RIZIN 3.23 神戸ワールド記念ホール(レポ/後半戦):ホベルト・サトシ・ソウザ、中村K太郎を右ハイからの打撃で1R KO。武田光司、フェザー級初戦は萩原京平に判定勝ち。井上直樹、佐藤将光下し朝倉海とのバンタム級王座戦要求
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
中野トイカツ道場
中野駅徒歩3分。平日7~23時、年中無休営業。入会金&月謝2ヶ月分無料!
RIZIN LANDMARK.9 in KOBE
2024年3月23日(土)兵庫・神戸ワールド記念ホール
レポート:井原芳徳 写真:(C)RIZIN FF (前半戦のレポは別記事に掲載しています)
中継 ABEMA、U-NEXT、RIZIN 100 Club、RIZIN LIVE(前売5,000円/当日5,500円/アーカイブ3,300円)、スカパー(5,000円)
ホベルト・サトシ・ソウザ、中村K太郎を右ハイからの打撃で1R KO
第12試合 メインイベント MMA ライト級(71kg)(ノンタイトル戦) 5分3R
○ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル/ボンサイ柔術/RIZINライト級王者、元REALスーパーライト級(74.2kg)王者)
×中村K太郎(UNITED GYM TOKYO/元DEEPウェルター級王者、SRCウェルター級GP 2010優勝)
1R 1’43” TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチ連打)
サトシは34歳。22年大晦日のRIZINでのベラトールとの対抗戦でアントニオ・マッキーに判定負けし、連勝と連続一本勝ちが5でストップした。昨年は5月の有明大会でスパイク・カーライルに判定勝ちしたが、7月にはマッキーの代役としてベラトール・ライト級GP一回戦に急きょ参戦すると、73kg契約でパトリッキー・“ピットブル”・フレイレに3R TKO負けした。試合はそれから8か月ぶりとなる。
中村は39歳。15年から19年にUFCで8戦4勝4敗の成績を残し、19年9月からRIZINに戻りサトシの兄・マルコス・ヨシオ・ソウザに1R TKO勝ちしたが、年末のベラトールとの対抗戦でロレンズ・ラーキンに判定負け。昨年4月の大阪大会で3年4か月ぶりに試合をすると、ストラッサー起一を2R左フックからのパウンドでKOした。今回はライト級に階級を下げて、いきなり王者と戦う。
RIZINの榊原信行CEOはカード発表の際、「K太郎はライト級に落としたらライト級日本人最強になる可能性がある。国内でライト級の選手が育っていないので、最初から上位選手と、どんとぶつかった方が面白いし勝負論もあると思った」と、王者サトシとの試合をいきなり組んだ狙いを語った。今回はノンタイトル戦だが「結果いかんではダイレクトリマッチでタイトルマッチもありうる」と話していた。
榊原氏から期待された中村だったが、サトシの打撃であっさりと散ることに。1R、サウスポーの中村に対し、サトシは開始10秒過ぎから素早い右ハイを放つ。中村はブロックしたが、少し押される。中村はじりじり詰めるが、サトシは距離を取り、右ストレートを当てる。さらにサトシは右ミドルを当て、ワンツーでの右ストレート、右インローと攻撃を散らして、中村を下がらせると、右ハイキックを中村のこめかみにクリーンヒットしてダウンを奪う。
サトシはパウンドを当て中村を追い詰め、立って右のサッカーボールキックを連打する。中村ははクリーンヒットは免れて立つが、サトシは続けてスタンドでパンチを連打し、中村をフラフラにし、最後は豊永レフェリーがストップした。試合後のマイクでサトシは、大晦日の堀口恭司のように、パートナーに結婚指輪をプレゼントした。
