日は王道の日本人トップキックボクサー対決が組まれた。
新日本キックの2大看板である双子の江幡兄弟の弟・塁(るい)は、キック41戦37勝(20KO)1敗3分の28歳。志朗とは11年に判定勝ち、12月に引き分けている。塁はその後、ムエタイのラジャダムナン王座獲得を目指す戦いを続けていたが、昨年からは国内強豪の揃うKNOCK OUTに参戦。8月の初代スーパーバンタム級王座決定トーナメントでは大野貴志、小笠原瑛作を破って優勝し、国内トップレベルの実力を証明した。
塁はRIZIN初参戦。肘無し、首相撲からの攻撃は1回のみと、普段とは違うルールでの試合となる。天心はカード発表会見で「江幡選手が日本人最後の一人ぐらいに思って」いると話しつつ、「これまでやって来たことの差を見せたい」とも発言。さらに公開練習では「大晦日なので、リスクを冒してでも行く」と、結果だけでなく内容にもこだわる方針を示した。塁も公開練習で話した通り、茨城県土浦市の中学時代の同級生だった俳優の三浦春馬さん、兄の睦(むつき)と共に入場し、大晦日らしい華やかな雰囲気を作り出す。
試合は天心が、いつも以上にキレのある動きで、一方的に攻める展開に。1R、天心がサウスポーに構え、圧力をかけ続け、スピードのある左ストレート、左ミドル、左テンカオを的確に当て続ける。塁も右ミドル、右フックを少し当てるが、下がり気味のため威力は不十分だ。天心は顔面狙いの左の前蹴りをクリーンヒットすると、塁はマウスピースを吐き出し後退する。
すると天心はロープに詰め、左ストレートを当ててからの右フックでダウンを奪う。塁は立つがダメージが大きく、天心が攻め続け、ロープに詰めての左ボディ、左フック、右フックの連打で再びダウンを奪う。最後は一回転してからの飛び蹴りを当てつつ、左ボディ、左フックの連打で3ダウン目を奪い、天心が完勝した。
勝利者インタビューで天心は「滅茶苦茶、気持ちよかったですね。大晦日ってことで、絶対KOするって決めていたんで、KOできて良かったです。江幡選手は日本人最強と言われていたので、レベルの差を見せつけようと思いました。初めて右フックで倒せて、成長できたと思います。江幡選手、気持ちが強くて、何度も向かって来て、いい選手と改めて思いました」とコメント。来年に向けての展望を聞かれると「2020年、オリンピックがありますけど、オリンピック以上に面白い事をします。どうなるかわからないですけど。RISEのトーナメントもあるので、江幡選手にも出てもらって、もう一度最強を決めようじゃないですか?どうですか」とアピール。「僕は格闘家以上でも格闘家以下でもない。ここに上がって、皆さんのおかげで輝けます。2020年、皆さんにとってもいい年になりますように。これからも応援お願いします」とファンに呼びかけた。
バックステージでのインタビューで天心は「適正階級で試合できて、非常に動きが良かったです。(塁から)何発かもらって、気持ちのこもったパンチで、いい攻撃でした。今回は負けるんじゃないかと言われ、絶対勝つと思いました。力まず本気で力を抜いて戦うテーマと、悪魔的な強さを見せようというテーマがありました。アップの時から負ける気がしなかったです。56kgっていいなって思いましたね。この体重だとなかなか相手はいないかもしれないですけど、階級を上げようという思いは無いです」と話し、一回転しての飛び蹴りについては「フィギュアスケートのような動きを意識しました。(名前は)アクセルキックです」と話していた。
第13試合 RIZIN女子スーパーアトム級(49kg)タイトルマッチ(肘有り) 5分3R
×浜崎朱加(AACC/王者、元INVICTA世界アトム級(47.6kg)王者、元JEWELSライト級(52kg)王者)※2度目の防衛戦
○ハム・ソヒ(韓国/チームMAD/挑戦者、ROAD FC女子アトム級(47.6kg)王者、元DEEP JEWELSフェザー級(48kg)王者)
判定1-2 (松宮=浜崎/高本=ハム/大藪=ハム)
※ハムが王者に
