RIZIN 7.28 さいたまスーパーアリーナ(レポ/後半):平本蓮、朝倉未来を1Rパンチ連打でKO。安保瑠輝也、ボクシングエキシでパッキャオを苦しめる。久保優太、斎藤裕を2R KOしフェザー級王座挑戦を希望。扇久保博正、神龍誠に判定勝ち
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Yogibo presents 超RIZIN.3
2024年7月28日(日)さいたまスーパーアリーナ
レポート&写真:井原芳徳 ※前半戦のレポートは別記事に掲載しています。
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平本蓮、朝倉未来を1Rパンチ連打でKO
第11試合 メインイベント LMS(Last Man Standing)タイトルマッチ MMA特別ルール フェザー級(66kg) 5分5R
×朝倉未来(JAPAN TOP TEAM/元THE OUTSIDER 60-65kg級 65-70kg級王者)
○平本 蓮(剛毅會/K-1甲子園2014 -65kg優勝)
1R 2’18” TKO (レフェリーストップ:左フック→グラウンドパンチ)
※各ラウンド10点方式によるラウンドマスト採点。3R終了時点でスコアを公開。5R終了時に同点の場合、試合全体で優劣をつける
朝倉兄弟の兄・未来は32歳。22年9月の第1回超RIZINでフロイド・メイウェザーとボクシング形式のエキシビションマッチを行い、右フックでダウンを喫したところでエキシは終了。その際のダメージで頭痛が続き、大晦日大会は回避した。昨年4月、約1年5か月ぶりにMMAの試合を行い、前RIZINフェザー級王者の牛久絢太郎の組技を封じて判定勝ち。7月の超RIZIN.2でのヴガール・ケラモフとの第4代RIZINフェザー級王者決定戦では1R裸絞めで一本負けした。11月のFIGHT CLUBではオープンフィンガーグローブ着用の肘無しキックの試合に挑戦したが、YA-MANにわずか77秒でKO負けし、休養を表明していた。
元K-1ファイターの平本は26歳。MMA 6戦3勝3敗。昨年4月のRIZINで元RIZINフェザー級王者の斎藤裕に判定2-1で惜敗したが、タックルを切り続け、MMAへの適応具合の向上を印象付けた。大晦日のRIZINではYA-MANに判定勝ちしている。
- 前日公開計量での朝倉未来と平本蓮
4か月前の3月16日の会見で未来と平本の一戦が発表された。人気選手同士の対戦ということもあり大きな話題を呼び、さいたまスーパーアリーナのスタジアムバージョンに大幅増席して開催されたが、チケットはほぼ完売し、主催者発表で48,117人の観衆を集めた。
試合は大会1週間前に5R制・ラウンドマストへのルール変更が発表されたが、MMA選手として伸び盛りの平本が、度々引退を考えるようになった未来との、勢いの差をまざまざと見せつける内容となる。
1R、両者サウスポーで構え、中央付近でフェイントをかけ合い、左のカーフキックを蹴り合う状態が続く。場内スタンド席の両サイドに分かれた応援シートから両選手のコールが起こるが、二人とも冷静に見合う状態が続く。平本がワンツーでの左ストレートを放って未来の顔面をかすめたり、スイッチして右ストレートを当てる場面もあったものの、お互い慎重な削り合いから5R勝負が始まりそうなムードだった。ところが中盤、平本がいきなり仕掛ける。平本が突然一気に前に詰めると、ロープ際に下がって右フックを振って防御しようとした未来に左フックをヒットする。
ひるんだ未来に平本はさらに左右のパンチを連打し、未来が後退すると、平本は追いかけ、未来が苦し紛れに右フックを放って空振りし直後、左フックをクリーンヒットする。ダウンした未来に、平本が右のパウンドを連打したところで、長瀬達郎レフェリーがストップした。
