パンクラス 12.24 横浜武道館(レポ/後半):伊藤盛一郎、暫定フライ級王座獲得。住村竜市朗がウェルター級王者に。透暉鷹、河村泰博に1R逆転一本勝ちしバンタム級王者に。沙弥子とSARAMIが初代女子アトム級王者決定戦進出
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PANCRASE 340 ~PANCRASE 30周年記念大会 Vol.2~
2023年12月24日(日)神奈川・横浜武道館
レポート:井原芳徳
写真:KEISUKE TAKAZAWA(FIGHT GRAPH)(リングサイド)、井原芳徳(スタンド)
※第8試合までの前半戦は別記事に掲載します。
住村竜市朗が林源平に完勝しウェルター級王者に
第14試合 メインイベント パンクラス・ウェルター級チャンピオンシップ 5分5R
×林 源平(和術慧舟會IggyHandsGym/王者)※初防衛戦
○住村竜市朗(TEAM ONE/2位、元DEEP王者)
5R 2’09” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
※住村が王者に
パンクラスは1993年に旗揚げし、2023年の今年は30周年を記念した大会が2度行われた。9月の立川ステージガーデン大会がVol.1で、今年を締めくくる横浜武道館大会がVol.2となる。3階級のチャンピオンシップが目玉となり、メインイベントにはウェルター級の王座戦が置かれた。
林は34歳。13年のデビュー時からパンクラスに上がり続け、20年のライト級暫定王者決定戦では雑賀 ヤン坊 達也に1R KO負け。以降も葛西和希と金田一孝介に連敗したが、昨年9月からウェルター級に戻し、中村勇太、押忍マン洸太に連勝。菊入正行がベラトールに継続参戦するために返上したウェルター級のベルトを懸け、今年6月に王者決定戦が行われ、林は村山暁洋から5Rともポイントを取り判定勝ち。ベルトを巻くと「このベルトを目指して10年続けたので滅茶苦茶うれしいです」と喜んでいた。
初防衛戦の相手・住村は37歳。09年に修斗でプロデビューし、12年からDEEPに主戦場を移し、17年にDEEPウェルター級王者に。佐藤洋一郎、渡辺悠太相手に防衛し、並行してRIZINにも出場した。昨年5月に怪我のため王座を返上し、8月の再起戦では鈴木槙吾に1R TKO負け。今年2月には嶋田伊吹に判定勝ちした。7月に久々にパンクラスに出場すると草・MAXに判定勝ち。9月には新鋭・藤田大の寝技地獄を切り抜け、2R終了間際にパウンドアウトし、今回の王座挑戦につなげた。
試合は住村のワンサイドゲームに。住村のセコンドには青木真也、松嶋こよみがつく。1R、開始すぐから住村が前に出て林に組み付いて押し込み、テイクダウンを狙い続けて主導権を握る。住村は時折膝を当て、倒せないものの、レフェリーはブレイクをかけず終了する。住村がポイントを先取する。
2R、林の右ローのタイミングで、住村はタックルを仕掛けて倒し、ハーフガードで押さえる。林に立たれも、住村はオンブになり、主導権を維持する。終盤、住村はオンブから降り、金網に押し込む。その後離れると、住村が左ミドルを当てるが、林は反撃できず終わる。このラウンドも住村がポイントを取る。
3R、住村は序盤のタックルこそ対処されるが、中盤にタックルで倒し、またもハーフで押さえ主導権を握る。だがすぐスタンドに戻り、打撃勝負に戻る。ローの応酬で、林の蹴りがローブローとなり一時中断する。再開後、住村がタックルで倒してトップで押さえ、少しパウンドを落とす。最後はスタンドに戻るが、すぐ時間切れに。このラウンドも住村がポイントを取る。
4R、住村はこのラウンドもあっさり倒して上になり、トップで押さえる。立たれてもすぐ倒し、サイドを奪う。最後はマウントを奪い、パウンドを当てて圧倒する。
5R、ここまでの全ラウンドのポイントを取った住村が、このラウンドも序盤からテイクダウンを奪うと、今度はすぐマウントを奪う。住村は肩固めを狙ってから、パウンドに切り替える。住村は一旦バックマウントになるが、マウントに戻ると、パウンドを連打し、最後はレフェリーがストップした。
