パンクラス 9.24 立川ステージガーデン(レポ):新居すぐる、ピンチ乗り越え“洗濯ばさみ”で一本勝ちしフェザー級王者に。元DEEP王者・住村竜市朗、元修斗王者・黒澤亮平、現Nexus王者・河村泰博がパンクラス上位ランカー撃破
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PANCRASE 337 ~PANCRASE 30周年記念大会 Vol.1~
2023年9月24日(日)東京・立川ステージガーデン
レポート:井原芳徳
パンクラス30周年メインは好勝負。新居すぐる、ピンチ乗り越え“洗濯ばさみ”で一本勝ちしフェザー級王者に
第14試合 メインイベント パンクラス第10代フェザー級王者決定戦 5分5R
×亀井晨佑[しんすけ](パラエストラ八王子/1位、ネオブラッドトーナメント2018同級優勝)
○新居すぐる(HI ROLLERS ENTERTAINMENT/5位)
2R 1’32” ヘッドシザース(※パンクラス公式表記はレッグチョーク)
※新居が王者に
「PANCRASE 30周年記念大会 Vol.1」として行われた今大会、ケージサイドでは鈴木みのる、近藤有己といった90年代の草創期の主力が試合を見守り続けた。そのメインイベントは大会テーマにふさわしい、お互いの技術を惜しみなく出し合う好勝負となる。
亀井は昨年7月、透暉鷹とのフェザー級暫定王者決定戦で4R裸絞めで一本負け。今年3月にISAOがベラトールに専念するため同級王座を返上し、透暉鷹が正規王者となる。今年4月大会では、12月に透暉鷹に判定2-1で惜敗したパン・ジェヒョクと対戦し、同じく判定2-1の僅差で勝利している。7月大会では、亀井と同門でその時点で同級5位の高木凌が2位の中田大貴に1R KO勝ちした。
現在、フェザー級の上位ランキングは1位・亀井、2位・高木、3位・中田、4位・田村一聖、5位・新居すぐる、6位・Ryoとなっている。防衛期限の1年を経過した透暉鷹が階級変更のため王座を返上し、1位と亀井と5位の新居にチャンスが巡って来た。
新居は32歳。15年からパンクラスに上がり、21年10月、22年2月とRIZINで連敗したが、昨年7月にハンセン玲雄、12月に高木に1Rアームロックで一本勝ち。6月の故郷北海道でのRIZINでも飯田健夫を1R KOし3連勝中だ。
1R、スタンドで両者慎重に見合う状態が続き、中盤、新居がタックルを仕掛けるが、亀井は切って新居を金網に押し込む。亀井は右脇を差しているが、新居も右脇と首をたすき掛けにした状態。新居が押し返すと、亀井は横にすり抜けたが、そのタイミングで新居は払い腰で倒し、サイドで押さえる。新居は亀井の頭の上に乗って腕十字のチャンスを伺いつつパウンドを当てる。すると新居はヘッドシザース(洗濯ばさみ、シザースチョーク、レッグチョークとも呼ぶ)を仕掛ける。新居は固執せず、外して両者スタンドに戻ると、パンチを振うが、亀井もパンチで応戦すると、亀井の右フックが連続でヒットする。新居は倒れて亀になるが、乗っかって来た亀井を捕まえて起き上がり、首投げで倒し、場内を沸かせる。5R制だが両者とも1Rから激しく動く内容に。記者採点は新居。ジャッジ3者も新居を支持する。
2R、序盤からパンチの攻防となり、リーチで勝る亀井が左ジャブ、右ストレート、アッパーを立て続けにヒット。新居は鼻血を出し少し苦しそうだ。だが亀井の左ジャブのタイミングで、新居が片足タックルを仕掛ける。倒せないとみるや、新居は亀井の背後に素早く回り込み、抱え上げて倒す。新居はすぐに腕十字を狙いつつ、両足でヘッドシザースを仕掛ける。腕のロックの防御にも気を取られた亀井は意識を失い、新居が見事逆転一本勝ちした。
