UFC 6.12 シンガポール(レポ):元RIZIN王者・イリー・プロハースカ、5R裸絞めでテイシェイラとの死闘制しUFC王者に。ウェイリー、ヨアンナをKOで返り討ち
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UFC 275: Teixeira vs. Procházka
2022年6月12日(日)シンガポール・インドア・スタジアム
レポート:井原芳徳
第11試合 メインイベント UFCライトヘビー級チャンピオンシップ 5分5R
×グローバー・テイシェイラ(王者)※初防衛戦
○イリー・プロハースカ(2位、元RIZIN王者)
5R 4’32” 裸絞め
※プロハースカが王者に
テイシェイラは母国ブラジルで活躍後、12年からUFCに上がり、14年にジョン・ジョーンズの同級王座に挑戦したが判定負け。18年まで勝ち負けを繰り返した時期もあったが、19年からアンソニー・スミス、チアゴ・サントスら相手に5連勝し、昨年9月に王者・ヤン・ブラホビッチに2R裸絞めで一本勝ちし、42歳にして初のUFC王者となった。
対するプロハースカは29歳。12年に母国チェコでMMAデビューし、15年末のRIZIN旗揚げ大会でのヘビー級トーナメント一回戦で石井慧をKO。決勝でキング・モーにKO負けしたが、以降もRIZINを主戦場にし、19年4月のライトヘビー級王座決定戦でモーをKOしリベンジすると、同年12月に元UFCランカーのC.B.ダラウェイをKOし初防衛した。この試合を最後にUFCに移籍すると、20年7月の初戦で7位のヴォルカン・オーズデミアを右フックで、昨年5月の2戦目で3位のドミニク・レイエスを左回転肘打ちでKOし、12連勝・10連続KO勝ちでUFC王座に挑む。下馬評ではプロハースカが優位だ。
1R、プロハースカがサウスポー主体で時折スイッチし、リーチ差を活かし右の前手でジャブを振り続ける。テイシェイラは積極的に右ミドルを出し、近づけばボディから顔面へのパンチのコンビネーションを出す。1分過ぎ、テイシェイラは右フックを振りながら片足タックルを仕掛け、テイクダウンに成功して上から押さえる。もともと優位な寝技勝負に持ち込むことに成功する。プロハースカは金網際で立とうとするが、テイシェイラは背後に回ってからサイド、上四方で押さえ、主導権を維持する。
中盤、プロハースカは脱出し、左ミドルをヒットするが、またもテイシェイラがパンチを振ってからのタックルで倒し、今度はいきなりマウントを奪う。
終盤、テイシェイラはマウントからパウンド、肘を連打してからバックマウントへ。テイシェイラは腕十字を狙うが、プロハースカは腕を抜いて脱出し、最後は上からパウンドと肘を連打して猛反撃して終える。記者採点はテイシェイラでジャッジ3者も同じだ。最後のプロハースカの攻めは評価されなかった。
2R、プロハースカはスイッチを繰り返しつつ、右の顔面蹴りや膝を当てる。すると中盤、プロハースカが右ストレートを当ててから右の飛び膝をヒット。テイシェイラは足が止まり、プロハースカがパンチラッシュから倒して押さえる。テイシェイラは脱出するが、プロハースカがパンチ、膝、バックハンドブローで攻め続け、テイシェイラのタックルも切って主導権を維持する。
だが終盤、プロハースカがパンチを効かせてテイシェイラを下がらせてから、右のテンカオを空振りしてしまいスリップ。プロハースカは攻撃の荒さが裏目に。テイシェイラはすぐに背後から押さえて、金網際でマウントを奪い、パウンドをヒット。最後、右肘を連打すると、プロハースカは左まぶたを深く切られ大出血する。記者採点は最後のカットのダメージでテイシェイラでジャッジ3者も同じだ。
3R、テイシェイラはタックルを仕掛けるが、プロハースカは突き放し、猪木アリ状態から見下ろしてスタンド勝負を求める展開を繰り返す。中盤、プロハースカが右テンカオを放つと、テイシェイラは足をつかんで倒して上になる。これもプロハースカがスタンドに戻すと、ボディにパンチと膝を効かせる。さすがに苦しくなったテイシェイラを、プロハースカは潰して上になり、パウンドを落とす。だが顔を血で染めたプロハースカも疲労が溜まって詰め切れず。終盤、テイシェイラが返して上になり、パウンドと肘を落とすが、プロハースカは耐えて終える。記者採点はプロハースカ。ジャッジ1者は8-10とつける。
