【コラム】那須川天心の思いを受け継ぎ、武尊からも「パワーをもらった」24年3月のK-1×RISE 3度目の対抗戦10試合。立ち技格闘技再興を懸けた大勝負(=THE MATCH)になる
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K-1とRISEは2月2日、合同記者会見を東京で行い、RISE ELDORADO 2024(3月17日(日)東京体育館)、K-1 WORLD MAX 2024(3月20日(水/祝)国立代々木競技場第一体育館)の2大会での対抗戦各5試合、計10試合を発表した(各大会のカード紹介は上記リンク先参照)。
那須川天心 vs. 武尊をメインに行われた22年6月のTHE MATCH 2022 東京ドーム大会、23年3月の両プロモーションでの6試合に続く第3弾の対抗戦。そこに懸けるK-1とRISEの首脳陣の思い、そして先日ONE日本大会で激闘を繰り広げた武尊のもたらす影響について考えた。(井原芳徳)
K-1とRISEは長らく敵対状態だったが、22年6月のTHE MATCH 2022 東京ドーム大会で那須川天心 vs. 武尊をはじめとした初の対抗戦を行い、RISEが6勝5敗で勝ち越した。(大会全体では9勝7敗で非K-1勢の勝ち越し)
昨年3月の対抗戦第2弾は、K-1とRISEのそれぞれのリングで3試合ずつ行われ、K-1のリングではK-1が2勝1敗と勝ち越したが、RISEのリングではRISEが3戦全勝し、合計4勝2敗でRISEがまたも勝ち越した。
その半年後の夏、K-1のプロデューサーが中村拓己氏からカルロス菊田氏に変わり、“開国”路線を打ち出し、K-1はRIZIN、シュートボクシング、DEEP☆KICK等にも選手を送り出すようになる。RISEとの交流も進み、12月のRISE両国大会ではK-1の池田幸司がRISEの松下武蔵に勝利した。
年が明けて1月19日のK-1の会見とRISEの会見で、3月の両プロモーションのビッグイベントで対抗戦を5試合ずつ・全10試合を行うことが発表済だった。
2月2日の合同記者会見では、第3弾対抗戦の全10試合が一挙に発表された。RISE 3.17 東京体育館では中村寛×与座優貴、K-1 3.20 代々木では軍司泰斗×門口佳佑、菅原美優×宮﨑小雪と、王者対決が3試合実現した。菅原×小雪は初の女子対抗戦となる。他にもRISEでの鈴木真彦×金子晃大という、K-1スーパー・バンタム級王者・金子が長らく熱望したTHE MATCH以来のリベンジマッチも組まれており、昨年3月の第2弾よりもグレードアップしたカードとなっている。
出場選手20名が勢ぞろいし、お祭りムードも漂う記者会見となったが、その中で冒頭から危機感を露わにしていたのが、K-1を代表して出席した宮田充・Krushプロデューサーだった。宮田氏は「これまでの対抗戦の時はK-1に属していませんでしたが、去年復帰した時、胸に秘めていたのが、やっぱりRISEに仕返ししたいな、喧嘩しないのかなって、ずっと思っていて。去年の暮れからRISEさんと挨拶し、やり取りさせてもらって、流れの中で10対10になりました。このようにABEMAさんに立派な会見を作っていただいて、3月、思いのたけRISEさんとやれることがうれしくて、してやったりというか。あとは選手に暴れてもらいます。テーマは“K-1 REVENGE(リベンジ)”だと思っています。負けっぱなしのK-1では悔しいので、その気持ちだけで今回10対10にこぎつけました。受けて立ってくれた伊藤代表とRISEのファイターに心から感謝しつつ、潰しに行かせていただきたいと思います」と話し、対抗意識をむき出しにした。これまでの対抗戦に出場したK-1勢の大半は、宮田氏が20年7月にK-1を一度離れるまでに育った選手たちで、宮田氏の思入れも強い。この勢力での対RISEでの負け越し、自分たちが復興させたK-1ブランドの失墜に、人一倍悔しい思いを宮田氏がするのも当然だろう。
宮田氏が「K-1 REVENGE」をテーマに掲げたのも印象的だった。旧K-1時代、年末に無差別級のトーナメント「K-1 WORLD GP」が行われ、翌年春にリベンジマッチ主体の大会が組まれることが恒例だったが、その時の大会名が「K-1 REVENGE」だった。また、新生K-1の3月のビッグイベントは旧宮田体制から昨年まで「K’FESTA」の大会名だったが、菊田・宮田体制となって初めて迎えた今春は、旧K-1で魔裟斗がエースとして活躍した「K-1 WORLD MAX」の大会名を復活させた。さらに1月にはK-1創始者の石井和義・正道会館館長がK-1のアドバイザーに就任することが発表されたばかりだ。
「リベンジ」「K-1 WORLD MAX」「石井館長」と、旧K-1のターム(専門用語)の復活が続くが、結果・内容が伴わず、名前負けしてしまっては、肝心のK-1の復権につながらない。マスコミからの「選手は物凄いものを試合に懸けると思いますが、両代表は何を懸けますか?」という質問に、宮田氏は「カルロスさんが何を懸けたら面白いかXで募集しましょうかね」と最初は冗談めかして答えつつも「今回は懸けるというか、もうはっきりしちゃうと思うんで。勝ち越し負け越しのダメージで十分恥をかいただろう、というか、その後しんどくなることもわかってますし。これ負け越したらちょっとしんどいですよ。リスクしかないですね」と続け、RISEとの対抗戦で3タテを食らうのはK-1にとって死活問題となる認識を率直に口にした。
