KNOCK OUT 9.16 後楽園ホール(レポ):栗秋祥梧、元Krushフェザー級王者・玖村修平を1R KO。17歳の久井大夢、大谷翔司下し2階級制覇「宮田さん、山口さん、今年僕にもう一つ何か挑戦させてください」
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MAROOMS presents KNOCK OUT 2023 vol.4
2023年9月16日(土) 後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
※REDルールは肘有りキックルール、BLACKルールは肘無し・ワンキャッチワンアタックのキックルール
栗秋祥梧、元Krushフェザー級王者・玖村修平を1R KO「K-1の奴はKNOCK OUTに上がってください。潰していきます」
第6試合 BLACK フェザー級(57.5kg) 3分3R(延長1R)
○栗秋祥梧(クロスポイント吉祥寺/元大和フェザー級王者)
×玖村修平(K-1ジム五反田チームキング/元Krushフェザー級王者、元NJKFバンタム級王者)
1R 1’44” KO (左フック)
今回のKNOCK OUTは9月いっぱいで退任する宮田充プロデューサー体制で最後の大会となる。また、当日19:00から21:30に東京の地上波テレビ局のTOKYO MXで生放送された。中でも宮田氏が大会前日のXで「裏メイン」と位置づけ、番狂わせという点含めて特にインパクトのあったのが、大会中盤の栗秋とK-1 GROUPの玖村修平の一戦だ。
栗秋は6月大会で鮫島大翔を3R左フックでKOして以来の試合。REDルールの試合が続いたが、今後はBLACKフェザー級での試合に専念する方針だ。
玖村修平は同じくK-1を主戦場とする玖村将史の兄としても知られる27歳。NJKFで王者になった後、18年からK-1 GROUPに上がり、敗れはしたが金子晃大、武居由樹、軍司泰斗、椿原龍矢といった歴代K-1王者と対戦経験がある。昨年5月に新美貴士に勝利し第6代Krushフェザー級王者に。8月のK-1福岡大会のフェザー級世界最強決定トーナメントでは一回戦でジャオスアヤイをKOしたが、準決勝で優勝者の軍司にKO負けした。12月のK-1では斗麗に判定負けし、今年3月に森坂陸に敗れKrush王座初防衛に失敗し3連敗中だが、K-1フェザー級上位集団の一人という評価は変わらないだろう
1R、栗秋がプレッシャーをかけるが、玖村は右のカーフを随所でヒット。栗秋は少し足が流れ気味になる。だが次第に足を上げカットするように。すると栗秋も右カーフをお返し。さらに栗秋は左ハイを放つと、これはブロックされるが、すぐに左ミドル、右ボディを連打し、ギアが上がった様子。するとさらに栗秋はプレッシャーをかけ続けると、一瞬潜り込んでからの左フックをヒットしダウンを奪う。コーナーを背に倒れた玖村はダメージが大きく、マットに手を突いて立とうとしたが力が抜けて倒れ、すぐさまセンチャイ・レフェリーがストップ。栗秋が下馬評を覆してKO勝ちした。
マイクを持った栗秋は「玖村選手、K-1からKNOCK OUTに来ていただき、ありがとうございます。宮田さんもありがとうございます。もっと盛り上げたいんで、この試合見て、俺も試合したいと思うK-1の奴はKNOCK OUTに上がってください。潰していきます」とアピールした。宮田プロデューサーはこの大会を最後にKNOCK OUTを離れKrushに戻るが、栗秋が宮田氏に餞別のような結果を提示した。
久井大夢、2階級制覇「宮田さん、山口さん、今年僕にもう一つ何か挑戦させてください」
第8試合 KNOCK OUT-BLACKライト級(62.5kg)王座決定戦 3分3R(延長1R)
×大谷翔司(スクランブル渋谷/元INNOVATIONライト級王者)
○久井大夢[たいむ](TEAM TAIMU/元KNOCK OUT-REDスーパーフェザー級(60kg)王者)
判定0-3 (少29-30/センチャイ28-30/和田28-30)
※久井が王者に