4R、テイシェイラは序盤から右フック、ミドルを出し積極的な攻め。さらに左ボディ、左フックを連打してから、タックルを仕掛け、テイクダウンに成功しサイドで押さえる。中盤、テイシェイラはマウントを取ると、パウンドを当ててから肩固めを仕掛ける。だが極まりが不十分で、プロハースカは脱出すると上になり、パウンドを当て反撃する。テイシェイラが脱出しバックマウントを取るが、プロハースカも脱出して上を取り返す、一進一退の展開に。記者採点はテイシェイラ。だがプロハースカの終盤の反撃を評価するジャッジも1者いた。合計では39-37でテイシェイラ。ジャッジも2者がテイシェイラ、1者がイーブンだ。
イリー・プロハースカがグローバー・テイシェイラからタップを引き出した瞬間
歴史の始まり#UFC275 @Jiri_BJP pic.twitter.com/TN5pMAMdpP
— UFC Japan (@ufc_jp) June 12, 2022
最終5R、両者抱き合ってからスタート。テイシェイラが右ストレートでプロハースカをひるませる。テイシェイラは飛びついてギロチンチョークを仕掛けるが、汗と血の影響もあってかすっぽ抜けて失敗し、プロハースカが上になる。だがテイシェイラは脱出すると、疲労の溜まったプロハースカに左右のパンチをヒット。プロハースカは体が流れる場面が目立つように。中盤、テイシェイラはタックルからテイクダウンを奪うと、金網際でマウントを取り、パウンドで攻める。だが終盤、プロハースカは脱出すると、素早くテイシェイラの背後に回り込み、サイドバックの状態から裸絞めを仕掛ける。テイシェイラは防御ができずタップ。プロハースカが最後の最後に逆転し一本勝ち。13連勝・11連続フィニッシュ・UFC 3連勝で世界のライトヘビー級の頂点に立った。
第10試合 セミメインイベント UFC女子フライ級チャンピオンシップ 5分5R
○ワレンチナ・シェフチェンコ(王者)
×タイラ・サントス(4位)
判定2-1 (48-47/47-48/49-46)
※シェフチェンコが7度目の防衛
シェフチェンコは18年12月のヨアンナ・イェンジェイチックとの女子フライ級王座決定戦で勝利すると、昨年9月のローレン・マーフィー戦まで6度目の防衛を果たし、UFC女子パウンドフォーパウンドランキングでも1位に君臨する。対するサントスはブラジル等の大会で15連勝後、19年からUFCに参戦。初戦こそ判定1-2で敗れたが、以降は4連勝し、昨年は9月にロクサン・モダフェリ、11月にジョアン・ウッドを下し、王座初挑戦につなげた。
1R、シェフチェンコがサウスポー、サントスがオーソドックスで構え、しばらく見合った後、シェフチェンコが両脇を差して金網に押し込む。だが中盤、シェフチェンコは反り投げがすっぽ抜けるとバランスを崩して後ろに倒れ、サントスが押さえ込んでからすぐバックマウントを奪う。サントスは4の字ロックで捕獲し、執拗に裸絞めを狙い、絶対王者を追い詰める。記者採点はサントス。ジャッジは1者が意外にもシェフチェンコにつける。
2R、サントスはシェフチェンコを金網に押し込み、脇を差して足を掛けテイクダウンに成功して上になる。シェフチェンコは足を登らせ三角絞めやフットチョークを狙う。サントスは防御するが、押さえるので手一杯となり、膠着状態に陥ったためレフェリーは3分半過ぎにブレイクをかける。シェフチェンコは首投げでテイクダウンを成功するが、押さえきれずもつれ、スクランブルの末にサントスがトップで押さえることに成功する。シェフチェンコはクロスガードで防御を続けて終える。記者採点はトップを2度取ったサントスだが、サブミッショントライとテイクダウンでシェフチェンコが評価される可能性もあるため、ジャッジ2者はシェフチェンコにつける。
3R、シェフチェンコは両脇差しから倒すが、すぐサントスは立つ。中盤、サントスが金網に押し込み、足を掛けて倒すと、すぐにバックを取る。金網際で裸絞めを狙い、シェフチェンコはアゴを引いて防御を続ける。記者採点はサントス。
サントスにとってはキャリア初の4R目、流れが変わることに。パンチが交錯した際、バッティングとなり、サントスは右まぶたを腫らす。これまでも既に腫れていたが、悪化する形に。サントスは右目が見えない状態で、シェフチェンコは左ストレートと左ミドルを随所で当てるように。最後、シェフチェンコがパンチを振り回したところで、サントスが胴タックルを仕掛け、倒して上になって終える。記者採点はシェフチェンコ。
