RISE 12.21 幕張メッセ(レポ/GLORY RISE 65kg GP):ペットパノムルン、白鳥大珠・ソンヒョン・トリンダーデを完封し優勝賞金10万ドル獲得。日本勢初戦全滅で伊藤隆代表「“日本最弱”と書いてもらいたい」
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ABEMA presents RISE WORLD SERIES 2024 FINAL ~GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRAND PRIX~
2024年12月21日(土)千葉・幕張メッセ イベントホール
レポート&写真:井原芳徳 (※ワンマッチは別記事でお伝えします)
「GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRANDPRIX」はRISE基準の57.5kgのフェザー級ではなく、GLORY基準の65kgのフェザー級で争われるワンデートーナメント。GLORY・RISEがそれぞれ推薦する4選手ずつ、計8選手が参加する。RISEルールのワンキャッチ・ワンアタックルールと異なり、攻撃している限り5秒まで首相撲が認められる。ジャッジは極力ポイントを割り振らないといけない。2ノックダウン制。優勝賞金は10万ドル(約1,500万円)。海外ではGLORYのPPVサービスを通じて配信される。
一回戦:ペットパノムルン、白鳥大珠に判定勝ち。トリンダーデ、原口健飛を1R KOし日本勢初戦全滅
第6試合 GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRANDPRIX 一回戦(1) 65kg契約 3分3R(延長1R)
×白鳥大珠(TEAM TEPPEN/RISEスーパーライト級(65kg)2位、元ライト級(63kg)王者、RISE -61kgトーナメント2019優勝)
○ペットパノムルン・キャットムーカオ[Petchpanomrung Kiatmookao](タイ/GLORYフェザー級(65kg)王者、元RISE世界スーパーライト級(65kg)王者)
判定0-3 (長瀬28-29/北尻28-30/和田27-30)
白鳥は42戦30勝(12KO)10敗1分1無効試合の28歳。21年2月に原口健飛に判定負け。その後も直樹やゴンナパーに敗れ、3月のRISEでイ・ソンヒョンに判定負けしたが、6月の大阪大会では中野椋太に勝っているペトル・モラリに判定勝ちし、今回のトーナメント出場権を獲得。9月8日のRISEではファーパヤップを1R KOした。
ペットパノムルンは220戦176勝40敗4分の29歳。チャド・コリンズに昨年12月のRISEで判定負けし、RISE世界王座から陥落。7月に原口健飛に判定勝ちしてGLORYフェザー級王座8度目の防衛を果たし、対原口では3戦3勝している。
1R、両者サウスポーで構え、ペットパノムルンは左ローキックを多用し、組めば膝を一発当てる。小川レフェリーは一発当てた後にすぐにブレイクを繰り返す。白鳥は接近戦になると左ボディ等のパンチを多用するが、まだペットパノムルンはひるまない。記者採点はペットパノムルンだが僅差だ。
2R、序盤にバッティングで白鳥がダメージを負い一時中断する。ペットパノムルンは執拗に左ローを当て続ける。白鳥はバッティングと1Rのローブローのダメージもあいまってか、消耗が激しく、攻撃が減り、ペットパノムルンに押し倒される場面も終盤には目立つように。記者採点はペットパノムルンとしたが僅差だ。
3R、ペットパノムルンは左ミドル、ロー、膝を当てつつ、白鳥を押し倒し、前蹴りでも倒し、主導権を維持して終える。記者採点はペットパノムルン。合計27-30でペットパノムルン。ジャッジ3者とも1~3点差とバラついたがペットパノムルンを支持し、ペットパノムルンが判定勝ちした。
第7試合 GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRANDPRIX 一回戦(2) 65kg契約 3分3R(延長1R)
○イ・ソンヒョン[Lee Sunghyun](韓国/RAON/RISEスーパーライト級(65kg)1位、元RISEミドル級(70kg)&ライト級(63kg)王者、RISE KOREAウェルター級(67.5kg)王者)
×ベルジャン・ペポシ[Berjan Peposhi](アルバニア/GLORYフェザー級(65kg)4位)
