UFC 4.13 ラスベガス(レポ/プレリム):プロハースカ、再起戦は2R逆転TKO勝ちし王座奪還宣言。スターリング、フェザー級初戦は手堅く判定勝ち。ケイラ・ハリソン、UFC初戦は元王者ホルムに2R一本勝ち
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UFC 300: Pereira vs. Hill(プレリム、アーリープレリム)
2024年4月13日(土/現地時間) 米国ネバダ州ラスベガス:T-Mobileアリーナ
レポート:井原芳徳 (メインカードの試合は別記事に掲載します)
プロハースカ、再起戦はカーフに苦しむも2R逆転TKO勝ちし王座奪還宣言
第8試合 ライトヘビー級 5分3R
○イリー・プロハースカ(2位・元王者、元RIZINライトヘビー級王者)
×アレクサンダル・ラキッチ(5位)
2R 3’17” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
プロハースカは15年の旗揚げ大会からRIZINに上がり、19年4月にキング・モーをKOしライトヘビー級王者になると、同年12月にC.B.ダラウェイをKOし初防衛した。この試合を最後にUFCに移籍すると、ヴォルカン・オーズデミア、ドミニク・レイエスとランカーを次々KO。22年6月、グローバー・テイシェイラのライトヘビー級王座に挑戦し5R裸絞めで勝利し、13連勝・11連続フィニッシュでチェコ人初のUFC王者となった。12月にテイシェイラとのリターンマッチが組まれたが、右肩の負傷により欠場し、王座も返上した。次の王者になったテイシェイラも怪我で返上し、11月の王者決定戦でプロハースカはアレックス・ペレイラに2R KO負けしている。
ラキッチは17年からUFCに上がり、20~21年にはアンソニー・スミス、チアゴ・サントスに連勝していたが、22年5月のヤン・ブラホヴィッチ戦では右膝を負傷し2R TKO負けし、右膝前十字靭帯断裂の手術を経て今回2年ぶりに復帰した。
1R、プロハースカはスイッチ、ノーガードでトリッキーに攻めるが、オーソドックスになるとラキッチの右カーフをもらい続けてしまう。中盤、ラキッチが左インカーフも絡めていると、右カーフをもらったプロハースカはバランスを崩すようになる。ラキッチは右ストレート、左ジャブも絡め、プロハースカは右まぶたから出血する。終盤、プロハースカは左フックを当て、さらに右フックも当てると、場内は湧くが、ラキッチも右アッパーと右フックの連打を返し、主導権を譲らない。記者採点はラキッチ。ジャッジは3者ともラキッチにつける。
2R、ラキッチが右カーフ、ストレートを当てるが、プロハースカはひるまない。すると中盤、プロハースカがサウスポーで左ミドルを当ててから、オーソドックスにスイッチしつつ右ストレートを当てると、ラキッチは下がる。さらにプロハースカはサウスポーからの左ハイをヒット。ラキッチも金網を背にしてパンチを振って抵抗するが、プロハースカの左ジャブと右ストレートが連続で当たると、ラキッチは背中を向けて下がるように。大歓声を背に、プロハースカは右膝蹴りも絡めつつ、パンチラッシュからラキッチを押し倒すと、最後は上からパウンドを連打したところでハーブ・ディーン・レフェリーがストップした。
勝利者インタビューでプロハースカは「メインイベント(アレックス・ペレイラ×ジャマール・ヒル)でどっちが勝とうが僕がチャンピオンになります」と話し、王座に返り咲くことを約束した(※ペレイラが勝利し防衛)。プロハースカはマックス・ホロウェイと共にパフォーマンスオブザナイトに選ばれ、30万ドル(約4500万円)を獲得し、UFCにおける存在感をより高めることになった。
元バンタム級王者スターリング、フェザー級初戦は手堅く判定勝ち
第7試合 フェザー級 5分3R
×カルヴィン・ケーター(8位)
○アルジャメイン・スターリング(バンタム級2位・元王者)
判定0-3 (27-30/27-30/27-30)
スターリングは21年にバンタム級王者となり、ピョートル・ヤン、T.J.ディラショー、ヘンリー・セフード相手に3度の防衛を果たし、連勝を9に伸ばしたが、8月にショーン・オマリーに2R TKO負けして王座陥落。今回はフェザー級に階級を上げての初戦となる。
ケーターはジョシュ・エメット、アーノルド・アレン相手に連敗中だ。

LAS VEGAS, NEVADA – APRIL 13: (R-L) Aljamain Sterling punches Calvin Kattar in a featherweight fight during the UFC 300 event at T-Mobile Arena on April 13, 2024 in Las Vegas, Nevada. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)
