ROAD TO UFC 6.10 シンガポール(レポ):中村倫也、1Rで圧勝し風間敏臣との準決勝へ。野瀬翔平も初戦突破。堀内佑馬、トップノイのムエタイに手を焼き初戦敗退
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ROAD TO UFC Episode 3 & 4(トーナメント一回戦2日目)
2022年6月10日(金)シンガポール・インドアスタジアム
レポート:井原芳徳
UFCとの契約をアジア人選手が争うトーナメント「ROAD TO UFC(RTU)」が6月9日(木)と10日(金)、シンガポールで開幕した。4階級・各階級8選手が参加。6月は1回戦が行われ、準決勝は9月か10月、決勝は12月に行われる予定だ。
日本からはフライ級に堀内佑馬、バンタム級に風間敏臣、中村倫也、野瀬翔平、フェザー級に佐須啓祐[SASUKE]、松嶋こよみ、ライト級に鹿志村仁之介がエントリー。トーナメント以外のフライ級の試合には内田タケルも出場する。初日のエピソード1 & 2では松嶋、風間、内田が勝利し、佐須、鹿志村が敗れた。
なお、2日目に登場予定だったライト級の宇佐美正パトリックは前日計量前に脱水症状を起こしたため入院し失格となった。堀内、中村、野瀬は計量をクリアしている。
大会前の2日目出場日本勢紹介&インタビュー記事
中村倫也、1Rで圧勝し風間敏臣との準決勝へ
バンタム級 5分3R
○中村倫也(EXFIGHT/LDH martial arts/修斗バンタム級世界8位)
×ググン・グスマン[Gugun Gusman](インドネシア)
1R 3’24” アームロック

SINGAPORE, SINGAPORE – JUNE 09: Rinya Nakamura of Japan poses on the scale during the Road to UFC weigh-in at the Mandarin Oriental hotel on June 09, 2022 in Singapore. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
中村はEXILEなどが所属する芸能事務所「LDH」による未来のスター格闘家を発掘するオーディションから発掘された選手。父は90年代の修斗の運営会社の親会社・龍車の代表。中村はエンセン井上やKIDの所属するPUREBRED大宮のキッズレスリングの第1号生徒だった。レスリングで全日本選手権2連覇、U-23世界選手権優勝の実績を残したが、東京五輪はあと一歩で出場権を逃す。昨年7月の修斗でプロMMAデビューし、今年1月の試合と合わせていずれもKO勝ち。LDH主催のPOUND STORM 4月24日 両国国技館大会では、ブラジル人のアリアンドロ・カエタノの左フックで1Rから右目尻を切られたため、安全運転を強いられたが、グラウンドで主導権を維持し判定勝ちした。
対するグスマンはMMA 11戦8勝3敗の32歳。インドネシアのOne Pride MMA Fight Nightという大会のバンタム級王座を20年11月に獲得し、21年11月に初防衛している。中村は「(オーソドックスでの)奥手のパンチと奥足のハイキックを被弾しないぐらいですね。パターンは多くなくて、組み立てしやすい相手です。高めに見積もって行きますけど、サプライズを起こされる気はないです」と攻略に自信を示しており、試合もその通りの内容となる。
1R、中村がサウスポーでプレッシャーをかけると、早速グスマンは右フックを当て、右ハイを出すが、中村はブロックする。中村は圧をかけ続けると、グスマンが右ミドルを空振りさせた直後、勢いのある両足タックルを仕掛け、金網に押し込んでから、胴タックルで倒す。中村はサイドバッグで押さえ、両足でグスマンの右足を挟んで、動きを取れなくする。そのまま中村はグスマンの左腕を左手で抱えつつ、右の肘とパウンドをグスマンの頭に当て続けて削る。だが中盤、レフェリーの再三の注意にも関わらず、グスマンの後頭部に度々肘を当てていたため、レフェリーはブレイクをかけ、中村に減点1を科す。
中村は序盤同様プレッシャーをかけ、またもグスマンの右ミドルをかわしてから、胴タックルを仕掛け、抱え上げてテイクダウンに成功する。金網際でサイドで押さえると、既に中村は力量差を見切ったか?じっくり攻めず速攻に出て、アームロックをガッチリと極めてタップを奪った。
A gorgeous submission from Rinya Nakamura puts him into the BW semis
[ #RoadToUFC Episode 3 is LIVE on @UFCFightPass ] pic.twitter.com/WQRGzA78uy
— UFC (@ufc) June 10, 2022