判定2-0 (和田29-28/大沢28-28/北尻29-28)
ソンヒョンは82戦69勝(17KO)11敗2分の33歳。RISE 2階級制覇王者で、3月のRISEで白鳥大珠に判定勝ちし、会見前日の9月8日のRISE横浜大会では約1年前に敗れた中野椋太にリベンジし、今回のトーナメント出場権を獲得した。
初来日のペポシは戦績34戦30勝(16KO)4敗の23歳。昨年12月にミゲール・トリンダーデに判定勝ちして以降5連勝中だ。
1R、お互い右のロー、パンチを当てるが、まだ均衡は崩れない。中盤、ペポシのバッティングでソンヒョンが右まぶたをカットしドクターチェックを受ける。長瀬レフェリーは有効打によるカットと判断する。記者採点もジャッジ3者もペポシだがまだ僅差だ。
2R、ペポシがパンチやローのヒットを増やし、やや優位になるが、終盤、ソンヒョンが左フックを立て続けに当ててダウンを奪う。ところが終了間際、ペポシがカウンターの左フックでダウンを奪い返し、五分に戻し、場内を沸かせる。記者採点はペポシ。ジャッジは2者がイーブンとしたようだ。
3R、お互い譲らぬ激しい打ち合いを繰り広げ、延長でもおかしくない雰囲気だったが、終了間際、ソンヒョンが顔面への右膝蹴りを当ててダウンを奪う。記者採点合計28-28でイーブン。結局最後のダウンが決め手となり、ソンヒョンが苦しみながらも初戦を突破した。
第8試合 GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRANDPRIX 一回戦(3) 65kg契約 3分3R(延長1R)
○チャド・コリンズ[Chadd Collins](オーストラリア/ストライクフォース/RISE世界スーパーライト級(65kg)王者、WMC・WMO・WBCムエタイ世界同級王者)
×エイブラハム・ヴィダレス[Abraham Vidales](メキシコ/GLORYフェザー級(65kg)2位)
判定3-0 (大沢30-27/和田30-27/豊永30-27)
コリンズは82戦63勝(32KO)17敗2分の29歳。過去に不可思、海人、中野椋太、直樹、笠原弘希に勝利し、昨年12月のRISEではペットパノムルンに判定勝ちし第2代RISE世界スーパーライト級王者となる。ところが3月のRISEではミゲール・トリンダーデにわずか95秒でKO負け。6月の地元オーストラリアでのルンキット戦、9月8日のRISEの麻火佑太郎戦は連続でKO勝ちしている。
ヴィダレスは戦績19戦16勝(13KO)3敗の29歳。22年10月にペットパノムルンのGLORY王座に挑戦したが判定負け。その後2連勝したが、昨年12月のRISEで原口健飛に2R KO負けし、今年7月のGLORYでミゲール・トリンダーデに判定負けし2連敗中だ。
1R、お互い比較的近い距離でミドル等の蹴りを打ち合う展開に。中盤、コリンズが左ハイで少しヴィダレスをひるませる場面を作るが、終盤はヴィダレスも右ミドルのヒットを増やして巻き返す。記者採点は僅差だがコリンズ。
2R、コリンズが左ミドル、ヴィダレスは右ミドル、ローを多く当て、お互い削り合うが、なかなか均衡は崩れない。記者採点はヴィダレスとしたが僅差で、ジャッジ3者ともコリンズにつける。
3Rも激しく蹴り合い、均衡が続く。終盤、コリンズがヴィダレスをコーナーに長い時間詰め、パンチを積極的に振るい、手数差をつけて終える。記者採点はコリンズ。合計29-28でコリンズ。ジャッジは3者ともコリンズにつけ、コリンズが判定勝ちした。
第9試合 GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRANDPRIX 一回戦(4) 65kg契約 3分3R(延長1R)
×原口健飛[けんと](FASCINATE FIGHT TEAM/GLORYフェザー級(65kg)9位、ISKA K-1ルール世界ライトウェルター級(65kg)王者、元RISEライト級(63kg)王者)
○ミゲール・トリンダーデ[Miguel Trindade](ポルトガル/GLORYフェザー級(65kg)1位)
1R 2’59” KO (右ストレート)
原口は31戦26勝(17KO)4敗1分の26歳。21年11月、22年8月のRISE、今年7月のGLORYの3度、ペットパノムルンに敗れている。昨年12月のRISEではエイブラハム・ヴィダレスとダウンの応酬を繰り広げ2R KO勝ちしている。
トリンダーデは戦績65戦59勝(24KO)6敗の23歳。昨年12月にベルジャン・ペポシに判定負けしたが、3月のRISEで初来日しコリンズをKOし、7月にGLORYでエイブラハム・ヴィダレスに判定勝ちしている。
