パンクラス 3.26 ニューピアホール(レポ):中田大貴、新王者・透暉鷹を思わせる終了間際のギロチンで勝利し「明日からまた生きるぞ」。同じフェザー級で高木凌が豪快KO勝ち。髙橋攻誠&若林耕平がベテラン勢撃破
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PANCRASE 331 / PANCRASE 332
2023年3月26日(日) 東京・ニューピアホール
レポート:井原芳徳
昼の部の第5試合終了後、パンクラス・第8代フェザー級王者・ISAOと、同第14代ウェルター級王者・菊入正行のNEVER QUIT勢が揃ってケージに登場し、ベラトールの試合に専念するため王座を返上することを表明した。
ISAOは「(ベラトールの)試合が決まりましたら、いい姿を見せて、パンクラスは強いというところを見せてきます。そしてベラトールでチャンピオンを目指すのと、パンクラスで試合ができない期間があるので、このベルトを返上します」、菊入は「ベラトールと独占契約ということで、今回ベルトを返上させていただくことになりました。試合が決まっていますので(※4.22 ハワイ大会のアレクセイ・シュルケヴィッチ戦)、U-NEXTで試合を見てください」とアピールした。
これによりフェザー級は暫定王者の透暉鷹(ときたか)が新王者となる。そんな今回のニューピアホールでの昼夜大会では、フェザー級で3試合、ウェルター級で1試合、ランキング戦が行われた。なお、4月30日の立川ステージガーデン大会ではフェザー級2位の亀井晨佑[しんすけ]と、12月に透暉鷹と判定2-1の接戦を繰り広げたパン・ジェヒョクの試合も組まれている。
◆パンクラス・フェザー級ランキング(大会時点)
王者:ISAO 暫定王者:透暉鷹 1位:中田大貴
2位:亀井晨佑 3位:田村一聖 4位:岩本達彦
5位:遠藤来生 6位:新居すぐる 7位:Ryo
8位:三宅輝砂 9位:名田英平 10位:高木凌
11位:糸川義人
◆パンクラス・ウェルター級ランキング(大会時点)
王者:菊入正行 1位:村山暁洋 2位:林源平
3位:木下憂朔 4位:押忍マン洸汰 5位:髙橋攻誠
PANCRASE 331(昼大会):中田大貴、新フェザー級王者・透暉鷹を思わせる終了間際のギロチンで勝利「明日からまた生きるぞ」
第7試合 メインイベント フェザー級 5分3R
○中田大貴[ひろたか](和術慧舟會HEARTS/1位)
×三宅輝砂[きさ](ZOOMER/8位、ネオブラッドトーナメント2021同級優勝)
2R 4’59” フロントチョーク
中田は昨年4月の王座挑戦者決定トーナメント一回戦で亀井晨佑と激しい打撃戦の末に判定1-2で惜敗し、7月の再起戦では内村洋次郎に1R TKO勝ちしたが、10月のRIZIN福岡大会では元DEEP王者の芦田崇宏に判定負けし、半年ぶりの試合はパンクラスに戻って行う。
三宅は21年のネオブラッドトーナメント優勝後、亀井晨佑、田村一聖に連敗したが、昨年10月の品川大会では小森真誉をKO。1位の中田戦という大チャンスにつなげた。
1R、中田はいつものように序盤からプレッシャーをかけ、積極的にパンチを振う。三宅が左の前蹴りを放つと、中田は足をつかんで倒そうとするが、逆に三宅がタックルで倒し返して、上から押さえ主導権を握る。その先の攻めは乏しく、終盤、中田が立って突き放すと、左右のフックや左ボディ、左ストレートを的確に当てて好印象を残す。記者採点は中田。ジャッジは意外にも割れ、2名が中田、1名が三宅につける。
2R、三宅は左目が腫れているため、開始すぐにドクターチェックが入るが、すぐ再開する。三宅も前に出て右テンカオを当て、前に出返した中田の足にタックルを仕掛けてテイクダウンに成功する。三宅は金網際で押さえるが、これも中田は立ち上がり、三宅を金網に押し込み返してから、左手で首を抱えつつ右肘を当てる。だが三宅も首相撲から左膝蹴りを当て返して突き放す。どちらもムエタイ的なテクニックを活かす。