浜崎は米国の女子MMA大会・INVICTAで活躍し、昨年大晦日に浅倉カンナを破ってRIZINのベルトを獲得。6月の神戸大会でジン・ユ・フレイに判定勝ちし初防衛。8月の名古屋ではアム・ザ・ロケットに1R腕十字で一本勝ちし、快進撃を続ける。
対するソヒは日本のJEWELS等で経験を積み、UFCでも活躍した韓国女子MMA界のエース。7月のさいたまでRIZINに初参戦し、前澤智に1R TKO勝ちし、10月の大阪では山本美憂に2R TKO勝ちし、王座挑戦権を獲得した。
両者はこれが3度目の対戦。浜崎はデビュー2年目の10年12月、JEWELS初代ライト級女王決定トーナメント決勝でソヒと対戦し、浜崎が判定勝ち。1年後の初防衛戦で再戦したが、ソヒの腰の負傷により1R終了後にタオルが投入され、浜崎が勝利という、不完全決着に終わっていた。
1Rは終始スタンドの打撃戦。両者サウスポーに構え、ソヒがプレッシャーをかけるが、浜崎は巧くかわし、右ジャブを連続で当てる。ソヒも左ストレート、インローを返し、浜崎も左ストレートを当て、均衡は崩れない。
2Rもスタンド勝負が続き、中盤、ソヒの右ミドルを浜崎がつかんで倒し、初めて上になる。だが下からソヒが足を登らせ、三角絞めを仕掛けてチャンス。浜崎は危ない瞬間が何度かあったが、完全には極めさせず、コーナーまでじっくり運ぶ。しかしソヒはロープの隙間から頭を出した状態で、浜崎の頭に肘を当て続ける。中に戻ってからも肘を当て続け、攻勢を印象づける。
3Rもスタンド勝負で、ソヒがパンチを当てやや優位。浜崎は出血し苦しそうだ。中盤、コーナー際で組み着く状態が続くと、浜崎が首投げでテイクダウンに成功し、すぐさま袈裟固めで押さえる。その状態をキープし、浜崎はパウンドを当て続ける。終了間際に立ち上がり、サッカーボールキックを放って終える。
RIZINはラウンド毎にポイントをつけず、ニアフィニッシュが評価されるため、記者採点は2Rに追い詰めたソヒにつけた。3Rの浜崎の追い上げは、ソヒの2Rの攻勢よりもわずかに劣ると判断した。ジャッジは割れ、2者がソヒを支持し、ソヒが王者に。アウェーのため、ソヒも少し驚いたような表情を浮かべた。
ベルトを巻いたソヒは日本語で「RIZINとROAD FCの代表にありがとうございます。チームメイト、家族、ありがとうございます。応援してくれたみんなのおかげで勝つことができました。これからもいい選手になりたいです。努力してます。応援よろしくお願いします」と話し、最後に「皆さん2020年あけましておめでとうございます」と一足早く口にすると、場内は暖かい拍手に包まれた。
第12試合 RIZIN MMAルール(肘有り) RIZIN×ベラトール対抗戦 大将戦 66kg契約(フェザー級相当) 5分3R
○朝倉未来(トライフォース赤坂/元THE OUTSIDER 65-70kg級・60-65kg級王者/RIZIN代表)
×ジョン・マカパ[John “Macapa” Teixeira](ブラジル/ノヴァ・ウニオン/ベラトール代表)
判定3-0 (松宮=朝倉/大藪=朝倉/高本=朝倉)
12月29日のBELLATOR JAPANで「RIZIN×ベラトール対抗戦」3試合が組まれ、渡辺華奈が勝利し、中村K太郎とダロン・クルックシャンクが敗れ、RIZIN側は1勝2敗。今回は残りの副将戦と大将戦が組まれ、RIZINの大将は朝倉兄弟の兄・未来(みくる)が務めた。未来は7月のさいたま大会のメインで矢地祐介に判定勝ちして以来の試合。対するマカパはブラジルの名門・ノヴァ・ウニオン所属の33歳で、MMA29戦23勝(5KO/10一本)4敗2分。14年からベラトールに上がり、ベラトールでは6勝3敗、2連勝中だ。
1Rは終始スタンド勝負に。未来がサウスポー、マカバがオーソドックスに構え、緊張感あふれる攻防が続き、均衡は崩れない。未来は左ストレート、ミドル主体、マカバは右ロー、ミドル主体で攻める。
2Rもスタンド勝負で、マカバは執拗に右のミドル、ハイを放つが、未来は当てさせず、左ミドルを返す。中盤過ぎ、未来が蹴り足をつかんでからパンチを当てるとマカバはタックルを仕掛け、寝技勝負に行こうとするが、未来は切る。以降、お互いパンチを当て、一瞬ひるむ場面もあり、少し動き出すがすぐ持ち直し、均衡状態は崩れない。