武田光司、ローブローに苦しむもフェザー級初戦で萩原京平に判定勝ち
第11試合 セミファイナル MMA フェザー級(66kg) 5分3R
○武田光司(BRAVE/元DEEPライト級王者)
×萩原京平(SMOKER GYM)
判定3-0 (松宮=武田[D0-0 A0-0 G20-0]/橋本=武田[D0-0 A0-0 G20-0]/石川=武田[D0-0 A0-0 G20-0)
※1Rローブローの反則で減点-20
武田は22年7月・10月とジョニー・ケース、ザック・ゼインに連勝したが、大晦日にガジ・ラバダノフに判定負けし、今年4月にはルイス・グスタボに判定負け。11月にはアゼルバイジャン大会でトフィック・ムサエフに3R TKO負け。ライト級で海外の実力者相手に3連敗を喫すると、1階級下のフェザー級への転向を表明し、4カ月を経てフェザー級の試合が用意された。
萩原は2連勝後、22年3月から9月まで、弥益ドミネーター聡志、クレベル・コイケ、鈴木千裕に3連続一本負け。だが約半年を経ての昨年4月の大阪大会では、カイル・アグオンに判定勝ちした。9月の埼玉大会では元フェザー級王者の牛久絢太郎の寝技に手を焼き判定負けしている。アグオン戦では近畿大学レスリング部での練習の成果を発揮していたが、今回までの4カ月、米国のフアン・アーチュレッタのいるジムで練習した。セコンドにはアーチュレッタがつく。
試合は武田がローブローのアクシデントで苦しむも、階級変更成功を印象付ける内容に。1R、サウスポーの武田に対し、萩原がオーソドックスで構えてプレッシャーをかける。お互いなかなか強打が出ない中、終盤、武田が萩原を金網に押し込む。すると武田が左膝蹴りを萩原のボディに放つが、萩原がすかさず右の膝を出して迎撃すると、カウンターで武田の股間に当たる形となり、武田が倒れる。武田はうめき声をあげ、かなり苦しそうだ。武田は5分ほどして立ち上がるが、福田レフェリーとドクターは座らせてさらに2分ほど休ませてから再開する。萩原にはイエローカードが出され、20%減点となる。試合は組んだ状態から再開する。武田は背後に回り込み、最後は崩して終える。
2R、萩原が右テンカオを当てると、ローブローのダメージの残る武田は少し動きが止まるが、すぐに萩原に組み付いて金網に押し込む。だが膠着すると、福田レフェリーはブレイクをかける。これまでのRIZINと比べても早めにブレイクしている印象だ。中盤、萩原が右ストレートを当てるが、武田はタックルを仕掛けて倒し、萩原が立っても組み付いてコントロールする。終盤、武田は抱え上げて倒し、立たれても引き続きしがみついてコントロールする展開を繰り返す。その中で武田は背後から萩原に腰に膝を当てる。ここまで武田がジェネラルシップを取っている。
3R、武田は減量とローブローのダメージを感じさせない動きを続け、ケージレスリングで萩原を翻弄する。武田は背後から組み付いてコントロールし、なかなか寝技に持ち込めないが、随所でボディと顔面に膝を当て、レフェリーにブレイクをさせない。それでも残り1分、少し武田の動きが落ちたところで、ブレイクがかかる。すると武田はタックルを仕掛けるが、萩原は下がりながら払い腰を仕掛けて倒し、場内を沸かせる。しかし武田はすぐに起き上がり、がぶりからバックに回り、裸絞めを狙う。結局、中盤までと同じように、武田が背後からしがみつく状態を維持して終了する。記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス0-0、ジェネラルシップ20-0で合計20-0で武田。ジャッジ3者も武田を支持し、武田が判定勝ちした。
