シュートボクシング 2.15 後楽園ホール:海人、ブアカーオからの刺客・ピンペットに完敗。笠原弘希、前口太尊との激闘制す。女神が初黒星
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SHOOT BOXING 2020 act.1
2020年2月15日(土)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
第10試合 68kg契約(肘有り) 3分5R(無制限延長R)
×海人(TEAM F.O.D/S-cup 65kg世界トーナメント2018優勝、SB日本スーパーライト級(65kg)王者)
○ピンペット・バンチャメーク[Pinphet Banchamek](タイ/バンチャメークジム/ルンピニー認定スーパーライト級6位、WPMF世界王者)
8R 判定1-2 (若林10-9/北尻9-10/津山9-10)
7R 判定1-0 (若林10-10/北尻10-9/津山10-10)
6R 判定1-1 (若林10-10/北尻9-10/津山10-9)
5R 判定1-0 (若林49-49/北尻49-49/津山50-48)
海人はチャムアトーン、ザカリア・ゾウガリー、チャド・コリンズといった、パワーで勝る海外強豪相手に敗れていることから、昨年後半、本来の65kgよりも上の階級にも戦いのフィールドを広げ、6月には元Krush-70kg級王者・中島弘貴、9月にはRISEミドル級(70kg)王者・イ・ソンヒョン、12月にRISEウェルター級(67.5kg)王者“ブラックパンサー”ベイノアと対戦し、3連勝中だ。
今回の相手・ピンペットはブアカーオ・バンチャメークが、今年秋に開催予定のS-cup世界トーナメントを見据えて送り込んできた、タイの26歳の現役ランカーだ。ルンピニースタジアムのスーパーライト級のため、今回は68kg契約ではあるが実質海人と同階級の選手だ。梅野源治と18年6月のREBELS後楽園大会で対戦し、5R判定0-2で敗れている。
1R、ピンペットがサウスポーに構え、左ミドルを強打し先手を取るが、海人は中盤、サウスポーにスイッチすると、左のカーフキックを連続で当てる。ピンペットは少し足取りが悪くなるが、終盤は持ち直す。だが海人の蹴り数が勝る状態が続く。記者採点は10-10。津山ジャッジが海人につけ、他2人はイーブンだ。
2R、途中まで海人はサウスポーだったが、スイッチを繰り返し、中盤からはオーソドックスに固定する。海人が圧をかけ続け、お互い前手でフェイントをかけ合い、蹴りの打ち合いが続く。ピンペットは左ミドル、ハイを1Rより増やすが、海人も蹴りを返し続ける。記者採点は10-10。若林ジャッジが海人につけ、他2人はイーブンだ。
3Rも海人はオーソドックスで圧をかけ続けるが、タイミングを読まれ、なかなか攻撃の糸口がつかめなくなってきた。ピンペットが随所で左ミドルを当てるが、海人も崩れない。記者採点は10-10。ジャッジ3者も同じだ。
4Rも同じような構図で、海人は時折スイッチして圧をかけ続け、左奥ロー、左肘を当てる場面もあるが、まだ攻撃が少ない。ピンペットは左ミドル、ローを多く当て続け、左ハイ、左ストレートも当て、やや優位に。記者採点は9-10でピンペット。北尻・若林ジャッジもピンペットにつける。津山ジャッジはイーブンだ。
5Rもピンペットが左ミドルを当て続ける。海人も時折左ボディなどを当てるが、攻撃が少ない。ピンペットは終盤、ステップで距離を取り、タイでの試合のように流し気味に終える。記者採点は10-10。北尻・津山ジャッジは10-9で海人につける。記者採点は合計49-50でピンペット。ジャッジは1者が海人を支持したとアナウンスされると、場内はどよめき、2者はイーブンで延長へ。
