UFC 8.26 シンガポール(レポ):中村倫也、UFC初戦は寝技で持ち味発揮し判定勝ち。風間敏臣&木下憂朔は1R TKO負け。チャンソン、引退試合はホロウェイに3R KO負け
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UFC Fight Night: Holloway vs. The Korean Zombie
2023年8月26日(土)シンガポール・カラン:シンガポール・インドア・スタジアム
レポート:井原芳徳
中村倫也、UFC初戦は寝技で持ち味発揮し判定勝ち
第10試合 バンタム級 5分3R
○中村倫也[りんや](フリー)
×ファーニー・ガルシア[Fernie Garcia]
判定3-0 (30–26/30–27/30–27)
UFCのシンガポール大会は昨年6月のUFC 275以来1年2か月ぶり5回目となる。今回は日本から3選手が参戦した。
中村はMMA 7戦7勝(5KO/1一本)の27歳。埼玉出身で父は90年代の修斗の運営会社の親会社・龍車の代表で、エンセン井上やKIDの所属するPUREBRED大宮のキッズレスリングの第1号生徒だった。レスリングで全日本選手権2連覇、U-23世界選手権優勝の実績を残したが、東京五輪はあと一歩で出場権を逃す。EXILEなどが所属する芸能事務所「LDH」による未来のスター格闘家を発掘するオーディションを経てLDHと契約し、21年7月の修斗でプロMMAデビュー。4月のPOUND STORMではアリアンドロ・カエタノ(ブラジル)に判定勝ちした。昨年6月から今年2月にかけて行われたROAD TO UFCのバンタム級に出場し一回戦ではググン・グスマン(インドネシア)に1Rアームロックで一本勝ち。準決勝では野瀬翔平に1R左ストレートからのパウンドでKO勝ち。決勝では風間敏臣を1R33秒左フックでKO。3試合とも1Rフィニッシュで優勝しUFCとの契約を勝ち取った。4階級制で、日本から参加した8選手で優勝したのは中村一人だけだった。今回UFC初戦ながら、ファイトナイトシリーズのメインカード枠に選ばれ、UFCからの期待の高さも垣間見える。中村はUFCデビューに備え、フロリダのアメリカントップチームで練習を積んだ。
ガルシアはMMA 13戦10勝(1KO/3一本)3敗の31歳。米国のLFAでの4連勝の後、21年のデイナ・ホワイト・コンテンダーシリーズで1R TKO勝ちしUFCとの契約を勝ち取ったが、昨年5月のジャーニー・ニューソン戦、11月のブラディ・ヒースタンド戦といずれも判定負けしておりUFC 0勝2敗。
試合は中村が寝技主体で圧倒する内容に。1R、中村はサウスポーで構えてプレッシャーをかけ、左ミドルをヒット。中盤にはタックルを仕掛け、金網に押し込んでから、両脇を差して反り投げに近い形で豪快に倒す。中村はハーフで押さえ、パスガードし、上四方で押さえる。終盤、中村はノースサウスチョークを仕掛ける。極まりが浅いと解除し、変わらず上四方から押さえ、最後はパウンドを落として終える。記者採点は中村。
2R、中村は変わらずサウスポーでプレッシャーをかけ続け、随所で左ミドル、ローを当てる。中盤、中村がタックルでテイクダウンを奪うが、ガルシアは下になるとすぐに首を抱えてギロチンを狙う。中村は倒立しながらサイドに移りヴォン・フルー・チョークを狙い返すと、ガルシアはギロチンを解除し、またも中村は上四方で押さえる展開に。中村はサイドに移り、両足でガルシアの左腕を挟むマット・ヒューズ・ポジションとなり、アームロックを狙う。記者採点は中村。
3R、中村がサウスポーでパンチを振うが、やや疲れた様子で、動きが荒くなる。だがガルシアも消耗しており、中盤に差し掛かり、パンチを振ってバランスを崩してしまうと、その隙を逃さず、中村がタックルを仕掛けて倒し、ハーフガードで押さえる。中村はあっさりパスガードし、サイドで押さえてアームロックを狙う。終盤になっても中村はハーフでコントロールしてからサイドに戻り、バックを狙いつつ、腕十字を仕掛ける。ガルシアはかろうじて防御するが、、中村は変わらず動き続け、ガルシアをコントロールし、最後はスタンドに戻って終了する。記者採点は中村。合計30-27で中村。ジャッジ3者も3~4点差で中村を支持し、中村がUFCデビュー戦を白星で飾った。
勝利者インタビューで中村は英語で「彼はいい選手で極められませんでしたが次は極めたいです。ランカーと戦いたいです。まだMMAを始めたばかりなので、数年待ってもらえれば必ず這い上がります」等と話した。リングアナウンサーは「ジャパニーズ・ボー・ニッカル」と、同じレスリングベースの米国の新鋭・ニッカルの名前を出して中村を称えており、世界中のファンにわかりやすくファイトスタイルをアピールする試合となったようだ。