結果だけでなく内容も大事だ。最初のTHE MATCH 2022の対抗戦の爆発から生まれた熱気が冷めきらないうちに、次の熱気につなげなくてはいけない。花岡竜戦が決まったKrushバンタム級王者・池田幸司に対し、宮田氏は「12月のRISEさんに池田が出させてもらった時は僅差の判定勝ちで、僕はちっともうれしくなくて。前回の相手(=松下武蔵)より花岡選手は全然格上だし、心してかかってほしいし、チンケな判定勝ちなんかいらないから池田は倒してほしい。倒せないなら倒されちゃうぐらいの試合を望んでいます」と声をかけた。毎年3月の対抗戦が恒例化するのか?という質問にも、宮田氏は「RISEさんとのやりとりはそこまで及んでいませんが、お互いの助け合い運動でやるものじゃなく、RISE掛けるK-1イコール何、で今回生まれるものがテーマで、足し算じゃなく掛け算じゃないといけない。10対10の対抗戦は今回選ばれなかった選手の胸にも残ると思います。理想的なのは春にできればいいと思いますけど、もっとグチャグチャになって毎大会やるのも面白いかもしれないし、もう2度と口聞かない、これっきりになるかもしれないですし」と回答した。
「K-1×RISE=」から生まれるものの重要性は、RISEの伊藤代表も意識している。1月にK-1側が行った異例となる伊藤氏へのインタビューで、対抗戦に期待するものを聞かれた伊藤氏は「立ち技格闘技が、また盛り上がることです。対抗戦でRISEが勝った、K-1が勝っただけでは終わらずに、今度は日本代表と世界の対抗戦を開催するところまでやりたいですね」「業界全体一丸となって面白いものを作り上げていきたいですね。プロ野球のセ・リーグ、パ・リーグのような感じで盛り上がっていけばいいし、MMAに負けないように、僕たちがファンに夢を提供していきます」と話していた。RISEのYA-MANがRIZINの朝倉未来や平本蓮との対戦で注目を浴びるが、MMAシーンの話題として吸収されていることへの無念が、この発言から伝わってくる。
今回の会見でも伊藤氏は「RISEからだけじゃなく(K-1ライト級王者の)与座(優貴)選手が年末の(RISEとGLORYの合同の)65kgのトーナメントに出ても面白いんじゃないですか。まあ(今回は)中村(寛)が勝ちますけど」と、具体的に与座の名を出し、世界との対抗戦を見据えたコメントをした。K-1との対抗戦自体の今後についても「ただお互い選手消化するような対抗戦はやりたくない。こいつとコイツがぶつかったら面白いというカードがあれば前向きに検討したいです」と話した。
さかのぼれば22年6月、THE MATCHでK-1とRISEの対抗戦のきっかけを作った武尊、天心は、その後、それぞれの所属先を離れ、今は新たなフィールドで活躍している。昨年プロボクシングデビューした天心は1月23日にプロ3勝目をあげ、その5日後で今回の会見の5日前の28日には、武尊がONEの日本大会でスーパーレック・ギャットムーカオと5Rの死闘を繰り広げたばかり。東京ドームを超満員札止めにした2人は、THE MATCHの時同様、今も幅広い層に向けて存在感を示している。
スーパーレック×武尊の感想を聞く質問もK-1の王者4名に対して飛び、みな大きな刺激を受けた様子だった。武尊のスパーリングパートナーを務めた与座は「いつか自分が(スーパーレックに)やり返したい。だからこそこんなところでは絶対負けられない。目の前の試合に全集中で絶対勝ちます」、金子晃大は「僕もこのリングで生き様を見せようかなと思っています」、菅原美優は「たくさんの人が武尊選手からパワーをもらった。K-1を卒業した先輩が頑張っているので、K-1ファイターみんなで、次は武尊選手にパワーを送り返せるように頑張りたい」、軍司泰斗は「見ている人たちの心を動かせるような試合だったり、人柄だったり、いろいろ見てて学べるところもあると思う。僕らK-1側は全選手、そういう気持ちを込めて、今後の対抗戦で挑めればと思っています」と話した。
武尊といえば「K-1最高!」という決めセリフがお馴染みだったが、武尊から刺激を得た選手たちが、「K-1再興」を担えるか?さらにRISEと一丸となって、伊藤氏も目指す立ち技格闘技の再興につなげられるか?22年6月のTHE MATCHで勝利後の天心は「僕はもうここでいなくなっちゃうんですけど、これからも協力していただけたらうれしいです。こうやってまた“THE MATCH 2”やりましょう!絶対にやった方が良いよ!大人の事情なんて分かんないんで。皆さんでこういう大会を何度も何度もやって、キックボクシング・格闘技を盛り上げましょう」と呼びかけ、最後に「格闘技最高!」と叫んだ。それから1年9か月。天心の思いを受け継ぎ、武尊からもパワーをもらった24年3月の対抗戦10試合は、立ち技格闘技界にとっても大勝負(=THE MATCH)となる。
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K-1 3.20 代々木競技場第一体育館:軍司泰斗、RISE王者の門口佳佑戦で「負けたらベルト返上」。初のK-1×RISE女王対決、菅原美優「集大成見せる」×宮﨑小雪「すべて自分が優っている」