KNOCK OUT 6.11 後楽園ホール(レポ):龍聖、中国のチュームーシーフーにキャリア初ダウン奪われるも延長判定勝ちし15連勝。小笠原瑛作もトンミーチャイに辛勝
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
格闘技医学会
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MAROOMS presents KNOCK OUT 2023 vol.2
2023年6月11日(日) 後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
※REDルールは肘有りキックルール、BLACKルールは肘無し・ワンキャッチワンアタックのキックルール
龍聖、中国のチュームーシーフーに1Rダウン奪われるも延長判定勝ちし15連勝
第7試合 ダブルメインイベント2 BLACK 59kg契約 3分3R(延長1R)
○龍聖(WIVERN/KNOCK OUT-BLACKフェザー級(57.5kg)王者)
×チュームーシーフー[Qumuxifu](中国/郭強ファイトクラブ/CFP/武林新一代フェザー級トーナメント2021優勝)
4R 判定3-0 (北尻10-9/センチャイ10-9/和田10-9)
3R 判定0-0 (北尻28-28/センチャイ28-28/和田28-28)
龍聖は昨年7月にRIZINに初参戦し魁志に3R TKO勝ちして以降、9月のKNOCK OUTで小笠原裕典を、11月のKNOCK OUTでグ・テウォンを、昨年末のINOKI BOM-BA-YE×巌流島でダウサコンをKO。3月のKNOCK OUT代々木第二体育館大会ではラジャダムナン認定スーパーバンタム級王者のペットセーンセーブに手を焼いたものの、延長Rに終了間際にパンチの連打でダウンを奪い判定勝ちした。現在14戦14勝(10KO)無敗だ。今回のセコンドにはWIVERN勢だけでなくバズーカ巧樹もつく。
チュームーシーフーはK-1との交流でもおなじみ、中国の格闘技大会「武林風(ぶりんふう)」の推薦選手。四川省の少数民族「イ(彝)族」の21歳。29戦25勝(9KO)4敗と経験豊富で、昨年3月の武林風では、K-1で武尊や軍司泰斗とも戦ったワン・ジュングァンと対戦し判定負けしているが、KNOCK OUTによると「互角の打ち合いを演じたことで、中国・新世代ファイターとして期待を集めています」とのこと。試合ではその触れ込み通りの戦いぶりで龍聖を苦しめることに。
1R、サウスポーのチュームーシーフーに対し、龍聖は右のミドル、膝、ローをヒット。チュームーシーフーも力の入った左フックを時折返すが、攻撃数では劣る。
終盤には龍聖が左膝と右ボディを効かせると、チュームーシーフーに対してノーガードで顔を突き出して挑発する。するとチュームーシーフーは発奮したか?前に出て左ミドルと左テンカオの連打で龍聖をロープに詰めると、龍聖の右フックに対するカウンターで右フックを龍聖のアゴにクリーンヒットしてダウンを奪う。
倒れた龍聖はなんとか10カウントまでに立ち上がるが、表情が虚ろで状況がわかっていない様子。キャリア初のダウンを喫した龍聖は、チュームーシーフーの猛攻を必死に耐えて終える。記者採点は8-10でチュームーシーフー。
2R、序盤から龍聖は声を出しながら積極的に右ミドル、膝、ボディフックを当て続け挽回する。チュームーシーフーは苦しみながらも耐え続けるが、ダウンはしない。記者採点は龍聖。
3R、チュームーシーフーが前に出るが、龍聖も右ミドル、膝、ストレートを返し、五分の状態が続く。中盤過ぎ、龍聖の右テンカオがクリーンヒットすると、チュームーシーフーは下がるように。終盤、チュームーシーフーはは左ストレートを時折当てるが、龍聖は耐え、右ストレート、右膝を返し、前に出て終える。記者採点は僅差だが龍聖。合計28-28でイーブン。ジャッジ3者も同じ採点で延長へ進む。
