鼻血はダメージ?10-9と10-8で迷ったら?MMAの採点基準やルールを学ぶオンラインセミナーをJMOCが開催。米国の最新基準も紹介
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日本MMA審判機構(JMOC)は12月23日、実際の試合をもとに採点基準やルールについて学ぶ約1時間のオンラインセミナー「ジャッジ・トレーニング 8」を開催した。JMOCはRIZIN、修斗、DEEPなどのレフェリー・ジャッジといった競技運営に携わる組織で、これから審判員を目指す人だけでなく、ファンやマスコミも参加できるセミナーを随時開催している。
6月の第6回トレーニングでは、4月のRIZIN LANDMARK 5での斎藤裕 vs. 平本蓮が題材となり、リンク先の記事でも取り扱った。9月の第7回は5月のRIZIN.42での井上直樹 vs. フアン・アーチュレッタが題材だった。今回の第8回は11月のDEEP JEWELS 43でのDEEP JEWELSストロー級暫定王者決定戦・松田亜莉紗 vs. 万智が扱われた。
松田×万智の試合内容は、1R、万智が松田を金網に押し込むが、松田が耐え、膝蹴りを度々松田のボディに当てる展開が中心となる。2Rは万智が松田を2度テイクダウンして押さえ込み、立たれても金網に押し込み、組みの展開で長時間主導権を握ったが、松田が下になった際と立った時にパンチを当て、万智が鼻血を出した。3Rは松田が下から腕ひしぎ十字固めを狙う場面もあったが、大半の時間、万智がグラウンドでコントロールし、最後はバックマウントから裸絞めを狙い続けて終わった。
DEEPのチャンピオンシップは5人のジャッジで採点が行われ、全員29-28とつけたが、3-2で割れ、松田が勝者となった。(当日取材した井原記者の採点は1R 10-9で松田、2R 10-9で松田、2R 9-10で万智で合計29-28で松田が勝者とした)
本トレーニングの参加者は事前に試合映像を見て、模擬ジャッジをしてJMOCに提出し、トレーニング時にはその集計結果も発表された。模擬ジャッジではDEEPで採用されるラウンドマスト方式だけでなく、試合全体で優劣をつけるトータルマスト方式の採点も行われた。その集計結果の概略は以下のとおりだった。
・ラウンドマスト(ユニファイドルール(UFC等で採用の米国統一ルール)に準じた採点)
合計 松田29-28 10票 / 万智28-29 7票
ラウンド毎 1R 松田15-万智2 / 2R 松田11-万智6 / 3R 松田0-万智17
・トータルマスト(RIZINルールの基準で採点)
松田 5票 / 万智 12票
過去のトレーニングでは、2つのルールの基準や観点の違いが重点的に説明された。そのため今回、講師の松宮智生氏(JMOC副会長、清和大学法学部准教授)はルールの違いの説明をおさらい程度に留め、2Rの万智の鼻血を「ダメージ」としてどの程度評価するか、3Rを9-10と8-10のどちらにすべきか、という2点の説明に重点を置いた。また、質疑応答では、金網に押し込む行為や、その状態で膝蹴りを当てる行為の、ジャッジの評価基準、そしてその状況でのレフェリーのブレイクの判断基準についても話題となった。
なお、松宮氏は米国の格闘スポーツを管轄するABC(The Association of Boxing Commissions and Combative Sports)の総会にも参加しており、その時の配布資料も画面表示しながら解説した。RIZINルール自体は日本の独自色が強いが、本場米国での今の知見を随時吸収しアップデートしている点が、JMOCの競技運営の良さといえよう。
「ダメージ」に関しては、鼻血・腫れ・裂傷は目に見える判断材料とはなるものの、あくまで「オプション的評価」に留めるべきで、目に見えるダメージにごまかされず、しっかり打撃が効いているかどうかに評価の重点を置くべきと松宮氏は説明した。ただ2Rの万智の鼻血は、審判員の間でも評価がまちまちだったようで、11対6となった模擬ジャッジでもその傾向が現れていた。
ABCの総会では、採点での10-10は例外、10-9が95%、10-8は5%以下、10-7は極めてまれにすべきという指針が示されているいう。松宮氏は「2~3年前の私なら3Rは10-8で万智選手につけたかもしれません」「10-8か10-9で迷ったら、今は10-9にしてください」と話した。
また、松宮氏は、KO・一本といった試合のゴールに向かう攻撃の実効性や姿勢を重視すべきというABCの指針も紹介した。だが試合内容によってはジャッジが迷う可能性もあることから「今後、半年ほど、スプリット判定が多く現れるのでは」との見方を示した。
JMOCは主にXアカウント @mmaofficials_jpを通じて情報を発信している。CAMPFIREに会員制のコミュニティを設置し、これまでのセミナーのアーカイブ動画も公開している。(下の記事は6月の第6回トレーニング)
日本MMA審判機構(JMOC)が採点基準やルールを学ぶオンラインセミナー開催。RIZIN斎藤裕×平本蓮を参加者が模擬ジャッジ。ユニファイドルールとの違いも解説