1R、原口はサウスポー、トリンダーデはオーソドックスで構える。原口は左インロー、ミドルを当て、トリンダーデは右フック、左ハイを当てる。原口も左フック、ハイを出すが、まだクリーンヒットにはならない。終盤、原口が左インローを当てていると、トリンダーデはスイッチを織り交ぜるようになり、少し効いてきたかに見えた。ところが残り10秒、トリンダーデはバックハンドブロー、左ハイを立て続けに放つ。原口は2発ともブロックしたが、すぐにトリンダーデは右ストレートをヒット。不意を打たれた原口はダメージが大きく、なんとか立ったものの後ろにフラついて倒れ、すぐさま小川レフェリーがストップ。白鳥に続き原口も初戦で散り、日本勢が一回戦で全滅してしまった。
第5試合 GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRANDPRIX リザーブマッチ 65kg契約 3分3R(延長1R)
○麻火佑太郎(PHOENIX/RISEスーパーライト級(65kg)4位)
×ヤン・カッファ[Jan Kaffa](オランダ/フロリダ・キックボクシングアカデミー/GLORYフェザー級(65kg)5位、AFSO世界王者、MIX FIGHT世界王者)
3R 1’53” KO (左飛び膝蹴り)
麻火(あさひ)は25戦16勝(3KO)9敗の25歳。テコンドーをベースとし、22年12月以降、RISEで北井智大、マサ佐藤、KENTA、野村太一に勝利。4月のONEでは元ラジャダムナン王者のセクサンからダウンを奪って判定勝ち。7月のRISEではフランクちゃんを2R KOし、連勝を6に伸ばしたが、9月の横浜大会でのフェザー級GP査定試合ではチャド・コリンズに1R KO負けした。
カッファは24戦20勝(7KO)4敗の26歳。22年8月の大阪大会でRISEに初参戦し、山田洸誓に3R KO負けしたが、その後はGLORYで3戦2勝1敗し、ベルジャン・ペポシにも昨年4月に判定勝ちしている。
1R、麻火がサウスポー、カッファがオーソドックスで構え、お互いストレート、インロー等を当てるが、まだ均衡は崩れない。
すると2R開始すぐ、カッファが右のバックハンドブローの奇襲に成功しダウンを奪う。麻火はダメージが大きい様子だが、次第に回復し、左ハイ、飛び膝蹴りを当て返して挽回する。
そして3R、麻火は開始すぐから前蹴りやパンチ等で積極的に攻めると、左の飛び膝蹴りでダウンを奪い返す。カッファも右のバックハンドブローを返して必死に反撃したが、麻火は左の飛び膝で再びダウンを奪い、逆転KO勝ちした。すぐ立ったカッファは押し倒されたとして秋谷レフェリーに抗議したが覆らなかった。
準決勝:ペットパノムルン、ソンヒョンを完封。トリンダーデ、コリンズを再び1R KO
第12試合 GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRANDPRIX 準決勝(1) 65kg契約 3分3R(延長1R)
○ペットパノムルン・キャットムーカオ[Petchpanomrung Kiatmookao](タイ/GLORYフェザー級(65kg)王者、元RISE世界スーパーライト級(65kg)王者)
×イ・ソンヒョン[Lee Sunghyun](韓国/RAON/RISEスーパーライト級(65kg)1位、元RISEミドル級(70kg)&ライト級(63kg)王者、RISE KOREAウェルター級(67.5kg)王者)
判定3-0 (秋谷30-27/和田30-27/北尻30-27)
1R、ペットパノムルンがサウスポーで構えて右の前手で距離を取り、左ミドル、インロー、膝を的確に当て続けて主導権を握る。ソンヒョンも左ボディ等のパンチを時折返すが攻撃が少ない。2Rも同じ攻防が続き、ペットパノムルンが主導権を維持する。
3R、ソンヒョンが一回戦でカットした右まぶたからの出血が激しくなりドクターチェックを受ける。ペットパノムルンが左ミドル、ボディ、ロー等を当て続け、主導権を維持し判定勝ちした。記者採点はジャッジ3者と同じく30-27でペットパノムルン。ソンヒョンは初戦のダメージの影響もあり完敗に終わった。
第13試合 GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRANDPRIX 準決勝(2) 65kg契約 3分3R(延長1R)