6Rもピンペットが距離を取り、左ミドルを当て続ける。海人は変わらず前に出るがなかなか打開できない。終盤、海人が右ストレートのけぞらせるが、単発止まりだ。記者採点はイーブン。北尻ジャッジはピンペット、若林ジャッジはイーブン、津山ジャッジは海人と、三者三様で再延長へ。
7R、ピンペットオーソドックスに切り替えるが、海人は逆にサウスポーを貫く。ピンペットは右ミドルを当て続け、海人は攻撃がほとんど出せない。記者採点はピンペット。北尻ジャッジは意外にも海人で、他2人はイーブンで、再々延長へ。
8R、海人はオーソドックスに戻るが、ピンペットも元のサウスポーに戻す。海人が右ストレートを当てる場面もあるが、威力はさすがに落ちており、ピンペットが左右のミドル、膝を多く当て続ける。中盤以降、さすがに疲れの溜まった海人は表情が虚ろで、ほとんど攻撃を出せなくなる。記者採点はピンペット。若林ジャッジのみ海人につけたが、北尻・津山ジャッジは順当にピンペットにつけ、ようやくピンペットの勝利となった。
判定で再々延長までもつれ込み、スコア上では接戦だが、ピンペットが上手さを発揮し、海人は持前の破壊力を終始封じられ、完敗と言っていい内容だった。試合後の海人はノーコメント。シュートボクシング協会のシーザー武志会長はこの結果について「あれでいいんじゃないか。(年末の)S-cupに海人がこれまで負けた選手がみんな出て、海人が勝てば盛り上がる。負けて色々勉強になるんじゃないと」とポジティブに捉えていた。
第9試合 61kg契約(肘有り) 3分3R(無制限延長R)
○笠原弘希(シーザージム/SB日本スーパーフェザー級(60kg)王者)
×前口太尊(TEAM TEPPEN/元J-NETWORKライト級王者)
3R 1’14” TKO (ドクターストップ:左肘打ちによる右まぶたのカット)
笠原兄弟の長男・弘希は昨年9月に深田一樹にKO勝ちし2階級制覇を達成した。12月のTDC大会では新日本キックの重森陽太に肘で切られTKO負け。まだ肘有りルールには不慣れな様子だが、今回も肘有りでの経験の勝る前口との試合が組まれた。前口のセコンドには那須川天心がつく。
1R、前口が中盤までローを当て、少し攻撃が多かったが、終盤、弘希が左の顔面狙いの前蹴り、左ハイ、左肘を当て、やや優位に。
2R、前口も左右のボディ、右ストレートを当てるが、弘希が手数多く攻め、左ハイ、右フックでダウンスレスレの状態で倒す場面を再三作る。終盤には左肘で前口の右まぶたを切り裂き、前口はドクターチェックを受ける。
3R、前口はストップされる前に倒そうと、開始すぐから圧を強め、左フックでダウンを奪う。だが前口の反撃はここまで。スリップ気味に倒れた弘希のダメージは小さく、左ハイ、組んでの左膝、左右の肘を何発も当ててダウン寸前まで追い詰めると、再びドクターチェックとなりついにストップ。弘希の勝ちとなったが、前口の持前の粘りも光った。シーザー会長も「この試合が今日のベストバウトだった。前口も良かった」と高く評価した。
第8試合 64kg契約 3分3R(無制限延長R)
○町田 光(橋本道場/WPMF世界スーパーフェザー級王者)
×宮越慶二郎(拳粋会/WBCムエタイ・インターナショナル・ライト級王者)
判定3-0 (若林29-28/津山29-28/北尻29-27)
町田は昨年からSBに上がり、村田聖明、西岡蓮太からバックドロップでシュートポイントを奪い勝利し、SBルールへの適性の高さを示した。宮越とは12年2月、宮越の所属するNJKFで戦い、ドローに終わっている。宮越は17年9月に海人に敗れて以来のSB参戦となる。最近はスアレック、勝次、鈴木真治相手に3連勝中だ。
1R、お互い独特のフェイントで動き続け、町田は投げを再三狙い、ローも着実にヒット。宮越は攻撃は少ないが、まだ崩れない。
2Rも町田は投げを狙うが、MMA式のタックルで倒す展開ばかりで、なかなかポイントにつなげられない。それでも随所でロー、ミドルを当て、打撃数では上をキープする。