中村は減点はあったものの圧勝で初戦を突破。勝利者インタビューでは英語で受け答えし、LDHやチームメイトに感謝の言葉を述べ「今日は自分の日でした。準備していたものを出せました」等とコメントした。これで中村は準決勝で、前日に勝利した風間敏臣と戦うことが決まった。中村はレスリング、風間は柔術を得意とし、どちらが持ち味を活かし勝ち残るか見ものだ。
野瀬翔平、UFC出場経験者の中国人選手に1R TKO勝ち
バンタム級 5分3R
○野瀬翔平(マスタージャパン福岡)
×ウリジブレン[Wulijiburen](中国)
1R 1’13” TKO (レフェリーストップ:右膝の負傷)
野瀬は柔道をベースとし、18年に修斗でプロMMAデビュー。HEATでの1試合含めMMA 4連勝中で、RISE福岡大会でのキックルールの試合も並行し、3月の試合ではKO勝ちしている。5月15日の修斗福岡大会の試合2日前にRTU出場が発表されるという、プレッシャーのかかる状況だったが、しっかり1R1分15秒、ギロチンチョークで一本勝ちし、RTUへの弾みをつけた。
初戦の相手・ウリジブレンは28戦20勝8敗の32歳。17~19年にUFCに上がったが3試合とも敗れている。その後はWLF(武林風)などで4勝1敗の成績を残している。野瀬は「UFCに出たことがあり、リリースされてもう一度エントリーしているということは、弱い選手じゃないですけど、勝てる選手だと思います」と話していた。

SINGAPORE, SINGAPORE – JUNE 09: Shohei Nose of Japan poses on the scale during the Road to UFC weigh-in at the Mandarin Oriental hotel on June 09, 2022 in Singapore. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
試合は短時間決着に。1R、野瀬はサウスポーで構え、オーソドックスのウリジブレンの左足に右のカーフキックをコツコツと当てる。だが蹴りが交錯した場面で、野瀬の右ローがローブローとなり一時中断する。再開後、野瀬は右のバックハンドブローを放つが、ウリジブレンはかわす。野瀬は片足タックルを仕掛け、そこから右腕でウリジブレンの左脇を差した状態で組み付く。すると野瀬が巻いた右腕に力を入れた後、ウリジブレンは突如後ろに倒れこみ、野瀬が追い打ちのパウンドを当てたところでレフェリーがストップした。ウリジブレンは腕を巻かれた際に足を踏ん張ったところで右膝を痛めたようだ。
これでバンタム級は中村、風間、野瀬の3人が準決勝に残ることに。野瀬は準決勝でキム・ミヌ(韓国)と対戦する。ミヌは一回戦の相手の欠場により戦わずして準決勝に進んでいる。
勝利者インタビューで野瀬は「素直にうれしいです。たぶんカーフが効いてて踏ん張ったんだと思いますが、勝ちは勝ちでうれしいです。準決勝で優勝候補で強い選手と当たるんですけど、勝って、決勝で日本人対決ができるようにします」とコメントした。仮にカーフは関係なく、アクシデント絡みの勝利だったとしても、野瀬は積極的な攻めで勝利を手繰り寄せたのは確かだろう。
堀内佑馬、トップノイのムエタイに手を焼き初戦敗退
フライ級 5分3R
×堀内佑馬(チーム・オーヤマ)
○トップノイ・キウラム[Topnoi Kiwram](タイ)
判定0-3 (28-29/27-29/27-29)
堀内は現在24歳。小学4年生からキックボクシングを始め、ジュニアのキック・MMA大会で活躍後、高校1年の15歳でDEEPでプロデビュー。14年大晦日のDEEPさいたまスーパーアリーナ大会では第1試合に登場した。DEEPでは5勝1敗の好戦績を残し王座に近づくも、UFC出場を目指して19歳から米国に拠点を移し、現在はカリフォルニアの名門・チーム・オーヤマでトレーニングを積む。20年からはUFC、ベラトール、ONE等の大手大会の登竜門とも言われるLFAを主戦場とし2勝2敗。昨年7月の暫定フライ級王座決定戦ではチャールズ・ジョンソンに敗れたが判定1-2の接戦を繰り広げた。続く11月の試合では1R KO勝ち。事前のインタビューでは「(RTUに出る日本人の中には)松嶋(選手とか、外(=ONE)で戦った選手もいますけど、UFCに出たい気持ちは僕が一番強い」と語り、先にUFCデビューし勝利した同じフライ級の平良達郎についても「同じレベルで戦えると思っています」と話し、気持ち・実力の面での自信を示していた。
対するトップノイはムエタイをベースとするタイ人で、18~19年にRIZINで3戦し1勝2敗で、2戦目では朝倉海に判定負けしている。20年にはUAEでの大会で勝利しているが、それ以降は試合が無かったようだ。堀内は渡米前、プーケットのタイガームエタイでトップノイと一緒に練習していたことがあり「普通にムエタイが強かったですね。でもまあ大丈夫かなって。相手どうこうじゃなく、ここで見せられなかったら、ここまでの人間だったで終わる」と話していた。

