パンクラス 5.20 新木場スタジオコースト:上田将勝、ハファエル・シウバに敗れ引退も「出し切りました」。藤野恵実、死闘制し判定勝ち
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中野トイカツ道場
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2018年5月20日(日) 新木場スタジオコースト
レポート&写真:井原芳徳
第10試合 メインイベント パンクラス・バンタム級暫定王座決定戦 5分5R
×上田将勝(パラエストラ東京/1位、元修斗フェザー級(60kg)世界王者/61.1kg)
○ハファエル・シウバ(ブラジル/アストラ・ファイト・チーム/2位/61.0kg)
判定0-3 (梅木46-49/大藪45-50/鶴和45-50)
※シウバが暫定王者に
バンタム級では石渡伸太郎が11年12月3日に第2代王者となってから、昨年5月のハファエル戦まで5度防衛している。その後、石渡はRIZINのバンタム級トーナメントに参戦。大晦日の堀口恭司戦まで計4試合戦ったことから、ダメージの回復のためしばらく休養し、その間に暫定王座決定戦が行われることになった。
上田は12年1月に修斗で堀口に判定勝ちしている。過去に堀口にMMAで勝った選手は上田と現UFCフライ級王者のデメトリアス・ジョンソンの2人だけだ。その後、上田はONEでの王座戦線を経て、15年からパンクラスに参戦。4連勝後、16年7月大会でハファエルと戦ったが、寝技での激しいポジション争いの末、判定3-0で敗れている。
上田はその後、福島秀和、ビクター・ヘンリー、TSUNE、アラン・“ヒロ”・ヤマニハといったランカーを退け1位の座をキープ。昨年12月21日で40歳になり、先週の公開練習では「最近は怪我が多く、思うようば練習ができなくなって」いることを明かし「この試合が最後のつもりで、覚悟を決めてやりたい」と話していた。
ハファエルは13年のベラトールの4人トーナメントを制し、上田戦はパンクラス2戦目だった。続くヘンリー戦でも勝利して王座挑戦権を獲得したが、昨年5月の石渡戦では5R終了1分を切るまでわからない接戦を繰り広げ、惜しくも敗れた。試合はそれ以来1年ぶりだ。試合3日前の調印式で「今回に向けてこれまでで一番練習してきました」と話し、最後の試合となる上田に対しても「手加減はしません」と話していた。
1R、30秒ほどで上田がタックルを仕掛けるが、ハファエルは切って、じわじわ動いてバックへ。上田がもがくとトップに。またもバックを取りに行くと、上田はアームバーを執拗に狙い続けるが、ハファエルも背後からしがみついたまま離れない。終了間際、上田は足関節技に移行するが、ハファエルは上体を起こし、上田の頭にパウンドを連打して終える。記者もジャッジ3名もハファエルを支持する。
2R、サウスポーの上田にハファエルが右のインロー、右ストレートを当て続け主導権を握るが、上田も中盤から左ミドルを連打し挽回。少し嫌そうな顔をしたハファエルはタックルを仕掛けるが、上田は金網際でうまく動きながら切る。ハファエルは切られた後も押し込み続けラウンドを終える。記者採点はハファエル、ジャッジも3名ともハファエルだ。
3R、上田は回って距離を取ってパンチをもらわないようにし、時折左ミドルを当てていたが、中盤、ハファエルにタックルで押し込まれ、立とうとしても倒され続ける。ハファエルが押し込んで膠着すると高本レフェリーはブレイク。上田が左ミドルを当てるが、終盤はハファエルに押し込まれ続けて終える。このラウンドも記者採点はハファエル、ジャッジは2名がハファエル、1名が上田と割れる。
4R、上田はしばらく左ミドル、ローを当てていたが、次第にハファエルの右ストレートが当たり出す。中盤にハファエルはタックルを仕掛けて倒し、バックマウントをキープする。上田もアームロックを狙うが、1Rほどには極めの状態に近づけられない。記者もジャッジ3名もシウバにつける。
