UFC 10.5 ソルトレイクシティ(レポ):ペレイラ、ラウントリーJr.との打撃戦制しライトヘビー級王座3度目の防衛。ペーニャ、女子バンタム級王座奪還。アルド、復帰2戦目は僅差の判定負け
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UFC 307: Pereira vs. Rountree Jr.
2024年10月5日(土/現地時間)米国ユタ州ソルトレイクシティ:デルタ・センター
レポート:井原芳徳
ペレイラ、ラウントリーJr.との打撃戦制しライトヘビー級王座3度目の防衛
第12試合 メインイベント UFCライトヘビー級チャンピオンシップ 5分5R
○アレックス・ペレイラ(王者、元ミドル級王者)
×カリル・ラウントリー・ジュニア(8位)
4R 4’32” TKO (レフェリーストップ:右アッパー)
※ペレイラが3度目の防衛
ペレイラは元ミドル級王者で、昨年7月からライトヘビー級に階級を上げ、元王者のヤン・ブラホヴィッチに判定勝ち。11月のイリー・プロハースカとの王座決定戦で2R KO勝ちし、2階級制覇を達成した。今年4月のUFC 300記念大会ではメインイベンターを務め、ジャマール・ヒルを1R KOし初防衛した。6月の2度目の防衛戦ではプロハースカを2R左ハイで沈め、返り討ちにしている。
ラウントリーはTUF準優勝を経て16年からUFCに参戦し、長らく勝ち負けを繰り返すような状態だったが、21年9月からは5連勝中で、最近では昨年12月にアンソニー・スミスを3R左フックでKOしている。ペレイラが2度目の防衛戦を行った6月29日の大会で、ジャマール・ヒルと戦う予定だったが、禁止薬物で男性ホルモンの一種であるDHEAの入ったサプリメントを誤って摂取したとUFC側に申告し、試合中止となっていた。出場停止期間は尿のサンプルを採取した5月4日から2か月だった。
ラウントリー優勢が続いた打撃戦だったが、制したのはペレイラだった。1R、サウスポーのラウントリーが左フックを主体にしつつ右フックも当て、長身でオーソドックスのペレイラが右ミドル、ハイ、ローを当てるが、お互い慎重な攻防が続き、僅差な状態のまま終わる。記者採点は迷ったが、パンチの強打が少し印象に残ったラウントリー。ジャッジ3者もラウントリーにつける。
2Rも同様の慎重な打撃戦が中盤まで続く。だが終盤、ペレイラが右ハイを空振りして背中を向けてしまうと、ラウントリーが右のフックを合わせ、ペレイラは一瞬片膝をマットについてしまう。ペレイラはダメージは小さく、すぐに持ち直し、たが、終了間際にもラウントリーが左ハイをクリーンヒットし、満員の会場をどよめかせる。記者採点はラウントリー。ジャッジ3者もラウントリーにつける。
3R、ラウントリーは距離を取り、左ミドル、右ボディを随所で当て、中盤には左ストレートを当て、若干優位な状態をキープする。だがさすがにペレイラにプレッシャーをかけられ続けていると、集中力が限界に来たか?終盤、苦しそうな表情を浮かべるようになり、ペレイラが左ジャブのヒットを増やし、最後は膝蹴りも当てて、やや優位な状態にして終える。記者採点はペレイラ。

SALT LAKE CITY, UTAH – OCTOBER 05: (L-R) Alex Pereira of Brazil punches Khalil Rountree Jr. in the UFC light heavyweight championship fight during the UFC 307 event at Delta Center on October 05, 2024 in Salt Lake City, Utah. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
ラウントリーにとっては未経験の4R目、ペレイラは変わらずプレッシャーをかけ、随所で左ジャブを的確に当てて、ラウントリーをじっくりと料理する。中盤になるとペレイラの右ストレートもヒットが増える。ラウントリーは右まぶたをカットして苦しそうな表情を浮かべるように。終盤、ペレイラは前に出てパンチを当て続ける。ラウントリーは金網を背負い血だるまになりながらも、パンチを返し、不屈の闘志を見せるが、ペレイラはかわし続けると、最後は左右のボディからの右アッパーでマットに沈めた。ペレイラの強さだけでなく、ラウントリーの粘り強さも光る一戦となり、今大会のファイトオブザナイトに選ばれている。