ベルトを巻いた新居は、打撃のダメージとスタミナの消耗もあってか、少しぼーっとした様子でマイクを持ち、「北海道の余市という田舎から出て来たんですけど、伸び伸び育ててくれたお父さんとお母さんが今日見に来てくれて、産んで育ててくれてありがとうございました。RIZIN出て負けてから離れた人がいて、負けてもついてきてくれる仲間がいて、今日たくさん応援に来てくれて、何回も心が折れそうになったんですけど、皆さんのおかげで勝つことができました」と感謝の言葉を述べた。続けて「本当は勝って、お酒を飲んで遊びたかったんですけど、1週間ぐらい飲めないと思うので、そこだけは悲しいです」と話して観客を笑わせ「このパンクラスという硬派な団体で、30周年の大会のメインをやらせてもらえたんですけど、華のある選手になって、チャンピオンになったらこんなんになれるんだってチャンピオンになりたいです。これからも華のある試合やれるよう頑張って行くんで、皆さんよろしくお願いします」とアピールした。なお、この試合が大会のベストバウト賞に選ばれ、新居はベスト一本賞にも選ばれ、賞金を獲得している。
パンクラス復帰2戦目の住村竜市朗、新鋭・藤田大の寝技地獄切り抜けパウンドアウト
第13試合 コーメインイベント ウェルター級 5分3R
×藤田 大[ひろし](パラエストラ千葉/2位)
○住村竜市朗(TEAM ONE/5位、元DEEP王者)
2R 4’59” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
住村は37歳。09年に修斗でプロデビューし、12年からDEEPに主戦場を移し、17年にDEEPウェルター級王者に。佐藤洋一郎、渡辺悠太相手に防衛し、並行してRIZINにも出場した。昨年5月に怪我のため王座を返上し、8月の再起戦では鈴木槙吾に1R TKO負け。今年2月のDEEPで嶋田伊吹に判定勝ちした。7月に久々にパンクラスに出場すると、草・MAXをグラウンドで押さえ続け判定勝ちしている。
藤田はパラエストラ千葉ネットワークの20歳の新鋭。柔術がベースで昨年8月のJBJJF全日本オープンアダルト茶帯ミドル級優勝。MMAは大阪でのGLADIATORで昨年デビューし3戦2勝1敗。6月にパンクラスに初出場すると、押忍マン洸太の打撃に苦しむも、2R開始早々の今成ロールからのアンクルロックで一本勝ちした。
試合はベテランの住村がチャンスをしっかり物にする内容に。1R、藤田は開始すぐ、胴回し回転蹴りのような形でロールしてから、すぐにタックルを仕掛けて住村のバックマウントを奪おうとする。住村は抵抗し振り落とす場面もあるが、藤田は執拗にバックを狙い、腕十字に移行する。外されればすぐに足関を狙うが、住村は対処し、足を抜いてサイドで押さえ、ようやく落ち着いた状態に。
終盤、住村はトップポジションに移るが、藤田は下から住村の脇を抱え、その先の攻めを許さない。住村はパウンドを当てるが、後頭部に連打してしまい、梅田レフェリーが中断する。住村はレフェリーの注意後も当てていたため、減点1となってしまう。回復時間が設けられた後、スタンド状態から再開。残り時間が30秒を切っているため、藤田は距離を取り逃げ切りモードに。10秒を切り、住村が左テンカオで奇襲を仕掛けると、藤田は首投げで倒して押さえた状態で終える。記者採点は10-8で藤田。ジャッジ2名は10-8で藤田、1名は9-9で住村と割れる。住村は打撃が評価されたか?