3R、マカバは開始すぐタックルを仕掛けて組み付き、コーナーに押し込み、組み勝負に切り替える。未来は倒されそうになるが耐えて離れる。打撃勝負が続くが、お互いローのダメージもあってか、あと一歩踏み込めない。終盤にもマカバは押し込むが、未来は突き放す。最後も打撃勝負が続き、未来もパンチや左テンカオを当てるが、マカバはひるまず蹴りを返して、五分で終える。記者採点は僅差だがパンチ等のヒット数で上回り、マカバのタックルを切り続けた未来。ジャッジ3者も同様で、未来が緊張感あふれる打撃戦を制した。
未来は「結構いいのを入れたと思ったんですけど、頑丈でしたね。まあ、勝ったんで良かったんじゃないですか。全勝で来れたんで、歓声が多くてうれしかったので、日本の格闘技盛り上げられているのかなと思います。大晦日格闘技見てくれてありがとうございます。色んなことあると思うんですけど来年頑張りましょう。YouTube登録してください。この後も弟の試合があるので、チャンネル変えず見ていてください」とアピールした。
なお、対抗戦は副将の元谷友貴が破れ、RIZINの2勝3敗の負け越しに終わっている。
第11試合 RIZIN MMAルール(肘有り) 女子50.8kg契約 5分3R
×リンジー・ヴァンザント(米国/プレシジョンMMA/ストッケード・ムエタイ)
○RENA(シーザージム/シュートボクシング女子世界フライ級(51kg)王者)
3R 4’42” TKO (コーナーストップ:グラウンドパンチ)
RENAは6月のベラトール・ニューヨーク大会で1R裸絞めで一本負けした相手・ヴァンザントと再戦した。
1R、スタンドでお互いパンチを出した後、ヴァンザントが最初のタックルで倒し上になる。ヴァンザントは上からパウンドを落とし、サイドに移行するが、RENAはブリッジして返して上になる。RENAはサイドからヴァンザントの頭に膝とパウンドを当てて反撃し、最後は立って終える。
2R、RENAがボディと顔面にパンチを当てるが、ヴァンザントも左のミドル、ローで応戦する。RENAはヴァンザントのタックルを切り続けるが、終盤、RENAが組み付こうとしたところで、ヴァンザントはオンブになり、前回のように裸絞めを狙う。そのままグラウンドになり、バックマウントをキープした後、腕十字に移行し、腕ひしぎ三角固めでRENAを追い詰める。RENAは時間いっぱいまで耐える。ヴァンザントもフィニッシュのために力を使ったか?3Rは流れが変わることに。
3R、ヴァンザントのタックルを切ってRENAはサイドを取り、上四方に移り、アームロックを仕掛ける。中盤過ぎ、ヴァンザントは脱出すると、タックルを仕掛けるが、これもRENAは潰してサイドポジションへ。鉄槌を当てると、ヴァンザントは動きが落ち、抵抗できなくなり、RENAはマウントポジションへ。パウンドを連打し続けると、ヴァンザント陣営が棄権の意志を示す赤いバトンが投入され、RENAのTKO勝ちとなった。
ピンチを脱し、見事リベンジに成功したRENAは「リベンジマッチということと、大晦日で最近あんまりいい結果出ないことで、凄い辛かったです。29日に友達がガンの闘病の後に亡くなり、今日も告別式に行ってから会場に来ました。絶対負けたくない強い気持ちで臨むことができました。見ててくれてるかな?」と話し、最後は「1日1日大切に胸張って生きていきたいです。1日1日、努力して過ごしますので来年もよろしくお願いします」とアピールし、勝利後恒例の「1、2、3、シュート」のコールで締めくくった。
第10試合 RIZIN FIGHTING WORLD GP 2019 ライト級(71kg)トーナメント決勝 5分3R
○トフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン/オリオン・ファイト・クラブ)
×パトリッキー・“ピットブル”・フレイレ(ブラジル/ピットブル・ブラザーズ/ベラトール推薦)
判定3-0 (松宮=ムサエフ/高本=ムサエフ/大藪=ムサエフ)
※ムサエフが王者に