SALT LAKE CITY, UTAH – OCTOBER 05: Alex Pereira of Brazil reacts after his TKO victory against Khalil Rountree Jr. in the UFC light heavyweight championship fight during the UFC 307 event at Delta Center on October 05, 2024 in Salt Lake City, Utah. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
ペーニャ、女子バンタム級王座奪還。ヌネスとの3度目の対戦熱望
第11試合 コーメインイベント UFC女子バンタム級チャンピオンシップ 5分5R
×ラケル・ペニントン(王者)※初防衛戦
○ジュリアナ・ペーニャ(1位・元王者)
判定1-2 (47-48/48-47/47-48)
※ペーニャが王者に
ペニントンは14年からUFCに上がり、20年1月、ホリー・ホルムに敗れたが、以降は6連勝。今年1月、女子バンタム級王者決定戦でマイラ・ブエノ・シウバに判定勝ちしベルトを巻き、今回初防衛戦を迎えた。
ペーニャは21年12月にアマンダ・ヌネスに2R裸絞めで一本勝ちし女子バンタム級王者になったが、22年7月のリターンマッチでヌネスに判定負けし王座陥落した。昨年6月、3度目の対戦が組まれたが、ペーニャが肋骨を骨折したため欠場した。約2年ぶりの復帰戦として王座戦が用意された。

SALT LAKE CITY, UTAH – OCTOBER 05: (R-L) Julianna Pena punches Raquel Pennington in the UFC bantamweight championship fight during the UFC 307 event at Delta Center on October 05, 2024 in Salt Lake City, Utah. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
1R、スタンドでの打撃戦が続き、両者慎重だが、ペーニャの右ストレート、左ジャブのヒットがやや目立つ。ペニントンも右アッパー、左フック、ジャブ、ミドルをお返しする。差は乏しいが、ペーニャが手数、ペニントンが強打で少し差をつけた印象だ。記者採点は迷ったが手数で上回ったペーニャ。ジャッジは割れ、1者がペニントン、2者がペーニャにつける。結局このスプリットが最終集計での勝敗の分かれ目となる。
2R、中盤に組んだ展開になると、ペニントンが右膝を連打したタイミングで、ペーニャが倒してサイドで押さえる。終盤、ペーニャは上四方に回り、ペニントンが立つと、ペーニャは背後に回り込んでオンブになる。ペニントンは背後のペーニャにパンチを少し当てるが当たりは軽く、最後まで捕まり続けたまま終わる。記者採点は主導権をキープしたペーニャ。ジャッジ3者もペーニャにつける。最近はグラウンドコントロールだけではポイントがつかないという見方が日本では強まっているが、米国のUFCでのジャッジの実運用では一概にそうとは言えず、トップやハーフではなくその先のサイドやバックで明確にコントロールをしていれば、ポイントがつく傾向は以前通りだ。
3R、ペーニャは右フック、左ジャブを当て、ペニントンも左ミドル、ジャブを返す。中盤過ぎ、ペーニャが右アッパーを当ててから組み付き、外掛けで倒し、サイドで押さえる。終盤、ペーニャはまたもバックを取り、パウンドを時折当て、裸絞めを仕掛けてペニントンを追い詰める。記者採点もジャッジ3者もペーニャ。
4R、ペニントンが序盤から左ハイをヒットし、ペーニャをふらつかせる。中盤、お互い左ジャブ等を当てていると、次第にペニントンが圧力を強めて、ペーニャが下がりがちに。するとペニントンの右フックがカウンターでクリーンヒットし、ペーニャはダウンする。ペニントンはすぐに押さえるが、終盤に入り、ペーニャは立ち上がり、スタンドに戻す。ペニントンは前に出続け、主導権を維持する。記者採点はペニントン。
5R、スタンドの打撃戦が続き、お互い強打は出ない。中盤、ペニントンが押し込む展開を繰り返すが、テイクダウンは奪えない。だが終盤、ペニントンが右フックを当てると、ペーニャは後退する。打撃戦が続き、最後はペニントンが左フック等を当て、優位なまま終える。記者採点はペニントン。合計47-48でペーニャ。ジャッジは割れたが2者がペーニャを支持し、ペーニャが判定勝ちで王座奪還を果たした。
勝利者インタビューでペーニャは、この日勝利したケイラ・ハリソンと戦う可能性について聞かれたが、前回3度目の対戦を予定していたヌネスの名前を出し「ヌネスは引退しないで戻ってきてほしい」と話し、ヌネス戦を優先したい考えを示した。