試合はスターリングがフェザー級でも強さを見せることに。1R、しばらく見合った後、中盤過ぎにスターリングが片足タックルで倒して上になる。終盤、立たれてもスターリングが組んでコントロールして、崩してバックを伺う。一旦立たれるが、最後もスターリングがタックルで倒し、パウンドを当てて終える。記者採点もジャッジ3者もスターリング。
2R、スターリングは序盤からタックルで倒して金網際で押さえる。立たれもスターリングが押し込み続ける。膠着しブーイングが起こると、スターリングは離れる。だがスターリングは終盤、ボディと顔面へのパンチを放って下がらせつつ、両足タックルを仕掛けて、またもテイクダウンを奪うことに成功する。スターリングはサイドで押さえ、ボディに膝を当て終える。記者採点もジャッジ3者もスターリング。
3R、スターリングはまたもタックルを仕掛けて押し込み、中盤に倒して上になる。スターリングはブーイングお構いなしで上でガッチリ押さえ、勝ちに徹している様子だ。終盤、スターリングはケーターを腰の方から抱え上げ、背中からマットに落とす。プロレスのパワーボムのような形となり、UFCでは頭から落とす反則と取られかねないが、ケーターは受け身を取ってダメージが無いせいもあってか、そのまま続行する。最後もスターリングが押さえ続け終了する。記者採点もジャッジ3者もスターリング。合計27-30。ジャッジ3者も同様でスターリングが完勝した。
ケイラ・ハリソン、UFC初戦は元王者ホルムを2Rで仕留める
第6試合 女子バンタム級 5分3R
×ホリー・ホルム(5位、元王者)
○ケイラ・ハリソン(PFL女子ライト級リーグ2019・2021優勝)
2R 1’47” 裸絞め
ハリソンは33歳。柔道の78kg級でロンドン五輪・リオ五輪で金メダルを獲得し、ATTに所属すると、旗揚げ間もないPFLで18年にMMAデビュー。ライト級リーグを2度制したが、昨年11月のアスペン・ラッド戦を最後にPFLを離れ、今回UFC初戦となる。
ホルムはプロボクシングの元WBC&WBAの世界王者。UFCでも15年に頂点に立ったが、以降は苦戦し、現在42歳。昨年3月、ヤナ・クニツカヤに判定勝ちし、7月にマイラ・ブエノ・シウバに一本負けしたが、マイラの薬物検査失格によりノーコンテストに変わっていた。

LAS VEGAS, NEVADA – APRIL 13: (R-L) Kayla Harrison punches Holly Holm in a bantamweight fight during the UFC 300 event at T-Mobile Arena on April 13, 2024 in Las Vegas, Nevada. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)
大物ハリソンのUFCデビューということもあり、大会序盤はあった空席もほとんど埋まっている印象だ。
1R、両者サウスポーで構え、ホルムが右ミドルから組みに行って押し込むと、ハリソンは払い腰で倒すが、一回転してしまいホルムが上になる。だがすぐスタンドに戻り、ハリソンは押し込んでから、足を掛けて倒して金網際で上になる。ハリソンはパウンドを当てつつ、ハーフから裸絞めの機会を伺う。ハリソンのいたPFLは早いフィニッシュほどリーグ戦で高得点になるため、ハリソンの積極性が目立つ。元々ライト級のため、パワー差もあるようだ。終盤はハリソンがトップキープし、パウンド、肘を当て主導権を維持する。記者採点は9-10でハリソン。ジャッジは3者ともハリソンで、2者は8-10とつける。
すると2R、ハリソンは圧をかけ、タックルを仕掛けてホルムを押し込む。ハリソンは大外刈りで倒すとマウントポジションを奪い、既に消耗の激しいホルムにパウンドを当ててバックを奪うと、体を伸ばして裸絞めを極めてタップを奪った。
UFC初戦で元王者に圧勝したハリソンは「次はタイトル戦をやりたい。年内にUFCチャンピオンになります」とアピールした。
注目株ディエゴ・ロペスが速攻勝利
第5試合 フェザー級 5分3R
×ソディック・ユサフ(13位)
○ディエゴ・ロペス
1R 1’29” TKO (レフェリーストップ:右フック→バックマウントパンチ)