1R、スタンドの打撃戦が続き、スイッチを繰り返すムサエフに対し、ピットブルが圧をかけ続け、左右のパンチ、右ローを当てる。ヒット数は多くは無いが、若干優位で進む。だが3分半過ぎ、ムサエフが右フックを当てると、ピットブルは少しひるむ。ピットブルもパンチを当て返して上になるが、終了間際にムサエフが脱出すると、今度は上になり、パウンドを振り回し反撃する。
2R、ムサエフがピットブルの右ローをすくって倒そうとすると、ピットブルは四つん這いになって逃げようとする。だがロープの外に出てしまい、そのままマットの下に落ち、一時中断する。リング下のレフェリーらに落ちる寸前に押さえられたため、ダメージは無く再開する。ムサエフがまたもピットブルの蹴り足をすくってからタックルで倒すと、最後はコーナー際でピットブルを背後から押さえこみ、顔面にパンチをコツコツと当て続け、攻勢を印象づける。
3Rはスタンド勝負が続くと、ムサエフが中盤過ぎ、右ストレートのヒットをきっかけにパンチラッシュで追い詰め、上になる。残り1分、ピットブルはスタンドに戻し、組み付いて右膝をムサエフのボディに当てる。ムサエフは残り時間を気にしてから、コーナー際で組み付いて時間を稼いで終了。記者採点はムサエフ。
ムサエフが2Rと3Rの攻勢で好印象を残し、ジャッジ3者からも支持され判定勝ちし王者となった。ムサエフはベルトを巻き、優勝賞金1500万円も獲得した。ピットブルの賞金は250万円。ムサエフもピットブルもライト級GP出場者の中では断トツの強さを見せつけ、今後、日本人選手の絡む余地があるのか心配になるほどだった。
第9試合 RIZINライトヘビー級(93kg)タイトルマッチ(肘有り) 5分3R
○イリー・プロハースカ(チェコ/ジェットサーム・ジム・ブルーノ/王者)
×C.B.ダラウェイ[C.B. Dollaway](米国/パワーMMA/挑戦者)
1R 1’15” TKO (レフェリーストップ:左フックでダウン後)
※プロハースカが初防衛
プロハースカは15年大晦日のRIZINヘビー級トーナメント決勝でキング・モーに1R KO負けしたが、今年4月、RIZIN初代ライトヘビー級王座決定戦での再戦では3R TKO勝ちし、リベンジと王座獲得を果たした。10月の大阪ではファビオ・マルドナドに1R TKO勝ちし、現在9連勝中だ。
RIZIN初参戦のダラウェイは08年から10年間、UFCに上がり、ジョー・ドークセン、ジェイソン・“メイヘム”・ミラー、エド・ハーマンらに勝ったことがある。昨年のドーピング検査で禁止薬物の陽性反応が出るなどしたため、来年12月までの2年間、出場停止処分が下されていた。
1R、ダラウェイの右ローを放ち続けていると、プロハースカが蹴り足をすくって倒すが、ダラウェイはすぐスタンドに戻す。ダラウェイが右のカーフキックを当てると効き目を発揮し、プロハースカは少しバランスを崩す。だがすぐプロハースカは持ち直すと、これで火がついた様子で、圧力を強めると、下がるダラウェイに右アッパー、左フックを連続でヒット。ダラウェイがダウンすると、和田レフェリーがすぐさまストップした。
第8試合 RIZIN MMAルール(肘有り) ライトヘビー級(93kg) 5分3R
×ビタリー・シュメトフ(ロシア/USSRファイターズ)
○シモン・ビヨン[Simon Biyong](カメルーン/X-1ボクシング)
2R 0’58” タップアウト (グラウンドパンチ)
シュメトフ兄弟の弟・ビタリーは7月のさいたま大会でRIZINに初参戦し、ジェイク・ヒューンに3R TKO負けして以来の登場。対するビヨンはRIZIN初参戦の28歳。198cmと長身で、キックボクシングをベースとし、17年にMMAデビューし、今年9月に南アフリカのEFCでライトヘビー級王座を獲得している。
1R、ビヨンがタックルでテイクダウンに成功すると、ビタリーが下から腕十字を仕掛ける。ビヨンは防御すると、サイドに回り膝を当て、トップからもパウンドを落とす。時間が進むに連れパウンドが増え、ビタリーは右まぶたから出血する。インターバル後にドクターチェックが入る。