勝った未来はコーナーに登って喜んでから降りると、茫然とした表情で座ったままの未来に声をかけた。中継席にいたフェザー級王者の鈴木千裕と挑発合戦をし、興奮した千裕がリングに上がろうとしたが、スタッフから制止された。LMSのベルトを巻いた平本は「何も言うことを考えていなかったです。とにかく、朝倉未来、ありがとう。そして引退しないでください。朝倉未来がいたから自分を見つめ直してここまでやってくることができました」と未来への感謝の言葉を述べた。
バックステージでのインタビューで平本は、フィニッシュにつなげたシーンのステップについて「待ちのスタイルになっていることを自分でも理解していて、堀口(恭司)選手が空手を習っていた道場のニ瓶卓郎さんを手塚(裕之)さんに紹介してもらって、ステップや抜く感じを何度も練習してきました。ちょっと堀口さん意識です」と明かしている。
安保瑠輝也、ボクシングエキシでマニー・パッキャオを苦しめる
第10試合 セミファイナル スタンディングバウト特別ルール(ボクシング形式/非公式戦) 69kg契約 3分3R
―マニー・パッキャオ(フィリピン/プロボクシング6階級制覇王者)
―安保瑠輝也[るきや](MFL team CLUB es/元K-1スーパー・ライト級(65kg)王者)
勝敗無し
RIZINでのボクシング形式のエキシビションマッチは、18年大晦日大会でフロイド・メイウェザー・Jrと那須川天心の間で初めて行われ、22年9月の第1回超RIZINにおけるメイウェザーと朝倉未来のエキシも話題を呼んだ。このエキシの際にもパッキャオはリングサイドで観戦し、その後、RIZINがエキシの交渉を続け、超RIZIN.3ではRIZINフェザー級(66kg)王者の鈴木千裕とのエキシが組まれた。6月9日のRIZIN.47代々木第一体育館大会の最中に両選手がリングに上がって発表され、翌10日には両選手が記者会見を行った。だが千裕は6月23日のKNOCK OUT代々木第二体育館大会での五味隆典とのボクシング形式の試合の前に右拳を骨折し、パッキャオの相手が安保に変更となった。
安保は28歳。空手をベースとし、12年8月のKrushでキックボクサーデビュー。19年6月、K-1スーパー・ライト級(65kg)王者となり2度防衛。21年9月のK-1ウェルター級王座決定トーナメント決勝で野杁正明に敗れたが、22年6月のTHE MATCHでRISEの山田洸誓に判定勝ち。昨年1月、K-1を離脱し、5月の有明大会でRIZINに初出場し、ブアカーオと引き分け。9月大会で宇佐美正パトリックに判定勝ち。RIZINでキックルールで2戦したが、大晦日大会では久保優太を相手にMMAデビュー戦を行い1R裸絞めで一本負けした。
パッキャオは45歳。プロボクシング戦績72戦62勝(39KO)8敗2分。95年にプロデビューし、フライ級からスーパーウェルター級の6階級でメジャー団体の王座を獲得。15年にはメイウェザーとの3団体ウェルター級王座統一戦でも話題を呼んだ。21年8月の2年ぶりの試合で2度目の引退をし、22年12月に韓国で同国のユーチューバー兼武術家のDK・ユーとエキシを行っていた。今年2月、パリ五輪出場を目指すと表明していたが、年齢制限の40歳を超えるため却下された。フィリピンのスポーツ界のトップスターで、16~22年には国会議員を務め、22年には大統領選挙にも出馬している。パッキャオ陣営はWBC世界ウェルター級王者・マリオ・バリオスへの挑戦に向け交渉中で、6月の会見でパッキャオも「11月か12月に可能性があります」と話しており、RIZINでのエキシで実戦感覚を取り戻す狙いがありそうだ。
1R、長身の安保がサウスポーのパッキャオに対し、踏み込んでの右ストレートを序盤からヒットし先手を取る。パッキャオも距離を詰めてパンチを振るうが、空振りが続き、逆に打ち終わりに安保が右フックをヒット。終盤には安保が左ジャブ、ボディも当て、右ストレートも炸裂させ、優位を維持する。パッキャオはスピードとキレで負けている感は否めない。