3R、町田は執拗に投げを狙い続けると、中盤、バックドロップを決め2ポイントを獲得する。その後も投げを狙い続けるが、終盤、宮越が右ストレートで町田を少しぐらつかせる。とはいえ点差は埋められず、町田の勝利となった。
第7試合の後の休憩明けには、2月11日のKNOCK OUTでの無法島GP(KNOCK OUT BLACK 64kg初代王座決定トーナメント)で優勝した西岡蓮太がリングインし、凱旋の挨拶。「シュートボクサーとしてロングスパッツを履いて、ベルトをもぎ取れたのは皆さんの応援のおかげです」と感謝の言葉を述べた。
第7試合 フェザー級(57.5kg) 3分3R(無制限延長R)
○笠原友希(シーザージム/SB日本1位)
×魁斗(立志會館/SB日本3位)
5R 判定2-0 (津山10-9/若林10-9/平10-10)
4R 判定1-0 (津山10-10/若林10-9/平10-10)
3R 判定1-0 (津山30-30/若林30-29/平29-29)
この一戦の勝者は、現在行われているリーグ戦「CAESAR’S LEAGUE」のトップ通過者(現在は手塚翔太が1位)と4月22日の後楽園大会でSB日本フェザー級王座決定戦を行う。友希も魁斗も18歳で、友希は15戦14勝1敗、魁斗は8戦8勝だ。
1R、サウスポーの友希が左ミドル主体で攻め続けるが、魁斗は右ストレート、右インローを着実に返し、終盤には右ストレートで少しひるませる。
2R、友希は左ミドルだけでなく左ボディフックも駆使するようになると、左ボディから右フックのコンビネーションを決める。その後は左ミドル、ハイ、膝を何発も当て主導権を維持する。
3R、お互いクリンチの中で投げを狙う展開が増え、打撃戦も五分。ヒットでは友希が少し上だが、魁斗も随所で右ストレートを返して巻き返す。記者採点は2Rに友希につけ30-29で友希。ジャッジ2者はイーブンで延長へ。
4Rも同じような構図で、なかなか均衡は崩れない。お互い消耗し、技のキレは落ちているが、終盤、友希が左ミドルのヒットを増やし、若干優位に。とはいえはっきりした差はつかず再延長へ。記者採点もイーブン。
5R、友希は左ミドルを随所で当て続ける。魁斗も右ストレートを返すが、ヒットが少なく、手数で差をつけられてしまう。記者採点は友希。ジャッジ2者が友希を支持し、友希の判定勝ちとなった。魁斗は初黒星がついたが、友希と渡り合ったことで評価を高めた。シーザー会長は「いい試合だった。ほとんど差は無かった。あの2人は永遠のライバルだよ」と話し、今後の再戦に期待した。
第6試合 女子49kg契約 3分3R(無制限延長R)
×女神(TIA辻道場/SB日本女子ミニマム級(48kg)王者)
○sasori(テツジム/ミネルヴァ・ライトフライ級王者)
4R 判定0-3 (和田8-10/若林8-10/津山8-10)
3R 判定1-0 (和田28-28/若林29-28/津山28-28)
sasoriはSB初参戦。兵庫出身で戦績12戦8勝2敗2分。70年代の梶芽衣子主演映画「女囚さそり」のコスプレで「怨み節」をテーマに入場する。
1R、サウスポーのsasoriに対し、女神が右の蹴りを当てていたが、次第にsasoriが詰めるようになると、左ストレート、フックを度々当てて攻勢に。
2R、sasoriがパンチで攻めてくるが、女神は前方への投げでポイント1を取り挽回する。sasoriはその後も前に出続けてパンチを振るうが、空振りが増えてしまう。
3R、中盤にsasoriが詰めてパンチを連打し好印象を残すが、終盤、女神がまたも投げでポイント1を奪い巻き返す。記者採点は1Rと3Rにsasoriにつけたが、女神にシュートポイント2があるため28-28。
