パンクラス 3.9 横浜武道館(レポ/後半):渡邉史佳、杉山しずかを1R KOし4戦目で女子フライ級王者に。黒澤亮平、まぶたカットのピンチ乗り越え2R TKO勝ちしストロー級王座初防衛。山本歩夢・本野美樹がパンクラス初戦で勝利
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
センチャイムエタイジム中野
本場のムエタイ、教えます。初心者、ダイエット目的の方も大歓迎!まずは見学・体験を!
PANCRASE 352
2025年3月9日(日)神奈川・横浜武道館
レポート&写真:井原芳徳 (※前半戦は別記事に掲載します)
渡邉史佳、杉山しずかを1R右フックKOし4戦目で女子フライ級王者に
第14試合 メインイベント クイーン・オブ・パンクラス・チャンピオンシップ・フライ級 5分5R
×杉山しずか(リバーサルジム新宿Me,We/王者)※初防衛戦
○渡邉史佳(FIGHTER’S FLOW/1位)
1R 2’15” TKO (レフェリーストップ:右フック)
※渡邉が王者に
杉山は31戦23勝7敗1分の37歳。大学生時代に空手道禅道会に入門し、08年にプロMMAデビュー。長年DEEP JEWELSを主戦場とし、17年と18年にはRIZINで渡辺華奈と対戦しいずれも敗れている。22年にはDEEP JEWELSフライ級王座決定トーナメントに出場し決勝で中井りんに1R一本負け。24年はパンクラスに上がり、3月にライカに判定勝ちしランキング入りし、7月には女子フライ級王者・重田ホノカに1Rフロントチョークで一本勝ちしベルトを巻いた。
渡邉は3戦2勝1敗の24歳。杉山が2度敗れた渡辺華奈と同じFIGHTER’S FLOWに所属する。23年3月のライカ戦でプロデビューし判定負けしたが、24年3月にNØRIに判定勝ちし、9月に元王者で1位の端貴代と対戦し、3Rともポイントを取り判定勝ちし、4戦目で王座に挑戦し、見事このチャンスをものにする。
1R、サウスポーに杉山に対し、開始すぐから渡邉が右ストレートを当ててダウンを奪う。杉山は立ったがダメージを負っており、タックルを繰り返すが力が入りきらず雑になってしまう。渡邉は杉山のタックルを切り続け、自分の右ストレート、フックを随所で当てて主導権を維持する。すると中盤、渡邉が右フックをクリーンヒット。杉山は腰から崩れ落ち、すぐさま島村レフェリーがストップした。
黒澤亮平、まぶたカットのピンチ乗り越え2R TKO勝ちしストロー級王座初防衛
第13試合 コーメインイベント キング・オブ・パンクラス・チャンピオンシップ・ストロー級 5分5R
○黒澤亮平(THE BLACKBELT JAPAN/王者、元修斗同級世界王者)
×植松洋貴[よしき](NEVER QUIT/1位、ネオブラッドトーナメント2022同級優勝)
2R 2’33” TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチ連打)
※黒澤が初防衛
黒澤は22戦18勝4敗の31歳。23年7月からパンクラスに初参戦し、小林了平に1R KO勝ち、八田亮に判定勝ちし、4月のストロー級暫定王者決定戦でリトルを2R 右ストレートでKOし、修斗に続く2団体制覇を果たした。1位の若林耕平が正規王者決定戦を辞退し、7月のランキングで黒澤が正規王者に認定され、今回初防衛戦に臨む。
植松は8戦5勝2敗1分の28歳。22~23年は3試合連続で勝ち星から遠ざかっていたが、24年に入り増田大河と尾崎龍紀に判定勝ちして2位に。11月に3位の高島俊哉に1R TKO勝ちすると、「KOで勝てたので、次回、タイトルショット、お願いします」とマイクアピールし、王座に初挑戦することになった。黒澤も植松も前回の試合で打撃の破壊力の高さを印象付けており、今回も打撃戦が勝敗の中で重要なポイントとなりそうだ。
1R、黒澤が開始すぐに左ボディを当て、タックルを仕掛けて倒し、ハーフで押さえる。だが、黒澤は倒す際に植松の骨盤に左まぶたが当たってカットして出血し、膠着ブレイク後、ドクターチェックが入る。3分近く止血が行われて再開すると、黒澤がプレッシャーをかけ続け、左ジャブ、ストレートを当てて主導権を握る。だが植松も右ストレートや左ハイを随所で返す。記者採点は僅差だが黒澤。ジャッジ3名とも黒澤を支持する。だが黒澤のカットの解釈次第では植松につけるジャッジがいても不思議ではない。