バズーカ巧樹が階級アップのために返上したBLACKライト級王座を懸けた一戦。
大谷は昨年7月のKNOCK OUTでは梅野源治の肘有りルールの相手を務め肘で切られTKO負け。12月には庄司啓馬を、4月は力斗を右ストレートでKOし、6月のKrushに乗り込むと、児玉兼慎から右ストレートでダウンを奪って判定勝ちし、肘無しルールでは連勝している。今回の試合が決まってから、INNOVATIONライト級王座を返上した。
久井は6戦5勝(3KO)1敗の新鋭。9月23日で18歳になる。デビュー時からKNOCK OUTで頭角を現し、7月17日のK-1に参戦し、59kg契約で龍斗(Bigbangフェザー級王者)と対戦し判定勝ちしている。
1R、久井はサウスポーで構えてガードを下げ、細かく素早く出入りしながらパンチを当てる。大谷はある程度防御しているが、なかなか自身の攻撃が増えない。記者採点はイーブン。
2R、久井は同様に細かく動き、随所で左フック、ストレート、ハイ等を当てる。体格で勝る大谷はしつこく前に出るが、少しずつもらい続けるうちに動きが落ち、鼻から出血し苦しそうだ。記者採点は久井。
3R、大谷は挽回を狙って前に出るが、鼻血が止まらず、中盤と終盤に2度ドクターチェックを受ける。パンチの打ち合いでお互いフラつく場面も。その中で久井は回って左ミドルを随所でヒットする。大谷は出血のせいもあって少し印象が悪い。記者採点はイーブン。合計29-30で久井。ジャッジは3者とも久井を支持し、久井が判定勝ちで2階級制覇を達成した。
久井は「今年、僕は色んな挑戦をさせてもらいました。中国に挑戦し(=5月に武林風に参戦)、K-1に挑戦し、今回階級を上げてライト級に挑戦しました。宮田さん、山口(元気)さん、今年僕にもう一つ何か挑戦させてください。お願いします」と、両プロデューサーにアピールした。
バズーカ巧樹、良太郎に1Rダウン奪われるも延長判定勝ち
第9試合 KNOCK OUT-REDスーパーライト級(65kg)王座決定戦 3分5R(延長1R)
×良太郎(池袋BLUE DOG GYM/team AKATSUKI/元KNOCK OUT-BLACKウェルター級王者、元REBELS-REDライト級王者)
○バズーカ巧樹(菅原道場/元KNOCK OUT-BLACKライト級王者)
6R 判定1-2 (センチャイ9-10/北尻9-10/和田9-10)
5R 判定0-1 (センチャイ47-48/北尻48-48/和田48-48)
※バズーカが王者に
良太郎は昨年7月と9月の渡部太基との2連戦でBLACKルールで判定勝ちして以来の試合。バズーカは3月の代々木大会でK-1の不可思に3R KO負けして以来半年ぶりとなるKNOCK OUT出場。6月の千葉での所属ジムの主催興行では畑中健太を1R KOしている。良太郎は階級を下げ、バズーカは階級を上げての戦いとなる。
1R、両者ムエタイ式の高い構えで軽く蹴りを打ち合う状態から始まるが、その中で良太郎が左ボディを強打する。さらにバズーカが左ミドルを放つと、カウンターで右フックをアゴにクリーンヒットしダウンを奪う。バズーカは出鼻をくじかれるが、その後は防御し、首相撲で膝を打ち合う場面が増え、五分に近い状態に戻る。記者採点は10-8で良太郎。
2Rも首相撲で膝をお互い当てる場面が目立つ。パンチ、蹴りの応酬もあるが、均衡は崩れない。バズーカはダウンのダメージは引きずっていない様子だ。記者採点はイーブン。
3Rも首相撲の多い展開で、お互い膝を当てるが、均衡は崩れない。終盤、バズーカは右まぶたをカットするがバッティングがあったようだ。記者採点はイーブン。
4Rも首相撲が続くが、良太郎は少し疲れて来た様子で膝を打つ頻度が落ちる。逆にバズーカは膝だけでなく肘やボディブローも当て、終盤は手数がやや上回った状態で終える。良太郎は頭部からカットする。記者採点はバズーカ。
5R、序盤に良太郎の頭部のカットのドクターチェックが入るがすぐ再開する。その後もバズーカ優位は変わらず、首相撲での膝、肘、崩しで印象を作り、最後は左フックでひるませて終える。記者採点はバズーカ。合計48-48でイーブン。ジャッジ1者は良太郎を支持したが、2者は記者採点と同じ48-48で延長へ。