2R、中盤からようやくパッキャオもパンチの手数を上げ、右フックを炸裂させ好印象を作る。安保に右フックを空振りさせる場面も。だが安保も左ストレート、右ボディストレートを随所で当て、パッキャオペースにはさせない。
3R、パッキャオは序盤からパンチの連打で仕掛けてきたが、安保も打ち合いに応じると、逆に左フックを当てパッキャオをひるませ場内を沸かせる。パッキャオも胸元への左フックと顔面への左フックの連打を当て、見せ場を作るが、終盤は安保がパンチを度々当ててパッキャオをひるませて優位で終える。非公式戦のため勝敗は無しだが、安保の健闘の光る一戦となった。
マイクを持った安保は「倒すつもりでやってきたんですけど、パッキャオ選手はやりにくくて、この体格差でよくやるなって感動しました。最初にRIZINに来た時は受け入れてもらえなかったんですが、こんなにたくさんの人に応援してもらえてうれしいです。これからも俺なりのやり方でRIZINを盛り上げます」等と話した。パッキャオは「安保選手は強かったです。これから唯一無二の存在になります。ボクシングをやればいいのに」と絶賛した。
この後、ボクシング界のトラブルメイカーとして知られるライアン・ガルシアがリングインし「パッキャオと安保のどちらかとやりたいです。安保は3RでKOできます」とアピールした。このやり取り中には木村“フィリップ”ミノルもリングに上がろうとし、安保に阻止される一幕もあった。
久保優太、斎藤裕を2R左三日月蹴りでKOしフェザー級王座挑戦を希望
第9試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
×斎藤 裕(パラエストラ小岩/元RIZIN&修斗世界フェザー級王者)
○久保優太(PURGE TOKYO/BRAVE/元K-1ウェルター級(67.5kg)王者)
2R 4’19” KO (左三日月蹴り)
斎藤は21年10月の横浜大会で牛久絢太郎にTKO負けし、フェザー級王座から陥落。同年大晦日の朝倉未来戦でも判定負け。昨年22年4月の調布大会で牛久の王座に挑んだが判定負けした。3連敗となり、約1年間コンディションを整え、昨年4月の代々木大会で復帰し、平本蓮に判定2-1で勝利した。大晦日大会では牛久の次のフェザー級王者だったクレベル・コイケと対戦し、3Rにダースチョークを極められ一本負けした。
1987年10月8日生まれの36歳・斎藤に対し、久保は11日後の10月19日生まれ。GLORY、K-1で頂点に立つが、20年3月のジョーダン・ピケオー戦での勝利を最後に、K-1を離れる。当初はボクシング転向を目指していたが、MMAに転向し、21年9月のRIZINでMMAデビューし太田忍に判定負け。22年11月に奥田啓介を下し、昨年6月の札幌大会で木下カラテに判定勝ちし、大晦日大会では安保瑠輝也に1R裸絞めで一本勝ち。今年3月の神戸大会ではONE帰りの元修斗環太平洋フェザー級王者の高橋遼伍に判定勝ちし、MMA選手としての進化を印象付け、連勝を4に伸ばした。
1R、久保がサウスポーで距離を取り、左ミドルを随所で当てる。斎藤は右フックを振るうが距離が遠い。中盤、斎藤がタックルを仕掛け、コーナーに押し込むが、久保は耐え、膠着ブレイクがかかる。終盤、久保が左ミドルを放つと、斎藤が右フックを合わせて久保をふらつかせるが、直後に久保が右フックを当てて斎藤をダウンさせる。斎藤はすぐ立つが、その後も久保が崩してから左ミドルを当てたり、打撃で優位を維持する。
2R、久保は距離を支配し、サウスポーからの左ミドルを当て続ける。中盤にはノーガードで挑発し、余裕を見せる場面も。斎藤は中に入れず、タックルも切られ、八方ふさがりの状態に。終盤、久保は左ミドル、組んでの左膝も当てつつ、崩しも決め、左ストレートでもひるませる。最後は左膝とミドルを効かせて斎藤をコーナーに下がらせてから、左三日月蹴りを当ててマットに沈めた。