中盤、離れての打撃戦に戻り、三宅がまたもタックルでテイクダウンを奪う。終盤になっても三宅がハーフで押さえ続け、時折パウンドを落として印象を作る。中田は劣勢が続くが、残り20秒、下から三宅の首を抱えギロチンチョークを極める。終了のブザーが鳴って中田がギロチンを外すと、三宅は意識を失っており、中田の勝利となった。
公式記録は2R4分59秒でのテクニカルサブミッションによる勝利。奇しくもこの日、ISAOのフェザー級王座返上で暫定王者から正規王者になった透暉鷹も、同じ形で21年5月にRyoに勝った過去がある。
勝った中田は「まずパンクラス30周年おめでとうございます。色んな方の思いがつながれて自分にバトンが託されたと思っています。生きていると楽しいことも辛いこともあります。戦って生き残ることは不変で、生きている限り戦いが続きます。皆さん一緒に頑張って行きていきましょう。今日最後、この一言で締めさせてください」と話した後「明日からまた生きるぞ」と叫んだ。パンクラス草創期の96年、当時の(無差別級)王者・バス・ルッテンに挑んで敗れたエース・船木誠勝がマイクで叫んだのと同じフレーズを使ったことで、ベルト奪取と今後のパンクラスをリードする意気込みを示したといえよう。
第5試合 ストロー級 5分3R
×八田 亮(ストライプルオハナ/1位、元ZSTフライ級王者)
○若林耕平(コブラ会/4位)
判定1-2 (大藪28-29/荒牧28-29/梅木29-28)
八田は昨年7月に野田遼介に判定勝ちして以来の試合。若林は修斗・GLADIATOR・DEEPで試合を重ね、昨年9月のパンクラス初戦で宮澤雄大に勝利した。
昨年7月にストロー級王者となった山北渓人は前日の25日のONE初戦でアレックス・シウバに勝利したばかり。前王者で2位の北方大地は4月のRIZINの神龍誠戦が決まった際に「今回からフライ級で本格的に戦います」と話しているため、八田×若林の勝者が今年後半に組まれるであろう王座絡みの試合に進む可能性が高い。
1R、柔術ベースの八田が自ら下になり、金網際でサブミッションを狙い密着し、膠着状態が続く。若林は下からの仕掛けを防御し、時折パウンドを当てるが攻撃が少ない。記者採点は僅差だが若林。ジャッジ3名も若林につける。
2R、一度若林が倒すが、すぐ八田が立ち押し込む。中盤、八田が引き込み、1Rと同じような構図になる。終盤、若林が右のパウンドを落としたタイミングで、八田は返して上になり、ハーフガードで押さえてからマウントポジションになる。だが今度は八田が右肘を落とそうとした際、すぐ若林がブリッジで返して上に戻り、押さえた状態で終える。記者採点は僅差のため迷ったが若林。ジャッジは割れ、1者が八田、2者が若林につける。柔術テクニックを発揮した八田を支持するのも納得できる内容だ
3R、八田が投げを狙うがうまく行かず、そのまま引き込む形で下になる。八田はタックルを仕掛けて上を取り返す。八田はサイドで押さえ、時折鉄槌を落としてマウントも狙い主導権を維持する。終盤、ポイント劣勢の八田はマウントを奪い、逆転の腕十字での一本を狙うが、若林は腕のロックを切らせず終了する。記者採点は八田。合計28-29で若林。ジャッジは2者が若林を支持し、若林が判定勝ちでベテランの八田を退けることに成功した。大会2日後発表のランキングで若林はストロー級1位にランクアップした。
第6試合 女子フライ級 5分3R
○ライカ(RIGHT THING ACADEMY/ボクシング元OPBF東洋太平洋女子ライト級(61.2kg)王者)
×渡邉史佳(OOTA DOJO)
判定2-1 (大藪29-28/山崎28-29/出口29-28)
第4試合 ライト級 5分3R
×DARANI(PRAVAJRA/8位)
○西尾真輔(宇留野道場/9位、ネオブラッドトーナメント2022同級優勝)
1R 1’47” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
