Road to ONE:2nd 4.17 無観客大会:青木真也「負けたくねえ?なら、ずっと家にいろ」。後藤丈治、祖根寿麻を撃破。緑川創、工藤諒司、HIROYUKIが圧勝。44歳・宮田和幸が奮闘
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
中野トイカツ道場
中野駅徒歩3分。平日7~23時、年中無休営業。入会金&月謝2ヶ月分無料!
Road to ONE:2nd sponsored by ABEMA
2020年4月17日(金)会場非公開・無観客開催
レポート:井原芳徳 写真:(C)Road to ONE Executive Committee ※試合動画はABEMAビデオで視聴可能です。
新型コロナウイルスの感染が拡大し、全国に緊急事態宣言が出される中、「今こそ、本物かどうかが問われている」というキャッチコピーを掲げ、 ONE Championship、インターネット配信のABEMA(AbemaTVから改称)、長南亮代表のTRIBE TOKYO M.M.A、修斗プロモーターのサステインの協力で開催された今大会。会場非公開、無観客、マスコミ入場禁止、関係者は公共交通機関を原則使わない、スタッフは防護服着用など、徹底したコロナ対策が施された中で大会は行われた。
試合は全てONE Championshipのルールを採用。試合場はケージ。なお、テーマ曲を流しながらの選手入場も無く、スタジオの実況席での次の試合の紹介を経て会場に映像が切り替わると、両選手がケージの中に既に入っていて、試合が始まるという番組構成となっていた。場内は選手関係者、試合運営スタッフ、撮影スタッフのみ。静かな会場の中で、セコンドの声や選手の息遣いが普通の大会よりもはっきりと聞こえた。
第6試合 メインイベント グラップリング(判定無し) ライト級(77.1kg) 10分1R
△青木真也(EVOLVE MMA/元ONEライト級王者)
△世羅智茂(CARPE DIEM/IBJJFアジア柔術選手権2017黒帯フェザー級準優勝)
時間切れ
ONE本戦のメインイベンター・青木が、昨年10月のONE両国大会以来の試合。ABEMAのインタビュー番組「Fighter’s Diary」で「(今、試合を)やっていいのか?笑止千万だよ」と主張。今回の試合は彼のポリシーを体現し、広くアピールする絶好の機会となる。対する世羅はQUINTETでも活躍する柔術黒帯の30歳で、MMAのプロの試合はしていない。
世羅は開始すぐから座って、青木も抵抗せず上になり、ハーフガードの攻防に。1分ほどで世羅がガードポジションになると、上の青木は金網際まで運んで、世羅は頭を金網につけた状態に。壁の無いマットの上で戦う柔術の試合では無いシチュエーションだ。世羅は両足をガッチリロックして、青木の動きを封じ続け、5分ほど膠着状態に陥る。
すると8分ごろ、世羅は足のロックを外し、足関を狙い勝負に出るが、青木は対処する。さらに世羅は腕十字、足関、飛びついてのネックロックと次々に仕掛けるが、青木は防御を続け、最後は再び金網に押さえ込んだまま試合終了。時間切れドローに終わった。
両者の高いスキルは随所に垣間見えたものの、MMAと柔術では勝利を目指す道筋が異なるせいか、同じグラップラー同士でも今一つ噛み合わないまま終了。梅木レフェリーが両者の手を上げた後、青木は「嘘だー」とつぶやき、試合内容には不満げだったが、マイクを受け取ると気持ちを切り替え、コロナを巡る社会状況について持論を熱弁し、19時から約2時間の大会を締めくくった。
「俺はいつ死んだっていいよ。いつ格闘技を辞めてもいいんだよ。死にたくねえ?負けたくねえ?なら、ずっと家にいろよ。試合しなきゃいい。『Stay Home』ってずっと書き込んでろ。でも生きるってそういうことじゃねえよ。嫌なことと戦って、糞みたいな世界で生きていくんだよ。生きるってのは家の中にいることじゃねえ。目の前にあることと戦うことだ。このイベントを作ったキ●ガイどもに言っておく。ありがとう。楽しかった」