すると2R、黒澤がプレッシャーをかけ続け、金網を背負う植松に対し、左ジャブ、左ボディ等をヒット。中盤、黒澤の左ボディが効き目を発揮し、植松がうずくまると、黒澤が顔面とボディへのパンチと膝のラッシュで倒しにかかる。最後は植松が防戦一方になったところで、梅田レフェリーがストップした。
黒澤は王座初防衛に成功し、マイクを持つと「このカットはバッティングではなく、骨盤に当たったので、僕の弱さです。いつになったら強くなれるんだろうと思うんですけど、これしか好きなものないんで、これからも頑張ります」と謙虚にコメントした。
井村塁、新鋭・松井斗輝に1R裸絞めで一本勝ち
第12試合 バンタム級 5分3R
○井村 塁(ALMA FIGHT GYM PUGNUS/2位、ネオブラッドトーナメント2020同級優勝)
×松井斗輝(THE BLACKBELT JAPAN/5位)
1R 3’18” 裸絞め
井村は25歳。23年9月大会で河村泰博に一本負け。11月に矢澤諒に一本勝ち。24年3月に田嶋椋に判定勝ちし1位に浮上した。9月に初来日のカリベク・アルジクル ウルルを相手に初の国際戦に臨んだが、75秒でTKO負けした。12月にウルルは王者・透暉鷹に挑戦予定だったが、両者の怪我で延期となっている。
松井は8戦7勝1敗の25歳。子供の時にグローブ空手を始め、中学からはボクシングを習い国体で3位入賞。21年にプロデビューし6連勝後、12月にムハンマド・サロハイディノフに判定負け。24年2月の秋葉太樹戦の前日計量でフライ級リミットを6.8kgオーバーして失格に。11月にはバンタム級に階級を上げ、矢澤諒を顔面への右膝蹴りからのパウンドで19秒で仕留め、素質の高さを改めて印象付けていた。
1R、サウスポーの井村のタックルを松井が切り、右のインロー、左ロー、ストレートを的確に当てて主導権を握る。だが中盤、井村は左ストレートをヒットしてダウンを奪うと、パウンドラッシュで追い詰めてから、バックマウントを奪い、裸絞めを極めてタップを奪い逆転勝ちした。
マイクを持った井村は「前回、キルギス人に負けてしまって、どうしようもないと思いましたけど、松井選手ありがとうございます、今年いいスタートを切れたんで、年内僕が必ずキング・オブ・パンクラシストになります。世界で戦えるパンクラシストに成りあがっていきます」とアピールした。
ハファエル・バルボーザ、日本初戦はライト級2位の粕谷優介に2R一本勝ち
第11試合 ライト級 5分3R
×粕谷優介(CROWN/2位)
○ハファエル・バルボーザ[Rafael Barbosa](ブラジル/Maquininha do Futuro)
2R 4’02” ダースチョーク
粕谷は35歳。UFCで2戦経験後、17年からパンクラスに参戦。19年9月のライト級暫定王者決定戦でサドゥロエフ・ソリホンに敗れ、22年4月以降は3連勝していたが、23年12月のライト級王者挑戦者決定戦では雑賀ヤン坊達也に判定負け。昨年4月の立川大会では久米鷹介に判定負けし2連敗を喫したが、9月大会ではホン・ソンチャンに1R TKO勝ちしている。
バルボーザはパンクラス初参戦、MMA 19戦14勝(5KO/4一本)5敗の27歳。23年3月のLFAニューヨーク大会では、昨年のジ・アルティメット・ファイター32の優勝者となるマリオン・サントスに判定負けしている。
1R、長身のバルボーザに対し、サウスポーの粕谷が胴タックルを仕掛けて押し込む。だが倒せずにいると、終盤、バルボーザがテイクダウンを奪ってから、すぐさまバックマウントを奪い、裸絞めを狙う。最後、粕谷は体をひねって上になるが、少しパウンドを当てただけで終わる。バルボーザがポイントを先取する。
2R、粕谷がまたも押し込み、バルボーザは突き放す。粕谷は前に出て、左フックを当て、やや優位に。粕谷はタックルを仕掛け、バルボーザはがぶって防御するが、グラウンド状態で頭部に対して反則の膝蹴りを当ててしまい、一時中断する。バルボーザは減点1が科される。
3分ほどで再開すると、粕谷は片足タックルを仕掛けるが、バルボーザは倒されながらダースチョークで迎撃すると、これがガッチリと極まり、最後は金子レフェリーがストップした。
山本歩夢、パンクラス初戦はRyoに2Rアームロック葬
第10試合 フェザー級 5分3R
×Ryo(グランドスラム/RINGS/3位、元THE OUTSIDER 70-65kg級王者)
○山本歩夢(K-PLACE)
2R 1’43” アームロック