2R、藤田はまたも序盤から首投げで倒し、住村が立てば飛びついてギロチンを仕掛け、1R同様に怒涛の組技ラッシュを仕掛ける。住村はギロチンを振りほどきトップキープする。藤田は下から住村の片腕を抱えて防御するが、住村は時折振りほどいてパウンドを当てる。終盤、藤田は足を効かせリバースに成功し、マウント、バックと素早く動き、腕十字を狙う。だが住村はクラッチを切らさず対処して外すと、ハーフガードで押さえる。そして金網際で押し付けて左肘をコツコツ当てていると、これが効き目を発揮。耐える藤田に住村は左肘を当て続け、藤田の抵抗が弱まると、一気に左右のパウンドを連打する。藤田はダメージが大きく、終了ギリギリで梅田レフェリーがストップした。
マイクを持った住村は「藤田選手、若いのに強くて、まだまだ若い子の踏み台にされたくなくて、一生懸命練習に取り組みました。藤田選手ありがとうございます」と話した後「12月、チャンピオンとやりたいんですけど、少し休みたいんで考えさせてください」と慎重にアピールした。
黒澤亮平、パンクラス2戦目はストロー級2位の八田亮に勝利
第12試合 ストロー級 5分3R
×八田 亮(ストライプル オハナ/2位、元ZSTフライ級王者)
○黒澤亮平(パラエストラ松戸/4位、元修斗ストロー級世界王者)
判定0-3 (太田27-30/出口28-29/梅木27-30)
修斗の元王者・黒澤は7月9日のニューピアホール大会でパンクラスに初参戦し、小林了平に1R右フックでKO勝ちすると「パンクラスのベルト取りに来ました。若林、八田、北方、誰でもいいんで、次ランカーとお願いします」とマイクアピールし、早速八田との試合が用意された。八田は3月大会で若林耕平に判定1-2で惜敗して以来の試合。
試合は修斗の頂点に立った黒澤が、MMA選手としての総合力の差を発揮する内容に。1R、開始すぐから柔術ベースの八田がタックルを仕掛ける。黒澤はあまり抵抗せず下になり、八田の動きに合わせてリバーサルに成功し、金網際で八田を押さえる。八田は足を取るが、黒澤はすぐ脱出して立つ。八田はその後もタックルを繰り返すが、黒澤は付き合わず、切り際にパウンドを当て、立てば右ロー、ハイ、ストレートをを当てる。終盤、八田は引き込んで下から足を登らせるが、これも黒澤は対処し、金網際で押さえ続けて終える。記者採点は黒澤。ジャッジ3者も黒澤を支持する。
2R、八田が左ミドルを当てると、黒澤は蹴り足をつかんで倒し、今度は上になって寝技に付き合うが、押さえ続けた先の攻めは乏しい。中盤に八田は両脇を差しながら立ち上がると、金網際で倒して上になり、リバースに成功する。終盤、八田は黒澤を押さえ続けるが、その先には持ち込めず。黒澤は金網を背にしながら立ち、上を取り返す。黒澤も攻め手を欠くが、八田も足を登らせる止まりで膠着状態で終わる。記者採点は迷ったがトップキープが少し長かった黒澤。接戦のためジャッジは割れ、2者が黒澤、1者が八田につける。
3R、八田がタックルで倒すが、黒澤は背中をマットにつけず金網を背にして座った状態を維持し、時折八田にパウンドを当てる。中盤、黒澤は立つと、八田は引き込む形で下に。だが黒澤でハーフで押さえ、八田の下からの仕掛けを潰し、時折右肘とパウンドを落として好印象を作る。終盤も八田はタックルからの組みにこだわるが、黒澤は潰して上で押さえ、パウンドと肘を当てて終える。記者採点は黒澤。合計27-30で黒澤。ジャッジ3者も黒澤を支持し、黒澤が判定勝ちした。2位の八田を下したことで、パンクラスの王座挑戦が射程圏内に入った。
押忍マン洸太、元GRANDウェルター級王者の川中孝浩を1R右ハイKO
第11試合 ウェルター級 5分3R
○押忍マン洸太(DESTINY JIU-JITSU/4位)
×川中孝浩(BRAVE/元GRAND王者)
1R 2’32” KO (右ハイキック)
押忍マンはパンクラスと同じ1993年に生まれ現在30歳。20年にパンクラスでプロデビューし7戦3勝4敗。昨年は佐藤龍汰朗、髙橋攻誠を1Rで粉砕し、12月大会では後に王者となる林源平と対戦し、得意の打撃で先手を取るが、右フックをもらってダウンし逆転TKO負けした。今年6月大会でも藤田を打撃で苦しめたが、2Rアンクルロックで一本負けしている。