第5試合 セミファイナル ムエタイ 72.5kg契約 3分3R
○緑川 創(Monster Guns/WKBA世界スーパーウェルター級王者、元新日本キックウェルター級王者)※藤本ジムから所属変更
×西川大和(西川道場)
判定3-0
緑川はアンディー・サワーにも勝った実績があり、3月20日のRISEでは、過去に日菜太、城戸康裕を下しているサモ・ペティと戦う予定だったが、大会が中止となっていた。デビュー時から在籍した目黒の藤本ジムが1月で閉鎖し、2月から後輩のHIROYUKIと共に「Monster Guns」の新チームを立ち上げており、揃って白星を飾りたいところだろう。
対する西川は札幌で山本喧一が主催するPFCで育った17歳のMMA選手。昨年9月のシュートボクシングでは元SB日本スーパーウェルター級王者・坂本優起に判定勝ちし、知名度を上げた。父との二人三脚での独特なトレーニングが人気テレビ番組「探偵ナイトスクープ」でも紹介されたことがある異色ファイターだ。(※緑川の試合前インタビュー)
ONEルールのため両者オープンフィンガーグローブを着用。1R、緑川が序盤から右ローを的確に当てると、早くも西川が時折サウスポーにスイッチするように。緑川がプレッシャーを強め、右フック、右肘、左ボディも当てる。西川も物怖じせず、右ローを随所で返し、バックハンドブローやバックスピンキックも出すが、流れは変わらない。
2Rも緑川が圧をかけ続け、右フック、左ボディ、右ローを的確に当て続け、主導権を維持する。西川は防戦一方だが、表情は崩れない。
3Rも緑川が執拗に右ロー、左右のボディ等を当て続けるが、西川は耐え、パンチや肘やローを返し続ける。終盤、緑川は圧を強め、右ストレートで少しひるませるが、ダウンは奪えず終了。判定の結果、緑川の勝利となったが、西川のタフさも光る試合だった。
第4試合 MMA バンタム級(65.8kg) 5分3R
×祖根寿麻(ZOOMER/元修斗環太平洋バンタム級王者)
○後藤丈治(TRIBE TOKYO M.M.A)
1R 3’58” フロントチョーク
祖根は沖縄出身、愛知在住の32歳。13年に大阪のDEMOLITION(DXFC)、15年に沖縄のTENKAICHIでタイトルを獲得し、16年から上がった修斗では18年に魚井フルスイングに勝利し環太平洋バンタム級王座を獲得。RIZINに2度参戦したが、18年8月の元谷友貴戦、19年8月のジャスティン・スコッギンス戦といずれも敗れ、メジャー大会での浮上を阻まれており、再浮上に向けしっかり勝ちたいところ。
対する後藤は北海道大学経済学部を昨年春に卒業後、上京しTRIBEに入門後、パンクラスで4連続一本・KO勝ち。祖根戦は約1年の成果を示す絶好の機会だ。(※祖根の試合前インタビュー)
1R、祖根はオーソドックス、後藤はサウスポーに構え、パンチが交錯すると、後藤がダウンしたが、バッティングのため、5分間の回復時間が設けられる。再開後、祖根は左右のフックを放ちながら前進して脇を差し、テイクダウンを狙い続ける。中盤、祖根が一度倒すが、後藤はすぐ立つ。祖根は押し込むが、しばらくして離れると、後藤の右と左のフックの連打が当たり、祖根がふらつく。後藤は左主体のパンチの連打を続け、右フックで祖根をダウンさせる。祖根はタックルで耐えるが、後藤は潰しつつニンジャチョークで捕まえて絞り上げると、祖根がタップ。後藤が見事番狂わせ起こした。
第3試合 MMA フェザー級(70.3kg) 5分3R
○工藤諒司(TRIBE TOKYO M.M.A)
×椿 飛鳥(トライデントジム)
1R 2’59” TKO (レフェリーストップ:パンチ連打)
工藤は青森県八戸市出身の26歳。極真空手を5歳から10年間学び、レスリングでは名門・国士舘大学に入学。大学卒業後、長南亮代表率いるTRIBEに加入し、プロ修斗で頭角を現す。昨年10月、今年2月のONE Warrior Seriesで外国人選手相手に2連勝。昨年10月の東京でのWarrior Seriesでは日本勢のトリを務め、関係者からの期待も高い。(※工藤の試合前インタビュー)
