RIZIN 7.28 さいたまスーパーアリーナ(レポ/前半):46歳の所英男、引退懸けての一戦はヒロヤに1R TKO勝ち。芦澤竜誠、皇治と死闘制し返り討ち。RENA、ケイト・ロータスに2Rスタンドパンチ連打でTKO勝ち。YA-MAN、鈴木博昭を1R KO
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Yogibo presents 超RIZIN.3
2024年7月28日(日)さいたまスーパーアリーナ
レポート&写真:井原芳徳 ※前半戦のレポートは別記事に掲載しています。
中継 ABEMA、U-NEXT、RIZIN 100 Club、RIZIN LIVE(前売6,500円/当日6,900円/アーカイブ4,400円)、スカパー(6,900円)
46歳の所英男、引退懸けての一戦はヒロヤに1R TKO勝ち
第7試合 MMA 59kg契約 5分3R
○所 英男(リバーサルジム武蔵小杉 所プラス)
×ヒロヤ(JAPAN TOP TEAM)
1R 3’20” TKO (レフェリーストップ:右ストレート→グラウンドパンチ)
所は46歳のベテラン。20年大晦日、太田忍のMMAデビュー戦の相手を務め腕十字で一本勝ち。22年7月の埼玉大会でフライ級に階級を下げ、神龍誠に判定負け。大晦日大会ではジョン・ドッドソンに1R TKO負けした。昨年10月の名古屋大会ではバンタム級に戻し、アラン“ヒロ”ヤマニハと対戦し判定負けし、現在3連敗中だ。今回はバンタム級とフライ級の中間の59kg契約で戦う。5月のカード発表会見では「負けたら引退します」と表明していた。
ヒロヤは26歳。20年の「朝倉未来1年チャレンジ」で合格し、DEEPのフライ級戦線で試合を重ねると、昨年7月の超RIZIN.2でRIZINに初参戦し、伊藤裕樹に判定負け。10月のRIZIN LANDMARKでは中村優作に判定負けし2連敗を喫したが、大晦日大会では修斗世界フライ級&ストロー級王者の新井丈に2R TKO勝ちした。伊藤戦、中村戦は58kg契約、新井戦はフライ級(57kg)だったが、今回はこれまでよりも重い59kgでの試合となる。
1R、スタンドの展開で、ヒロヤが右のカーフキックを随所で当て、所は早くも足が少し流れる。所は低空タックルを仕掛けつつ、すぐに下になると、足関節技を仕掛ける。ヒロヤは対処してスタンドに戻したが、タックルを警戒してか少し距離を取って攻撃が減る。それでもヒロヤが右カーフを当てていると、所は少しバランスを崩したが、さらにヒロヤが右カーフを放つと、所はカウンターで右ストレートをクリーンヒット。ダウンしたヒロヤに、所がマウントポジションからパウンドを連打したところでレフェリーがストップした。
セコンドと共に大喜びした後にマイクを持った所は「こんな大舞台にまた立てると思っていなくて、榊原さんありがとうごございます。こんな展開になると思ってなくて何も考えてなかったですけど、ヒロヤ選手はこれから日本を引っ張る選手になると思うので、今日を糧にして頑張ってください」と話し「約20年前に入場曲を作ってくれた所ジョージさん、何度勇気づけられたことか。ありがとうございます」と客席にいた所ジョージさんに感謝の言葉を述べた。さらにセコンドについた金原正徳、がんの闘病中の妻の奈々さん、息子の叶大君にも声をかけ、最後は共に記念撮影した。
芦澤竜誠、皇治と死闘制し返り討ちも「皇治選手、引退しないでください」
第6試合 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
○芦澤竜誠(フリー/元INNOVATIONフェザー級(57.15kg)王者)※Battle Boxから所属変更
×皇治(TEAM ONE/元ISKA K-1ルール世界ライト級(61kg)&HEATキック・ライト級(60kg)王者)
判定3-0 (松宮=芦澤[D 50-0/A 30-0/G 20-0]/橋本=芦澤[D 0-0/A 30-0/G 20-0]/石川=芦澤[D 50-0/ A 30-0/G 20-0])
芦澤は29歳。K-1で小澤海斗、島野浩太朗、卜部弘嵩に勝利。22年6月のTHE MATCHでのYA-MANとのオープンフィンガーグローブマッチで1R KO負け。22年12月にK-1を離脱し、大晦日のRIZINに来場し、皇治戦を承諾した。芦澤がMMAルールでの対戦を希望したが、皇治が拒否し、昨年4月の大阪大会ではキックルールで対戦し、芦澤が判定2-1で勝利している。昨年大晦日大会でMMAデビューしたが、太田忍の組技に圧倒され1R KO負けしている。