SINGAPORE, SINGAPORE – JUNE 09: Yuma Horiuchi of Japan poses on the scale during the Road to UFC weigh-in at the Mandarin Oriental hotel on June 09, 2022 in Singapore. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
トップノイはタイ人選手らしく入場曲に合わせ、笑顔で踊りながら入場する。1R、堀内がプレッシャーをかけ、トップノイはサウスポーで構えて回って距離を取りつつ、伸びのある左ストレートを放つ。堀内は左ミドルをもらった後、組みついて押し込むが、トップノイは突き放す。中盤、堀内が距離を詰め右ミドルを当てるが、トップノイは左フックを合わせ、堀内をスリップさせ好印象を作る。その後も右の前蹴りで吹き飛ばし、左ミドルを着実に当て続け、堀内をムエタイスキルで翻弄する。終盤にもトップノイは左フックでひるませ、堀内が組んでくれば左肘を連打し、随所で好印象を作る。記者採点はトップノイ。堀内はダウン気味に倒れる場面もあり、ほとんど攻撃を当てさせてもらえなかったため、ジャッジ2者は8-10でトップノイにつける。
2R、堀内は変わらず圧をかけつつ、タックルで金網に押し込み、片足タックルで序盤から倒すと、立ったトップノイにオンブで乗っかり、そのままグラウンドに持ち込んでバックマウントをキープし、ようやくチャンスを作る。すると中盤、堀内が左腕をトップノイの首元にねじ込み裸絞めを極めかけるが、トップノイはもがいて間一髪で外す。堀内はバックをキープし、軽くパウンドを当て続け裸絞めを執拗に狙うが、トップノイは防御を続け、終了のホーンが鳴ると立ち上がって両手を広げて喜ぶ。記者採点は堀内。
3R、トップノイは開始すぐから左ミドルをヒット。1R同様、堀内の右ミドルのタイミングで左フックを当て、組まれれば左肘を当てる。堀内はタックルを仕掛け、切られて下になると、潜り込んで腕十字を狙おうとするが、トップノイは腕を引き抜いてパウンドを当ててスタンドに戻す。その後もトップノイは前進する堀内を軽々とかわし、左フック、左肘を的確にヒットし続け主導権を維持する。さすがにトップノイも疲れてきたが、パンチをスウェーした後に舌を出して挑発し、観客を楽しませて味方につける一幕も。終盤には首相撲で堀内をガッチリ捕まえ右膝をボディにヒットする。堀内は首相撲から脱出してタックルを仕掛け、倒してバックを取り、ようやく流れを引き寄せるが、トップノイは2R同様に防御を続けて終了する。記者採点はトップノイ。合計28-29でトップノイ。ジャッジ3者も順当にトップノイを支持し、トップノイの判定勝ちに。堀内のUFCへの道は初戦から閉ざされた。
試合結果一覧
【エピソード4】
第5試合 バンタム級 5分3R
○野瀬翔平(マスタージャパン福岡)
×ウリジブレン[Wulijiburen](中国)
1R 1’13” TKO (レフェリーストップ:右膝の負傷)
第4試合 ライト級 5分3R
×アシカルバイ・ジンエンスビエク[Asikerbai Jinensibieke](中国)
○キム・ギョンピョ[Kim KyungPyo](韓国)
1R 0’30” TKO
第3試合 フェザー級 5分3R
○ルー・カイ[Lu Kai](中国)
×アンガ・ハンス[Angga Hans](インドネシア)
2R 4’33” TKO
第2試合 フライ級 5分3R
○パク・ヒョンソン[HyunSung Park](韓国)
×ジェレミア・シレガル[Jeremia Siregar](インドネシア)
1R 3’56” TKO
第1試合 非トーナメント戦 ウェルター級 5分3R
×ジョン・アダハー[John Adajar](フィリピン)
○キム・ハンスル[HanSeul Kim](韓国)
1R 4’37” 腕ひしぎ三角固め
【エピソード3】
第4試合 フェザー級 5分3R
○イ・ジョンヨン[Lee JeongYeong](韓国)
×シエ・ビン[Xie Bin](中国)
1R 0’36” 腕ひしぎ十字固め
第3試合 フライ級 5分3R
×堀内佑馬(チーム・オーヤマ)
○トップノイ・キウラム[Topnoi Kiwram](タイ)
判定0-3 (28-29/27-29/27-29)
第2試合 バンタム級 5分3R
○中村倫也(EXFIGHT/LDH martial arts/修斗バンタム級世界8位)
×ググン・グスマン[Gugun Gusman](インドネシア)
1R 3’24” アームロック
第1試合 非トーナメント戦 女子ストロー級 5分3R
×ソ・イェダム[Seo YeDam](韓国)
○ヨセフィン・ノットソン[Josefine Knuttson](スウェーデン)
判定0-3 (27-30/27-30/26-30)
ライト級 5分3R
―アンシュル・ジュブリ[Anshul Jubli](インド)
―宇佐美正パトリック(EXFIGHT/LDH martial arts/修斗ライト級世界10位)
中止 (宇佐美は計量オーバーで失格。計量クリアしたジュブリが準決勝進出)