DEEPとの2団体制覇を達成し、パンクラスのベルトを巻いた住村は「苦しい時もありましたが、新しい目標ができ、一つ形になりました。何か目標あれば、いいこともあると思いました。応援ありがとうございました」と勝利の喜びを噛みしめるように語った。
伊藤盛一郎、有川直毅を2Rで仕留め暫定フライ級王者に
第13試合 コーメイン パンクラス・フライ級暫定チャンピオンシップ(王者決定戦) 5分5R
○伊藤盛一郎(リバーサルジム横浜グランドスラム/1位、元ZSTフライ級王者)
×有川直毅(K-PLACE/3位)
2R 3’05” 裸絞め
※伊藤が暫定王者に
フライ級では昨年12月大会で鶴屋怜が猿飛流に勝利し王者となった。鶴屋はRoad To UFCトーナメントに参戦中で、防衛の目途が立たないことから、暫定王者決定戦が組まれた。
伊藤は30歳。長年ZSTの主力選手として活躍し、RIZINにも並行して参戦。20年8月のRIZINでは神龍誠に敗れたが、21年10月のRIZINで橋本薫汰に2R裸絞めで勝利した。昨年12月にパンクラスに初参戦すると、フライ級2位の上田将竜に2R裸絞めで一本勝ち。今年6月大会では4位の秋葉太樹も1R裸絞めで仕留め「僕は今年中にベルトにチャレンジできるように頑張ります」と話していた。
フライ級ランキングは1位の伊藤に続く猿飛流が2位。3位の有川は30歳。昨年4月に上田将年(将竜)に判定負けし、9月のGLADIATORではNavEに判定負け。今年4月のパンクラスではコルトン・キエルバサと対戦し、2R TKO勝ちしている。
試合は下馬評通り伊藤が有川を圧倒する内容に。1R、伊藤がスタンドの打撃戦で優位に立ち、中盤に右フックを当てて有川をひるませる。その後もパンチで主導権を維持し、終盤にはテイクダウンを奪うと、最後は腕十字を狙って圧倒する。伊藤がポイントを先取する。
2R、伊藤が序盤に右フックを連打してから、倒して金網際で上で押さえる。中盤にはバックを奪うと、最後は裸絞めを極めてタップを奪った。
マイクを持った伊藤は「メリーパンクラス。ずっと第3代ZSTフライ級王者と言い続けたんですけど、やっと暫定フライ級・キング・オブ・パンクラスと言えました。ありがとうございます。連敗したり厳しい時もあったんですけど、後輩や仲間、家族の支えがあって、やっとここまで戻って来ることができました。ありがとうございます。前半のうちの選手2人(Ryoと沙弥子)がいい試合をして、プレッシャーがかかったんですけど、勝てて良かったです。でもまだ暫定なんで、一層気を引き締めて、練習頑張って、ちゃんとパンクラスのフライ級チャンピオンと胸張って言えるよう頑張ります」とアピールした。最後はK-1女子アトム級王者の菅原美優もケージに入り一緒に記念撮影した。
透暉鷹、河村泰博に1R逆転一本勝ちしバンタム級王者に
第12試合 パンクラス第5代バンタム級チャンピオンシップ(王者決定戦) 5分5R
×河村泰博(和術慧舟會AKZA/1位、Fighting NEXUS王者)
○透暉鷹[ときたか](ISHITSUNA MMA/2位、元パンクラス・フェザー級王者)
1R 4’45” 肩固め
※透暉鷹が王者に
バンタム級では4月に王者の中島太一が暫定王者の田嶋椋に判定勝ちし初防衛を果たしたが、中島が王座を返上し、王者決定戦が行われる。
河村は32歳。15年にパンクラスでプロデビューし、20年まで15戦近く出場した後、21年以降はNexusを主戦場とし王座を獲得。須藤拓真と森永ユキトにいずれもダースチョークで一本勝ちし2度防衛した。昨年11月のRIZIN LANDMARKではアラン・ヒロ・ヤマニハに判定負け。9月大会で3年ぶりにパンクラスに上がると、バンタム級1位の井村塁をわずか56秒、ダースチョークで仕留め、「僕を大将にして、Nexusとパンクラス、対抗戦やりません?俺、1位倒しちゃってるし、悔しくないの?パンクラスの選手たち。俺らと対抗戦やろうぜ」とアピールしていた。
透暉鷹は27歳。昨年7月、フェザー級暫定王者決定戦で亀井晨佑に4R裸絞めで一本勝ち。昨年12月のノンタイトル戦ではパン・ジェヒョク相手に苦戦も判定2-1で勝利した。今年に入り両肘の手術をし、ISAOの返上で正規王者となっていたが、バンタム級に転向するため8月に王座を返上。バンタム級初戦で王者決定戦が用意された。