ジャッジは2者がイーブンで延長へ。sasoriは前に出続け、左フックを当て続け、中盤に左フックでダウンを奪う。女神もバックハンドブローを返し、少しsasoriをひるませるが、最後もsasoriが攻め続けて判定勝ち。女神にプロ初黒星をつけた。
第5試合 バンタム級(52.5kg) 3分3R(無制限延長R)
×佐藤執斗(グラップリングシュートボクサーズ/SB日本1位)
○伏見和之(シーザー力道場/SB日本2位)
判定0-2 (若林28-29/津山29-29/和田28-29)
1R、伏見が圧をかけ、左ボディ、右フックを終盤にまとめ攻勢。2Rも伏見のペースだったが、終盤、佐藤が左バックハンドブローを当てた後、右フックも当てると、伏見の腰が一瞬落ちる。
3R、伏見は左ミドルを増やして挽回すると、終盤、右ストレートで佐藤を少しひるませ、ポイントを取り判定勝ちした。
第4試合 ライト級(62.5kg) 3分3R(無制限延長R)
○村田聖明(シーザージム/SB日本1位、元スーパーフェザー級王者)
×増井侑輝(真樹ジムAICHI/SB日本3位)
4R 判定3-0 (津山10-8/若林10-9/茂木10-9)
3R 判定0-0 (津山29-29/茂木29-29/若林29-29)
1R、増井がサウスポーからの左ミドルを随所で当て、やや優位だが、聖明もまだ崩れず。2R、増井は左ストレートも増やすが、聖明も右ストレートを返す。終盤、聖明が投げを狙うと、増井はロープをつかんでしまい、イエローカードをもらってしまう。
3R、増井は左ミドル、左ストレートを当て続けていると、聖明は鼻血を出し苦しむ。ジャッジはイーブンで延長へ。4Rも増井が攻勢だったが、少し攻め疲れると、聖明が首投げを決め、シュートポイント1を獲得。その後もパンチで攻め打撃でも挽回し、逆転勝ちした。
第3試合 ウェルター級(67.5kg) 3分3R(無制限延長R)
×太聖(岡山ジム/SB日本4位、INNOVATION王者)
○村田義光(シーザージム/SB日本5位)
4R 判定0-3 (8-10/8-10/8-10)
3R 判定0-0 (30-30/29-29/30-30)
1R、長身のサウスポー、義光が左ミドル、左テンカオを当てるが、太聖はカウンターで左右のフックをお返しし、終盤には投げも狙う。
2Rも義光はタイミング良く左の膝、ミドルを当てる。太聖は投げを果敢に狙い、度々投げるものの、腰より少し低く、ポイントにはならない。
3Rも同様の構図ではあるが、義光が膝蹴りを当て続けると、太聖は口が開いて苦しそうな様子を見せ、攻撃が減ってしまう。
ジャッジ3者ともイーブンで延長へ。4Rも義光ペースで、左膝、ミドルを当て続け、終了間際に左のテンカオを顔面に当ててダウンを奪い、点差を広げ判定勝ちした。
第2試合 スーパーウェルター級(70kg) 3分3R(無制限延長R)
×坂本優起(シーザージム/SB日本4位)
○高木覚清[かくし](岡山ジム/INNOVATIONウェルター級8位)
判定0-3 (28-29/28-30/28-29)
1R、高木が開始間もなくからのパンチの打ち合いで右ストレートを何発も当て続け攻勢。坂本のパンチをもらっても引かずに返し、場内を沸かせる。2Rも同様だが、坂本もヒットを増やし挽回する。3Rも同様だが、高木が左ハイ、ミドルも織り交ぜながら手数多く攻め続け判定勝ちした。
第1試合 CAESAR’S LEAGUE 2019ランキング戦 フェザー級(57.5kg) 3分3R(無制限延長R)
○手塚翔太(Sublime guys・GONG-GYM坂戸/SB日本4位)
×TSUTOMU(TIA辻道場/SB日本10位)
3R 1’20” KO (肩固め)
パンチ主体の攻防が続き、手塚がやや優位。2R中盤、TSUTOMUが前方への投げでシュートポイント1を奪うが、数十秒後に手塚も同様に奪い返し、五分に戻す。すると3R、投げ狙いの組んだ状況で、手塚が肩固めを極めて落とし勝利。SBルールの特徴の生きる好勝負となった。