LAS VEGAS, NEVADA – APRIL 13: (R-L) Diego Lopes of Brazil punches Sodiq Yusuff of Nigeria in a featherweight fight during the UFC 300 event at T-Mobile Arena on April 13, 2024 in Las Vegas, Nevada. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images)
1R開始すぐからロペスが右アッパーでユサフをダウンさせると、立たれた後もパンチラッシュで右フックを当てて倒し、最後はマウント、バックマウントと移行しつつ、パウンドを連打しフィニッシュした。ロペスは昨年5月のUFC初戦で敗れたが、その後は3連続1R勝利で、これでランキング入りすることで、今後より注目されそうだ。
モイカノ、ダウンのピンチ乗り越えTKO勝ち
第4試合 ライト級 5分3R
×ジェイリン・ターナー(10位)
○ヘナート・モイカノ(13位)
2R 4’11” TKO (レフェリーストップ:マウントパンチ)

LAS VEGAS, NEVADA – APRIL 13: (L-R) Renato Moicano of Brazil kicks Jalin Turner in a lightweight fight during the UFC 300 event at T-Mobile Arena on April 13, 2024 in Las Vegas, Nevada. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)
1R、モイカノが序盤からタックルで倒してハーフで押さえ、パウンドを時折当て主導権を握る。終盤、ターナーは金網を背にして脱出する。スタンドに戻り、お互い攻撃が乏しかったが、残り30秒を切り、サウスポーのターナーの放ったワンツーでの左ストレートがクリーンヒットし、モイカノは真後ろに倒れダウンする。だがターナーはKO勝ちと確信したか?背中を向けて追撃せず、逆にモイカノはすぐ立ち上がる。ターナーは両手を広げ、止めなかったハーブ・ディーン・レフェリーに不満を示す。ターナーは追撃できず、モイカノがサークリングして終える。記者採点はターナー。
2R、またもモイカノがタックルでテイクダウンを奪い、マウントにあっさりと移行する。モイカノはパウンドをコツコツと当て、一旦ハーフに戻ってもパウンドを当て続けると、マウントに移行し、残り1分を切るとパウンドを連打し、レフェリーがストップした。
女子ストロー級王座奪還目指すアンドラージが接戦制す
第3試合 女子ストロー級 5分3R
○ジェシカ・アンドラージ(4位・元王者、女子フライ級5位)
×マリナ・ロドリゲス(6位)
判定2-1 (28–29/29–28/29–28)
ウェイリー×シャオナンのチャンピオンシップの行われるストロー級。アンドラージ×ロドリゲスは上位勢の試合だが、アーリープレリムに置かれるのも、UFC 300の豪華さの現れともいえよう。
元王者のアンドラージは昨年5試合し2勝3敗。エリン・ブランチフィールド、ヤン・シャオナン、タチアナ・スアレス相手に3連敗後、11月にマッケンジー・ダーンに2R KO勝ちし、上位集団に踏みとどまった。
ロドリゲスは22年にヤン・シャオナンに判定2-1で勝利したが、その後、アマンダ・レモス、ビルナ・ジャンジロバに連敗。だが昨年9月のミシェル・ウォーターソンに2R TKO勝ちしている。
1R、スタンドの攻防で差が乏しい状態が続いたが、中盤、長身のロドリゲスが右の前蹴りを放つと、アンドラージが蹴り足をすくって倒して、中央付近で上になってパウンドを落とす。終盤、アンドラージはハーフで押さえ、サイド、上四方、サイドと移行し、鉄槌を落として終える。記者採点はアンドラージ。ジャッジ3者もアンドラージに付ける。
2R、アンドラージが前に出るが、ロドリゲスは距離を取りつつ、伸びのあるパンチを的確に当て、若干だが優位を維持する。だが残り1分、アンドラージが圧力を強めると、右フックが当たるようになり、ロドリゲスは金網に詰められて苦しそうな表情を浮かべたり、顔をそむけるように。記者採点は最後に追い詰めたアンドラージ。ジャッジは2者がアンドラージ、1者がロドリゲスにつける。
3R、ロドリゲスがプレッシャーをかける側になるが、アンドラージが右フックを当ててから押し倒し、立ってからもアンドラージが前に出て流れを変える。終盤、ロドリゲスの蹴り足をアンドラージがつかんで押し込むと、ロドリゲスはニンジャチョークで迎撃するが、極まりは浅く、すぐ離れる。残り30秒、アンドラージが右カーフを当てると、ロドリゲスは倒れ、すぐ立ってアンドラージが攻めて終える。記者採点はアンドラージ。ジャッジは3者ともロドリゲスにつける。記者採点合計は30-27でアンドラージ。ジャッジは2Rが割れたため合計も割れたが、アンドラージが2者に支持され判定勝ちした。
