修斗 3.16 後楽園ホール(レポ):SASUKE、椿飛鳥を2R裸絞めで沈めフェザー級世界王座3度目の防衛。19歳の永井奏多、藤井伸樹に判定勝ちしダイキライトイヤーのバンタム級環太平洋王座挑戦希望。パク・ボヒョン、ソルトに判定勝ちし藤野恵実の女子ストロー級世界王座挑戦へ
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プロフェッショナル修斗公式戦 PROFESSIONAL SHOOTO 2025 Vol.2
2025年3月16日(日)東京・後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
SASUKE、椿飛鳥を2R裸絞めで沈め世界フェザー級王座3度目の防衛
第8試合 メインイベント 修斗世界フェザー級チャンピオンシップ 5分5R
○SASUKE(マスタージャパン東京/王者)
×椿 飛鳥(トライデントジム/世界1位)
2R 2’54” 裸絞め
※SASUKEが3度目の防衛
SASUKEは30歳。21年に工藤諒司に判定勝ちし修斗世界フェザー級王座を獲得。23年年3月に飯田健夫を2R KO、12月に田中半蔵を3R KOして2度防衛。Road To UFCに22年、23年と連続出場したが、いずれも初戦敗退し、22年はイー・ジャーに1R一本負け、23年はキム・サンウォンに2R KO負けした。昨年5月の修斗での日中対抗戦の大将戦ではパン・ジョングウェンにスロエフストレッチで1R一本勝ち。試合後のマイクでは「怪我でメインを飛ばす奴、身内とエキシやってパンチもらってる奴、相手挑発して仕留められない奴、そんな奴らに修斗背負えるとは思えないです。お前ら中国行って試合して勝ってから僕の名前をあげなさい。以上」と、竹原魁晟、上原平、椿飛鳥といったランカー勢を挑発していた。
椿は29歳。20年から修斗に上がり、当初は負けが込んだが、現在は3連勝中。23年10月に齋藤翼に判定勝ち。昨年3月には結城大樹に判定勝ちし、世界ランキング圏外から1位に一気にジャンプアップ。7月、たておにスプリットながらも判定勝ちし、1位の座を守り、SASUKEの王座挑戦につなげた。その後、SNS等を通じてSASUKEと挑発し合い、11月の後楽園大会で王座戦が組まれたが、SASUKEが練習中に膝を負傷し左膝外則側副靱帯損傷と診断されドクターストップがかかり、試合4日前になって中止が発表され、今回改めて両者による王座戦が組まれた。
前回1月19日の後楽園大会で発表された際、スーツ姿にサングラスの大柄な男性を引き連れて登場した椿は、男性にマイクを渡すと、男性は英語で「3月16日に椿飛鳥は必ずやチャンピオンになります」と話すという、平本蓮がかつてやったようなパフォーマンスを繰り広げた。
その後も両者はX上で舌戦を繰り広げ、SASUKEは1月21日のポストで「誰かの言葉を使って煽ったり、他人の真似事で芸をしたり。怯えているから1人でも多く巻き込んで味方を作りたいんだろ?SASUKEと対等に戦えると自分でも思ってないからネタにはしって保険をかけてるのもわかってる。3月16日まで調子乗るだけ乗っておけ。弱者よ」と記し、椿も同日のXで「ちょっと膝痛めただけで、試合欠場って、弱者なんてレベルじゃないぞ。俺にカーフ蹴られるのに怯えて欠場したんだろ。3月16日は対等どころか、圧倒してやるからな。また欠場しないでね」と言い返した。その後も言い合いがヒートアップし、決戦の日を迎えた。
1R、椿が左前蹴りを放つと、SASUKEは蹴り足をすくって倒し、すぐさま上になると、サイドからアームロックを狙いつつ、1分足らずでバックマウントを奪う。SASUKEはバックキープし、執拗に裸絞めを狙い、鉄槌も当て追い詰める。時折椿の喉元に左腕が入るが、椿は背後のSASUKEの右腕をつかんで極めさせない。
