修斗 11.30 後楽園ホール(レポ):岡見勇信、キム・ジェヨンとの5R制し43歳で修斗世界ミドル級王座獲得。エフェヴィガ雄志、マックス・ザ・ボディに3R一本勝ちし10戦無敗で環太平洋ライト級王者に
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プロフェッショナル修斗公式戦 PROFESSIONAL SHOOTO 2024 Vol.8
2024年11月30日(土)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
岡見勇信、キム・ジェヨンとの5R制し43歳で修斗世界ミドル級王座獲得
第6試合 第6代修斗世界ミドル級チャンピオン決定戦 5分5R
○岡見勇信(EXFIGHT/世界2位)
×キム・ジェヨン[Kim Jaeyoung](韓国/ノヴァMMA/世界3位、元AFC&TFCミドル級王者、元CMAヘビー級王者)
判定3-0 (福田48-47/出合48-47/片岡48-47)
※岡見が王者に
修斗世界ミドル級王座はシアー・バハドゥルザダが07年に山下志功に判定勝ちして獲得し、09年と10年に防衛したが、12年からUFCを主戦場とし、19年までUFCに上がり、以降は試合をしていなかった。10月13日に発表されたランキングで「引退を表明したシアーをランク外とし、王座は空位に」と正式発表され、ようやく14年ぶりに王座戦が行われた。
岡見とジェヨンは昨年12月の豊洲PIT大会で対戦し、ジャッジは3者とも29-28だがスプリットとなり、岡見が辛勝している。今回5R制の王座戦で再戦する。
岡見は43歳。UFCの王座戦線での活躍し、21試合出場・14勝の実績はいずれも日本人最多。11年にはアンデウソン・シウバのミドル級王座にも挑戦し敗れた。19年からONEに上がり、同年10月の両国国技館大会でアギラン・ターニに判定勝ち。22年11月に3年ぶりの試合をONEシンガポール大会で行ったが、ONE2階級制覇王者のアウンランサンに1R TKO 負け。昨年12月に修斗でジェヨンに判定勝ちした。
ジェヨンは45戦27勝(17KO/5一本)16敗2分の41歳。04年にプロデビューし、山宮恵一郎、村田龍一ら日本勢にも勝利。13年からは韓国のTFCを主戦場にし活躍。18年にはロシア等でのACBで3戦経験。19年からは韓国のAFCを主戦場にし3連勝したが、21年12月の試合で敗れAFCミドル級王座から陥落。昨年12月に岡見に判定負けしたが接戦だった。7月のAFCベトナム大会では日本のHEAT推薦の磯部鉄心と対戦し1R肩固めで一本勝ちしている。磯部は修斗ではフェザー級で戦っている選手だ。
9月22日の後楽園大会でこの王座戦が発表された際、岡見は「今の自分に修斗の歴史のある世界のベルトを懸けて戦うことができるのか、もう一度キム・ジェヨンというハードなファイターと5分5R戦えるのか、自分に何度も問いかけました。正直、怖かったですけど、心の底に残っている炎があり、修斗のベルトを懸けて戦えるなら、やらないわけにはいかないだろうと思いました」「43歳、最後のチャンスだと思っています」等と決意を語っていた。
試合は終始スタンド勝負に。1R、岡見がサウスポー、ジェヨンがオーソドックスで構える構図。岡見は右ジャブ、左ミドル、組んでの膝を当て、ジェヨンは前足狙いの左右のロー、右フックを返す。お互い攻撃が少ないが、岡見の的確さがやや上回る。記者採点は岡見だが、ジャッジは3者とも積極性で上回るジェヨンにつける。
2Rも同様の構図で、ジェヨンは執拗に左右のローを当てるが、岡見はひるまず、随所で右ジャブ、左ストレート、膝、三日月蹴り等を当て、若干だが優位を維持する。記者採点は岡見だが、割れても不思議ではないぐらいの差で、ジャッジは3者ともジェヨンにつける。