SALT LAKE CITY, UTAH – OCTOBER 05: Julianna Pena reacts after her victory against Raquel Pennington in the UFC bantamweight championship fight during the UFC 307 event at Delta Center on October 05, 2024 in Salt Lake City, Utah. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
アルド、復帰2戦目は僅差の判定負け
第10試合 バンタム級 5分3R
×ジョゼ・アルド(10位、元フェザー級王者)
○マリオ・バティスタ(11位)
判定1-2 (29–28/28–29/28-29)
アルドは22年8月、メラブ・ドバリシビリに判定負けしたのを最後にMMAを引退し、プロボクシングで3戦していたが、今年5月、地元リオデジャネイロ大会でMMAに復帰し、バンタム級ランカーのジョナサン・マルチネスに判定勝ち。復帰2戦目を迎える。バティスタは6連勝中で、最近では今年1月にリッキー・シモンに判定勝ちしている。
1R、バティスタが前に出て右ストレート等をヒット。中盤、バティスタがアルドを押し込むが、テイクダウンを奪えず離れる。終盤にもバティスタが押し込むが、アルドは突き放す。アルドは前に出て右ストレートをヒット。だがバティスタも右ストレート、フックを返し、左ミドルも当てる。最後、アルドがワンツーでの右フックを当て、バティスタの左ハイもかわし、場内を沸かせる。記者採点はヒット数で上回ったバティスタ。

SALT LAKE CITY, UTAH – OCTOBER 05: (L-R) Mario Bautista punches Jose Aldo of Brazil in a bantamweight fight during the UFC 307 event at Delta Center on October 05, 2024 in Salt Lake City, Utah. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
2R、アルドが左ジャブを当てると、バティスタは右まぶたをカットする。アルドはさらに左ジャブ、左ボディを当て、詰めて来たバティスタの顔面に右膝を当てる。バティスタは足をつかむが、アルドは抜いて離れる。だがバティスタも次第にパンチを返すように。中盤、バティスタがアルドを金網に押し込むが、テイクダウンは奪えない。終盤、離れると、再びパンチの攻防に。途中にバティスタが押し込む展開が繰り返されるが、バティスタは倒せず終わる。記者採点はアルド。
3R、バティスタは中盤から押し込むが、膠着が続き、終盤に入るとブレイクがかかる。だがすぐにバティスタは押し込む状態に戻す。一旦離れても、バティスタはまたも押し込む。最後は離れたが両者打撃を当てられず終わる。記者採点は押し込み続けて主導権をキープしたバティスタ。合計28-29でバティスタ。ジャッジは1者のみ3Rにアルドにつけたため割れたが、2者がバティスタを支持し、バティスタが判定勝ちした。
第9試合 ミドル級 5分3R
○ロマン・ドリーゼ(10位)
×ケビン・ホランド(15位)
1R 5’00” TKO (コーナーストップ)
1R、ドリーゼが中盤以降トップを取り、終盤、ホランドが下から腕十字を仕掛けようとしたが、ドリーゼが逃げようとする動きに合わせて体をひねった際、ホランドは脇腹を負傷する。ドリーゼはすぐさま上からパウンドを連打して追い詰める。ラウンド終了後、痛がるホランドを見たセコンドが試合を止め、ドリーゼの勝利となった。