延長R、良太郎は残りの力を振り絞り、パンチ、膝を積極的に打つように。首相撲は多いが、パンチで打ち合う場面も増える。バズーカもパンチ、膝を返し、ほぼ五分の状態を維持。最後までほとんど差のないまま終わる。記者採点は迷ったが強打でやや目立ったバズーカ。ジャッジは割れ、2者がバズーカを支持し、バズーカが判定勝ちした。
ベルトを巻いてマイクを持ったバズーカは「こんな試合じゃダメなんで、もっと強くなって、出直します」と反省した。
古木誠也、森岡悠樹との打ち合い制し1R KO勝ち
第7試合 BLACK 56kg契約 3分3R(延長1R)
○古木誠也(G-1 TEAM TAKAGI/KNOCK OUT-BLACKスーパーバンタム級(55kg)王者)
×森岡悠樹(北流会君津ジム/スック・ワンキントーン・スーパーバンタム級王者)
1R 1’37” KO (右フック)
前回8月6日の後楽園大会で1R KO勝ちした選手同士の試合が、約1か月間隔で早速組まれた。
古木は昨年12月大会で工藤“red”玲央を1R KOしBLACKスーパーバンタム級王者となり、3月の代々木大会では武蔵に1R KO負けしたが、8月6日の王座防衛戦では小倉尚也を1R左フックでKOしている。
森岡は昨年11月の第2代KNOCK OUT-REDスーパーバンタム級王座決定トーナメント決勝戦で壱・センチャイジムに判定2-0で惜敗したが、3月のスック・ワンキントーン・スーパーバンタム級王座決定トーナメント一回戦ではTAKAYUKIを1R KOし、6月の決勝では伊藤勇真を2R KOしベルトを獲得。KNOCK OUTに戻っての8月6日の試合では、K-1 GROUPとの3vs3対抗戦の一員に選ばれ、内田晶を1R右ストレートでKOした。
1R、開始すぐこそ静かだったが、数十秒で古木が右フックをさく裂させると、両者激しいパンチの打ち合いになり、お互い被弾するスリリングな幕開けに。森岡は少し距離を取り、蹴りを当てるが、古木は構わず前に出て森岡を下がらせ、パンチの打ち合いで次第に森岡を追い詰め、左フックでダウンを奪う。森岡は立ったものの流れは変わらず。最後は古木が森岡をロープに詰めてパンチを連打して、またもダウンを奪うと、森岡のダメージが大きく、すぐにレフェリーがストップした。
古木はいつも通り、KO勝ちの後も笑顔は無く無表情のまま。マイクを持つと「森岡選手、とても強い選手なのでいつも通り一所懸命練習してきました。もっとこれからも高みを目指して頑張ります」と淡々と語り、試合の激しさとのギャップで客席からも笑いが起きた。
宇佐美秀メイソン、1R KO勝ちでISKAインターコンチネンタル暫定王座獲得
第5試合 ISKAオリエンタルルール・インターコンチネンタル・ウェルター級(67kg)暫定王座決定戦 3分5R
×ジャマル・ワヒィム[Jamal Wahim](フランス/FC Creusotion/元ISKAオリエンタルルール世界同級王者、元ストライカーズリーグ&IPCC欧州同級王者)
○宇佐美秀メイソン(Battle Box)
1R 2’25” KO (右フック)
※宇佐美が王者に
メイソンはRIZINを主戦場とする宇佐美正パトリックの弟で22歳。子供の時にフルコン空手の全国大会で優勝し、ボクシングでも西日本U15大会で準優勝。母の母国・カナダの刑務所に約2年入っていたが、更生のため格闘技を再開し、昨年4月のPOUND STORMでプロMMAデビューしスソンに判定負け。12月のINOKI BOM-BA-YE×巌流島でのキックルールの試合では、アルバート・クラウスを圧倒し判定勝ちした。クラウスは42歳で引退してから2年ぶりに急きょ復帰したため動きは悪かったものの、メイソンのポテンシャルの高さを印象付ける試合だった。その後、本格的にキックに専念するため3月のKNOCK OUT代々木大会に出場すると、杉原新也に判定勝ちした。