すると終盤、椿は立ち上がって振り落として上になる。SASUKEが立つと、椿は片足タックルで金網に押し込み、肩でかついてから倒す。最後は椿がオンブになって裸絞めを狙って挽回して終える。記者採点は支配時間の長かったSASUKE。
2R、椿が右ストレートを当てると、SASUKEはダウンしてしまうが、すぐスタンドに戻すと、組み付いて足をかけて倒して上になる。
SASUKEはハーフから肩固めを狙う。椿は脱出してSASUKEを金網に押し込みつつ、バックを取りかけるが、SASUKEは体をひねって正対し、足を掛けて倒してハーフで押さえる。椿は動くが、今度はSASUKは立たせずバックに回り込み、がっちりとバックマウントで捕獲すると、今度はすぐさま両腕で裸絞めを極めることに成功し、椿が落ちたところで片岡レフェリーがストップ。SASUKEが3度目の王座防衛を果たした。
◆SASUKEのマイクアピール
まず、はじめにこの試合に向けて散々僕は馬鹿にされてきて、頭にきてたんですごく今、清々としてます。チャンピオンとして一人間として、頭にきてたんで、しっかり埋めてやろうと思ってたんですけど、まあ、彼も意地を出して頑張ったんじゃないですか。ちょっと怒りの感情を押し殺して、淡々と冷静に青く燃えるって言ってたんですけど、硬くなってしまったので。まあ、まだまだ自分も直すべきところあるし、強くなれるんじゃないかなと思いました。
そうだなぁ。首絞めたら寝ちゃったからなぁ。聞いてるかな。あいつ、なんか、サラリーマンの副業でチャンプになるとか有給がどうだこうだとか散々言ってたけど、一体どれだけの人が、どれだけの選手がどれだけの思いを背負ってこのベルトを巻いてきたかっていうのを全く理解してないだろ? このベルトは俺だけじゃなくて、歴代のチャンピオンたちの格闘技にかける強い思いがこもった歴史ある伝統ある重いベルトなんだよ。それをやれ副業だの遊びみたいな格闘技やってる奴が取れるわけねえだろ、勘違いすんじゃねえぞ。盛り上げるためにやるなら、しっかり実力をつけて、周りに文句言われないように自分の力を示してから俺の前に立て。リスペクトを忘れるなっていうことをそっちの陣営は伝えておいてください。
あとなんかSASUKEの対策で、椿とスパーリングしてますって奴が、俺がいない間にうちのジムの敷居をまたいで勝手に練習してたらしいけど、どういう教育してんの。そんなスパイみたいな姑息なことやってる奴らがベルト取れるわけねえだろ。数々の愚行と行いを反省し、お前ら修斗から出ていけ。以上。(マットにマイクを叩きつける)
◆追記
SASUKEの話したスパイ疑惑について、椿の所属先のトライデントジムの森修代表はXのポストで「スパイ行為とかあるはず無いだろ、普通に考えて(笑) 練習仲間が被っているのはお互い様だし、んなもん試合決まる前からわかってんだろ、アホか。試合は素晴らしかったし、実力も文句ない、流石チャンピオンだと思う。それだけに残念だ。」と否定した。
その後、森氏からの指摘を受け、SASUKEの所属先のマスタージャパン東京の弘中邦佳代表が調査の結果をジムのXで試合2日後に報告し、椿陣営の選手が出稽古していたが、「意図して練習仲間をマスタージャパン東京に送り込んだという事実は全く無く」「(SASUKEが)勝手にそのように思い込んでしまい、リング上でこのような間違った発言に至ってしまいました」とし、椿陣営に謝罪し、SASUKEにも「軽率な発言が無いよう指導」したことを明かしている。
19歳の永井奏多、前回世界バンタム級王座に挑んだ藤井伸樹に判定勝ち
第7試合 セミファイナル バンタム級 5分3R
×藤井伸樹(ALLIANCE/世界4位、元環太平洋王者)
○永井奏多[かなた](TRIBE TOKYO MMA/環太平洋10位)
判定0-3 (岡田28-29/鍋久保27-30/片岡27-30)
藤井は昨年7月の修斗世界バンタム級王座決定戦で齋藤奨司に判定1-2で惜敗して以来の試合。前回、藤井は長時間トップキープしたものの、上からのパウンド等の攻撃が少なく、下の齋藤の打撃も評価され、採点がバラつく形となっていた。