SALT LAKE CITY, UTAH – OCTOBER 05: Roman Dolidze of Georgia reacts after his victory against Kevin Holland in a middleweight fight during the UFC 307 event at Delta Center on October 05, 2024 in Salt Lake City, Utah. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
元PFL強豪ケイラ・ハリソンがUFC 2連勝
第8試合 女子バンタム級 5分3R
×ケトレン・ヴィエラ(2位)
○ケイラ・ハリソン(3位)
判定0-3 (27-30/27-30/28-29)
ハリソンは柔道の78kg級でロンドン五輪・リオ五輪で金メダルを獲得し、18年にPFLでMMAデビュー。ライト級リーグを2度制した。4月のUFC 300でUFCに初参戦し、元バンタム級王者で当時5位のホリー・ホルムに2R裸絞めで一本勝ちし、今回2戦目を迎えた。
1R、ハリソンがサウスポーで構え、左ハイのフェイントから両足タックルを仕掛け、金網に押し込むが、なかなか倒せず膠着する。終盤、離れると、ハリソンが左フックを当ててから、すぐに片足タックルを仕掛け、今度はそのままテイクダウンに成功する。ハリソンはハーフガードで押さえ、マウント、バックマウントでコントロールし、肘とパウンドを当てて追い詰める。記者採点はハリソン。

SALT LAKE CITY, UTAH – OCTOBER 05: (R-L) Kayla Harrison battles Ketlen Vieira of Brazil in a bantamweight fight during the UFC 307 event at Delta Center on October 05, 2024 in Salt Lake City, Utah. (Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC)
2R、スタンドで見合う状態が続き、中盤過ぎにハリソンが金網に押し込む。終盤、ヴィエラは突き放して右肘を2度当てる、左肘を返す。ハリソンは眉間を切られ腫れる。残り20秒でブレイクがかかり、打撃戦の後に終了する。記者採点はヴィエラ。
3Rも見合う状態の後、中盤過ぎにハリソンがタックルで倒して、金網際で上になる。終盤もハリソンはトプで押さえ続け、右肘を当てる。残り1分、ハリソンはハーフ、マウントを行き来しつつ、パウンドを当てて優位で終える。記者採点はハリソン。合計28-29でハリソン。ジャッジ3者もハリソンを支持し、ハリソンが判定勝ちすると、勝利者インタビューでは王座挑戦を希望した。なお、今大会のコーメインではペーニャが新王者となっている。
第7試合 ウェルター級 5分3R
×スティーブン・トンプソン(9位)
○ホアキン・バックリー(11位)
3R 2’17” KO (右フック)
第6試合 女子ストロー級 5分3R
×マリナ・ロドリゲス(6位)
○ヤスミン・ルシンド(14位)
判定1-2 (39-28/28-29/28-29)
第5試合 ライト級 5分3R
×オースティン・ハバード
○アレクサンダー・ヘルナンデス
判定1-2 (30-27/28-29/28-29)
第4試合 ミドル級 5分3R
○セザル・アウメイダ
×イーホル・ポティエリア
判定3-0 (30–27/30–27/30–27)
第3試合 ライトヘビー級 5分3R
○ライアン・スパン
×オヴィンス・サン・プルー
1R 1’35” フロントチョーク
第2試合 女子ストロー級 5分3R
×カーラ・エスパルザ
○テシア・ペニントン
判定0-3 (28-29/28-29/27-30)
第1試合 ウェルター級 5分3R
○コート・マクギー
×ティム・ミーンズ
1R 3’19” 裸絞め