1R、透暉鷹がテイクダウンに成功し、サイドに回るが、河村は両足で透暉鷹の頭を挟み、ヘッドシザース(洗濯ばさみ)を仕掛ける。河村はその状態で足関節技のチャンスもうかがう。透暉鷹はピンチに陥り、対処してヘッドシザースから脱出したものの、今度は河村は下から足関を再びセットして狙い、サブミッションでの攻撃を切らさない。だがこれも透暉鷹が防御して極めさせず対処する。
すると終盤、透暉鷹は上から肩固めを極める。河村はしばらく耐えたが脱出できず、最後は絞め落とされたところで梅田レフェリーがストップした。
バンタム級のチャンピオンベルトを巻き、マイクを持った透暉鷹は「河村選手に会見で色々言われましたが、パンクラスを代表して一言、言わせてください。パンクラスなめんな。でも河村選手、いい選手で、格闘技を盛り上げるために言ってくれたので、ありがとうございます。僕は試合まで1年開いて、手術して、階級変更もあって、色々重なったんですけど、スポンサーの方や練習仲間に本当に感謝しています。勝てて良かったです。バンタム級に変えて初戦だったんですけど、世界で活躍できる選手になるんで、これからもついて来てください」とアピールした。
雑賀 ヤン坊 達也、粕谷優介に判定勝ちしアキラのライト級王座挑戦権獲得
第11試合 パンクラス・ライト級王者挑戦者決定戦 5分3R
×粕谷優介(CROWN/1位)
○雑賀 ヤン坊 達也(DOBUITA/4位)
判定0-3 (出口27-30/荒牧27-30/松井27-30)
ライト級では4月にアキラが王者となっており、その挑戦者を決める試合が行われる。
粕谷は34歳。19年9月のライト級暫定王者決定戦でサドゥロエフ・ソリホンに敗れたが、昨年4月以降は3連勝中で、平信一、岡野裕城に裸絞めで一本勝ちし、4月の葛西和希戦でも寝技で追い詰め判定勝ちしている。
雑賀は20年9月に林源平を1R KOしライト級暫定王者となるが、21年12月の久米鷹介との王座統一戦では一本負け。昨年4月にRIZINに初参戦し江藤公洋に2R TKO負け。その後はパンクラスで松岡嵩志とシュウジ・ヤマウチに1R TKO勝ちしている。今年4月のRIZINにはジョニー・ケースの負傷により急きょ出場し、アリ・アブドゥルカリコフに1R KO負けしている。雑賀は9勝全てが1RKO決着と打撃の強さが持ち味だ。
1R、序盤、粕谷がテイクダウンに失敗し、雑賀に上になられる場面もあるが、すぐ粕谷は立つ。粕谷は雑賀を長時間金網に押し込が倒せず、残り1分を切り、和田レフェリーが膠着ブレイクをかける。すると雑賀は粕谷を組み潰し上になり、立っても右アッパーを当て、好印象で終える。
2R、粕谷はしつこくタックルを繰り返し、今度は序盤から倒すことに成功し、金網際で押さえ続ける。雑賀は立っても倒され、劣勢が続いたが、残り1分を切って脱出すると、雑賀が右ストレートの連打で粕谷を追い詰め、最後はがぶった状態からギロチンを狙って優位を印象付ける。
3R、粕谷のタックルを雑賀は潰し、じっくり動かして中盤過ぎには上で押さえるように。雑賀も攻めあぐねるが、最後はパウンドを連打して終える。ジャッジ3者とも27-30のフルマークで雑賀を支持し、雑賀が判定勝ちでアキラの王座挑戦権を獲得した。
初代女子アトム級王者決定トーナメントは沙弥子とSARAMIが決勝進出
第10試合 パンクラス初代女子アトム級(47.6kg)王者決定トーナメント一回戦 5分3R
○沙弥子(リバーサルジム横浜グランドスラム/2位)
×V.V Mei[ヴィーヴィーメイ](フリー/元DEEP JEWELSアトム級王者、元VALKYRIEフェザー級(52kg)王者)
判定2-1 (大藪28-29/山崎29-28/梅木28-29)
パンクラス初代女子アトム級王者を決める4選手参加のトーナメントの一回戦が今大会で行われた。決勝は来年の大会で行われる。
Meiは40歳、37戦21勝(2KO/9一本)15敗1分。07年にプロデビューし、10年に辻結花に一本勝ちしVALKYRIE(ヴァルキリー)の王者となり、15年には黒部三奈、SARAMIらを破りDEEP JEWELSで王者となる。16年からはONEに上がり、アンジェラ・リーと2度王座を争い敗れたが、ジェニー・ファンには2度勝っている。18~19年は4連勝したが、20年以降は3連敗中だった。4月のRIZIN代々木大会でRIZINに初参戦したが、浅倉カンナに判定負けしている。