皇治は35歳。18年12月のK-1で武尊に判定負け。20年からRIZINに上がり、キックルールで那須川天心、白鳥大珠、YA-MANらと対戦し敗れた。梅野源治とは1勝1敗。昨年4月の大阪大会で芦澤に判定負けすると、引退を表明したが、6月に撤回し、MMA転向を表明。青木真也から寝技を習い、大晦日大会でのMMAデビュー戦では三浦孝太のタックルを切り続け、2RサッカーボールキックでTKO勝ちしている。
1R、皇治がプレッシャーをかけ、右フック、ミドル主体で攻め、ハイも放つが、振りが大きいため芦澤はかわしたりブロックしたりして対処する。芦澤はガードを下げて挑発しつつ左ジャブを当て、首相撲になれば前回の対戦のように膝蹴りを当てる。どちらもまだインパクトの大きい攻撃にはつなげられない。
2R、芦澤の左テンカオ、ミドルのヒットの頻度が上がり、前回のキックルールの試合と似た構図となる。だが終盤、皇治も必死に前に出て追いかけ続けると、右ストレートをクリーンヒットし場内を沸かせる。芦澤のヒット数、皇治の強打のどちらを重視するかで、ジャッジの評価が分かれそうだ。
3R、皇治が序盤から左フックでダウンを奪い、すぐ立った芦澤を倒し、上から攻めようとするが、芦澤はスタンドに戻す。再び皇治はテイクダウンを奪うが、その先に持ち込めずスタンドに戻る。パンチの打ち合いが続き、お互い消耗が激しくなるが、その中で芦澤が左テンカオを絡めつつ皇治を追い詰める。すると残り1分を切り、芦澤が右ストレートを当ててダウンを奪い返し、上からパウンドで攻め挽回する。最後はスタンドの打ち合いで終了する。
試合前は激しい舌戦を繰り広げた両者だが、試合後は自然に抱き合い、場内は拍手に包まれた。判定3-0で勝利ししマイクを持った芦澤は「皇治選手引退しないでください。めちゃくちゃカッコ良かったです」と呼びかけた。
記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス0-0、ジェネラルシップ20-0で芦澤。お互いダウンは取ったため、2つ目の項目では差がつかず、下がりながらもパンチや膝を当て続け長時間支配し、最後に皇治を追い詰めた芦澤を評価した。
ジョン・ドッドソン、素手ボクシングで征矢貴から3ダウン奪い判定勝ち
第5試合 BKFCベアナックルルール フライ級(57.2kg) 2分5R
○ジョン・ドッドソン(米国/ジャクソン・ウィンクMMA/BKFCフライ級王者、元UFCフライ級1位・バンタム級8位)
×征矢 貴[そや たかき](THE BLACKBELT JAPAN)
判定3-0 (橋本50-42/石川49-43/松宮47-45)
「ベア・ナックル・ファイティング・チャンピオンシップ(BKFC)」は18年に米国で旗揚げ。拳にはバンデージのみ着け、ボクシング同様に立った状態でのパンチのみが有効。ボクシングの元世界王者やUFCの元王者・ランカーが多数参戦し、米国・英国・タイで80大会以上行われている。2月にRIZINの榊原信行CEOがフロリダ大会を視察した際、同行した篠塚辰樹が興味を示し、4月のRIZINでBKFC提供試合が組まれ、篠塚がBKFC派遣の米国人選手に1R KO勝ちした
ドッドソンは39歳。UFCで13年と15年にデメトリアス・ジョンソンのフライ級王座に挑戦しいずれも判定負け。20年8月の試合を最後にUFCを離れると、22年大晦日にRIZINに初参戦し、所英男を1R KO。昨年5月に竿本樹生に判定勝ちしたが、大晦日大会では扇久保博正に判定負けした。22年8月からBKFCに参戦し、3連続KO勝ちでBKFCフライ級王者になると、今年3月にはダゴベルト・アグエロ相手にドロー防衛を果たしている。篠塚も同階級のドッドソンへの挑戦を熱望する中、BKFCルールのノンタイトル戦でRIZINに参戦する。
征矢は29歳。扇久保の後輩で、13年修斗バンタム級新人王とMVPを獲得。指定難病のクローン病等の療養でブランクを挟みつつもリングに上がり続け、22年4月のRIZIN TRIGGERで2年半ぶりに復帰し中務修良に2R TKO勝ち。同年11月に中村優作に判定1-2で敗れ、昨年9月にラマザン・テミロフに1R左フックでTKO負けし2連敗中だが、持ち前のパンチ力がBKFCルールでどう活きるか見ものだ。