風間敏臣、UFC初戦は打撃に苦しみ1R TKO負け
第6試合 バンタム級 5分3R
×風間敏臣(和術慧舟會HEARTS)
○ギャレット・アームフィールド[Garrett Armfield](米国)
1R 4’16” TKO (レフェリーストップ:右ストレート)
風間はMMA 13戦10勝(3KO/5一本)3敗の26歳。茨城出身で高校まで柔道を習ってから柔術を始め、20年から和術慧舟會HEARTSでMMAを習う。21年のパンクラスネオブラッドトーナメント、昨年1月の石渡伸太郎引退興行でのワンデートーナメントを制した。昨年6月から今年2月にかけて行われたROAD TO UFCのバンタム級にエントリーし、一回戦ではケレムアイリ・マイマイチツォヘチ(中国)を寝技主体で攻略し判定勝ちした。準決勝はキム・ミンウ(韓国)の計量オーバーで不戦勝に。決勝では中村に33秒でKO負けしたが、UFCと契約することができた。5月から2カ月近くの間、ABEMAの海外武者修行プロジェクトの一環でラスベガスのエクストリーム・クートゥアやUFCパフォーマンス・インスティチュート等で強豪選手たちとも練習してきた。
対するアームフィールドはMMA 11戦8勝(5KO/2一本)3敗の26歳。昨年6月のUFCファイトナイトでのUFC初戦ではデビッド・オナマと対戦し、2Rにパンチをもらった後、タックルを切られると寝技で攻め込まれ、肩固めを極められ一本負けしている。その後UFCで2試合が流れ1年2が月ぶりの試合となる。
試合は風間が弱点の打撃で追い詰められる形に。1R、アームフィールドがプレッシャーをかけ、下がる風間に右ストレートを随所でヒットする。風間はタックルを時折仕掛けるがあっさりと切られ続ける。中盤、アームフィールドが左ジャブも当てるようになると、風間は鼻を気にするように。中盤、アームフィールドは右ボディも絡めつつ、左ジャブを連続で当てると、風間はスリップする。アームフィールドが上からパウンドで追撃しようとすると、風間は下からアームフィールドの左腕をつかんで、関節技を狙う。アームフィールドが振り外すと、今度は風間は足を取るが、これも外され、猪木アリ状態となったところでブレイクがかかる。終盤、アームフィールドは引き続き前に出てパンチを当て続け、風間を追い詰める。すると残り1分を切り、アームフィールドは右ストレートをクリーンヒット。風間がダウンし、アームフィールドが追撃しようとしたところでレフェリーがストップした。風間はすぐ立ったが、レフェリーの判断は妥当な範囲内だろう。
木下憂朔は2試合連続1R TKO負け
第3試合 ウェルター級 5分3R
○ビリー・ゴフ[Billy Goff](米国)
×木下憂朔[ゆうさく](パンクラス大阪稲垣組)
1R 3’49” TKO (レフェリーストップ:右ボディストレート→グラウンドパンチ)
木下は元パンクラス・ウェルター級1位の23歳。昨年8月にデイナ・ホワイト・コンテンダーシリーズ(DWCS)に出場し、ジョゼ・エンリケを3R左ストレートからのパウンドで仕留め、日本人初のDWCSからのUFC契約を果たした。今年2月にUFC初戦を迎えたが、アダム・フューギットのパンチで序盤からのけぞり、中盤過ぎに左ストレートでダウンすると、最後はマウントパンチを浴び1R TKO負けに終わっている。21年11月のRIZINでの住村竜市朗戦は反則負けのため、本格的な敗戦はプロ8戦目で初だった。フューギットとの体格差が大きかったが、木下は2戦目もウェルター級でオクタゴンに上がる。2月の試合前から引き続き、同級王者カマル・ウスマンの所属するフロリダのキルクリフFCで練習してきた。
ゴフはMMA 10戦8勝(6KO)2敗の25歳。昨年8月のDWCSでシモン・スモトリツキーに1R TKO勝ちしUFCとの契約を勝ち取った。2月の試合が流れ、今回ようやくUFCデビュー戦を迎える。21年11月の試合から4連続でKO/TKOフィニッシュ勝利中だ。
1R、サウスポーの木下の右ジャブ、左ストレートが序盤から当たるが、次第にゴフも右ストレート、左ジャブを返すように。ゴフは右ミドル、インローも絡める。中盤、木下も細かくパンチを返し、五分の状態が続いたが、ゴフが右ボディも絡めつつ右フックも当てるようになる。すると終盤、ゴフの手数がじわじわ上がると、右のボディストレートが2連続でクリーンヒット。木下はダウンしてしまい、亀になった状態でパウンドを浴び続けたところでレフェリーがストップした。