延長R、龍聖は右テンカオ主体で、ミドルやボディストレートも絡める。チュームーシーフーも接近戦で左右のフックを返し場内を沸かせる。だがチュームーシーフーは終盤、左まぶたから出血し、さすがに疲労の色が濃く、手数が落ちる。龍聖も攻めあぐねるが、手数差は保ったまま終える。記者採点は僅差だが龍聖。ジャッジ3者も同様で、龍聖が延長判定勝ちで辛うじて勝利をものにした。
記念撮影後マイクを持った龍聖だったが、苦戦したせいもあってか「ダウンしたの覚えていないです。出直します。今日はすみません。ありがとうございました」とだけ話してリングを降りた。
小笠原瑛作、階級下げたトンミーチャイに辛勝
第6試合 ダブルメインイベント1 REDフェザー級(57.5kg) 3分3R(延長1R)
○小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺/KNOCK OUT-REDフェザー級(57.5kg)王者・元同スーパーバンタム級(55kg)王者、WPMF世界スーパーバンタム級王者、元ISKA K-1ルール世界バンタム級王者)
×トンミーチャイ・FELLOW GYM[Tongmeechai Fellowgym](タイ/FELLOW GYM/元タイ国イサーン地区バンタム級王者)
判定2-0 (北尻29-28/秋谷29-29/センチャイ30-29)
瑛作は12月のKNOCK OUTでラジャダムナンのランカー・チャーパヤックからローキックと右フックでダウンを奪うが、肘をもらって逆転TKO負け。3月の代々木大会では元ルンピニー3階級制覇王者で昨年のタイ・スポーツ庁認定ムエタイMVP選手のロンナチャイを圧倒して判定勝ちし、大会のMVP賞30万円を獲得した。
トンミーチャイは「トン」のリングネームで戦うこともある選手で、65戦41勝(7KO)21敗3分の27歳。構えはオーソドックス。大阪のFELLOW GYMに在籍し、19年から日本で戦い6戦3勝(2KO)2敗1分。21年までに増井侑輝と永澤サムエル聖光にKO負けしたが、いずれも62kg以上の階級だった。昨年は髙橋聖人と62kgで戦い引き分けた。これまで61.2kgのライト級以下では山畑雄摩、翔貴をKOし、昨年10月のホーストカップでの泰良拓也戦では60.5kg契約で判定勝ちしている。今回はフェザー級(57.5kg)と、タイ時代のバンタム級に近い体重での試合となり、本領を発揮する。
1R、瑛作がサウスポーで構え、左ミドルを積極的に放つ。トンミーチャイは序盤はおとなしかったが、中盤から右ミドル、膝を随所で返すようになり、組めば左肘を度々当て、瑛作を脅かす。記者採点はトンミーチャイだが僅差のためイーブンもありうる。
2R、瑛作が左ボディストレート、左インローを的確に当てダメージを与える。だがトンミーチャイも中盤から組んでの膝、肘を返し、一歩も譲らない。記者採点はイーブンだが瑛作につく可能性がある。
3R、序盤から瑛作が左ミドル、膝を当てると、トンミーチャイは疲れた様子で組む状態が増える。トンミーチャイは膝を出すが力強さは無い。瑛作も十分攻め込めないが、積極性では上回る。記者採点は瑛作。合計29-29でイーブン。ジャッジも1者がイーブンとしたが、2者は1点差で瑛作を支持し、瑛作がかろうじて本戦で勝利した。
マイクを持った瑛作は「しょっぱい試合してすみません。トンミーチャイ選手は僕と同じ27歳で大阪でトレーナーをしています。無茶苦茶上手くて前回のMVP(=ロンナチャイ))より強かったです。もっといい試合をしてKNOCK OUTを面白い大会にするんで次回大会も僕とKNOCK OUTについて来て下さい」とアピールした。
なお、瑛作の試合後、KNOCK OUT-REDライト級王者・重森陽太がリングイン。「この度、伊原道場稲城ジムと新日本キックを離れフリーになりました。今後はKNOCK OUT-REDライト級王者としてKNOCK OUT参戦します」と話し、KNOCK OUT継続参戦を表明した。
武蔵、小倉尚也を1R KOし古木誠也とのベルト懸けた再戦進出
第5試合 セミファイナル KNOCK OUT-BLACKスーパーバンタム級(55kg)次期挑戦者決定戦 3分3R(延長1R)
○武蔵(WIVERN)
×小倉尚也[たかや](スクランブル渋谷)
1R 1’58” KO (3ダウン:左フック)