1R、ドッドソンがサウスポー、征矢がオーソドックスで構え、時折距離が詰まってパンチが交錯する。お互い時折当てるがまだひるむことはない。
2R、ドッドソンが踏み込んで左ストレートを当ててダウンを奪う。征矢はダメージは小さい様子。終盤の打ち合いでは征矢も右フックを強打し、場内を沸かせる。
3R、ややドッドソンの積極性が勝るが、征矢も随所で返し、大差はつけさせない。
4R、征矢はダメージが溜まってきたか?ドッドソンが序盤から左フックを当ててダウンを奪い、中盤にも右ジャブでダウンを奪う。
5R、場内の征矢コールに押され、征矢は前に出るが、ドッドソンはステップで距離を取り、反撃を封じて終了する。累計3ダウンを奪ったドッドソンが判定勝ちした。
マイクを持ったドッドソンは「まだ戻ってきたときはMMAでタイトルマッチをやりたいです。もしそれがかなわないのでしたら、日本人でBKFCでやっている選手(=篠塚)とやっていいです」とアピールした。
RENA、ケイト・ロータスに2Rスタンドパンチ連打でTKO勝ち
第4試合 MMA 女子スーパーアトム級(49kg) 5分3R
○RENA(シーザージム/シュートボクシング女子世界フライ級(51kg)王者)
×ケイト・ロータス(フリー)
2R 4’18 TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチ連打)
RENAは33歳。富松恵美、山本美憂ら相手に4連勝後、21年大晦日にパク・シウに判定負け。22年7月の埼玉大会でのスーパーアトム級GP一回戦ではアナスタシア・スヴェッキスカに判定勝ちしたが、試合中に左目を負傷し、大晦日の準決勝は辞退した。昨年4月の代々木大会で9か月ぶりに復帰し、クレア・ロペスに試合終盤の膝十字固めで一本負け。今年3月の神戸大会ではシン・ユリに判定勝ちしている。
ロータスは26歳。20年12月DEEP JEWELSでプロデビューし11戦5勝(1KO/1一本)6敗。長野美香、須田萌里らに敗れたが、試合を重なる中で、着実に力をつけ、3月のDEEP JEWELSでは桐生裕子に1R TKO勝ちしている。
1R、ロータスはサウスポーで構え、右の前蹴り、左ミドル、ハイを放つ。RENAはオーソドックスでプレッシャーをかけ、右ストレート、左右のミドルを当てる。お互い慎重で攻撃が少なく、打撃のキャリアで勝るRENAは懐の深いロータスの中に入りにくそうで、ロータスも警戒する状態が続く。
2R、ロータスは変わらず離れた距離で蹴りを当て、ロープ際の首相撲では相手のお株を奪うような右膝を当てる場面も。だが距離が詰まればRENAにとっては戦いやすくなり、首相撲で膝を返し、コーナーに詰めて左ボディも強打すると、これが効き目を発揮する。RENAはコーナーに詰めてパンチを当て続ける。ロータスが右フックを当て返してRENAをひるませ、RENAが組んで休む場面もあったが、離れるとRENAが右ハイを当て、再びコーナーに詰めてパンチを連打する。ロータスは耐え続けたが、最後は福田レフェリーがストップし、RENAのTKO勝ちとなった。
マイクを持ったRENAは「下からの追い上げがほぼ初めて怖かったですけど、殴り合いできて楽しかったです。ケイト選手、またRIZINにも上がってください」と話し「まだまだですけど、勝ってから言えと言われたんで、榊原さん、いつでもいいんで、私にもチャンスください」と話し、伊澤星花の女子アトム級王座への挑戦を希望した。
YA-MAN、鈴木博昭を1R KO
第3試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
×鈴木博昭(BELLWOOD FIGHT TEAM/元シュートボクシング世界スーパーライト級(65kg)王者)
○YA-MAN(TARGET SHIBUYA/RISEオープンフィンガーグローブマッチ-65kg級王者)
1R 3’28” KO (左フック)
シュートボクサーの鈴木は39歳。21年10月のRIZINでMMAデビューし、22年に平本蓮、青井人に2連敗したが、昨年6月の札幌大会では西谷大成を左フックからのパウンドで、わずか56秒で仕留めた。今年2月の佐賀大会で元DEEPフェザー級王者の芦田崇宏に1R TKO勝ちし2連勝とすると、「YA-MAN君、何でもありで俺とタイマンしようぜ」とマイクアピールしていた。