3R、ジェヨンは圧を強めて前に出続け、右ボディのヒットを増やす。岡見は距離を取って回り続け、随所で左三日月、ストレート、膝を返す。すると終盤、岡見が左三日月を当てると、ジェヨンは手を広げ効いていないとばかりにアピールするが、後退するようになり、岡見が圧をかける側に。最後も岡見が左三日月を当てて攻勢を印象付ける。記者採点は岡見。
4Rも似た構図だが、回り続ける岡見をジェヨンは捕まえられず、パンチがほとんど当たらなくなる。逆に岡見は序盤と変わらないスピードで動き続け、随所で右ジャブ、左三日月、ストレート等を当て、主導権を維持する。記者採点は岡見。
5R、ジェヨンは必死に前に出続け、岡見が回り続ける。ジェヨンはヒットにはなかなかつなげられないが時折ローをヒット。岡見は随所で膝を返すが、やや消極的になっている感は否めない。記者採点はジェヨンだが岡見につく可能性もあり、ジャッジは3者とも岡見につける。合計49-46で岡見。ジャッジは3者とも48-47の1ポイント差で岡見を支持し、岡見が判定勝ちした
ベルトを巻いた岡見は「息子上げてしまってすみません。苦しい戦いでした。そして練習でした。怪我が多く自分の(寝技主体の)ファイトスタイルを貫こうと思えなかったです。その中でどうしたらいいか、勝たなきゃいけない。こういう(スタンドでの)戦いを選択しました。賛否両論あると思います。キム・ジェヨンに勝って修斗のベルトを巻く、それだけが使命でした。家族、練習仲間にサポートしていただきました。UFCチャンピオンに挑戦して失敗して他の団体でも、苦しい期間がありましたが、修斗のベルトを巻けて本当にうれしいです。ありがとうございました」と語り、練習仲間や家族と記念撮影した。
◆岡見のバックステージでの談話
ここまで怪我に苦しまされるかっていうくらい病院と練習の往復みたいな感じでした。もっと打撃から組んでテイクダウンしてって形を考えたんですけど、組む練習がなかなかできず、戦略を切り替えました。色々怪我があったんですけど、首の怪我が戦略を変える上で一番大きかったです。近しい人には『やめた方がいいんじゃないか』と言われていたんですけど、修斗の坂本(一弘・サステイン)代表のこの試合への熱い思いを知っていたので、キャンセルすることは頭に一切なかったです。
前回戦って、ジェヨン選手は気持ちが強い、あきらめないファイターだと思ったので、逆にそれを利用するというか、前に出てくる相手にカウンターを当てる戦略が今回ハマりました。前半の3Rでしっかり取り切るっていう作戦を考えてました。ジェヨン選手は気持ちが強いので、絶対後半ラッシュを仕掛けてくるので、4・5は正直うまくいなすっていうイメージをしていました。
次の試合のこととかは全く考えてなかったですね。UFCでもWSOFでも大事なところで勝てないことばっかりだったので、本当にいいことが全くイメージに出なかったんですよね。またここで負けるんだろうみたいな。絶対勝ち取る、そこの戦いでしたね。だから本当に夢みたいです。ベルトを取ることが夢でした。自分に打ち勝つことができた。その気持ちが一番強いです。
エフェヴィガ雄志、マックス・ザ・ボディに3R一本勝ちし10戦無敗で環太平洋ライト級王者に
第5試合 修斗環太平洋ライト級チャンピオン決定戦 5分3R
○エフェヴィガ雄志(TRIBE TOKYO MMA/環太平洋1位、世界1位)
×マックス・ザ・ボディ(カメルーン/BRAVE/環太平洋3位、世界3位)
3R 3’17” 裸絞め
※エフェヴィガが王者に
キャプテン☆アフリカが7月に世界ライト級王座を獲得したため環太平洋同級王座を返上し、今回王座決定戦が組まれた。
エフェヴィガは24歳。父がアフリカのトーゴ出身、母が日本人。空道をベースとし、22年のMMAプロデビュー後は9戦全勝(6KO/1一本)。LDH主催のPOUND STORM等で岡澤弘太、グンター・カルンダに勝利。昨年5月にはフロリダの名門・キルクリフFCに出稽古し、地元の大会に出場しメキシコの選手に3R TKO勝ち。昨年から修斗に参戦し4戦全てフィニッシュ勝利。3月の後楽園大会では韓国の選手を1R裸絞めで下し、5月のニューピア大会での日中対抗戦7×7の副将戦では2R左ボディでKO勝ち。その後、約2か月間キルクリフで再び練習。8月のTTF CHALLENGEでは、ベラトールでパトリシオ・ピットブルと王座を争った経験のあるエマニュエル・サンチェスに1R TKO勝ちした。