第3試合 フェザー級 5分3R
○名田英平(コブラ会/9位、ネオブラッドトーナメント2019同級優勝)
×糸川義人(TURNING POINT MMA/11位、ネオブラッドトーナメント2022同級優勝)
判定3-0 (山崎29-28/荒牧29-28/梅木29-28)
第2試合 バンタム級 5分3R
○高城[たき]光弘(リバーサルジム横浜グランドスラム)
×サイバー遼(トライフォース東中野)
判定3-0 (山崎30-27/大藪30-27/梅木30-27)
第1試合 フライ級 5分3R
○前田浩平(GRABAKA)
×今井健斗(マーシャルアーツクラブ中津川)
判定2-1 (出口29-28/大藪28-29/山崎30-27)
PANCRASE 332(夜大会)
第8試合 メインイベント フェザー級 5分3R
×遠藤来生[らいき](Power of Dream Sapporo/5位)
○高木 凌(パラエストラ八王子/10位)
2R 4’29” KO (右ストレート)
遠藤は昨年7月にRyoをKOして以来のパンクラス登場。対する高木は21年にパンクラスでプロデビュー後4連勝し、うち3試合は1R KO勝ちだったが、昨年12月の横浜大会で新居すぐるに1R一本負けし、今回再起戦となる。
1R、スタンドで探り合う状態が続き、高木が時折左ジャブを当てる。長身の高木の懐が深く、遠藤は入りにくそうだ。すると中盤、高木が右ストレートを当て遠藤をダウンさせ、背後から押さえてパウンドを当てる。中盤以降、高木がバックマウントをキープし、時折パウンドを当て終える。記者採点は高木。ジャッジ3名も高木。
2R、遠藤が前に出るが、高木は距離を取り、遠藤のパンチは空を切る。次第に高木がプレッシャーをかけ返すようになり、時折左ジャブ等のパンチを当てて主導権を握る。高木もなかなか手数が出ない状態が続いたが、終盤、遠藤が右の飛び膝で距離を詰めて遠藤を金網際に下がらせると、遠藤が左右のパンチを振り回したタイミングで、左と右のストレートを立て続けにクリーンヒット。遠藤は前のめりでダウンし、すぐさまレフェリーがストップした。
完勝の高木はマイクを渡されると「前回負けて、バンテージ巻く時に手が震えるぐらいに試合が怖くて。けど昨日ここ(=DEEP)で先輩の山口(コウタ)さんとか(19日のGRACHANのJ-MMA Rookies Cupで)後輩の梶本(保希)君が自分に勝利をつないでくれて、ここでつながないと男じゃないと思って、必死に試合まで取り組みました。4月に先輩の亀井(晨佑)さんが試合があるので、死ぬ気でつなぎました。自分まだまだですが、応援してくれるとうれしいです」とアピールした。
第7試合 コーメインイベント ウェルター級 5分3R
○髙橋攻誠[こうせい](RIGHT THING ACADEMY/5位)
×長岡弘樹(DOBUITA/元GRAND王者)
判定3-0 (大藪30-27/山崎30-27/出口30-27)
長岡は昨年5月に川中孝浩に判定負けしGRANDウェルター級王座から陥落。12月のパンクラス横浜武道館大会では同じ42歳の村山暁洋に判定負けしている。66戦のキャリアのある長岡に対し、髙橋は2戦1勝1敗の22歳。昨年3月のデビュー戦でベテランの中村勇太に一本勝ちしたが、9月の押忍マン洸太戦では1R KO負けしている。
1R、髙橋は左脇を差して押し込み続けテイクダウンを時折狙う。長岡が押し返す場面も時折あるが、髙橋のほうが長時間押し込み、離れ際に左肘を当てる場面も。記者採点は僅差だが髙橋。ジャッジ3者も髙橋。
2R、髙橋が押し込んでテイクダウンを奪い、スタンドに戻すと、右ジャブ、フック、左ストレートを当てる。長岡はタックルを繰り返し、終盤にテイクダウンを奪うが、髙橋がすぐスタンドに戻す。記者採点は僅差だが髙橋。ジャッジ3者も髙橋。
