ROAD TO UFC 8.26 シンガポール(レポ):鶴屋怜、打撃のピンチ乗り越え判定勝ち「決勝は一本で」。原口伸、代役選手を組み封じ判定勝ち「契約したら面白い戦い方をします」。上久保周哉&神田コウヤは判定負け
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ROAD TO UFC(RTU)シーズン2 エピソード5・6(準決勝)
2023年8月27日(日)シンガポール・カラン:シンガポール・インドア・スタジアム
レポート:井原芳徳
UFCとの契約を目指すアジアの選手たちによる4階級のトーナメント「ROAD TO UFC Season 2」の一回戦は上海で5月27日、28日に行われ、日本から参加した7選手のうち、フライ級の鶴屋怜、バンタム級の上久保周哉、フェザー級の神田コウヤ、ライト級の原口伸の4選手が勝利し、バンタム級の野瀬翔平、フェザー級のSASUKE(佐須啓祐)、ライト級の丸山数馬が敗れた。8月26日のUFCファイトナイト・シンガポール大会の翌日の同会場で準決勝が行われた。決勝は10~12月を予定している。
フライ級・鶴屋怜、打撃のピンチ乗り越え判定勝ち「決勝は一本で」
フライ級 5分3R
○鶴屋 怜(パラエストラ松戸/パンクラス・フライ級王者)
×マーク・クリマコ(米国)
判定3-0 (30–27/29–28/29–27)
鶴屋は松根良太、扇久保博正、浅倉カンナ、岡田遼、内藤のび太ら数多くのトップ選手を育てた鶴屋浩・パラエストラ千葉ネットワーク代表の次男で02年6月22日生まれの21歳。小学生時代からレスリングと柔術の全国大会で度々優勝し、レスリングでは高校2年時にジュニアオリンピック2位、世界大会出場を果たし、3年になってからは全国2位に入賞した。
長年MMAも並行して練習し、21年にMMAデビュー。DEEPで3連勝した後、昨年4月にパンクラスに初参戦し2連勝後、12月にフライ級王者・猿飛流を下しベルトを巻くと、「もっともっと強くなって、これからUFCにパンクラス代表として挑戦していきたい」とアピールしていた。
5月のRTU一回戦ではロナル・シアハーン(インドネシア)を2R Vクロスアームロックで撃破。MMA戦績は7戦7勝(3KO/4一本)。今回のRTU日本勢で最も優勝の可能性の高い選手といえよう。準決勝ではフィリピン系米国人でアメリカントップチームで練習するマーク・クリマコと対戦した。
1R、両者サウスポーで構え、開始すぐから鶴屋がタックルで倒し、金網際でバックコントロールし、早くも仕留めにかかる。中盤、鶴屋はバックからトップに移り、ハーフからパウンドを落とす。終盤、鶴屋は足関節技を狙うが、クリマコは防御し、鶴屋はトップに戻る。最後は鶴屋がバックキープして終える。記者採点は10-8で鶴屋。ジャッジ1者も10-8とつける。
2R、鶴屋が左フックを当てると、クリマコは膝をつく。だがクリマコも左のカーフキックを返すと、鶴屋は少し足を引きずり気味になる。クリマコはさらに左ストレート、右ハイで鶴屋を脅かす。鶴屋はタックルを切られるが、右アッパーをお返しする。中盤、鶴屋は片足タックルから背後にしがみつきコントロールする。鶴屋が片足タックルで倒そうとすると、クリマコが潰して上になったが、すぐに鶴屋は脱出する。終盤、クリマコは変わらず左カーフ、ローを執拗に当て、右フック、左ストレートも絡め、打撃で優位に進める。記者採点はクリマコ。ジャッジは意外にも割れ、1者が鶴屋とつける。
3R、クリマコはワンツーからの左カーフを当てるが、鶴屋は序盤から片足タックルを仕掛け、首をつかんだクリマコを高く抱え上げて倒して上になる。場内からは拍手が起こる。中盤、クリマコは立つが、鶴屋は背後からしがみつき、そのまま倒してグラウンドに持ち込む。クリマコは向き直そうとするが、変わらず鶴屋はバックをキープし、執拗に裸絞めを狙う。終盤、立ったクリマコの足元に潜り込むが、失敗しスタンドに戻る。するとタックルに入ろうとした鶴屋の顔面に、クリマコの右ミドルの膝がヒットし、鶴屋はダウン気味に倒れる。クリマコは上になるが、鶴屋はダメージは小さい様子で、クリマコの腕をつかみながら引っ繰り返して上になる。すると鶴屋は横三角絞めを狙うが、極められずに終了する。記者採点は迷ったがクリマコ。合計28-28でイーブン。ジャッジ3者は鶴屋を支持し、鶴屋が決勝に駒を進めた。だが打撃に手こずり、寝技でも一本に至らず、課題のはっきり見えた試合だった。