×チャド・コリンズ[Chadd Collins](オーストラリア/ストライクフォース/RISE世界スーパーライト級(65kg)王者、WMC・WMO・WBCムエタイ世界同級王者)
○ミゲール・トリンダーデ[Miguel Trindade](ポルトガル/GLORYフェザー級(65kg)1位)
1R 1’02” KO (2ダウン:右膝蹴り)
3月の対戦ではトリンダーデが1R KO勝ちしている。1R、開始すぐからコリンズが前に詰めて攻めようとするが、トリンダーデはかわし、右フックを効かせる。ロープ際まで下がったコリンズに、トリンダーデは左ボディを当ててダウンを奪う。コリンズは立ったもののダメージが大きく、トリンダーデが左フックと右膝蹴りを連続で当てて再びダウンを奪い、あっさりとコリンズを返り討ちするとともに、ペットパノムルンの待つ決勝に駒を進めた。
決勝:ペットパノムルン、トリンダーデの持ち味も封じ優勝
第16試合 メインイベント GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRANDPRIX 決勝 65kg契約 3分3R(延長1R)
○ペットパノムルン・キャットムーカオ[Petchpanomrung Kiatmookao](タイ/GLORYフェザー級(65kg)王者、元RISE世界スーパーライト級(65kg)王者)
×ミゲール・トリンダーデ[Miguel Trindade](ポルトガル/GLORYフェザー級(65kg)1位)
判定2-1 (豊永29-28/大沢28-29/北尻29-28)
※ペットパノムルンが優勝。10万ドルの賞金を獲得
1R、ペットパノムルンがサウスポー、トリンダーデがオーソドックスで構え、お互いスピードのあるパンチと蹴りを放つ。トリンダーデが右のストレートを放つが、ペットパノムルンはギリギリでかわし、左ミドル、ローを当てる。とはいえトリンダーデはもらいっぱなしにならず、互角に近い状態を維持する。記者採点はペットパノムルンだが、ジャッジ3者ともパンチを当てていたトリンダーデを支持したようだ。
2Rも同様の構図がしばらく続いたが、中盤から少しずつ。ペットパノムルンの左ミドルのヒットが目立ちだす。トリンダーデはパンチが空を切り、目立つ攻撃が返せない。記者採点はペットパノムルン。
3Rもペットパノムルンが左ミドルを度々ヒットし主導権を維持する。クリンチも絡めて時間稼ぎをしつつ、トリンダーデの反撃を封じて終える。記者採点はペットパノムルン。合計30-27でペットパノムルン。ジャッジは割れたが、2者が順当にペットパノムルンを支持し、ペットパノムルンが判定勝ちし、優勝を果たした。
RISE伊藤代表「来年65kgでGLORYともっと面白いことをしたい」「僕らのスタイルは日本より海外に向いている」
RISEの伊藤隆代表は大会後の総括で「ペットパノムルンは9R戦って、心の強さが非常に光りました。ミゲールは23歳ですか?凄いスター候補が出てきました」と決勝の両者を高く評価した。日本勢の白鳥と原口の初戦敗退については「世界と日本の差ですね。フィジカルだけでなく心構えも足りなかった。マスコミの皆さんに『日本最弱』と書いてもらいたいぐらいです」と厳しくコメントした。
GLORYとのトーナメント共催について伊藤氏は「来年65kgでGLORYともっと面白いことをしたいです」「世界的にびっくりするマッチを組みたいです」と述べ、今後もこの提携を発展させる方針を示した。さらに伊藤氏は「観客は全体的に7割ぐらいで満員じゃなかったですけど、世界75か国で配信し、PPVや(放送)枠の売り上げが結構出ていて、世界的に評価してもらえている」とコメント。「僕らのスタイルは日本より海外に向いていると今回実感した。日本の土壌は数十年前と変わっていない。我々の競技という部分を評価されるのは外国の方が大きい。ABEMAさんも来年から海外配信をやるということなので(国内外で)幅広くやっていきたい」と話し、RISEの海外へのアピールを強化したい考えも述べた。(大会途中には海外配信を意識し、歌舞伎俳優・市川九團次(くだんじ)さんによる毛振りの披露も行われた(左下写真))
なお、今大会では国際的なドーピング検査組織であるITA(International Testing Agency/国際検査機関)から検査員が来て、フェザー級トーナメントの一回戦を勝ち上がった4選手の検体が採取されたという。4人はITA側が決めた人数で、最初は2人のみとITA側から指示されたが、RISE側が4人を希望し、4人受けることになったという。検査結果の公表方法についてはGLORYと引き続き協議するとのことだ。