川中は名門BRAVEに所属する32歳。戦績25戦17勝(5KO/5一本)8敗。10年度のDEEPフューチャーキングトーナメントで優勝し、11年にDEEPでデビューし、14年以降はGRACHANを主戦場にする。21年11月のRIZIN TRIGGERではストラッサー起一に一本負けした。昨年は5月のGRACHANで長岡弘樹に判定勝ちしGRANDウェルター級王座を獲得し、12月には過去DEEPで敗れている渡辺良知に膝十字固めで一本勝ちしリベンジした。今年のMMAの試合はそれ以来9か月ぶりとなるが、現役キャリアの後期にさしかかり、新たなチャレンジを求めてGRAND王座を返上し、パンクラスに初登場した。
試合はパンクラス生え抜きの押忍マンが“門番”的な仕事をきっちり果たすことに。1R、川中がサウスポーでプレッシャーをかけるが、押忍マンは下がりっぱなしにならず、右ボディや右フックを振るい川中を威嚇する。中盤、押忍マンが右ストレートを放つと、川中はタックルを合わせて、抱え上げて倒し、そのままサイドポジションに。だが押忍マンはすぐ立ち、川中を押し込む。すると川中の膝蹴りがローブローとなり、和田レフェリーは一時中断し、ブレイクして再開する。押忍マンは右ミドルをヒット。川中が右アッパーを出せば、押忍マンは右ストレートを合わせる。すると押忍マンは少し距離を取ってから、右ハイを放つとこれがアゴにクリーンヒット。不意を打たれダウンした川中に、押忍マンが襲い掛かると、すぐさまレフェリーがストップした。
マイクを持った押忍マンは「押忍、パンクラス30周年おめでとうございます。今年ベルト巻きたかったんですけど、まだあきらめてないです。30歳のうちにベルト巻きたいんで、チャンスください」とアピールした。なお、この試合が今大会のベストKO賞に選ばれている。
Nexusバンタム級王者・河村泰博、パンクラス1位の井村塁を秒殺。Nexus×パンクラス対抗戦を要望
第10試合 バンタム級 5分3R
×井村 塁(ALMA FIGHT GYM PUGNUS/1位、ネオブラッドトーナメント2020同級優勝・MVP)※NEXUSENSEから所属変更
○河村泰博(和術慧舟會AKZA/Fighting Nexus王者)
1R 0’56” ダースチョーク
井村は2020年末のバンタム級暫定王者決定戦では中島に2R TKO負け。続く昨年4月のTSUNE戦でも判定負けした。だが9月大会で平田丈二に、12月大会で佐久間健太に勝利すると、今年4月の立川大会では、3年半ぶりにパンクラスに登場した元修斗環太平洋同級王者の石井逸人に判定勝ちし、1位の座を維持している。今回、元バンタム級王者・石渡伸太郎氏が東京・神田にオープンしたALMA FIGHT GYM PUGNUSに移籍しての初戦となる。
河村は15年にパンクラスでプロデビューし、20年まで15戦近く出場した後、21年以降はFighting Nexusを主戦場とし王座を獲得すると、須藤拓真と森永ユキトにいずれもダースチョークで一本勝ちし2度防衛した。昨年11月のRIZIN LANDMARKではアラン・ヒロ・ヤマニハに判定負けしたものの、大きく成長して3年ぶりにパンクラスに戻り、早速1位との試合が用意された。
試合は久々出場の河村が見事“秒殺”に成功する。1R、河村が腕の長さを活かし、距離を取って回りつつ左ジャブを立て続けに当て、右ストレートにもつなぐ。井村も右ストレートを合わせつつ前に出て、タックルを仕掛けて流れを変えようとする。だが河村は抵抗せず金網を背にして座った体勢になりつつ、河村の首と脇を抱え込み、得意のダースチョークを仕掛ける。すると井村がタップと同時に意識を失い、河村の一本勝ちとなった。
マイクを持った河村は「Fighting Nexusバンタム級チャンピオン、パンクラス1位の河村です。僕、パンクラスでデビューさせてもらいました。ランキングに入れなかったんですけど、Nexusでチャンピオンになり、RIZINにも出ました。今、Nexus凄い勢いがあるんですよ。来年でいいんですけど、僕を大将にして、Nexusとパンクラス、対抗戦やりません?俺、1位倒しちゃってるし、悔しくないの?パンクラスの選手たち。俺らと対抗戦やろうぜ。今日、判定ばっかだったけど、俺がMVPっしょ」と、ふてぶてしくアピールした。ベスト一本賞はメインイベントの新居に奪われたが、河村も大きなインパクトを残す一本勝ちだった。