ベテラン対決は激闘。グリーンがミラーを血だるまに
第2試合 ライト級 5分3R
○ボビー・グリーン(14位)
×ジム・ミラー
判定3-0 (29–27/30–25/29–26)
第2試合はベテラン対決。37歳のグリーンは13年から、40歳のミラーは08年からUFCに上がっている。ミラーは09年のUFC 100でマック・ダンジグに、16年のUFC 200で五味隆典に勝利し、UFC 300にも登場した。
1R、グリーンはノーガード、ミラーはガードを上げ、お互いサウスポーからパンチと蹴りを出す。若干グリーンが積極的だが、残り30秒を切り、ミラーの左ストレートが炸裂し、グリーンが後退し場内が沸く。ジャッジは割れ、1者がグリーン、2者がミラーにつける。記者採点は最後に印象を作ったミラー。

LAS VEGAS, NEVADA – APRIL 13: (R-L) Bobby Green punches Jim Miller in a lightweight fight during the UFC 300 event at T-Mobile Arena on April 13, 2024 in Las Vegas, Nevada. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images)
2R、ミラーが左ローを随所で当てるが、グリーンが左ジャブ、右ストレートを当てていると、ミラーは右目を腫らし、右目の上と下から出血する。終盤、グリーンがパンチの手数を増やす。ミラーもミドルを返すが攻撃が少ない。記者採点は10-9でグリーン。ジャッジ3者もグリーンだが、2者が10-8でグリーンにつける。
3R、グリーンは余裕を持ってノーガードを貫き、パンチを度々当てて圧倒する。ミラーは血だるまで目を腫らしながらも必死にパンチを振い、観客を沸かせる。だが残り1分、グリーンが左ストレートの連打からパンチをまとめてミラーをダウンさせ、パウンドを当て、立たれても抱え上げて倒して終える。記者採点は10-8でグリーン。ジャッジ3者とも10-8でグリーンにつける。合計29-27でグリーン。ジャッジ3者もグリーンにつけ、グリーンが激闘を制した。
UFC 300は軽量級元王者対決で幕開け。フィゲイレードがガーブラントに一本勝ち
第1試合 バンタム級 5分3R
○デイブソン・フィゲイレード(8位、元フライ級王者)
×コーディ・ガーブラント(元王者)
2R 4’02” 裸絞め
記念すべきUFC 300のオープニングを飾るのは元軽量級王者対決。フィゲイレードは昨年1月、UFCフライ級王座統一戦で暫定王者のブランドン・モレノに3R TKO負けし王座陥落。バンタム級に階級アップし12月には8位のロブ・フォントを3Rとも圧倒し判定勝ちした。
ガーブラントは20年11月、フィゲイレードのフライ級王座に挑戦予定だったが、怪我で欠場した過去がある。その後、ロブ・フォント、カイ・カラフランスに連敗したが、昨年は3月にバンタム級でトレヴィン・ジョーンズに判定勝ちし、12月にブライアン・ケレハーに1R KO勝ちしている。

LAS VEGAS, NEVADA – APRIL 13: (R-L) Deiveson Figueiredo of Brazil punches Cody Garbrandt in a bantamweight fight during the UFC 300 event at T-Mobile Arena on April 13, 2024 in Las Vegas, Nevada. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images)
1R、スタンドで両者慎重に見合い、攻撃が少ない状態が続く。終盤、ガーブラントの右フックでフィゲイレードの腰が少し落ちる。最後、フィゲイレードが片足タックルで倒すが、すぐガーブラントが立つ。記者採点は非常に僅差だがガーブラント。ジャッジ3者もガーブラントにつける。
だが2Rは一気にフィゲイレードの流れに。ガーブラントがパンチで前に出るが、フィゲイレードはすぐにタックルで倒して、ハーフガードで押さえる。さらにフィゲイレードは動いてバックマウントを取り、マウントに移行して、サイドに移りながら肩固めを極める。ガーブラントは必死に防御し、中盤過ぎには外れるが、フィゲイレードはマウントポジションをキープする。ガーブラントがもがくと、フィゲイレードはバックマウントに戻り、すぐ裸絞めを極めてタップを奪った。
勝ったフィゲイレードは「バンタム級だと動きがいい。ベルトが欲しい」とアピールした。