チャンソン、引退試合はホロウェイに3R KO負け
第13試合 メインイベント フェザー級 5分5R
○マックス・ホロウェイ(1位、元王者)
דザ・コリアンゾンビ”ジョン・チャンソン(8位)
3R 0’23” KO (右フック)
ホロウェイは昨年7月にフェザー級王座奪還目指し王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーに挑戦したが判定負けし、今年4月の再起戦ではアーノルド・アレンに判定勝ちした。チャンソンは昨年4月に王者ヴォルカノフスキーに挑戦し4R TKO負けして以来の試合。今年2月の地元ソウル大会でUFCラストマッチが計画されていたが、怪我のため出場できなくなり、ソウル大会自体が中止となっていた。
1R、チャンソンは右膝と足首にサポーターをつけ、ステップをほとんど踏めない状態。逆に軽快にステップするホロウェイが、随所で左ストレートを的確に当て好印象だ。ホロウェイはチャンソンのパンチ力を警戒している様子で、ヒット&アウェーを貫く。チャンソンも時折パンチを返し、手数では僅差を維持するものの、強打が乏しい。記者採点はホロウェイ。
すると2R、足の止まったチャンソンに対し、ホロウェイが左ボディストレートと顔面への右ストレートを連打し、チャンソンがダウンする。ホロウェイはレフェリーストップになると思った様子で、両手を広げたが、試合が続くと、チャンソンがタックルを仕掛けるように足元に近づいてきたところで、覆いかぶさってアナコンダチョークを極める。チャンソンが間一髪で防御すると、ホロウェイは解除し、チャンソンはスタンドに戻す。チャンソンがパンチを返す場面もあるが、長くは続かず、ホロウェイが引き続き的確なパンチを当て続け主導権を維持する。記者採点はホロウェイ。
3R、チャンソンは起死回生を狙って、前に出て左右のパンチを振り回し、場内は大歓声に包まれる。だがホロウェイはステップで交わし続けると、ガードの甘くなったチャンソンに対し、右フックをクリーンヒット。無防備でもらったチャンソンは左フックを振りながら前のめりでダウンし、レフェリーがすぐさまストップした。
試合後のオクタゴンの中でのインタビューで、ホロウェイは「(山火事の被害で苦しむ)マウイ島の人たちのために赤いショーツを着ました。世界の皆さん、ハワイの仲間たちを助けてください。この2週間、私は色んな感情を抱きました。その魂は今夜ここにもありました」と話した後、「彼がクレイジーゾンビなのには理由があります。この男は神話で伝説です。彼の右手より先に私の右手が当たって本当にうれしいです」とチャンソンを称えた。
続けてチャンソンは「私は引退します。このスポーツを始めたときからずっとチャンピオンになりたいと思っていました。私は3位、4位、5位にランクされるためにここにいるわけではありません。私はホロウェイとの試合に備えて全力を尽くし勝つつもりでしたがダメでした。こんなチャンスはもうないと思うので辞めます」と表明し、グローブをマットに置いて涙を流した。場内にはチャンソンの入場テーマ曲であるクランベリーズ「ゾンビ」が流れ、大半の観客が合唱する中、チャンソンは退場していった。
第12試合 コーメインイベント ライトヘビー級 5分3R
○アンソニー・スミス(8位)
×ライアン・スパン(10位)
判定2-1 (28–29/29–28/29–28)
第11試合 フェザー級 5分3R
○ギガ・チカゼ(9位)
×アレックス・カサレス(15位)
判定3-0 (30–27/30–27/30–27)
第9試合 女子フライ級 5分3R
○エリン・ブランチフィールド(3位)
×タイラ・サントス(4位)
判定3-0 (29–28/29–28/29–28)
第8試合 ヘビー級 5分3R
○ジュニア・タファ
×パーカー・ポーター
1R 1’24” KO (右フック)
第7試合 ヘビー級 5分3R
○ワルド・コルテス・アコスタ
×ルーカス・ブジェスキー
1R 3’01” KO (左フック)
第5試合 ミドル級 5分3R
×チディ・エンジョクアニ
○ミハル・オレクシェイチュク
1R 4’16” TKO
第4試合 ウェルター級 5分3R
○ソン・ケナン
×ロランド・ベドーヤ
判定3-0 (29–28/29–28/29–28)
第2試合 女子フライ級 5分3R
×リャン・ナ
○J.J.アルドリッチ
2R 4’49” TKO
第1試合 フェザー級 5分3R
○チェ・スンウ
×ヤルノ・エレンス
判定3-0 (30–27/29–28/29–28)