Meiは10年以上前にパンクラスに2度出場し、WINDY智美とベティコに勝利している。11年4月のディファ有明でのWINDY戦は、VALKYRIEの王者としてパンクラス女子の主力・WINDYと戦った試合で、パンクラス史上初の女子のメインイベントだった。今回のパンクラス初代女子アトム級王者決定トーナメント開催を聞いたMeiは参戦を志願し、10月の会見では「負けたら引退」と表明している。
対する沙弥子は33歳。GRACHANを主戦場とした後、19年に1度パンクラスに上がり、3年のブランクを経て昨年復帰し、その後は3戦2勝1敗。ファンには敗れたが、原田よき、MIYUには勝利している。
1R、スタンドの打撃戦でお互いパンチを当て、中盤からMeiが押し込む展開になる。終盤、離れると、Meiがタックルを仕掛ける。これは切られたが、すぐにMeiは沙弥子のバックに回り込み、そのままグラウンドに引き込み、バックマウントから裸絞めを狙い続ける。最後はMeiがパウンドを当てるが、沙弥子も背後のMeiにパウンドを返す。記者採点はMei。ジャッジは割れ、2者がMei、1者が沙弥子を支持する。
2R、沙弥子が右ローを放つと、Meiはまたもタックルを仕掛けてから、バックに回り込んでグラウンドに持ち込み、バックマウントを奪う。Meiはバックマウントをキープし、裸絞めやフェイスロックを狙い、時折パウンドを当てる。だが沙弥子も1R同様、背後のMeiにパウンドを当て続け、ヒット数ではMeiを上回る。最後、沙弥子が向き直して上になると、パウンドを落とすが、Meiも腕十字を狙って終える。記者採点は迷ったが沙弥子。ジャッジは割れ、2者がMei、1者が沙弥子を支持する。
3R、スタンドの打撃戦が続き、お互いパンチを当て、若干沙弥子が優位だが、ほぼ互角の状態が続く。終盤、沙弥子が左テンカオを放つと、Meiはタックルを合わせて倒して上になることに成功する。その先は乏しくスタンドに戻り、五分の打撃戦が続く。記者採点は迷ったが沙弥子。合計28-29で沙弥子。僅差のラウンドが続いたためジャッジは割れ、沙弥子が2票を獲得し判定勝ちした。
第9試合 パンクラス初代女子アトム級(47.6kg)王者決定トーナメント一回戦 5分3R
×ジェニー・ファン(台湾/AACC/1位)
○SARAMI(パンクラスイズム横浜/修斗女子スーパーアトム級(50kg)世界4位・元王者)
判定0-3 (27-30/27-30/27-30)
ファンは32歳。デビュー当時から20年までONEに上がり、V.V.Meiには2度敗れている。現在日本のAACCで練習し、昨年12月のパンクラスでは沙弥子に一本勝ちし、今年5月の修斗の女子大会COLORSでも古賀愛蘭に一本勝ち。名門で練習を積み着々と実力を上げている。
SARAMIは33歳、MMA戦績31戦17勝(2KO/6一本)14敗。12年にMMAデビューし、DEEP JEWELSでは富松恵美、前澤智、黒部三奈らとタイトル戦線でしのぎを削る。ONEのトライアウト出場を経て、20年からは修斗を主戦場とし、21年11月には黒部に勝利し修斗女子世界スーパーアトム級王者に。昨年はRIZINで浅倉カンナに敗れ、ラーラ・フォントーラに判定勝ち。今年5月の修斗の女子大会COLORSではAACCの新鋭・渡辺彩華に2R KO負けし王座陥落した。今回パンクラスに初出場し、階級も下げて2本目のベルトを狙う。一回戦では前回戦った渡辺と同じAACC所属のファンと戦った。
1R、パンチを振るうファンに対し、SARAMIがタックルを仕掛けて倒し、金網際で押さえる。ファンに一旦立たれても、SARAMIは足を掛けて倒し、再び上になる。終盤、SARAMIはハーフで押さえ続ける。
2RもSARAMIがハーフで押さえ、中盤にはパスガードして上四方に回り腕十字も狙う。終盤には立たれるが、SARAMIが押し込んで、最後は離れて終える。
3R、ここまで2Rともポイントを取ったSARAMIが、ファンのパンチのタイミングでタックルを仕掛けて倒す。中盤過ぎからはスタンド勝負が続き、ファンが前に出続けるが、ステップがぎこちなく詰め切れず、SARAMIが回って距離を取りながら、右ストレートや左前蹴りを当て続けて反撃を許さず判定勝ちした。