平田直樹、遠藤来生の猛反撃しのぎパンクラス3連勝
第9試合 フェザー級 5分3R
○平田直樹(フリー/8位)
×遠藤来生[らいき](Power of Dream Sapporo/10位)
判定3-0 (大藪29-28/山崎29-28/中島29-28)
平田は20年にDEEPでMMAデビューし3連勝後、21年6月に神田コウヤに判定負け。昨年11月のCFFCフロリダ大会での1年半ぶりの試合ではバンタム級に下げて米国人選手に判定負け。今年4月のパンクラス初戦でフェザー級に戻し、渡辺謙明に1R肩固めで一本勝ち。7月9日のニューピア大会での2戦目でも糸川義人を寝技で圧倒して2Rパウンドで仕留めると「9月の30周年の大会に出られたら」とマイクアピールしていた。
これで平田はフェザー級のランキング入り。上位勢も嫌がりそうな圧倒的な強さを2戦続けて見せて来た中、下位ランカーの遠藤が対戦を受けた。遠藤はRIZINで活躍する山本空良と同門で、21年からパンクラスに上がりパンクラス2勝3敗。昨年7月にはRyoにKO勝ちしたが、今年3月には高木凌にKO負け。6月のRIZIN札幌大会では関鉄矢に判定負けし2連敗中だ。
試合は平田が得意の組技で勝利をものにしたが、最後に痛いダメージを負うことに。1R、パンチを狙う遠藤に対し、中盤、平田がタックルを仕掛けて倒す。立たれてもしがみついて押し込んで、胴にしがみついて自在に転がしコントロールを続ける。最後はバックマウントで捕獲し、パウンドを当てて終える。
2Rも中盤、平田がタックルから押し込み、途中から背後からしがみついて、抱え上げるなどして振り回す。終盤、平田は遠藤を金網際に寝かして押さえ続けて終える。
3R、変わらず平田はタックルからしつこくしがみつく。なかなか倒せないが主導権を維持する。遠藤は耐える状況が続いたが、終盤、突き放すと、パンチラッシュで前進する。遠藤が左ミドルを当てると、平田はすぐタックルを仕掛けるが、遠藤は潰して上に。遠藤はパウンドを当て反撃するが、平田が防御して終了。平田が逃げ切る形で判定勝ちしたが、勝ち名乗りを受ける時には、最後にもらったパウンドの影響で左まぶたを腫らしていた。
初参戦のアマ世界王者・サロハイディノフ、フライ級5位の秋葉太樹を圧倒
第8試合 フライ級 5分3R
×秋葉太樹(パンクラス大阪稲垣組/5位)
○ムハンマド・サロハイディノフ[Muhammad Salohidinov](タジキスタン/カトランジム/IMMAF 2022 世界選手権フライ級優勝)
2R 2’42” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
大会前半の休憩前の最後に置かれたこの一戦で、初来日の外国人選手が衝撃的な強さを見せつける。
サロハイディノフはパンクラスも協力しているIMMAFアマチュアMMA世界大会で優勝経験もある22歳。アマMMA戦績16戦14勝2敗で今回がプロデビュー戦。中国とアフガニスタンに隣接する中央アジアのタジキスタン出身で、レスリング能力と豊富なスタミナが強みだ。IMMAFの上位勢はパンクラスのランカーとも遜色の無い実力で、早速プロデビュー戦でランカーとの試合が組まれた。
秋葉は20年にDEEPの実力者・安谷屋智弘に判定勝ちしたが、以降は韓国のRoad FCでの1敗を挟み、パンクラスで小川徹、鶴屋怜、伊藤盛一郎相手に敗れ4連敗中。とはいえいずれも手強い相手との戦いでの敗戦で、プレスリリースによると秋葉は「相手を選ばずオファーはすべて受ける」という。6月の伊藤戦では膝十字固めを狙う等、素早く動く攻防の中でチャンスを作った。
試合はサロハイディノフが素質の高さを印象づける内容に。1R、サロハイディノフがタックルで押し込んで倒すと、秋葉は下からの足関で応戦するが、サロハイディノフは防御し、しつこく押し込んで倒す。サロハイディノフは秋葉に立たれても次々と技を仕掛けてコントロールする。テイクダウンやトップキープ狙いの細かい技はもちろん、終盤にはオンブを狙ったり、膝を顔面に当てたり、ダースチョークを狙う場面もあり、引き出しの多さも印象付ける。