3R、お互いサウスポーの打撃戦で、髙橋が左ストレートを的確に当てる。その後も髙橋が押し込み続ける。疲れの目立ってきた長岡は投げを狙うが失敗し、そのまま倒れ、髙橋が上から押さえる。終盤、長岡は立つが、髙橋が押し込み続け、離れ際に左肘をヒット。最後も組んできた長岡を、髙橋が突き放して左ストレートを当てて終える。記者採点は髙橋。合計30-27で髙橋。ジャッジ3者も髙橋を同じ採点で支持し、若手の髙橋がベテランの長岡を判定勝ちで退けた。
マイクを持った髙橋は「先々週、大学を卒業したばかりで、身の回りの環境とかも変わって不安もあったんですけど、勝てて良かったです」等と話した。
第6試合 IMMAF国際ルール バンタム級 3分1R
△小川 徹(TRIBE TOKYO MMA/第6代フライ級王者、ネオブラッドトーナメント2015スーパーフライ級優勝)
△清水清隆(TRIBE TOKYO MMA/第2代スーパーフライ級王者、ネオブラッドトーナメント2019フライ級優勝)
時間切れ
小川が同じTRIBEの先輩。清水を相手に引退試合を行った。エキシビションマッチではなく、パンクラスと協力関係にあるアマチュアMMAの世界統括組織・国際総合格闘技連盟(IMMAF)のルールでの公式戦として行われた。
小川は21年10月に上田将竜に判定勝ちしフライ級暫定王者となり、その後正規王者に認定されたが、昨年3月に猿飛流に敗れ王座から陥落した。8月のDEEPでのフライ級GP一回戦でDEEPに初参戦し、安谷屋智弘にアームロックで敗れ、12月のDEEPニューピア大会で原虎徹に1R TKO負けし、試合翌日に引退を表明していた。小川のプロMMA戦績は21戦14勝7敗。清水も昨年12月の修斗で山内渉にKO負けした試合を最後に引退しているが、今回はアマの公式戦の形で後輩の小川に胸を貸した。
試合はスタンドの攻防が続き、小川はサウスポーからの左ミドルや右フックを清水の腕やボディに当てる。序盤のタックルは清水に切られるが、中盤の2度目のタックルではテイクダウンに成功する。清水は立つが、小川はしがみつき、終盤にはまたも倒して金網際で押さえる。最後はスタンドに戻り、お互いボディや腕にパンチを当て合って時間切れとなり、ルールによりドローとなった。
その後、小川の引退式となり、小川は「僕がTRIBEに入った時、清水さんがベルトを持っていて、その背中を追うためにTRIBEに入りました。最後まで清水さんありがとうございました。格闘家として約11年間やってきました。僕は才能があったわけではありませんが、アマチュアの時からずっと応援して下さった皆さんがいて、2021年にパンクラスのベルトを取ることもでき、このような場を設けていただき感謝しています。長南(亮)さんをはじめ、TRIBEが僕を育ててくださいました。皆さんの魂を若い選手に預けてこれから応援して欲しいです。戦えなくなることは寂しくもありますが、次のステージでこれまで以上に頑張ってやっていきます」と話し、最後は10カウントゴングを聞いた。
第5試合 ライト級 5分3R
○平 信一(綱島柔術/ZST/6位、元ZST王者)
×余 勇利(マッハ道場/7位)
判定3-0 (大藪30-27/荒牧30-27/出口30-27)
第4試合 ストロー級 5分3R
△植松洋貴(NEVER QUIT/8位、ネオブラッドトーナメント2022同級優勝)
△リトル(HIDE’S KICK)※GUTSMANから所属変更
判定1-1 (出口29-28/荒牧28-29/梅木28-28)
第3試合 フライ級 5分3R
×佐々木亮太(蒼天塾あざみ野道場/ネオブラッドトーナメント2009バンタム級優勝)
○松井斗輝[とうき](パラエストラ柏)
3R 3’18” TKO (レフェリーストップ:右ストレート→グラウンドパンチ)
第2試合 バンタム級 5分3R
×鬼神光司(CAVE)
○川北晏生[はるき](TRIBE TOKYO MMA)
判定0-3 (山崎28-29/大藪28-29/梅木28-29)
第1試合 フライ級 5分3R
○大塚智貴(CAVE)
×赤崎清志朗(香取道場)
2R 0’27” フロントチョーク