Ryoは40歳。パンクラスで3連勝し、4連敗した後、23年年7月、名田英平に判定勝ち、12月に栁川唯人に3R腕十字で一本勝ちし2連勝。昨年6月のフェザー級王座挑戦者決定戦では平田直樹に判定負けした。
山本は26歳。柔道インターハイ5位入賞の実績があり、20年12月にDEEPでMMAデビュー。3戦連続1R勝利の後、関鉄矢、Ryukiに2連敗。その後、沖縄の石垣島に移住し、引退に近い状態だったが、昨年6月、関東に戻り、埼玉のK-PLACEに加入。9月の桜井隆多主催のRESILIENCEでのMMA復帰戦で舘野コングに45秒TKO勝ち。10月のNEXUS神奈川大会ではフェザー級で井上皓平に71秒アームロックで一本勝ち。12月のパンクラスでバンタム級12位の合島大樹と戦う予定だったが、交通事故により欠場していた。今回フェザー級上位ランカーのRyoとの試合が組まれた。
1R、両者サウスポーで構え、山本がプレッシャーをかけ続け、序盤から右フック、テンカオを当てて先手を取る。Ryoは左まぶたが腫れる。中盤以降、Ryoは被弾が減るものの、山本が前に出続け主導権を維持する。記者採点もジャッジ3者も山本。
2R、Ryoが前に出てパンチを振るうが、山本はかわしてタックルで倒す。するとサイドから山本はアームロックを極めてタップを奪った。
マイクを持った山本は「Ryo選手3位かな。タイトルやらせてください。タイトルかからなければ試合しないつもりなんで。タイトル戦も絶対フィニッシュします」とアピールした。
本野美樹、パンクラス初戦は藤野恵実に辛勝
第9試合 女子ストロー級 5分3R
×藤野恵実(JAPAN TOP TEAM/2位・元王者、修斗世界同級王者)
○本野美樹(リバーサルジム横浜グランドスラム/元DEEP JEWELSストロー級暫定王者)※AACCから所属変更
判定0-3 (出口28-29/中島28-29/渋谷28-29)
- 本野美樹
藤野は44歳。昨年5月の杉本恵との初代修斗世界女子ストロー級チャンピオン決定戦で3R TKO勝ちし2団体制覇を達成。9月大会で1年半ぶりにパンクラスに戻り、ソルトの初代修斗世界女子ストロー級王座に挑戦したが、ソルトの打撃に手を焼き判定負けした。
本野は30歳。20年7月に赤林檎に1R TKO勝ちしDEEP JEWELSストロー級暫定王座を獲得。21年6月の初防衛戦で伊澤星花に判定負け。その後はDEEP JEWELSで須田萌里らを相手に3連勝。23年10月に中国・南京での大会でフォン・シャオツァンに腕十字で一本負け。昨年はUFCのトライアウトのトーナメント・Road To UFCに参戦し、初戦は不戦勝で、8月の準決勝でシャオツァンと再び戦い判定負けした。その後、AACCからリバーサルジム横浜グランドスラムに移籍し、今回、約2年半ぶりに日本の大会に戻り、パンクラスに初参戦する。2月の会見では「最短でチャンピオンまで駆け上がりたい」と話していた。
1R、藤野が本野を金網に押し込むが、倒せず膠着すると、梅田レフェリーはブレイクをかける。引き続き藤野は押し込むが、本野は離れる。最後、本野がタックルで藤野を倒すが、藤野はカウンターでギロチンで迎撃する。だが極まりは浅く、その形のまま終わる。記者採点は積極的だった藤野。ジャッジ3者も藤野を支持する。
2R、藤野は変わらず前に出て、右のパンチを放ち、押し込む展開を繰り返すが倒せない。本野も押し返す場面を作るが倒せず。だが打撃戦で本野は、サウスポーからの左ストレートをクリーンヒットして、藤野を少しひるませ、好印象を作る。記者採点は本野。ジャッジ3者も本野を支持し、ポイントはイーブンに。
3R、藤野は前に出るが、少し勢いが落ちると、本野がタックルを仕掛け、テイクダウンに成功する。中盤、本野は金網際で上になって押さえ続ける。だがその先の攻めがない状態でいると、終盤、藤野はスタンドに戻す。疲れの目立つ本野に対し、藤野は前に出続けて右のパンチを振るい、時折右ストレートを当てて好印象を作る。本野も左ストレートを返したが手数でやや劣る。記者採点は僅差だが藤野。ジャッジは3者とも本野につける。合計29-28で藤野。ジャッジは3者とも長時間トップキープした本野を支持し、本野が判定勝ちしたが、大方の予想に反して苦戦してしまった。
パンクラス 3.9 横浜武道館(レポ/前半):後藤丈治、5年ぶりパンクラスでバンタム級6位の合島大樹を1R KO。18歳の山木麻弥、3戦目でバンタム級7位の矢澤諒を1R KO