2Rもサロハイディノフが序盤からタックルを仕掛け、倒して休まず動きコントロールを続ける。秋葉が立ちかけると、すぐに背後に回り込んでしがみつき、秋葉の動きを封じてパウンドを当てる。中盤、サロハイディノフは金網際でマウントをキープし、パウンドと肘を当て続け、秋葉が抵抗できなくなったところで小池レフェリーがストップした。
第7試合 ライト級 5分3R
×余 勇利[あまり ゆうり](マッハ道場/10位)
○神谷大智(BRAVE/11位)
判定0-3 (太田27-30/山崎28-29/荒牧27-30)
余は21年のデビューからパンクラスに上がり続け5戦3勝2敗。7月大会では貞永大輔に判定勝ちしている。神谷はパンクラスとBRAVE FIGHTで3勝全勝。6月の吉村天弥戦では2Rまで優位に進めるも、3Rに反撃を許し、最後は吉村がグラウンド状態での顔面への蹴りの反則を犯し、神谷が試合を続けられず反則勝ちという不完全燃焼な終わり方をしていた。
試合は神谷がBRAVE勢らしいレスリング能力の高さで差をつける内容に。1R、金網際での押し相撲が続き、中盤に神谷が倒してサイドで押さえ、パウンドを連打しバックを狙う。余はすぐ立つが、神谷はすぐ押し込み、またも終盤に足を掛けて倒しトップキープする。その後も立たれても倒す。だがその先のパウンドは乏しく、最後、脱出した余が前に出て右ストレートを当てて終える。ジャッジ3者とも神谷につける。
2Rも神谷がタックルで倒して上になる展開を繰り返す。余は立つとパンチを返すが、すぐ倒されてしまう。終盤、神谷が押し込むが、余の膝蹴りがローブローとなり一時中断する。5分近く休んでから再開し、残り時間わずかのため目立つ攻防は無く終わる。ジャッジ3者とも神谷につける。
3R、反撃を狙う余は左右のフック、膝を当てる。神谷はタックルを仕掛けて倒し、中盤にはバックマウントを奪う。終盤、神谷が押さえ続け、再びバックを奪い、キープして終える。ジャッジは1者が余の打撃を評価したが、2者は神谷を支持。神谷がジャッジ3者に支持され判定勝ちした。
第6試合 バンタム級 5分3R
×山口怜臣[れお](タイガームエタイ/ALIVE/IMMAF 2018・2019 世界ジュニア選手権 準優勝)
○安藤武尊[ほたか](和術慧舟會AKZA)
判定1-2 (太田28-29/出口29-28/中島28-29)
両者ともデビュー戦。山口はアマチュアの世界大会で経験を積み、安藤は大東文化大学レスリング部出身の選手。
試合は両者攻めあぐねる展開に。1R、山口はサウスポーで構えてプレッシャーをかけ続け、安藤は回って距離を取り続ける。山口は左ボディストレートを当てる場面もあるが、なかなか安藤を捕えきれない。安藤も少しローを返すが攻撃が乏しい。ジャッジは2名が安藤、1名が山口につけ割れる。
2Rも基本的に同じ構図。安藤は1Rよりも下がらず前に出るようになるが、山口がプレッシャーをかける構図は変わらない。とはいえお互い距離が縮まらず、攻撃が乏しい状態は変わらない。ジャッジは3者とも若干だが積極的な山口につける。
3Rも双方スタンドで攻めあぐねるが、終盤、山口が右の前蹴りを放つと、安藤が片足タックルでテイクダウンに成功する。その先は持ち込めず、山口が足関を狙うと、安藤が極めさせず立ち上がる。その後も再び安藤がタックルで倒す。山口は下から執拗に足関を狙うが、安藤が鉄槌を当て好印象を作る。結局これが決め手となり、安藤がポイント取り判定勝ちした。
第5試合 ライト級 5分3R
×松岡嵩志(パンクラスイズム横浜/5位)
○葛西和希(マッハ道場/6位)
判定0-3 (太田28-29/出口27-30/中島27-30)
松岡は4月大会で葛西のマッハ道場の先輩である岡野裕城に判定勝ち。葛西も同じ大会に出場したが、上位ランカーの粕谷優介に判定負けしている。
試合は葛西が後半にじわじわと持ち味を示すようになる展開に。1R、葛西が松岡を金網に押し込むが、テイクダウンにはつながらず。離れるとお互い蹴りとパンチを当てるが差は乏しい。終盤、金網際での押し合いが続き、甲乙つけがたいまま終わる。ジャッジは割れ1名が松岡、2名が葛西につける。