今回はメイソンの希望によりタイトルマッチが用意された。日本の各団体でも頻繁に行われているISKAの暫定王者決定戦で、ルールは肘無し・キャッチ制限無しのオリエンタルルール(ISKAのサイトの王者一覧によると正規王者はQuentin Honoré(フランス))。対戦相手のワヒィムは同ルールの世界王座を保持していた選手で戦績75戦60勝13敗2分の38歳。
1R、長身で体格の勝るメイソンが開始すぐ、サウスポーからの左ハイを放ち、プレッシャーをかけ、左ストレートでダウンを奪う。その後もメイソンがパンチを当ててワヒィムを追い詰める。終盤、ワヒィムも右フックを返し、メイソンの勢いが少し落ちたが、最後はワヒィムがコーナーに詰めて右フックをクリーンヒットし、またもダウンを奪うと、ダメージが大きく、和田レフェリーがストップした。
ベルトを巻きマイクを持ったメイソンは「暫定王者ですけど、勝てると思っている奴、いつでも挑戦してください」とアピールした。
ぱんちゃん璃奈、テレビ中継の冒頭の試合でTKO勝ち
第4試合 BLACK 女子49kg契約 3分3R(延長1R)
○ぱんちゃん璃奈(フリー/元KNOCK OUT-BLACK女子ミニマム級(47.5kg)&アトム級(46kg)王者)
×チャッキー[Chucky](台湾/パワーパンチ/台湾ボクシング全国総統杯48kg級金メダル、WOTDキックボクシング女子51kg級優勝)
2R 2’58” TKO (レフェリーストップ:右膝蹴り)
ぱんちゃんは昨年12月、那須川天心と武尊のサイン偽造の詐欺容疑で逮捕され、2月の記者会見で謝罪すると共にBLACK女子ミニマム級王座を返上。3月の代々木大会ではエキシビションマッチを行い、その直後に不起訴処分となった。4月の約1年ぶりの公式戦では階級を上げ、長身のワン・チンロンを攻めあぐねたもの、判定2-0で勝利した。
今回の相手のチャッキーも台湾出身で29歳。15歳の時からボクシングを始め、アマチュアボクシング戦績26戦24勝2敗。3年前からムエタイとキックボクシングのトレーニングを始め、プロのキック戦績は10戦8勝2敗。
ぱんちゃんの第4試合から、TOKYO MXで生放送され、ぱんちゃんが圧勝する。1R、長身で体格の勝るぱんちゃんが終始圧力をかけ、右前蹴りで距離を作りつつ、右ストレートや左右のミドルにもつなげる。だがまだチャッキーを詰め切れず、強打は乏しい。チャッキーは離れたところからパンチを振り回し、空振りが続く。記者採点はイーブンだがぱんちゃんに付く可能性はある。
2Rもぱんちゃんが前に出て随所で前蹴り、ミドルを放ち、主導権を維持する。中盤過ぎ、右ミドルを放ち膝をチャッキーの脇腹に当てると、チャッキーは口を開いて苦しそうな様子を見せる。するとぱんちゃんは圧を強め、右ミドル、膝、フックをチャッキーのボディに集中し、右膝蹴りでうずくまらせ、スタンディングダウンを奪う。最後も同様のパターンで攻め続け、右膝をボディに当て続け、チャッキーが防戦一方になったところで秋谷レフェリーがストップした。ぱんちゃんはこれでデビュー以来の連勝が15となった。
第3試合 BLACK ライト級(62.5kg) 3分3R
×庄司啓馬(TEAM TEPPEN)
○力斗(TEAM PREPARED)
判定0-3 (秋谷26-30/センチャイ26-30/少26-30)
※2R、右フックで庄司1ダウン、3R右フックで庄司1ダウン
第2試合 BLACK スーパーライト級(65kg) 3分3R
○YUYA(クロスポイント吉祥寺)
×鈴木“シャオリン”孝司(K-1ジム五反田チームキングス)
判定2-0 (和田28-27/秋谷28-28/少28-27)
第1試合 BLACK スーパーフライ級(52kg) 3分3R
×酒井柚樹(TEAM TEPPEN)
○柿﨑 瑠(クロスポイント大泉)
判定0-3 (北尻28-29/和田28-30/少28-29)
プロ3戦3勝の17歳・柿﨑が、1R・2Rとも前蹴り、ミドル、右ストレート等を何発も当て圧倒する。酒井は耐え、3Rは疲れて来た柿﨑を右フックで追い詰め、会場を沸かせたが、柿﨑は首相撲でうまく攻撃を寸断し、逃げ切る形で判定勝ちした。