5R、後の無い上田は序盤から前に出て、左ミドルを当て続け、タックルを絡め、不意打ちのハイも当てて主導権を握る。しっかり消耗させてからタックルを仕掛けたが、力が入りきらず、ハファエルは切り、金網際でバックをキープ。パウンドを随所で当て続け、上田に反撃の糸口を与えないまま試合を終える。記者採点はハファエル、合計45-50でハファエル。ジャッジ3者もハファエルを支持し、ハファエルの完勝に終わった。
ベルトを巻いたハファエルは「暫定ですが王者になれてうれしいです。今後もパンクラスで戦います。上田選手にも感謝しています。この勝利を亡くなった友人捧げたいです」と話した。上田は「力及ばず、無様で悔しいですけど、最後に出し切りました。この試合を最後に引退します」と話し、グローブをマットに置いて退場。「お疲れ様」という声が飛び、場内は暖かい拍手に包まれた。
(グローブは観客が会場からいなくなるまでデカゴンに置かれ、スポットライトのみが当てられ、多くの観客がスマホで撮影をしていた。大会後にパンクラスの酒井正和代表が控室の上田に労いの言葉をかけ、グローブを渡した。)
◆上田「正直、悔しいです。でも最後、体動かなかったんで。出し切れたと思います。ハファエル選手強かったです。動いて疲れさせようと思っていたんですけど、ダメでしたね。前回よりもハファエルはスタミナもあったし、強くなっていました。勝ちたいという気持ちが向こうの方が強かったです。最後3週間ぐらい、MMAスパーリングもグラップリングもできなかったです。痛み止めとか打ってなんとか辿り着けました。でも今日は出し切れました。いつも周りが見えなかったんですけど、最後はみんなの顔を見渡してやれました。34戦できて、凄くいい格闘技人生だったと思います」(上田のMMA通算戦績は34戦26勝(2KO/6一本)6敗(2一本)2分)
第9試合 セミファイナル 女子ストロー級 5分3R
○藤野恵実(FIGHT FARM/52.65kg)
×シャロン・ジェイコブセン [Sharon Jacobson](米国/トリプルスレットジム/52.25kg)
判定3-0 (大藪29-28/高本29-28/梅木30-27)
藤野のパンクラス参戦は13年5月のアンバー・ブラウン戦で一本勝ちして以来5年ぶり。今年初ファイトだが、昨年はROAD FC、DEEPで3戦とも勝利している。キャリア15年目・37歳で、RIZINで脚光を浴びる若手の人気選手たちに対して、公開練習では「(女子MMAの)氷河期からやって来た怨念みたいのをみんな持っているんで、いいとこだけ持って行くなよって本当思ってるんで」「ババアなめんなよ」と、ジェラシーをむき出しにする発言をし、大きな反響を呼んでいる。
対するジェイコブセンは1983年8月30日生まれの34歳で、身長155cm。ウィキペディアを見るとミネソタ大学在学中の2008年にレスリングで全米チャンピオンになった実績がある。12年からMMAを習い、プロ戦績7戦5勝(2KO)2敗。4戦目の15年4月からインヴィクタに上がり、インヴィクタでは4戦3勝1敗。最近では1月の試合で、対戦相手から再三金網際でテイクダウンを奪って判定勝ちしており、藤野がテイクダウンにどう対処するかが勝敗の鍵となりそうだ。
1R、ジェイコブセンがサウスポー、藤野がオーソドックスに構え、パンチの打ち合いと金網への押し込み合いを繰り返す。両者ともパンチを当てる度に場内はどよめく。終盤、藤野が蹴り足をつかんで倒して上になるが、ジェイコブセンは足を効かせて返して上になり、最後はトップキープする。1名は藤野、2名はジェイコブセンにつける。記者もジェイコブセンだ。