マイクを持った武田は「ファンのみんな思ってるように、糞みたいな試合で申し訳ないです。セミファイナルとしてもっと…チンコが痛えや。もう終わりで。診てもらいます。ありがとうございました」と、放送関係者をヒヤヒヤさせるコメントを残した。
井上直樹、佐藤将光との接戦制し朝倉海との王座戦要求
第10試合 MMA バンタム級(61kg) 5分3R
○井上直樹(セラ・ロンゴ・ファイトチーム)
×佐藤将光[しょうこう](坂口道場一族/FightBase都立大/元修斗バンタム級世界王者)
判定3-0 (松宮=井上[D0-0 A0-0 G20-0]/橋本=井上[D0-0 A0-0 G20-0]/石川=井上[D0-0 A0-0 G20-0])
井上は21年のRIZINバンタム級日本GPで石渡伸太郎、金太郎に勝利し、大晦日の準決勝では優勝者の扇久保博正に判定負け。22年7月の埼玉大会での瀧澤謙太戦は左膝の半月板損傷により欠場したが、大晦日に改めて組まれた瀧澤戦で2Rアームロックで一本勝ちした。昨年5月の有明大会ではフアン・アーチュレッタと対戦し判定負けを喫し、バンタム級王座戦線で一歩後退した。10月の名古屋大会では、倉本一真・瀧澤を1Rで粉砕し勢いに乗る太田忍との試合が組まれたが、井上は「右顎下腺唾石症(みぎがくかせん だせきしょう)」という、あごに結石ができる病気で欠場した。
井上の欠場で急きょ太田と戦い、勝利したのがRIZIN初参戦の36歳のベテラン・佐藤だった。佐藤は09年から14年にパンクラスで経験を積み、15年に修斗に主戦場を移してから頭角を現し、17年に石橋佳大に勝利し修斗バンタム級世界王者となる。19年からONEに参戦し、同年10月の両国大会ではパンクラス同級王者のハファエル・シウバにTKO勝ちした。昨年1月にキム・ジェウォンに判定勝ちしたのを最後にONEを離れ、RIZINと契約し、11月のアゼルバイジャン大会か大晦日大会での初戦が計画されていたが、急きょ出場した10月の名古屋大会で、太田に判定勝ちした。その直後、RIZINの榊原信行CEOも「(大晦日の)アーチュレッタと朝倉海がやった先のチャレンジャーに絡んで来れるポテンシャルは十分にある」と話しており、今回の井上×佐藤の勝者が、バンタム級王座を奪還した海の初防衛戦の有力候補となりそうだ。
1R、井上が中央で構えてプレッシャーをかけ、佐藤が距離を取る構図が続き、井上が時折右ストレートを放つ。素早く動く井上に、やや押され気味の佐藤は、終盤にサウスポーに切り替えるが、井上の蹴りをもらうと、オーソドックスに戻す。井上もなかなか強打を当てられないが、主導権はキープしている。
2R、開始すぐこそ佐藤が前に出たが、すぐに井上がプレッシャーをかける、1R同様の構図に。中盤、佐藤は前に出てから押し込み、井上の背後に回ろうとするが、井上は振り落とし、金網際でハーフで押さえる。だが佐藤は対処し、すぐスタンドに戻る。終盤、少し井上のスピードが落ちると、佐藤が左フック、右アッパー、フックを当てるようになり、若干だが優位になる。
3R、佐藤がプレッシャーをかけ、左フックを随所で当てるように。だが中盤、井上がタックル合わせ、テイクダウンを奪うことに成功する。佐藤は下からアームロックを狙うが、井上は対処し、ハーフで押さえ続ける。膠着状態が続いたが、残り30秒、井上がスペースを作り、左肘を連打する。佐藤は体を起こそうとしたが、井上は佐藤の頭の後ろに腕を回しこみ、肩固めを狙って、そのまま終える。記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス0-0、ジェネラルシップ20-0で井上。ジャッジ3者も同じ採点で、井上が判定勝ちした。