18歳の新鋭・武蔵はRISE、スック・ワンキントーン、Bigbang等での試合を経て、3月の代々木大会でKNOCK OUTに初参戦し、BLACKスーパーバンタム級王者の古木誠也に1R KO勝ちした。だが武蔵が最初にダウンを奪った後、古木もダウンを奪い返す波乱の展開となっていた。
小倉はKrushで内田晶、晃貴、岩尾力相手に3連敗していたが、昨年12月のKNOCK OUTでは加藤和也に判定勝ちしし、3月の代々木大会では工藤“red”玲央を1R KO。今回もK-1グループの許可を得てKNOCK OUTに継続参戦しベルトを狙う。武蔵×小倉の勝者は8月6日の後楽園大会で古木の王座に挑戦する。
1R、序盤から両者前に出て、パンチが交錯する中で、武蔵が左ローを当てる。武蔵は下がって小倉を前に出させると、左の前蹴り蹴りのフェイントからの左のジャブをクリーンヒットし、30秒足らずでダウンを奪う。小倉は慎重に立ち上がる状態でダメージが大きく、武蔵が攻め続けた後、右フックで再びダウンを奪う。最後は武蔵が小倉をコーナーに詰め、パンチラッシュで左フックを強打しマットに沈めた。
これで8月大会の王座戦は古木と武蔵の再戦に。完勝の武蔵は「8月自分がしっかりベルト巻くんで楽しみにしてください」とアピールした。
この試合後の休憩開け、8月6日の後楽園大会の結果を受けて決まった3階級タイトルマッチの6選手が勢ぞろいし意気込みを語った。この中で登場した王者・古木は「前回の試合からキックに専念できる環境に変えました。8月はリベンジするので楽しみにしてください」とアピールした。
8.6 後楽園で激突の壱・センチャイジムと古村光も登場
今大会ではKNOCK OUT-REDスーパーバンタム級(55kg)次期挑戦者決定戦・響波[きょうは](Y’s glow)vs. 古村光(FURUMURA-GYM)が組まれていたが、響波が練習中に負傷しドクターストップがかかったため、古村が王座挑戦権を獲得し、8.6 後楽園で王者・壱・センチャイジム(センチャイムエタイジム)に挑戦することが発表済だった。壱と古村も登場すると、古村は「俺がイケメンでチャンピオンになります」と、壱のお株も奪おうとばかりのアピール。壱は「負けて負けてやっとチャンピオンになったんで、悔しい思いしかこのベルトには無いです。絶対負けない気持ちで勝ちます」と防衛を宣言した。
乙津陸、MASA BRAVELYを2R KOし宿敵・心直とのREDバンタム級王座決定戦進出
第4試合 REDバンタム級(53.5kg) 3分3R(延長1R)
○乙津 陸[おつ りく](クロスポイント大泉)
×MASA BRAVELY(BRAVELY GYM/M-1世界バンタム級王者、WPMFインターナショナル&スックワンキントーン・スーパーフライ級王者、元M-1日本バンタム級王者、元WMC日本スーパーフライ級王者)
2R 2’11” KO (左フック)
乙津は昨年12月のREDスーパーフライ級王者決定戦で心直[しんた](REON Fighting sports GYM)に判定負けし、プロ7戦目で初黒星を喫したが、今年4月の後楽園でNJKFフライ級王者の優心を破った。MASAは3月の代々木で心直を破っている。その後、乙津もMASAも心直も階級を上げることになり、今回の乙津×MASAの勝者が、8月6日の後楽園大会での心直とのREDバンタム級王座決定戦に進出することになった。
1R、MASAがサウスポーで構えて開始ぐから前に出続け、乙津はステップで回り続ける構図が続く。MASAは積極的に左ミドルを当て、ハイ、ローにもつなげ、終盤には左肘も絡め攻勢。乙津は右ミドルを時々返すが、攻撃が少ない。記者採点はMASA。
2R、MASAが変わらず前に出続け、乙津をロープに詰め、パンチと肘のラッシュで追い詰めるが、乙津がカウンターの左フックを当ててダウンを奪う。MASAは立ち上がったもののダメージが大きく、乙津が変わらずパンチラッシュで攻め続けると、またも左フックを当ててMASAをダウンさせたところで北尻レフェリーがストップした。