5R、シェフチェンコがテイクダウンを奪い、袈裟固めで押さえかけるが、右目のふさがったサントスにとってはグラウンドのほうが戦いやすい状態で、すぐサントスは脱出して上になる。だがシェフチェンコも長時間トップキープを許さず、30秒ほどでスタンドに戻す。中盤、シェフチェンコはまたもタックルでテイクダウンに成功し、今度はハーフで押さえ込むことに成功する。シェフチェンコはそのまま押さえ続けるが、パウンドをほとんど当てられず、イーブンや逆転につながる攻撃はできないまま終わる。記者採点はシェフチェンコ。
記者採点合計47-48でサントス。ジャッジはやはり割れ、2者がシェフチェンコを支持し、シェフチェンコの7度目の王座防衛となった。48-47でシェフチェンコにつけた採点は理解できるが、49-46はサントスのグラウンドでの優勢が軽視されていると感じた。シェフチェンコは4Rのバッティングにも救われた感もある薄氷の防衛で、サントスとのダイレクトリマッチの可能性も高いだろう。両者のインタビュー時も、敗れたサントスに大きな歓声が起こった。
第9試合 女子ストロー級 5分3R
○ジャン・ウェイリー(2位、元王者)
×ヨアンナ・イェンジェイチック[イェンドジェイチェク](元王者)
2R 2’28” KO (右バックハンドブロー)
ウェイリーは19年8月にジェシカ・アンドラージに勝利し女子ストロー級王者に。翌20年3月の初防衛戦でヨアンナと激しい打ち合いを繰り広げ判定勝ちし初防衛した。だが昨年4月、ローズ・ナマユナスに1R KO負けし王座陥落。11月のダイレクトリマッチでは判定1-2で惜敗した。対するヨアンナはウェイリーに敗れて以来2年ぶりの試合となる。前回は5R、今回は3Rでの戦いだ。
1R、ウェイリーが圧をかけるが、ヨアンナは右のカーフキックを着実に当てる。ローではないのが2年前との違いだ。1分過ぎにはカーフキックで足を刈り倒す場面も。だがウェイリーはタックルを仕掛け、テイクダウンに成功する。立った後もウェイリーが押し込み、再び倒すことに成功。そのままバックマウント、マウント、ハーフとコントロールを続け、パウンドと時折当てる。組んでからの力と技術ではウェイリーが上回る。3分過ぎにはウェイリーがマウントを奪い、右肘を度々当てる。終盤、ヨアンナはスタンドに戻し、終了間際に右フック、ミドルを当てるが、ウェイリーが蹴り足をつかんで倒して終える。記者採点はウェイリー。ウェイリーが圧倒しているとはいえ、激しい攻防は前回と変わらず、シンガポールの観客は終始歓声を上げる。
2R、スタンドの攻防の後、またもウェイリーが組み付いて倒そうとするが、ヨアンナは突き放す。ヨアンナは時折構えをスイッチしつつ圧をかけ続け、ウェイリーは距離を取る状態が続く。するとヨアンナが左右のパンチを振って前に詰めた際、ウェイリーが左のサイドキックで迎撃する。これは空振りとなったが、そのままの動きで放った右のバックハンドブローがクリーンヒット。ヨアンナは前のめりで倒れ、すぐさまレフェリーがストップした。当たったのは後頭部で厳密に言うと反則にも思えるが有効打扱いとなっている。
試合後、ウェイリーは10月のアブダビ大会での現王者・カーラ・エスパルザへの挑戦を希望。ヨアンナはグローブをマットに置いてオクタゴンを後にした。
第8試合 ウェルター級 5分3R
×アンドレ・フィアリョ
○ジェイク・マシューズ
2R 2’24” KO (右ストレート)
第7試合 ウェルター級 5分3R
○ジャック・デラ・マダレナ
×ラマザン・エミーフ
1R 2’32” TKO (レフェリーストップ:左ボディフック)
第6試合 フェザー級 5分3R
○チェ・スンウ
×ジョシュ・クリバオ
判定2-1 (28–29/29–28/29–28)
第5試合 ライト級 5分3R
○マハシャテ
×スティーブ・ガルシア
1R 1’14” KO
第4試合 ミドル級 5分3R
○ブレンダン・アレン
×ジェイコブ・マルクーン
判定3-0 (29–28/29–28/29–28)
第3試合 バンタム級 5分3R
○カン・ギョンホ
×ダナー・バットゲレル
判定3-0 (29–28/29–28/29–28)
第2試合 女子ストロー級 5分3R
×リャン・ナ
○シルバーナ・フアレス
1R 1’22” KO
第1試合 女子フェザー級 5分3R
×ラモーナ・パスクアル
○ジョセリン・エドワーズ
判定0-3 (27-30/28-29/28-29)
バンタム級
―ホジェリオ・ボントリン
―マネル・ケイプ
中止 (ボントリンの体調不良)