勝利者インタビューで鶴屋は「一本で極めたかったんですけど、判定になって悔しいですね。力も強くて、なかなか一本も極められなかったんですけど、ここで攻め勝てたのは自分にとって成長できたかと思います。決勝は一本で勝ちます」と話した。決勝ではサウスポーのストライカー、ジーニウシュイエ(中国)と対戦する。
ライト級・原口伸、代役選手を組みで圧倒「契約したら面白い戦い方をします」
ライト級 5分3R
○原口 伸[しん](BRAVE/GRACHANライト級王者)
×パク・ジェヒョン(韓国)
判定3-0 (30–27/29–28/29–28)
原口伸はRIZINに参戦している原口央の弟で24歳。国士舘大学時代の19年、レスリングの天皇杯のフリー70kg級で優勝。昨年9月にMMAプロデビュー後は7戦6勝1無効試合の負け無し。昨年5月のGRACHANで植田豊に判定勝ちしGRACHANライト級暫定王者となると、山本琢也が8月に正規王座を返上し、原口が正規王者に。11月のグアムでの試合では韓国の選手にTKO勝ち。今年2月のGRACHANで元UFCファイターの小谷直之に1R TKO勝ちしてGRACHAN王座初防衛を果たした。
5月のRTU一回戦ではウィンドリ・パティリマ(インドネシア)を圧倒し2R TKO勝ち。だが準決勝で戦う予定だったバテボラティ・バハテボラ(中国)が前日計量で5ポンド(2.27kg)オーバーしたため失格となった。原口は試合を希望したことから、トーナメント以外の試合を予定していたジェヒョンが準決勝の相手となった。
1R、開始すぐから原口がタックルで倒し、立たれても押し込んでコントロールし続ける。倒して立たれるの繰り返しだが、原口が主導権を握り続ける。記者採点は原口。ジャッジ3者も原口。
2R、原口は変わらずジェヒョンを金網に押し込む。原口が倒そうとすると、ジェヒョンが背後に回り込むが、完全には取らせず、原口が対処して上から押さえる。立とうとしたジェヒョンが中腰で右肘を原口に連打する場面も。中盤過ぎに一度スタンドで離れたが、すぐに原口が押し込み、またも倒して上になる。原口はジェヒョンに立たれても倒す動きを繰り返し、時折右のパウンドを当てるが、押さえること主体で、パウンドを当てる場面は乏しい。記者採点は原口としたが、ジャッジは2者がジェヒョンにつけるのも統一ルールの採点基準ならありえる。
3R、原口は最初から倒し、サイドを取る場面も。これまで同様、金網際で押さえ、立たれても倒す展開を繰り返し、最後は押さえてパウンドを当て攻勢のまま終了する。記者採点は原口。ジャッジ3者も原口。記者採点合計30-27で原口。ジャッジ3者も原口を支持し、原口が勝利した。
原口は勝利者インタビューで「フィニッシュは狙っていたんですけど、これが俺の持ち味です。急きょ対戦相手が変わって、対策もクソも無かったんで。レスリングイコール俺のつもりでやっています」「勝ちに徹した戦い方で、契約したら面白い戦い方をします。Road Toは意地でも勝ちに行きます」と自身のスタイルをアピールした。原口は決勝で優勝候補と評されてきたロン・チュー(中国)と対戦する。原口は決勝に向けて「ストライキングとか危ない相手ですけど、ここまで来たらやるだけなんで。This tournament is mine.」と宣言した。
バンタム級・上久保周哉、打撃に苦しみ判定負け
バンタム級 5分3R
○シャオ・ロン(中国)
×上久保周哉(頂柔術)
判定2-0 (29–28/29–27/28–28)
上久保は30歳。14年にMMAデビューし、パンクラスやTTFでの試合を経て、18年から昨年22年1月までONEに上がり6戦全勝、2連続一本勝ちしていたが、タイトルとは縁が無かった。ONEとの契約が終わった後、UNRIVALED等のグラップリング大会に出場し続けた。
5月のRTU一回戦は約1年半ぶりのMMAの試合となり、バーエゴン・ジェライスー(中国)の打撃に苦しんだが得意の寝技で印象を残し、判定2-1ながらも勝利した。準決勝の相手・シャオ・ロンはジェライスー同様に中国のWLF(武林風)を主戦場にしてきた選手で、一回戦では野瀬翔平に判定2-1で勝利している。
1R、上久保が序盤からタックルで倒し、金網際で押さえる。シャオはその先の攻めを許さず、スタンドに戻すが、上久保は右フックを当ててから、またもタックルを仕掛け、足を掛けて倒す。上久保はハーフ、マウントとじわじわと動き、立ったシャオのバックに取りオンブとなり、グラウンドに戻ってもバックキープする。最後はツイスターのような形となり終える。記者採点は上久保。ジャッジ3者も上久保につける。