マイクを持った乙津は「今日バンタム級に上げて初めての試合だったんですけど、今日しっかりぶち上げられました。会長、次、タイトルマッチ絶対取るんで、お願いします」とアピールした。また、8.6 後楽園大会のほかの2階級の王座戦の選手と共に、乙津が再度リングに登場し「心直が俺を漬けるって言っていたんですけど、俺は成長しているんで、漬けられるもんなら漬けてみろって感じですね」と横にいる心直を挑発した。心直は「サウスポーが苦手で全然成長していないですね。何も面白くない試合にします。一瞬で終わらせます」と宣言した。
第3試合 REDフェザー級(57.5kg) 3分3R(延長1R)
○栗秋祥梧(クロスポイント吉祥寺/元大和フェザー級王者)
×鮫島大翔[さめしま ひろと](ウィラサクレック・フェアテックス荒川/WMC日本&M-1日本フェザー級王者)※大翔 改め
3R 2’06” KO (左フック)
1R、サウスポーの鮫島が左ミドルを積極的に当て、ミドルから左ストレートにつなげたり、膝や左も絡め優位に試合を運ぶ。栗秋は右ミドルを時折返すが後手に回り続けている。記者採点は鮫島。
2R、序盤の鮫島のローがローブローとなり一時中断する。再開後、パンチが交錯すると、栗秋の左フックが当たり、鮫島はダウンする。その後も栗秋が左フックでダウンを再び奪うが、その合間に栗秋もパンチやハイや膝をもらって消耗。最後は鮫島がパンチと膝で攻勢で終える。
3R、鮫島がパンチと膝で攻め込み、栗秋は苦しそうだったが、終盤に差し掛かり、鮫島の左フックにカウンターの左フックを合わせてクリーンヒット。鮫島が大の字になって倒れたのを見て、センチャイレフェリーがストップし、栗秋はなんとか勝利をものにした。
第2試合 REDスーパーウェルター級(70kg) 3分3R(延長1R)
○津崎善郎(LAILAPS東京北星ジム)
×MASATO BRAVELY(BRAVELY GYM/元WPMF日本ウェルター級王者、元M-1日本スーパーウェルター級王者)
2R 1’47” TKO (ドクターストップ:左肘打ちによる額のカット)
津崎は昨年12月のクンタップとのREDスーパーウェルター級王座決定戦で敗れて以来の試合。MASATOは3月の代々木で渡慶次浩平と死闘の末に敗れて以来の試合。
1R、津崎がミドル、首相撲からの膝で攻めた後、右ストレートでダウンを奪う。MASATOも膝や蹴り足をつかんでの崩しで応戦したが、終了間際に津崎が左ストレートと右ストレートの連打で再びダウンを奪う。
2Rも津崎が主導権を維持し、中盤、左の縦肘でMASATOの額を切り裂く。ドクターチェックが入るとストップがかかり、津崎のTKO勝ちとなった。
マイクを持った津崎は「3連敗中でヘコんでいたんですけど、勝てて正直ホッとしています。連勝してまたクンタップ選手にたどり着きたいです」と話した。
第1試合 BLACKスーパーフライ級(52kg) 3分3R(延長1R)
○酒井柚樹(TEAM TEPPEN)
×井ノ本航希(LAILAPS東京北星ジム)
判定3-0 (センチャイ29-28/和田30-29/秋谷30-28)
1R、序盤から激しくパンチが交錯するが、中盤から酒井が距離を取り、右のカーフを随所で当て、井ノ本は右ハイを返す、蹴り主体の展開となる。
2R、酒井が右カーフを当てると、井ノ本は足を上げる動きを見せるように。酒井は左フックにつなげる場面もあるが、井ノ本を崩すほどにはならず、終盤に井ノ本も左ボディ等を返し、はっきりした差はつけさせない。
3R、井ノ本が前に出続ける中で、酒井が回って距離を取りながら、左フック、左右のミドル等を当てる。酒井の有効打が上だが、井ノ本も終盤にパンチのヒットを増やし、大差ないまま終わる。ジャッジは酒井の手数やジェネラルシップを評価したか?3者とも1~2点差で酒井を支持し、酒井が判定勝ちし2連勝とした。
プレリミナリーファイト第2試合 BLACKスーパーフライ級(52kg) 3分3R
○柿﨑 瑠(クロスポイント大泉)
×剛大(Y’s glow)
2R 2’39” KO
プレリミナリーファイト第1試合 REDスーパーフライ級(52kg) 3分3R
○竹田哲紳(クレイン)
×前田翔太(ウィラサクレック・フェアテックス三ノ輪)
不戦勝 (竹田が前日公式計量をクリア。前田は体調不良により計量を欠席)