マイクを持った井上は「凄いやりにくかったです。佐藤将光さんと試合できたことをうれしく思います。勝ったんで、誰か相手してくれるいい人って、わかりますか?(観客の「海」という声に)そうです。判定という結果ですが、チャンピオンシップ、いいんじゃないですか?榊原社長」と、たどたどしい口調ながらもアピールした。
榊原氏は大会後の総括で「朝倉海はUFCに行きたいと言っていて、UFCと話し合う中で、どういう方向性に行くかは別として、これで井上が一足飛びで海とのタイトルマッチという感じにはならなかった。井上選手でその熱が作れたかというとクエスチョンです。井上選手も候補の一人に入れた中で(海が)戦う相手を選考したい」と話し、海×井上の王座戦実現には慎重だった。
RENA、シン・ユリを追い詰め判定勝ち
第9試合 MMA 女子スーパーアトム級(49kg) 5分3R
○RENA(シーザージム/シュートボクシング女子世界フライ級(51kg)王者)
×シン・ユリ[Shim Yuri](韓国/チーム・ジーニアス/元ROAD FC女子アトム級王者)
判定3-0 (松宮=RENA[D0-0 A30-0 G20-0]/橋本=RENA[D0-0 A30-0 G20-0]/石川=RENA[D0-0 A30-0 G20-0])
RENAは富松恵美、山本美憂ら相手に4連勝後、21年大晦日にパク・シウに判定負け。22年7月の埼玉大会でのスーパーアトム級GP一回戦ではアナスタシア・スヴェッキスカに判定勝ちしたが、試合中に左目を負傷し、左眼窩内側壁骨折全治2ヶ月と診断され、大晦日の準決勝は辞退した。昨年4月の代々木大会で9か月ぶりに復帰し、クレア・ロペス相手に打撃で主導権を握っていたが、試合終盤の膝十字固めで一本負けしていた。
ユリは29歳。MMA戦績9戦6勝(2KO/1一本)3敗。17年にMMAデビューし、同年12月と18年1月に日本のGRACHAN・WARDOGに参戦し1勝1敗。その後、韓国のROAD FCで試合を重ね、21年9月にパク・ジョンウンに判定勝ちし、ROAD FC女子アトム級王座を獲得した。昨年末に王座を返上し、同王座戦以来1年半ぶりの試合でRIZINに初登場した。
1R、スタンドの打撃戦で、RENAが中盤から右のカーフキック、左ボディ当てるが、ユリも右ストレートを当てると、RENAは左目尻から出血する。RENAはペースを崩さず、首相撲から左膝を当て、トータルのジェネラルシップでは上回るが、出血の印象が悪い。インターバル中にRENAの傷の止血が行われ、その後の出血はおさまる。
2R、RENAは右フック、左三日月蹴り、組んでの膝を的確に当て続けるが、ユリも離れ際に右ストレートを当て、首相撲で右肘を当て、完全には流れを作らせない。だが終盤、ユリは前に出て右フックを当てつつ、すぐにタックルを仕掛けて倒し、上で押さえる。ユリはハーフで押さえるが、RENAはパウンドを封じ、下からアームロックを仕掛けて終える、RENAがスタンドの打撃で印象付けてて若干優位だが、まだ大差はない。
3R、ユリはパンチをもらった後にタックルを仕掛けて倒そうとするが、RENAは潰してがぶり、ユリの頭に膝を当てる。立ったユリはRENAを押し込み、RENAは首を抱えてから突き放す。終盤、ユリも首相撲から膝を連打すると、そこから倒しにかかるが、RENAはこれも潰して上になり、サイドとマウントの中間あたりのポジションで鉄槌と肘を当ててユリを追い詰める。最後、スタンドに戻り、ユリはタックルで倒すが、下になったRENAは耐えて終える。記者採点はダメージ0-0、アグレッシブネス30-0、ジェネラルシップ20-0、合計50-0でRENA。ジャッジ3者もRENAを支持し、RENAが判定勝ちした。
マイクを持ったRENAは「スカッと勝たかったんですけどシン・ユリ選手強くて。でも楽しいファイトでした。地元関西で試合できてうれしいです」と話した。