永井は19歳。23年4月のデビュー戦は引き分けたが、以降は6連勝し7戦無敗。昨年10月には一條貴洋に1R KO勝ちした。
1R、スタンドの打撃戦で、永井が左ジャブや右ローを駆使しつつ、右ストレートを随所で的確に当てて好印象を作る。藤井はタックルを繰り返すが、永井は倒れず切り続ける。最後、藤井が右ストレートを2連発したが、すぐ時間切れに。記者採点は永井。
2R、藤井がタックルを仕掛けるが、永井が切ってから金網に押し返す場面も目立つように。終盤には永井が逆に倒してバックを取るかける場面も。パンチの打ち合いでも一進一退の展開を繰り広げ、両者場内を沸かせるが、永井のヒット数がやや上回ったまま終わる。記者採点は永井。
3R、スタンドでは永井が左ジャブ等のヒットで上回る。中盤から藤井が執拗にタックルで倒しにかかり、永井は背中をマットにつきかける場面もあったが、すぐに立つ。どちらも譲らぬグラウンドの攻防が続き、場内を沸かせる。すると終盤、永井がスクランブルの攻防でも上回り、上を取るように。最後は永井がバックマウントをキープして、パウンドで藤井を追い詰めて終了する。記者採点は永井。合計27-30で永井。ジャッジ3者とも永井を支持し、永井が判定勝ちした。
マイクを持った永井は「言いたい事は、今日の試合を見てもらって、現チャンピオンの齋藤奨司選手と僕のどっちが強いかというと、絶対僕だと思うんで」と、齋藤よりも明確に藤井に勝ったことをアピールしつつ「すぐチャンピオンとやらせて下さいとは言えないので、藤井選手が元々持っていた環太平洋のチャンピオンベルトを懸けて、ダイキライトイヤー選手、戦ってください」と話し、環太平洋王者のダイキへの挑戦を希望した。
パク・ボヒョン、ソルトに判定勝ちし藤野恵実の女子ストロー級世界王座挑戦へ
第6試合 女子ストロー級 5分3R
○パク・ボヒョン[Park Bohyun](韓国/ウエストジム/世界2位)
×ソルト(マルスジム/世界7位、パンクラス同級王者)
判定3-0 (鍋久保29-28/片岡29-28/岡田30-27)
ソルトは昨年5月に中国のハイライ・ウーシャアモーに判定1-2で惜敗して以来となる修斗参戦。9月のパンクラスでは修斗の同級王者の藤野恵実に判定勝ちしパンクラス王座を初防衛した。
ボヒョンは昨年8月のCOLORSで1階級下のスーパーアトム級王者・渡辺彩香を打撃で圧倒して判定勝ちしストロー級2位にランクインした。
1R、ボヒョンが右ストレート等のパンチ、ソルトが左右のミドルといった蹴り主体の攻防で、ほぼ五分。ボヒョンは再三ソルトを金網に押し込み、倒せないものの、半分近くの時間を支配する形となる。記者採点はボヒョンでジャッジ3者もボヒョンだが、僅差のため、割れていたとしても不思議ではない。
2R、序盤の打ち合いでお互いパンチをヒットする。中盤、ソルトが前蹴りでボヒョンを倒すが、ボヒョンもスタンドに戻ると、右フックを返す。終盤はお互い攻めあぐねるが、ボヒョンの右フック等の積極性がやや上回るまま終わる。ソルトは左まぶたを腫らす。記者採点はボヒョン。ジャッジは割れ、2者がボヒョン、1者がソルトにつける。
3R、ボヒョンが右フックを当ててから押し込むが、ソルトも膝、肘を返して印象を作る。ソルトも押し返す場面が2Rよりも増える。残り1分、離れての攻防で、ソルトが組んで膝を当てるなど、やや好印象で終える。記者採点は僅差でソルト。ジャッジは2者がボヒョン、1者がソルトにつける。記者採点合計29-28でボヒョン。ジャッジ3者もボヒョンを支持し、ボヒョンが判定勝ちした。
マイクを持ったボヒョンは「スーパーアトム級王者の渡辺選手とパンクラスの王者のソルト選手に勝ったので、修斗のストロー級のタイトルに挑戦したいです」とアピール。すると客席で見ていた修斗世界女子ストロー級王者の藤野がベルトをもってケージに登場し「パク選手滅茶苦茶強くて、やりたいと思いました」と話し、王座戦を承諾した。主催者も両者のツーショット撮影を促しており、条件・タイミングの調整が済めば実現しそうだ。