2Rは序盤から藤野が足を掛けてテイクダウンを奪って、中央あたりでハーフに。立ち上がると、がぶってアナコンダチョークを狙うが、ジェイコブセンは脱出する。藤野がパンチの打ち合いで右ストレートのヒットを増やし、ジェイコブセンを下がらせ、押し込みながらギロチンを狙う。離れてパンチで追いかけると、ジェイコブセンがタックルで倒して上に。藤野は返して上になるが、終盤はジェイコブセンがまたも返してマウントになり終了。記者採点は打撃戦で優勢で、主導権を握る時間の長かった藤野。ジャッジ3者も藤野につける。
ほほ五分となった3R、ジェイコブセンもパンチと蹴りを返し危険なムードを残すが、藤野が右ストレート、右ボディを当て、押し込む展開を繰り返し、ジェイコブセンのタックルも切って主導権を維持。終盤には雄たけびを上げながらパンチを連打し会場を沸かせる。終了間際にジェイコブセンがタックルで倒して上になり終了する。記者採点は藤野で合計29-28で藤野。ジャッジ3者も藤野を支持し藤野の判定勝ちとなった。
藤野は「ババアなめんな、と言いたかったけど、相手強くて一本取れなかったです。年のせいにしたくないんで、格闘技、女子をはじめ、もっと盛り上げられるよう頑張ります」とアピール。そして「この後の上田選手、最後見届けたいと思います」と話し、メインにつなげた。
第8試合 ライト級 5分3R
○トム・サントス(ブラジル/チーム・ブラジリアン・タイ/3位/70.55kg)
×冨樫健一郎(パラエストラ広島/7位/70.2kg)
1R 3’43” TKO (レフェリーストップ:右フック)
3月大会のメインで初参戦し、井上雄策をKOしたトム・サントスが、2か月という短い間隔で再び登場。今回は37歳のベテラン・冨樫が迎え撃つ。冨樫は昨年11月大会でアジズ・パフルディノフに判定負けして以来のパンクラス出場となる。
1R、サウスポーの冨樫に対し、サントスが両手の細かいフェイントをかけつつ、右のインロー、ボディ狙いの前蹴りを的確に当て続ける。そして中盤過ぎ、右ストレートでひるませると、組み付いて防御しようとする冨樫を押し離し、下がりながら右フックを当ててマットに沈めた。
マイクを持ったサントスは「チャンピオン・トムサントス。久米、カカッテコイ」と話し、王座挑戦を熱望した。
第7試合 ウェルター級 5分3R
×奈良貴明(パンクラスイズム横浜/6位/77.05kg)
○村山暁洋(GUTSMAN/元王者/77.05kg)
1R 0’48” 裸絞め
田中×上迫の中止で、TOKYO MXの夜7時からの生中継枠となったこの試合。奈良は11月大会で高木健太に惜敗して以来の登場。村山は16年10月に三浦広光に王座を奪われ、昨年12月の再起戦でも佐藤天に1RにTKO負けしている。
1R、奈良が右ミドルを当てるが、村山はそこから前に出て右フックをヒット。奈良がひるむと、倒してすぐさまバックに回り、裸絞めでタップアウト勝ちした。
- 村山暁洋
村山は「GUTSMAN所属、早稲田で暁道場をやっている村山です。プロ20勝目ができて良かったです。いい勝ち方できたので、また来年あたりタイトルマッチに挑戦できたらと思います」と、今のポジションを冷静に理解して今後の目標を語った。
第6試合 バンタム級 5分3R
○藤井伸樹(ALLIANCE/3位/61.05kg)
×アラン“ヒロ”ヤマニハ(ブラジル/ブルテリア・ボンサイ/9位/61.05kg)
判定3-0 (30-27/30-27/30-27)
ヤマニハは3月11日のパンクラスの試合が、対戦予定だった金太郎の入院のため約1週間前に中止となったが、今度は上位ランカーとの試合が用意された。
1R、ヤマニハがパンチの連打とタックルを繰り返して主導権を握るが、金網際で倒そうとした時に藤井がバックに回り込み、いったん下になってからすぐリバースしてマウントへ。バックを奪うとチョークを狙ってパウンドを当てて追い詰める。ジャッジ3者も記者採点も10-9で藤井。
2R、ヤマニハが左ジャブのフェイントからの右アッパーで少し藤井を苦しめるが、藤井はタックルを仕掛けてテイクダウンに成功。トップキープしてパウンドを当て続けて主導権を維持する。ジャッジ3者も記者採点も10-9で藤井。