RISE出身のYA-MANは28歳。昨年5月のRIZINでMMAデビューし三浦孝太に1R TKO勝ち。8月のRISEでは山口裕人を2R右フックでKOし、RISE OFGM -65kg級初代王者となった。11月のFIGHT CLUBでのRISE OFGルールに準じた一戦で、朝倉未来を77秒でKO。大晦日のRIZINでは平本蓮とMMAルールで対戦し判定負けした。
鈴木×YA-MANは4月大会で組まれていたが、YA-MANが練習中に負傷し、右膝の靭帯損傷で全治2ヶ月と診断されたため中止となり、3か月延期して試合が再び組まれた。
1R、鈴木がサウスポーからの左ハイを放ちつつ、自らタックルを仕掛けて倒して上になる。YA-MANがスタンドに戻すが、鈴木は左ミドル、左縦肘を当てると、またもタックルを仕掛ける。だがこれもYA-MANが立つと、首相撲の展開で膝を当て、離れれば右ボディを立て続けに当てる。鈴木は早くも口が開き消耗気味で、ロープ際に詰められる。するとYA-MANが隙を逃さず右ボディから右と左のフックを立て続けに当て、鈴木をマットに沈めた。
女子ベアナックル戦はタイ・エマリーが37秒KO勝ち
第2試合 BKFCベアナックルルール 女子フライ級(57.2kg) 2分5R
○タイ・エマリー[Tai Emery](オーストラリア)
×チャリーサ・シガーラ[Charisa Sigala](米国/ミレニアMMA)
1R 0’37” KO (右ストレート)
BKFC提供試合のもう1試合は、BKFCにレギュラー参戦している女子選手同士の試合となった。
エマリーは37歳。エクストリーム・フットボール・リーグ(旧称ランジェリー・フットボール・リーグ)の元選手で、コロナ禍中に滞在していたタイでムエタイを習い、22年9月のBKFCタイ大会でプロデビューし、同年に2試合し1勝1敗。デビュー戦でKO勝利後、コスチュームの下の胸を観客に見せるパフォーマンスをして話題を呼んでいた(米国の大手格闘技情報メディアMMA Junkieの記事参照)。
シガーラは40歳。柔術黒帯のMMA選手で、21年にBKFCデビューし6戦1勝4敗1分。昨年2月の試合中にダウンした際、足首を脱臼しTKO負けして以来の試合となる。
1R、開始すぐからの打ち合いで、エマリーの右ストレートがさく裂し、シガーラがダウンする。シガーラは鼻を押さえ苦しそうな表情をし、中腰のまま立ち上がれず、エマリーのKO勝ちとなった。
摩嶋一整、新居すぐるに2R裸絞めで一本勝ち
第1試合 MMA フェザー級(66kg) 5分3R
×新居すぐる(HI ROLLERS ENTERTAINMENT/パンクラス・フェザー級王者)
○摩嶋一整[まじま かずまさ](毛利道場/元Rebel FCフェザー級王者)
2R 3’11” 裸絞め
新居は33歳。RIZINで21年10月に中村大介、22年2月に山本空良に敗れたが、その後は5連勝。パンクラスで2連勝後、今年23年6月のRIZIN札幌大会では飯田健夫に1R KO勝ち。9月には亀井晨佑に2Rヘッドシザースで一本勝ちし、パンクラス・フェザー級王者となった。大晦日のRIZINでは弥益ドミネーター聡志に2R右フックでKO勝ちしている。
摩嶋は32歳。修斗・パンクラス・海外の試合で6連続一本勝ちの後、20年8月にRIZINに初登場したが、斎藤裕に2R TKO負け。その後もクレベル・コイケ、金原正徳に敗れ3連敗を喫したが、昨年5月に芦田崇宏に1Rヴォンフルーチョークで一本勝ち。9月の横山武司戦は判定勝ちしたが、摩嶋がフェザー級リミットの66kgを0.2kgオーバーした。今年2月の佐賀大会では今成正和を2R上からの肘の連打で追い詰めたが、腕十字を極められ逆転一本負けしている。
1R、新居がバランスを崩したところで、摩嶋が組み付いて倒すと、バックとマウントでコントロールを続け、主導権を維持する。
2R、スタンドの攻防の後、またも摩嶋が組み付いて倒すと、すぐさまバックを取る。摩嶋はしばらくバックキープすると裸絞めを極めてタップを奪った。山口の工場勤務で知られる摩嶋は、マイクを持つと「まだ明日現場で仕事あるんで、今日はこの辺で」と話して観客を笑わせた。