BOM 7.9 渋谷 O-EAST(レポ):吉成名高、難敵ウェウワー攻略しタイ人以外初のラジャダムナン2階級制覇「この道をブラさず頑張ります」
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
格闘技医学会
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Shimizu presents BOM 41 & BOM 42
2023年7月9日(日)東京・Spotify O-EAST
レポート&写真:井原芳徳
第5試合 メインイベント ラジャダムナン認定フライ級(50.8kg)タイトルマッチ 3分5R(インターバル2分)
×ウェウワー・ウォークリンパトゥム[Waewwwaw Wor.Klinpathum](タイ/王者)※初防衛戦
○名高・エイワスポーツジム[吉成名高](エイワスポーツジム/挑戦者、プロムエタイ協会・WPMF世界・BOMフライ級王者、WBCムエタイ・ナイカノムトム・スーパーバンタム級王者、元ルンピニー&ラジャダムナン認定ミニフライ級王者、元WBC・IBF・WMCムエタイ世界同級王者)
判定0-3 (チャラーム46-49/大成48-49/シーン47-50)
※名高が王者に
名高は2001年1月8日生まれの22歳。17歳だった18年12月のBOMでラジャダムナン・ミニフライ級(47.62kg)王座を獲得し、19年4月のBOMでルンピニーの同級王座を獲得し、日本人初のルンピニー王座獲得、タイ人以外初のムエタイ2大スタジアム王座制覇を成し遂げた。翌20年からのコロナ禍突入以降、日本人との戦いが増えるとともに、RIZINにも参戦して知名度を高める。21年末には那須川天心のRIZINラストマッチの相手候補にもあがった。
その間に名高の体も少しずつ大きくなり、現在の適性体重はフライ級。今年に入ってからは2月のラジャダムナン・ワールド・シリーズ(RWS)で元オームノーイ認定スーパーフライ級王者のパタックシンを3R 左ハイキックでKO。4月のBOMではS-1スーパーフライ級王者のソンチャイノーイを3R左肘打ちでKO。5月のKICK BOXING WORLD CUPではペットナコンを1R左膝蹴りでKOし、現在22連勝中だ。
王者のウェウワーは5月18日にラジャダムナン王者になったばかりで、タイを離れ日本で初防衛戦を行う。名高はBOMの公式インタビューでウェウワーについて「自分からガツガツ行くこともなく、相手の攻撃を見て脱力した攻撃を返してそこでポイントを稼いでいくスタイルの選手」「攻めづらくて、いざ対峙してみないとわからない強さがある選手」と警戒し「面白い試合にならないかもしれないですけど、最後に僕が倒せばお客さんは盛り上がってくれると思います」と話していたが、試合はその想定に近い技術戦となる。
名高は2月のRWS同様、ワイクルーに日本刀で切るジェスチャーも織り交ぜる。1R、両者サウスポーで構え、名高がプレッシャーをかけ、随所で左ローを当てるが、まだ慎重。ウェウワーは回って距離を取り、ほとんど攻めない。記者採点はイーブン。ジャッジは1者が名高につけ、2者はイーブンとする。
2R、ウェウワーが前に出てきて、名高は左ミドルを放つが、ウェウワーは蹴り足をつかんでから左ストレートを当て、名高をスリップさせる。名高は右の蹴り主体に切り替え、ミドル、三日月蹴り、ローをヒットする。だがウェウワーはカウンターの右フックで名高を少しだけふらつかせ、崩しを絡め、随所で印象を作り、名高に主導権を握らせない。記者採点はイーブン。ジャッジは1Rに名高につけたチャラーム氏がウェウワーにつける。そのため3者とも合計ではまだイーブンだ。