マックスはアフリカのカメルーン出身の40歳。長年日本に住み、20年から修斗に参戦し、21年、キャプテンと環太平洋ライト級王座を争うが1Rギロチンで一本負け。修斗で田中有、菅原和政相手に2連勝していたが、昨年8月の韓国での試合、今年9月の修斗での西尾真輔戦と2連続1R KO負け中だ。王座決定戦に西尾が打診されたが、調整が間に合わず回避し、マックスが戦うことになった。
1R、エフェヴィガがサウスポーで構えてプレッシャーをかけ、マックスがオーソドックスで距離を取り、お互いパンチを時折振るうが、強打にはつながらない。中盤、マックスが組んできたが、エフェヴィガが倒して上になり、ハーフで押さえる。終盤もエフェヴィガは押さえ続け、肩固めを狙うが極まらない。最後は両者立ってエフェヴィガが押し込んで終わる。記者採点はエフェヴィガ。
2R、マックスが右フックを当てるが、エフェヴィガは組み付いて押し込み、左膝を当てる。離れると、またもマックスの右フックが炸裂するが、エフェヴィガは組むとオンブになり、そのままグラウンドに持ち込んでバックマウントを奪う。終盤、エフェヴィガはバックキープして裸絞めを狙うが、マックスはアゴを引いて防御を続け、背後のエフェヴィガに軽くではあるがパウンドを当てて抵抗する。記者採点はエフェヴィガ。
3R、マックスがパンチを振るうが、エフェヴィガが組んで押し込んで膝を当てる。中盤にはエフェヴィガがまたも倒しバックを奪う。すると中盤過ぎ、エフェヴィガは体を起こしてパウンドを連打して追い詰めると、裸絞めを極めてタップを奪い一本勝ちした。エフェヴィガはプロデビュー以来の連勝を10とし、初のタイトルを獲得した。
ベルトを巻いてマイクを持ったエフェヴィガは「今回10戦目で、今まで9戦負け無しで、プレッシャーも毎度ですけど、チャンピオンになれてうれしいです。サポートしてくれる皆さんのおかげです。試合内容的には渋かったです。これでも10戦負けなかったのは、9戦の中で失敗もあって学んで成長した証です。これからも学び続けて勝ち続けたいです」と宣言。さらに「準備する中で大変だったことがあったんですけど」と話して少し目を潤ませると「皆さんにも愛する人たちがいると思うんで、しっかり時間を過ごしてあげてください」と観客に呼び掛けた。
17歳の新鋭・中池武寛、連勝4でストップ。シモン・スズキが1Rで粉砕
第4試合 2024年度新人王決定トーナメント準決勝 フライ級 5分2R
×中池武寛(パラエストラ小岩)
○シモン・スズキ(和術慧舟會HEARTS)
1R 4’37” KO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
中池は昨年11月のプロデビュー後、4試合ともフィニッシュ勝利中の17歳。7月、新人王トーナメント初戦では蓮池勇太に1R裸絞めで一本勝ちしている。シモンも昨年11月デビューしたが2戦1敗1分で、5月の新人王トーナメント初戦は相手の病気により、シモンは戦わず準決勝に進んでいる。
1R、体格で勝るシモンが開始すぐから圧力をかけ、右フックを効かせ打撃で先手を取る。中盤、中池は組み付いて金網に押し込み、バックを取りかけつつ倒そうとするが、シモンは耐える。膠着すると福田レフェリーはブレイクをかけると共に、途中でシモンが金網をつかんだとして警告を出す。終盤、打撃戦になるとシモンがまたもパンチを当て、中池を苦しめる。組んできた中池をシモンが潰して倒して上になると、肘とパウンドを当て続け、レフェリーがストップした。
下馬評を覆し勝利したシモンは「俺が弱いって言ってる奴いるけど、なめんじゃねえ。どんどんフライ級勝っていくぞ」と強気にアピールした。
第3試合 バンタム級 5分2R
×平川智也(マスタージャパン東京/世界6位)