2R、スタンドのパンチと蹴りの攻防の後、松岡がタックルを仕掛けるが、葛西は耐え、足を掛け一瞬だが倒すことに成功する。終盤、離れての攻防に戻り、打合いで葛西が左フックを当てると、金網に松岡を押し込んでから足をかけて倒し、パウンドを当て攻勢を印象付ける。すぐ立たれても葛西は右カーフ、組んでの左肘を当てる。葛西が終盤の攻めでポイントを取る。
3R、葛西は押し込んで左膝を当て、足を掛けて倒す場面も。終盤、松岡も前に出てパンチを返すが、葛西は回って距離を取りながら左ジャブを当て続け、最後は足を払って倒し、パウンドを当て好印象を作って終える。これで点差を広げ、葛西が判定勝ちした。
第4試合 女子ストロー級 5分3R
○KAREN(パラエストラ柏/2位、元王者)
×高本千代(高本道場)
判定3-0 (大藪29-28/出口29-28/荒牧29-28)
KARENは昨年3月大会で藤野恵実に4R TKO勝ちし女子ストロー級王座を獲得。12月大会でソルトとのノンタイトル戦で判定負けすると、今年4月の立川大会でのベルトを懸けての再戦でも判定負けした。この試合が名門・パラエストラ千葉ネットワークへの移籍初戦だったため、半年間での進化が見ものだ。対する高本は柔術の実力者でMMAのレフェリーとしても知られる高本裕和の娘。4月大会の第1試合でプロデビューし、KARENと同門の重田ホノカに判定負けしている。
試合は経験で勝るKARENが最終ラウンドで差をつける内容に。1R、KARENが押し込むがテイクダウンを奪えず、高本が押し返すが、高本も倒せない。終盤、KARENが押し返し、1分を切って倒すことに成功する。バックを取りかけ、すぐ立たれたが、最後も押し続け、優位で終える。
2R、KARENが顔面狙いの右前蹴りと右ストレートを当てるが、高本がタックルで倒して上になる。終盤、高本はバックマウントを奪い、腕十字に移行し、KARENが耐えて終える。
五分で迎えた3R、KARENが押し込み、中盤には足を掛け倒し、ハーフガードで押さえ、得意の左肘を連打する。終盤KARENがバックを奪う。高本は振り落として最後は組み付いて反撃を狙うが時間切れに。3Rのポイントを取ったKARENが判定勝ちした。
第3試合 バンタム級 5分3R
×矢澤 諒(パンクラスイズム横浜/4位)
○笹 晋久(パラエストラ柏)
判定0-3 (大藪27-30/山崎27-30/中島27-30)
矢澤は昨年10月から今年4月の半年で、漆間將生、木本海人、ジェイク・ムラタを3連続1R KOし、バンタム級4位まで浮上している。笹は4月大会でパンクラスに初参戦し、4年ぶりにパンクラスに上がった元UFCの田中路教の相手を務め、終始攻め込まれ判定負けを喫している。
試合は笹がテイクダウン能力で差を示す内容に。1R、笹が序盤からタックルを仕掛けて矢澤を金網に押し込み、執拗にテイクダウンを狙う。笹の膝蹴りがローブローとなるとブレイクがかかるが、終盤にまたも笹がタックルを仕掛けて押し込み同じ状態に。矢澤は防戦一方のまま終わる。
2Rも中盤から笹がタックルで執拗に押し込んでテイクダウンを狙う展開が続く。3Rも同様で、矢澤を倒しきることはできなかったが、主導権を維持し判定勝ちした。
第2試合 プレリミナリーファイト フライ級 5分3R
×梅原規祥[みさき](リバーサルジム武蔵小杉 所プラス)
○饒平名知靖[よへな ちせい](UNITED GYM TOKYO)
判定0-3 (大藪27-30/山崎28-29/荒牧27-30)
デビュー戦の梅原が1Rにアームロック、3Rに腕十字を狙うが、饒平名がスタンドでの打撃、上からのパウンド、バックコントロールで好印象を残し判定勝ちした。
第1試合 プレリミナリーファイト ウェルター級 5分3R
○佐藤生虎[しょうご](UNITED GYM TOKYO)
×渡邉ショーン(暁道場)
1R 0’35” TKO (レフェリーストップ:左ストレート→グラウンドパンチ)
両者サウスポーでの打合いから始まり、佐藤の左ストレートで渡邉がダウンすると、佐藤がパウンドラッシュで仕留めた。佐藤は7月のデビュー戦から連続で1R序盤にKO勝ちしている。中村K太郎率いるUNITED GYM TOKYO勢がプレリムで2連勝し、今後の躍進を予感させた。