本格的な勝負は3R。名高がプレッシャーをかけ、お互いミドル、ローを出し、激しい蹴り合いに。お互い空振りや足を上げカットする場面が多く、防御面も含めた高度な競り合いとなる。どちらも主導権を握らせず、均衡はなかなか崩れないものの、終盤、首相撲の展開になると、名高が膝の数で少し上回り、最後はミドルを連打し、若干ながら押し気味で終える。記者採点は名高。ジャッジ3者も名高につける。
4R、名高はプレッシャーをかけるものの、一定の距離を取る。ウェウワーは時折両手を広げ組もうとするが、名高はすぐ離れて組ませない。名高は首相撲の展開を嫌い、蹴りで徹底し、随所で左ロー、ミドルをヒットし、やや攻撃数で上回る。ウェウワーも終盤に右ミドルを強打するが、やや攻めあぐねている感は否めない。記者採点は名高。ジャッジ3者も名高につける。
名高優勢で迎えた最終5R、ウェウワーは組んで膝を当てるが、名高も膝を当て返して離れる。名高はミドル、ローを随所で当て、組めば膝を当てる。すると残り1分、名高はセコンドの指示を聞き、離れてほとんど攻めない「流し」に入り、ポイントを守り切るモードに。ウェウワーもやむなく応じ、そのまま終了する。観客も名高の優勢を悟り拍手する。記者採点はイーブン。ジャッジは割れ、2者が名高、大成敦氏のみウェウワーにつける。記者採点合計は48-50で名高。ジャッジ3者も1~3点差で名高を支持し、名高が判定勝ちでタイ人以外初となるラジャ2階級制覇を果たした。
ベルトを巻いた名高は「ウェウワー選手、日本で防衛戦をしてくれてありがとうございました。絶対KOしようと思いましたが、相手が上手かったです。このレベルを圧倒できればスターになれるので、あと一歩だと思います。皆さんの応援をお願いします。17歳でラジャダムナンを取った時に3階級制覇を目標に掲げました。そのためにはもっと練習しないといけないです。本当にムエタイが大好きで、自分はこの道をブラさず頑張ります」とアピールした。
控室で名高は「単発の攻撃のスピードでなんとか競り勝ったんですけど、よけ方や崩しのタイミングでは正直負けていたと思います。対峙しないとわからない攻め辛さでした。要所で自分の攻撃を当てていたんですけど、結構カットされていたんで。日本なので僕有利に働きましたけど、タイで賭け率もある中でやったら勝てるか自信がないですね。攻撃のスピードは自信があるので、そこは活きたと思います。4Rに一回コカしたのと、自分の攻撃で終わらせられるようになったのが良かったと思います。胴当てるか、よけるか考えながら戦えたので楽しかったですね。でも戦前に『面白い展開にならない』と言ったとおりの展開になっていると試合中に思っていましたけど(笑)。アグレッシブな展開にできなかったのは反省です。ストレートや三日月をちょっと嫌がっていたのがわかったんですけど、ダウンするほどのダメージは与えられなかったですね。一緒に練習した田丸辰選手が1週間前に(RISEで)ペッシラーという巧い選手を三日月蹴りで倒していたんですけど、僕は精度が足りなかったです」と試合を振り返った。
次の目標の3階級制覇については「クマンドーイが(スーパーフライ級の)チャンピオンだったんですけど、サウスポーで肘の選手で怖い顔の選手が今のチャンピオンで、やるにはラジャで勝たないといけないでしょうね。たぶんタイになるんじゃないかと思います。ミニフライとフライをこっちで取ったんで、向こうで防衛するか取るかすれば、誰も何も言えないでしょうね」と話した。
BOM 42(夜の部)その他の試合レポ
第4試合 ONEムエタイルール 61.23kg契約 3分3R
×羅向(ZERO)
○ロムイサーン・TIGER REON(タイ/REON Fighting Sports Gym)
判定1-2 (28-29/29-28/28-29)
羅夢がサウスポーで構えプレッシャーをかけ続け、パンチを振るうが、距離が遠い状態が続く。ロムイサーンも攻撃が少ないが、2Rになると右ミドル、組んでの膝を当てる場面が増え、やや優位になる。3R、ロムイサーンも右ミドルを当てるが、圧を強めた羅夢が左インロー、顔面とボディへのストレートのヒットを増やし、やや優位で終了する。ジャッジは割れ、2者に支持されたロムイサーンが判定勝ちした。