宇藤彰貴、初の後楽園で14秒KO勝ち
第5試合 フェザー級 5分3R
○宇藤彰貴(ゴンズジム/世界10位、環太平洋9位)
×齋藤 翼(津田沼道場・FIGHT FARM)
1R 0’14” KO (右フック)
宇藤は7戦6勝(6KO)1敗で勝利は全てKO勝ちの22歳。これまで地元大阪と沖縄で戦い続け、今回後楽園に初登場し、ビッグインパクトを残す。
1R、宇藤が開始すぐから左ミドルを当てつつ金網際に詰め、パンチラッシュで仕留めにかかると、齋藤は顔を背け防戦一方となり、宇藤が右フックを連打し、齋藤がダウンしたところで、レフェリーがストップした。
マイクを持った宇藤は「ビッグインパクト残せたと思うんで、今年タイトルマッチ絡めるよう頑張ります」とアピールした。
杉野光星、3戦目でバンタム級世界3位の川北晏生に判定勝ち
第4試合 バンタム級 5分3R
×川北晏生(TRIBE TOKYO MMA/世界3位、環太平洋3位)
○杉野光星(ALLIANCE/世界7位、環太平洋7位)
判定0-3 (片岡27-30/内田27-30/岡田27-30)
杉野は日大柔道部出身の23歳で、23年9月に修斗でMMAデビューして2連勝。今回3戦目だが、早速上位ランカー喰いを果たす。
1R、杉野が右カーフ、左ジャブを的確に当て、組んで押し込めば投げを狙いつつ、膝も当て、主導権を握る。
2R、杉野がワンツーで右ストレートを当ててダウンを奪う。杉野は組んだ状態から左肘を当てて川北の右まぶたをカットし、崩しも決める。
3R、川北のタックルを杉野は切ってスタンドに戻す。杉野は組んで膝を当て、中盤過ぎには足を掛けて倒す。終盤、杉野が長時間バックキープし終了する。杉野が3Rともポイントを取り判定勝ちした。
第3試合 フライ級 5分2R
○中池武寛(パラエストラ小岩)
×下田洋介(095BJJ長崎柔術)
1R 2’06” フロントチョーク
1R、中池がタックルで倒して金網際でトップキープすると、下田の逃げようとする動きに合わせてギロチンを極め、最後は絞め落とした。
第2試合 フェザー級 5分2R
△たてお(ELEVEN/世界9位、環太平洋7位)
△シャ・ランディ[Xie Langdi](TRIBE TOKYO MMA)
判定0-0 (鍋久保19-19/橋本19-19/片岡19-19)
1R、グラップリング勝負となり、たておが下からの腕十字、三角絞めを仕掛け、ランディを追い詰める。ランディも終盤、ギロチンを狙い、最後はパウンドを落とすが、インパクトが不十分で終わる。記者採点はたてお。
2R、たておが序盤、バックから裸絞めを狙って追い詰める。中盤、ランディが上を取り返し、パウンドを当てて挽回する。終盤、たておがスタンドに戻し、最後は上になってアームロックを狙い、パウンドを当てて攻勢に戻して終える。記者採点は僅差だがたてお。合計20-18でたてお。ジャッジは3者とも2Rはランディにつけ、19-19のイーブンとなり、ドローとなった。
第1試合 バンタム級 5分2R
○中野剛貴(KRAZY BEE)
×松下祐介(パラエストラTB)
判定3-0 (片岡20-18/岡田20-17/内田20-17)
1R、中野がサウスポーからの左ストレートで松下をダウンさせる。松下はタックルを仕掛けて倒して難を逃れる。最後、スタンドに戻ると、中野がまたも左ストレートでダウンを奪う。2Rも中野が左ストレート、テンカオ、右ミドルを的確に当てて優位に進め判定勝ちした。
オープニングファイト ライト級 5分2R
×手島 響(パラエストラ小岩)
○後藤 亮(TRIBE TOKYO MMA)
判定0-3 (岡田17-20/橋本17-20/内田17-20)
2Rとも後藤がグラウンドコントロールし、マウントからのパウンド、バックからの裸絞めで等で追い詰めて判定勝ちした。ジャッジ3者とも2Rを8-10としている。