○杉野光星(ALLIANCE)
判定0-2 (豊永18-20/鍋久保19-19/片岡18-20)
1R、平川がサウスポー、杉野がオーソドックスで構え、お互いパンチを振るうが、距離が遠く、強打が打てない。少しだけ平川と圧力と手数が目立つが、杉野も蹴りを絡めて互角に渡り合い、お互い攻めあぐねたまま終わる。記者採点は平川としたが、割れても不思議ではなく、修斗ルールの本来の基準から考えればイーブンでもいいだろう。
2R、スタンドの攻防が続き、お互い積極性を増すと、中盤、杉野が右の三日月蹴りを当ててからのストレートで平川をひるませる。終盤にも杉野がパンチを当て、テイクダウンを奪い、最後はパウンドを当て攻勢を印象付けて終える。記者採点は杉野。合計19-19でイーブン。ジャッジは1者がイーブンとしたが、2者が杉野を支持し、杉野が判定勝ちした。
須藤晃大、亮我に苦戦も判定勝ちしフライ級リーグ優勝
第2試合 epsomsalt seacrystals Presents インフィニティリーグ2024 フライ級 5分2R
○須藤晃大(EXFIGHT/世界4位/勝ち点9→11)
×亮我(ゴンズジム/世界7位/勝ち点5)
判定2-0 (豊永20-18/出合19-19/福田20-18)
須藤はリーグ戦1位で今回の最終戦で判定勝ち以上の結果で優勝が決まる。亮我は今回含め2戦を残す。優勝賞金は100万円。
1R、亮我が序盤に右ストレートをヒット。須藤がテイクダウンを奪うが、亮我は下から足関を狙い、須藤が嫌ってスタンドに戻す。須藤は中盤、右ストレートで亮我をひるませる。だが終盤、亮我がパンチの打ち合いで右フックを効かせ、最後は倒して上からパウンドを少しだが当て反撃して終える。記者採点は僅差だが支配時間の長かった須藤。ジャッジは割れ、2者が須藤、1者が亮我につける。
2R、須藤が序盤から倒し、金網際で相手の足に乗る形でマウントポジションを奪う。中盤過ぎにはハーフに移り、亮我が足関を狙うが防御し、終盤にはトップに。須藤は攻めあぐね、亮我が返すが、須藤は上を取り返しパウンドを当てる。ところが終了間際、亮我が立つと、左右のパンチで須藤をひるませ、最後に印象を作って終える。記者採点は僅差だが最後チャンスを作った亮我。ジャッジは3者とも須藤につける。合計19-19でイーブン。ジャッジは1者がイーブンとしたが、2者が須藤を支持し、須藤が辛くも勝利し、勝ち点2を加算してリーグ優勝を決めた。表彰式は他の出場者の最終戦の行われる1月19日の後楽園大会で行われる。
マイクを持った須藤は「こんな試合でごめんなさい。ちゃんとフィニッシュしたかったです。また頑張ります。100万円ゲットしたんで良かったです。自分パンツ真っ白なんですけどスポンサー様募集しています」と話し、来年に向けてのアピールはしなかった。
第1試合 フェザー級 5分2R
○たてお(ELEVEN/世界9位)
×島村 裕[ゆたか](パラエストラ小岩)
判定3-0 (豊永20-18/福田20-18/出合20-18)
1R、島村がサウスポーからの右ジャブ、左ストレートを当てる。中盤にたておがタックルで倒してハーフで押さえ続けて挽回し、時折パウンドも当て、終盤にはパスガードしてバックを取り、コントロールして終える。記者採点はたてお。
2R、たておが序盤からバックを奪うが、島村が脱出し、立ち際にパンチと膝を当てる。だがたておはすぐ倒し、またもマウントやバックを奪い、パウンドも当てて追い詰める。最後、島村が返して上になり、パウンドを返すが、すぐにたておは返してサイドで押さえ終了する。記者採点はたてお。たておが2Rともポイントを取り判定勝ちした。
なお、第1試合の前には、世界フェザー級王者・SASUKEの怪我により王座挑戦が中止となった椿飛鳥がケージに登場した。椿は「格闘技に怪我はつきものです。でもどんな状態でもケージに入るのがプロです。SASUKE選手の一日も早い回復を祈ります。難しいようでしたら返上のご検討をお願いします」とアピールした。