第3試合 スーパーバンタム級 3分5R
×上野賢志(薩摩ジム)
○知花デビット(エイワスポーツジム/Aimhigh)
3R 1’39” KO (パンチ連打)
知花は今回が引退試合。サウスポーの上野に対し、知花が2Rから右インローを効かせると、終盤にはパンチと肘のラッシュで追い詰める。3R、知花がコツコツローを当て、中盤に左ボディフックを効かせると、コーナーに詰めてのパンチラッシュでダウンを奪う。上野は立てず、知花がKO勝ちで有終の美を飾った。
第2試合 ウェルター級 3分3R
○ファナンチャイ・オーピティサック[Fhanumchai Aor.Pitisak](タイ)
×与儀竜也(BOM SPORTS GYM 沖縄)
判定3-0 (30-27/30-29/30-28)
第1試合 WMCインターコンチネンタル・バンタム級王者決定戦 3分5R
○桂 英慈(クレイン)
×誓(ZERO)
判定3-0 (50-47/50-45/49-47)
※桂が王者に
桂がサウスポーからの左ミドル、膝を度々当て優位を維持する。3R終盤、桂は膝とミドルのヒットを増やし、ダウン寸前まで誓を追い詰める。4R以降は攻め疲れたか勢いが落ちたものの、膝、左ミドル、ハイ等を随所で当て誓に反撃を許さず判定勝ちした。
オープニングファイト2 ライト級 3分3R(延長1R)
×野原 心(アンジャネーア・ムアイ)
○小野寺楓珂(BOM SPORTS GYM八戸)
1R 2’47” TKO (コーナーストップ:左肘打ち)
1R、序盤から小野寺が左ミドル、パンチを当て、野原を圧倒すると、終盤に手数を上げ、膝蹴りを連打してから右肘をヒット。ダウンした野原は動けず、セコンドからタオルが投入され、小野寺のTKO勝ちとなった。
オープニングファイト1 スーパーフェザー級 3分3R
○拳太(MSJキックボクシングジム)
×豪之晟(TSK japan)
2R 1’26” TKO (左肘打ち)
BOM 41(昼の部)
第6試合 メインイベント 女子アトム級(46.26kg) 2分5R
×サネガン・カムナンチェットムアンチョン[Sanehngaam Kamnanchetmuangchon](タイ/プロムエタイ協会女子ピン級&アトム級王者)
○伊藤紗弥(尚武会/WBCムエタイ&WMC世界女子ミニフライ級王者、BOM女子ライトフライ級王者、IPCC世界女子アトム級王者、元WPMF世界女子ピン級王者)
判定0-3 (48-49/49-50/47-48)
第5試合 セミファイナル 78kg契約 3分5R
×ティムサン・バケシティブランド(タイ)
○柿沼 慶(ポゴナクラブジム)
1R 0’52” KO (右フック)
第4試合 フライ級 3分5R
△ハン・ソーサカリン(タイ)
△竜哉・エイワスポーツジム[奥脇竜哉](エイワスポーツジム)
判定1-1 (48-49/49-47/49-49)
第3試合 スーパーフライ級 3分5R
○ソンチャイノーイ・ゲッソンリット(タイ)
×ジュライ・ウォーワンチャイ[石井寿来](ウォーワンチャイプロモーション)
判定2-0 (49-46/49-49/49-47)
第2試合 BOMスーパーフェザー級タイトルマッチ 3分5R
×BOMピンサヤーム(タイ/王者)
○梅沢武彦(フリー/挑戦者)※東京町田金子ジムから所属変更
4R 0’28” KO (左ハイキック)
※梅沢が王者に
第1試合 女子54kg契約 2分3R(延長1R)
×ノンビュー・トーテップシン(タイ)
○ルイ(クラミツムエタイジム)
判定0-3 (28-30/29-28/27-30)
オープニングファイト1 ライト級 3分3R(延長1R)
×力也(ウィラサクレック湖北)
○カミ シロ(PHOENIX)
3R 0’36” TKO (ドクターストップ:肘打ちによる左まぶたのカット)