2R、ビヨンが開始すぐにタックルでテイクダウンを奪うと、上からパウンドを落とし続ける。ビヨンはマウントポジションを奪ってパウンドを当て続け、ビタリーの出血が激しくなり、防戦一方になったところでビタリーがタップした。
第7試合 RIZINバンタム級(61kg)王座挑戦者決定戦(肘有り) 5分3R
×石渡伸太郎(CAVE/元パンクラス・バンタム級(61.2kg)王者)
○扇久保博正(パラエストラ松戸/修斗フライ級(56.7kg)世界王者)
判定1-2 (大藪=扇久保/高本=石渡/松宮=扇久保)
7月のさいたま大会では、堀口の王座挑戦者候補の査定試合として、石渡伸太郎 vs. 佐々木憂流迦、扇久保博正 vs. 元谷友貴が組まれ、石渡と扇久保が勝ち残り、揃って対戦を承諾していた。だが8月の名古屋大会で朝倉海が堀口をわずか68秒でKOする番狂わせを起こし、石渡と扇久保は難しい立場となっていたが、堀口の王座返上に伴い、両者の今回の試合は次期挑戦者決定戦となった。リングサイドでは堀口も試合を見守る。下写真右上が堀口。
1R、扇久保がサウスポーの石渡のローをすくい、右フックを当てながら倒して上になる。石渡はスタンドに戻すと、左ストレートを当てて挽回する。扇久保も右ストレート、インローを返すが、終了間際に石渡が左ストレートを連打して追い詰める。
2R、スタンドの攻防が続き、若干石渡のヒットが上回る状態が続く。中盤、扇久保がテイクダウンを奪うが、石渡はその先は攻めさせずスタンドに戻す。終盤、扇久保が右のパンチのヒットを増やして巻き返す。
3R、序盤に扇久保が石渡を倒してサッカーボールキックを当てる。その後、石渡が上になり、スタンドに戻ると、両者パンチでの打ち合いに突入する。顔の腫れでは石渡が激しいが、一歩も引かず、一進一退の打ち合いを続けると、場内は大歓声に包まれる。
記者採点は扇久保。甲乙つけがたい内容で終わり、ジャッジは割れたが、ダメージの小さかった扇久保が2者から支持され勝利した。扇久保は「石渡選手、ありがとうございました。皆さん、面白かったですか?ずっと引っ張ってくれた堀口選手が出れなかったんで、何とか盛り上げました。次、たぶん、春、タイトルマッチやらせてもらえると思うんで、また盛り上がる試合するんで期待していてください」とアピール。観客からは大きな拍手が起こった。
第6試合 RIZIN MMAルール(肘有り) 105kg契約(ベビー級相当) 5分3R
○ジェイク・ヒューン(米国/アブソリュートMMA)
×石井 慧(チーム・クロコップ/HEAT総合ルール・ヘビー級王者)
1R 1’24” TKO (レフェリーストップ:右アッパー)
石井は17年4月の横浜大会でのヒース・ヒーリング戦以来となるRIZIN参戦。近年はクロアチアのミルコ・クロコップのジムで練習を続け、米国のPFL、ポーランドのKSWに参戦。今年4月のHEAT名古屋大会でHEATヘビー級王座を獲得し、来年1月19日のニューピアホール大会でのクレベル・ソウザとの防衛戦が決まっているため、わずか19日間隔での試合となる。対するヒューンはRIZINで昨年9月にプロハースカに敗れ、今年6月にロッキー・マルティネスに勝利し、7月にビタリー・シュメトフに勝利している。
1R、スタンドの攻防が続き、石井が組み付いて倒すが、ヒューンはすぐ立つと、右ストレートをヒットする。ヒューンは圧力を強めると、ロープに詰め、右アッパーをクリーンヒットし、ダウンした石井に鉄槌を連打しかけたところで和田レフェリーがストップ。石井は完敗に終わった。
第5試合 RIZIN MMAルール(肘有り) RIZIN×ベラトール対抗戦 副将戦 61.2kg契約(バンタム級相当) 5分3R
×元谷友貴(フリー/元DEEPバンタム級(61.2kg)&フライ級(56.7kg)王者/RIZIN代表)
○パトリック・ミックス[Patrick Mix](米国/ジャクソンズMMA/ベラトール代表)
1R 1’37” フロントチョーク
元谷は7月のさいたま大会で扇久保に判定1-2で惜敗して以来の試合。その後、石川から上京し、KRAZY BEE等で練習を積んできた。対するミックスはMMA 12戦全勝の26歳。うち8試合が一本勝ちで、元谷同様に寝技を得意とする。ベラトールには6月、10月に参戦し、いずれも1R一本勝ちしている期待の星だ。