2R、シャオは左右のフックを当てるが、上久保も右フックをお返しする。金網際での押し合いが続き、上久保は時折テイクダウンを狙うが、シャオは倒れない。終盤、離れると、シャオが左右のフックをヒットし、やや好印象に。上久保もパンチと膝を返すがヒット数で劣る。上久保はまたもタックルを仕掛けるが、シャオは押し返し、最後は離れてパンチを当て終える。記者採点は僅差だがシャオ。ジャッジは2者がシャオ、1者が上久保につける
3R、打撃戦、組みの攻防が繰り返されるが、上久保は少し疲れてきた様子で、2Rまでのパワーが無く、逆にシャオのパンチのヒットが目立つように。中盤、シャオは上久保を金網に押し込んで右肘もヒットする。シャオも疲れているが、しっかり膝やパンチを細かく当て続ける。終盤、上久保はサンドバッグ状態でパンチをもらい続け、レフェリーもストップのタイミングをうかがうような状態に。最後は上久保がタックルで押し込むが、シャオが膝立ちで耐えて終える。記者採点はシャオ。ジャッジ3者もシャオで、2者が10-8でシャオにつける。記者採点合計は29-28でシャオ。ジャッジ1者は28-28のイーブンとなったが、2者はシャオを支持し、シャオが判定勝ちした。シャオは決勝でイ・チャンホ(韓国)と対戦する。
フェザー級・神田コウヤ、打撃戦を打開できず判定負け
フェザー級 5分3R
○リー・カイウェン(中国)
×神田コウヤ(パラエストラ柏/DEEPフェザー級暫定王者)
判定3-0 (30–27/29–28/29–28)
神田は大東文化大学レスリング部出身で天皇杯ベスト8に入った実績があり、18年6月にDEEPでMMAデビューし戦績15戦11勝(6KO)4敗。現在27歳。21年12月に牛久絢太郎のDEEPフェザー級王座に挑戦し判定負け。以降は3連勝で、5月に青井人を肘でダウンさせてからのパウンドで仕留めると、11月には中村大介に判定勝ちし、今年2月には五明宏人に判定勝ちしDEEPフェザー級暫定王者となった。
5月のRTU一回戦では中国のJCKで6連勝中だったイーブーゲラに判定勝ちした。準決勝の相手・カイウェンは14年から21年までONEに上がり続けていた選手で、今回のRTU一回戦でルー・カイ(中国)をわずか71秒で粉砕した。反対ブロックではSASUKEを粉砕したキム・サンウォン(韓国)と、昨年RTUでSASUKEと松嶋を下したイー・ジャー(中国)が対戦し、4階級で最激戦区と言われている。
1R、両者サウスポーで構え、開始すぐから神田がタックルで倒すが、すぐにカイウェンは立ち、押し込みながら右アッパーを当てて離れる。中盤の打撃戦でカイウェンは右フックを的確に当てる。神田は首相撲から膝蹴りをお返し。終盤、カイウェンがプレッシャーをかけ、神田が回る状況が続き、お互い攻撃が減るが、神田は消極的と評価されかねない動きで、残り10秒にはカイウェンが半身で棒立ちになり、神田を挑発して観客を沸かせる。記者採点はカイウェン。
2R、カイウェンがプレッシャーをかけ、神田が回る構図が変わらず続く。カイウェンは左ロー、右フックをヒットする場面もあるが、ひたすら距離を取って回る神田を捕まえられない。終盤、レフェリーは両者に積極的に戦うよう注意する。それでも神田は回り続けるが、スイッチを織り交ぜ、随所で左右のミドルを当てるようになるが、与えたダメージは小さい。記者採点は僅差だが積極性で勝ったカイウェン。ジャッジは割れ、2者が神田につける。
3R、カイウェンはプレッシャーを強め、左右のフックのヒットを増やす。だがまたお見合いに戻ると、レフェリーは両者に攻撃を促す。神田はアウトボクシングを徹底するが、なかなか攻撃が出せない。神田はタックルを仕掛け、失敗すると離れ際に右肘を当てるが、当たりは浅い。終盤、場内からはブーイングが飛ぶように。神田がタックルを仕掛けるが、カイウェンは対処し、逆に足を掛けて神田を倒しかけるが、神田は片手をマットにつけてからスタンドに戻す。神田は左テンカオを当てるが、最後も回って距離を取って終える。記者採点はカイウェン。ジャッジ3者もカイウェン。合計30-27でカイウェン。ジャッジ3者も積極性で勝ったカイウェンを支持した。
なお反対ブロックではイー・ジャーがキム・サンウォンに判定勝ちしており、決勝は中国人対決となる。