マイクを持った久保は「僕って立ち技天才だったんで、MMAでもこんなに強くなっちゃって。これでRIZINフェザー級の5位ぐらいになれたと思います。RIZINチャンピオンになりたいんで、タイトルマッチを組んでください。挑戦者決定戦でも最悪いいです」とアピールした。
なお、この試合後には桜庭和志と息子の桜庭大世がリングインし、大世が大晦日のRIZINでMMAデビューすることが発表された。
扇久保博正、神龍誠を攻めあぐねるも判定勝ち
第8試合 MMA フライ級(57kg) 5分3R
○扇久保博正(THE BLACKBELT JAPAN/RIZINバンタム級日本GP 2021優勝、元修斗フライ級&バンタム級世界王者)
×神龍 誠(神龍ワールドジム/元DEEP&CFFCフライ級王者)
判定3-0 (橋本=扇久保[D 0-0/A 0-0/G 20-0]/石川=扇久保[D 0-0/A 0-0/G 20-0]/松宮=扇久保[D 0-0/A 0-0/G 20-0])
扇久保は37歳。21年のRIZINバンタム級日本GPで春日井“寒天”たけし、大塚隆史、井上直樹、朝倉海を下して優勝。22年9月にキム・スーチョルに判定負けすると、大晦日大会では1階級下のフライ級に下げ、堀口恭司と対戦し判定負けした。昨年7月、バンタム級王者決定戦を朝倉海が負傷欠場し、扇久保は大会3週間前のオファーを受けフアン・アーチュレッタと対戦し判定負け。大晦日にはフライ級に戻り、元UFCフライ級1位のジョン・ドッドソンに判定勝ちしている。
神龍は24歳。昨年7月のベラトール埼玉大会では堀口恭司とのベラトール・フライ級初代王者決定戦が行われたが、開始すぐのドクターストップで無効試合となった。大晦日大会では両者の仕切り直し戦がRIZIN初代フライ級王座を懸けて行われ、神龍は2R裸絞めで一本負けした。今年4月の有明大会でイ・ジョンヒョンに1R肩固めで一本勝ちすると、神龍はマイクアピールでパラエストラ松戸時代の先輩・扇久保に対戦を要求し、扇久保も承諾した。
1R、神龍が開始早々片足タックルを仕掛け、抱え上げて頭から扇久保を落として倒す。神龍はトップキープし、パスガードを狙いながらパウンドを振るうが、その隙に扇久保は立つ。扇久保はサウスポーの神龍に左のインローを時折当てる。終了間際に扇久保は潜り込んでの左フックも当てる。神龍は負けじと組み付いて倒そうとするが、汗で滑って下になり、扇久保が上になってパウンドを当てかけたところで終わる。
2R、序盤のバッティングで神龍が左まぶたをカットしドクターチェックが入る。再開後、見合う状態が続き、お互い打撃のヒットが少ない。福田レフェリーがアクションコールをする場面も。試合前に舌戦を繰り広げたが、いざリングに上がると、両者とも非情になりきれていない可能性もある。神龍はタックルを繰り返すが、扇久保は切り続け、テイクダウンを許さない。
3R、扇久保が右と左フックを連続で当てるが、すぐに神龍はタックルを仕掛け倒す。扇久保は下からギロチンで迎撃したが、すぐに神龍は外す。神龍はトップキープし時折パウンドを当てる。終盤、アクションコールがかかると、神龍は腰を上げてパウンドを落とすが、これも扇久保が脱出する。最後、扇久保が押し込むが倒せず、離れての打ち合いで少し当てて終わる。
記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス0-0、ジェネラルシップ0-20で合計0-20で神龍。僅差のため迷ったが、長時間トップキープしパウンドを当てたことを評価した。ジャッジは3者とも扇久保につけ扇久保が判定勝ちした。扇久保の1Rのローと3Rのギロチンを評価した可能性がある。