対する椿はABEMA「格闘代理戦争2nd」で青木真也から指導を受け、18年10月から上がったONE Warrior Seriesでは1敗のあと2勝。両者とも大会名通り「Road to ONE」にいる選手で、勝ったほうがONE本戦に大きく近づくだろう。両者は17年のアマチュア修斗関東選手権決勝で対戦し、工藤が完勝している。
1R、椿が左ミドルを当てた直後、工藤が右ストレートを振りながら組み付き、倒して上になる。工藤は金網際でサイドポジションを取ってガッチリと押さえ、アームロックを狙いながらマウントを取る。工藤はパウンドを狙わず、肩固めにを仕掛ける。椿は防御して脱出するが、工藤はすぐ追い掛け、パンチを連打。椿は防戦一方で、椿が左フックでダウンしたところで梅木レフェリーがストップ。工藤が格の違いを見せつけ完勝した。
第2試合 グラップリング(判定無し) フェザー級(70.3kg) 10分1R
△宮田和幸(BRAVE)
△田中路教(フリー/元PXCバンタム級王者)※チーム・アルファメール・ジャパンから所属変更
時間切れ
宮田和幸は18年大晦日のRIZINでの山本アーセン戦で引退し、下からの変形のアームロックで一本を取り、有終の美を飾った。現在44歳だが、BRAVEの代表として、日ごろ鈴木隼人、武田光司ら実力者の相手を務めており、技は錆びていないだろう。田中は14~17年に出場していたUFC復帰を目指し、米国のLFAでの再浮上を目指している。グラップリングマッチは今回が初。米国でも大会再開の目途が立たない今、宮田戦も今後の糧にしたいところだ。
序盤から田中が右脇を差し、再三倒そうとするが宮田は防御し、時折金網に押し込む。すると1分過ぎ、宮田が田中を振り回して倒してから素早くバックに回り込むと、両足でフックして捕獲し、裸絞めを狙う。
田中は1分ほどして体をひねって上になり、パスガードを狙うが、宮田は阻止しガードポジションを維持する。膠着状態が続く中で、宮田がオモプラッタ、三角絞め、アームバーを狙う等、随所で仕掛けを続ける。田中は受けに回る状況が続く。
終盤、宮田が田中の背中に腕を回すような形で、下からアームロックを狙いながらバックを取ろうとするが、田中は阻止する。体勢が崩れ、終了間際に田中がアームロックを狙うが、宮田は耐え抜き時間切れとなり、ドローとなった。田中が光る場面もあったが、宮田の44歳とは思えないパワー、スピード、スキルを印象付けた。
第1試合 ムエタイ ストロー級(56.7kg) 3分3R
○HIROYUKI(Monster Guns/新日本キックバンタム級王者)※藤本ジムから所属変更
×ポン・ピットジム(タイ/PITジム/元オームノーイ・フライ級8位)
2R 1’33” KO (パンチ連打)
HIROYUKIは新日本キックの軽量級の主力として活躍し、3月8日の新日本後楽園大会でムエタイオープン・スーパーバンタム級王者の岩浪悠弥と対戦予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大会が中止となっていた。最近のHIROYUKIは昨年11月のKNOCK OUTで壱・センチャイジムに判定負けするも、実力の高さを印象付けた。今回のRoad to ONEの試合が発表されたのは、昨日13日と、試合わずか4日前だった。(※HIROYUKIの試合前インタビュー)
1R、サウスポーのポンに対し、開始すぐからHIROYUKIが素早い右ミドル、ローを当て続ける。ポンも次第に防御するようになったが、終盤、ポンの左インローの直後に、HIROYUKIが右ストレートを当てて、ポンを下がらせ好印象を残す。
2R、序盤からHIROYUKIは左の顔面狙いの前蹴りをクリーンヒットする。中盤、HIROYUKIが右の縦肘を当てて効かせてから、右の前蹴りで吹き飛ばし、ダウンを奪う。するとHIROYUKIはチャンスを逃さず、パンチを連打し再びダウンを奪うと、大成レフェリーがストップした。