3R、スタンドのパンチの攻防で被弾して鼻血を出す藤井だが、中盤にタックルから倒して上に。しばらく攻めあぐねたが、最後は立ってから飛び込んでのパウンドを続けて放って観客を沸かせる。ジャッジ3者も記者採点も10-9で藤井。合計30-27で、藤井が手強い下位ランカーを退けた。
第5試合 ストロー級 5分3R
×井島裕彰(GUTSMAN/1位/52.55kg)
○北方大地(パンラス大阪稲垣組/2位/52.60kg)
2R 0’46” フロントチョーク
1R中盤、井島が左フックでダウンを奪い、パウンドラッシュで追い詰める。北方は耐えてリバースして上になり、その先は反撃できず終了。ポイントを先取される。だが2R、パンチの打ち合いで先にヒットすると、飛び膝の奇襲は失敗して飛び越えたが、タックルで倒しに来た井島にギロチンを極めタップを奪取した。
見事逆転勝ちした北方は「めっちゃ効いた。左目見えない。たぶん左手折れてる。でも最後はココでしょ(胸を叩く)。井島選手、ブラジルの(ROAD TOパンクラス)トーナメント覇者、ZSTチャンピオン(=八田亮)倒したんで、砂辺選手、俺の挑戦受けてくれ。『砂辺VS北方2』、お客さん見たい言うてくれ」とアピールした。
第4試合 ウェルター級 3分3R
×高木健太(リバーサルジム川口REDIPS/3位/77.05kg)
○中村邦夫(パンクラスイズム横浜/77.10kg)
1R 0’07” TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチ連打→グラウンドパンチ)
中村邦夫はFighting NEXUSを主戦場にしてきたMMA戦績4戦3勝(3KO)1敗の選手でパンクラス初参戦。開始すぐに右の伸びのあるストレートをヒットさせて高木をひるませると、そのまま左右のパンチラッシュで倒し、パウンドを連打しフィニッシュ。その間わずか7秒。一気にランキング上位入りが確実となった。
第3試合 フライ級 3分3R
○上田将竜(緒方道場/5位/57.05kg)
×倉岡幸平(蒼天塾/56.95kg)
判定3-0 (30-27/29-28/30-27)
第2試合 バンタム級 3分3R
×清水俊一(宇留野道場/61.55kg)
○林 大陽(CAVE/61.5kg)
判定0-3 (28-29/28-29/28-29)
第1試合 ライト級 3分3R
×網潤太郎(和術慧舟會AKZA/kg)
○小林 裕(フリー/kg)※U-FILE CAMPから所属変更
判定0-3 (28-29/28-29/28-29)
大会中には、日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)の中井裕樹代表が、パンクラスの酒井正和代表と共にデカゴン入りし、12月15日と16日に東京・墨田区総合体育館で共同開催するPANCRASE JIU-JITSU CUP 2018をアピールした。
[プレリミナリーファイト]
第4試合 2018年第24回ネオブラッドトーナメント・フェザー級準決勝 3分3R
○亀井晨佑(パラエストラ八王子/65.55kg)
×小島勝志(STYLE PLUS GYM/65.95[kg)
判定3-0 (29-28/29-28/29-28)
第3試合 2018年第24回ネオブラッドトーナメント・バンタム級一回戦 3分3R
○小川隼也(フリー/61.2kg)
×平田純一(DAMM FIGHT JAPAN/61.35kg)
判定3-0 (30-27/29-28/30-27)
第2試合 ライト級 3分3R
×上田厚志(総合格闘術骨法烏合會 矢野卓見道場/69.45kg)
○高橋 弘(パンクラスイズム横浜/70.55kg)
判定0-3 (27-30/27-30/27-30)
第1試合 ストロー級 3分3R
○三谷敏生(総合格闘技道場コブラ会/NASCER DO SOL/52.5kg)
×杉浦弘幸(NEVER QUIT/51.5kg)
2R 0’34” フロントチョーク