1R、ミックスがテイクダウンを奪うと、元谷は下からオモプラッタと三角絞めを複合した形で極めるが、不完全な状態で、ミックスは外す。すると元谷はすぐに上を取ることに成功するが、ミックスは下からギロチンを仕掛けるとガッチリと極まり、元谷がタップ。ミックスがグラップラー勝負で快勝した。
第4試合 RIZIN キックルール 62kg契約 3分3R
○白鳥大珠(TEAM TEPPEN/RISE WORLD SERIES 2019 -61kgトーナメント優勝、元RISEライト級(63kg)王者)
×大雅(TRY HARD GYM/元K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級(60kg)王者)
2R 終了時 TKO (ドクターストップ:膝蹴りによる額のカット)
那須川天心がRISEのトーナメントで優勝したのと同じ9月の大会で、白鳥は-61kgトーナメント決勝で梅野源治を1R KOし優勝した。それから1か月足らずの10月のRIZIN大阪で白鳥は大雅に判定勝ち。2Rに2ダウンを先取したが、3Rに大雅が1ダウンを奪い返し、波乱の展開となっていたため、大雅の要望により約3か月間隔での再戦が組まれた。
1R、お互いサウスポーに構え、慎重だが、大雅が右ローをカーフキック気味に当てると、少し白鳥がバランスを崩す。
2R、大雅は右のカーフ、左ボディストレートを当てつつ、左フックもヒット。白鳥は時折詰めてパンチの連打をまとめ、スイッチも繰り返すが、なかなか打開できない。終盤、大雅が詰めて左フックを当て、好印象を残す。だが白鳥はその直前に組み付いた際に膝を大雅の顔面に当てており、これで大雅は額を切り出血している。インターバル中にドクターチェックが入るとストップがかかり、白鳥のTKO勝ちとなった。
白鳥は勝ったものの不満げで、マイクを持つと「こういう結果で終わってしまって、大雅選手もこんなもんじゃないと思っていると思います。またやる時があったら完全決着付けましょう。大晦日なので派手に勝ちたかったですけど、結果として勝って今年、全勝できました みなさんの応援が力です。ありがとうございます」とコメント。続けて「キックボクシングで皆さんが見たいのはRIZIN・RISE対K-1だと思います。来年中に対抗戦できたら、滅茶苦茶盛り上がるんじゃないですか?大雅選手には是非その時はRIZIN側で出てもらいたいです」とアピールした。
第3試合 RIZIN MMAルール 女子スーパーアトム級(49kg) 5分3R
○山本美憂(KRAZY BEE/SPIKE 22)
×アム・ザ・ロケット(タイ/ターントンジム/プーケット・トップ・チーム/元ムエタイWMC&WPMF女子ミニフライ級(47.6kg)王者)
判定3-0 (高本=山本/松宮=山本/大藪=山本)
美憂は昨年7月から石岡沙織、アンディ・ウィン、長野美香、浅倉カンナに4連勝後、10月の大阪大会ではハム・ソヒ2RvTKO負け。アムは8月の名古屋大会で浜崎朱加に1R腕十字で敗れたものの、裸絞めで追い詰めチャンスを作った。今大会で王座戦を行う浜崎とソヒに負けた同士のマッチメイクとなり、勝った方が来年の次期挑戦者の筆頭となりそうだ。
1R、アムがサウスポーの美憂に対し、右ストレート、右ミドルを着実に当てる。中盤、美憂が組み付いて倒すが、アムも下から足を登らせ、美憂は攻めあぐね、残り1分で膠着ブレイクがかかる。アムが蹴り主体で主導権を維持する。
2R、美憂は序盤から倒して上になるが、これもアムが下から足を登らせると、美憂は嫌がるようにスタンドに戻す。だが美憂は左右フックを連打してコーナーに詰め、再び倒す。今度はコーナー際で押さえ続け、アムに足を登らせず、パウンドを随所で当てて好印象を残す。
3Rも美憂が序盤からテイクダウンに成功。サイドで押さえ、鉄槌を連打する。いったん立たれても再び倒し、最後はトップキープした後、腕十字を仕掛けて終了。2R中盤以降、試合を支配した美憂が判定勝ちした。
