ONE Championship:シンガポールでの敗戦から半月、青木真也インタビュー「逃げたり、守ったりしようとしたら、『青木真也』という名前に価値がなくなってしまうんです」
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3月31日に両国国技館で行なわれたONE Championship初の日本大会「ONE: A NEW ERA」でエドゥアルド・フォラヤンに圧勝し、ライト級王座を奪還した青木真也。その試合後の記者会見で、次期対戦相手として、クリスチャン・リーを指名した。20歳の若手選手を35歳の王者が挑戦者に指名するという事態を、各メディアは驚きを持って伝えた。そして、5月17日の「ONE: ENTER THE DRAGON」シンガポール大会でタイトルマッチが実現。1Rは青木が寝技でリーを追い詰めたが、2Rになるとリーが高速の打撃で王者をマットに沈めた。この試合は、どの瞬間に決着がついても不思議ではない、緊張感に溢れた、総合格闘技の魅力が全て詰まったような試合だった。あの試合から10日が経過し、故郷の静岡で心と身体を休めていた青木は東京に戻ってきた。再び闘いの道を歩き始めた青木真也に話を聞いた。(記事提供:ONE Championship)
――まず、日本のファンが試合を観て率直に感じたことを聞かせてください。あの試合は、レフリーが試合を止めるのが早かったのではないですか。
青木「そういう声もあるみたいだけど、選手がレフリングについてどうこう言うべきではないと思います。競技そのものを否定することになるから。クリスチャン・リーが強かった。それだけのことです」
――1Rの腕ひしぎ十字固めはかなり惜しいところまで行きました。
青木「関節技に惜しいって言うのは無いんですよね。0か100しかない。どんな形になっても、極まらなければ0なんです」
――それにしても、青木真也のサブミッションを跳ね除けたリー選手は驚異的だったと思います。
青木「彼が勝利を渇望していたということだと思います。彼が抜け出したのは、技術以上にそういった精神力が強かったのだと思います」
潔く自分の負けを認める一方で、青木真也は相手を必要以上に持ち上げることもない。選手として常に哲学を持ち、同時に冷静な視点を失わない彼らしい考え方がここにある。
――試合後は、青木真也選手が引退するのではと不安視する声もありました。
青木「引退はしません。それに、今後イージーな試合をしていくつもりもありません。常に、強い相手と闘いたい」
――例えば、ボクシングなどではジム側が挑戦者を選びますよね。なるべく王座を守り続けられる相手を選ぶことがあると思います。ある意味で、そこから試合が始まっているという考
え方もできると思いますが、それでもリーを選んだ理由は何ですか。
青木「端的に言えば、ダサい選手になりたくないからですね。それに、僕はベルトに執着や興味があまり無いんです。僕が若い頃は、どんなに有望な若手選手がいても、上の方の選手は試合をしなかった。そういうのをダサいと思っていたし、そうはなりたくない。それに、ベル
トを死守するよりも、強い相手と闘いたい。守ったらダメだと思っています」
――試合後は、敗れて落ち込んだ時期もあったと聞きました。
青木「負けたら選手としてはやはり落ち込みます。一方で、良い試合をファンに見せることができたという満足感もプロとてあるわけです。僕は色々な視点から物事を見るようにしています。悔しい気持ちはあるけど、リーと闘ってよかったと思っています」
――これまで積み重ねてきた「青木真也」という価値がありますが、試合後に更新された青木選手のSNSでは、それさえも失ったように感じました。
青木「実績など過去にすがって生きていくようなことはしたくないんですよね。だから、いまこの瞬間が全て。でも、自分の名前の価値やブランドというものは大切にしていますよ。ただ、それを守るためには、強い相手から逃げてはいけない。逃げたり、守ったりしようとしたら、『青木真也』という名前に価値がなくなってしまうんです」
――困難な道を敢えて選ぶ原動力は何でしょうか。
青木「理想の自分になりたいからです。自分の理想とする生きる姿勢や闘う姿勢。そこに対して、誠実でありたい」
――かつての桜庭和志選手や、青木真也選手ご自身がそうだったように、格闘技団体には、それを背負うような選手がいて、時代の寵児が生まれるものです。私はクリスチャン・リー選手が、そういう存在になる可能性があると思いますが、彼には今後、どうあって欲しいですか。
青木「まだ20歳の選手なので、難しいことは考えず、天真爛漫に彼らしくやって欲しいと思っています。そして、自分の意思がどうであれ、時期やタイミングが来たら、リーがそういう存在になっているかもしれません。でも、今は彼のままで良いんです」
――最後に、青木選手の今後の展望を聞かせてください。
青木「とにかく、来た選手とやります。逃げることも、守ることもなく、強い相手と闘い続けるだけ。もちろん、ファンが対戦を望んで、プロモーターがそういう機会を用意してくれるような試合があれば、プロとして受けるかもしれません。でも、選手としては、常に強い選手
とやりたいですね」
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