第2試合 RIZIN FIGHTING WORLD GP 2019 ライト級(71kg)トーナメント準決勝 5分3R
×ルイス・グスタボ(ブラジル/エヴォルサオ・タイ)
○パトリッキー・“ピッドブル”・フレイレ(ブラジル/ピットブル・ブラザーズ/ベラトール推薦)
1R 0’28” KO (右サッカーボールキック)
10月の大阪大会で開幕したライト級GPの準決勝、決勝が今回行われた。一回戦でグスタボは上迫博仁に、ピットブルは川尻達也に1R TKO勝ちしている。
1R開始すぐ、ピットブルは左のフェイントからの右フックを当ててダウンさせると、上からパウンドを連打する。グスタボが座ったまま下がりつつ、コーナーを背にすると、ピットブルは右フックを2連続でヒット。ダウンしたグスタボに、容赦なく右のサッカーボールキックを当ててフィニッシュ。格の差を見せつけた。
第1試合 RIZIN FIGHTING WORLD GP 2019 ライト級(71kg)トーナメント準決勝 5分3R
○トフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン/オリオン・ファイト・クラブ)
×ジョニー・ケース(米国/MMAラボ)
1R 2’47” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
10月の一回戦でケースはホベルト・サトシ・ソウザに、ムサエフはダミアン・ブラウンに1R TKO勝ちしている。
1R、ムサエフがオーソドックスをベースに、スイッチを繰り返しつつ、右のパンチを着実に当て続ける。すると右フックをクリーンヒットし、ケースはコーナーまで吹き飛ぶ。ケースは防御を兼ねてタックルで組み付き、抱えて倒すが、ムサエフはすぐスタンドに戻すと、じわじわ詰め、左ジャブ気味のストレートを当てて、再びケースをダウンさせる。ムサエフはコーナーに押さえ込み、ケースにパウンドを連打すると、豊永レフェリーがストップ。ムサエフが無傷で初戦を突破した。
今大会の観衆は主催者発表で29,315人で、RIZIN史上最多となった。RIZINの榊原信行CEOは大会終了後の会見で、「素晴らしい大会でした。選手たちが勇猛果敢に、リスクを恐れないで戦う姿が、はかなく美しく、選手たちの生き様に感無量な気持ちです。5年前、他のイベントやPRIDEで活躍していた選手を、言葉は悪いかもしれませんが、寄せ集めて旗揚げする状態でした。5年目の年末は、日々作り上げたオリジナルのドラマによって彩られたことを感慨深く思っています」と大会を振り返った。
個々の試合については「朝倉海、浜崎朱加は超えないといけない壁ができました。これからもファンの皆さんにドラマを作り上げられれば」「ケイプと扇久保のバンタム級タイトルマッチは、来春、オリンピック前にやりたいです。試合後、扇久保が指を痛めていた様子を見かけたので、その回復次第かと思います」「天心については、あれだけの実力差があるんだなあと素直に思いました。去年メイウェザーにやられた悔しさを江幡塁に返した感じでした。こんなにダイナミックに躍進した天心を久しぶりに見ました」「ライト級GPのトフィックもピットブルも骨折していたと聞きました。プロモーターの強制ではなく、選手たちの戦いたいという決断を尊重しました」等とコメントした。
2020年の日程については「2月22日の浜松アリーナの先のスケジュールは、まだ会場の都合で決めかねています。4月に1大会を考えていて、年明けに会場が確定すると思います。4月・5月・7月は、仙台・大阪・関東圏で調整を進めます。若い選手たちから、オリンピックに負けない熱を格闘技で作りたい思いを聞いていますが、僕も同感です。格闘技全体の競技人口を集めれば、オリンピックに負けない求心力があると思います。そういうものを作る一翼を担えればと思います。他団体の理解と協力が無いと難しいと思いますが、あきらめずどん欲に動いて行きたいです。オリンピックとパラリンピックの後、9月・10月・11月に2~3大会を開催し、年末はさいたまスーパーアリーナに戻って来ます。年末までに6~7大会をスケジューリングしたいです」と話した。