シュートボクシング 6.25 後楽園ホール(レポ):海人、サモ・ぺティに大差の判定勝ちでSB・RISE・KNOCK OUTの三冠達成「次は世界に行って世界一に」「今年中に向こうでGLORYのベルトを取りたい」。山田ツインズがタイ勢を1R KO
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SHOOT BOXING 2023 act.3
2023年6月25日(日)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
海人、サモ・ぺティに大差の判定勝ちでSB世界スーパーウェルター級王者に「次は世界に行って世界一に」
第10試合 シュートボクシング世界スーパーウェルター級(70kg)王座決定戦 3分5R(無制限延長R)
○海人(TEAM F.O.D/SB日本同級1位・元同日本スーパーライト級(65kg)王者・S-cup 65kgトーナメント2018優勝、RISEミドル級(70kg)王者、KNOCK OUT-BLACKスーパーウェルター級(70kg)王者)
×サモ・ペティ(スロベニア/シムソンジム/FFC 70kg級&77kg級王者)
判定3-0 (若林50-46/津山50-45/大村50-45)
※海人が王者に
アンディ・サワーが返上したシュートボクシング(SB)世界スーパーウェルター級王座を懸け、海人とサモ・ペティが10カ月ぶりに再戦した。
ペティは14~15年に日菜太・城戸康裕ら当時のトップ勢に勝った実績がある選手で現在31歳。海人は昨年6月のTHE MATCHの野杁正明戦の激闘から2か月後の8月のRISE大阪大会でペティと対戦している。海人がカーフキック、三日月蹴りでペティを苦しめたが、2R終盤からペティがパンチを当てて挽回し、延長に突入すると、右のインロー、ボディ、ストレートを当て、判定3-0で勝利した。だがペティも右フックを強打したことから、ペティが勝ったと評する声や、再戦を望む声も少なくなかった。
海人は3月26日のRISEでイ・ソンヒョンに5R判定勝ちし、RISEミドル級(70kg)王座を獲得して以来の試合。4月30日のSB後楽園大会でこのSB世界王座戦を行う予定だったが、海人がソンヒョン戦で左足の指を骨折したため、SB協会とドクターの判断で延期となった。とはいえ足の指の骨折が無かったとしても、ソンヒョンと激闘を繰り広げてから1か月間隔でのペティとの再戦では、もしペティが勝ったとしても「海人の試合間隔が短すぎたのでは」という声が上がった可能性が高く、文句なしの形で完全決着をつけるなら、3か月が妥当な試合間隔といえよう。
1R、海人が終始プレッシャーをかけ、右のロー、カーフをヒットする。ペティは左ジャブ、左ミドル、右ボディ等をお返しし続ける。終盤、海人が左ボディと右ストレートのコンビネーションを決めると、ペティはクリンチに持ち込む。記者採点はイーブン。ジャッジは1者が海人につけ2者はイーブン。
2R、海人が右カーフを当て続けていると、ペティは足が流れクリンチが増える。海人は左ボディや顔面狙いの右前蹴りもヒットする。ペティは右ストレートを当てる場面もあるが苦しそうだ。記者採点もジャッジ3者も海人。
3R、海人は変わらず執拗に右のカーフを当てる。ペティはクリンチを繰り返し、レスリング式のタックルで倒す場面もあり、和田レフェリーが注意する。終盤、海人がパンチをもらう場面もあるが、右ローを当て続け苦しめる。記者採点は海人。ジャッジ2名はイーブンで1者は海人につける。
4R、ペティは胴や足へのタックルとテイクダウンを繰り返し、イエローカードをもらい、中盤にはレッドカードをもらい減点1となる。海人は組もうとするペティのバッティングをもらう場面も。海人が攻勢だが、攻撃が寸断され倒しきれない。記者採点は海人。
5R、海人は右カーフを当てつつ、左ボディと顔面へのフックの連打も決め、ペティをぐらつかせる。ペティは右ストレートやフックを返す場面もあるが、流れは変わらず、相変わらずタックルが多く、またもレッドカードをもらい減点1となる。記者採点は海人。合計は2点減点も合わせ50-44で海人。ジャッジ3者も4~5点差の大差で海人を支持し、海人が完勝でペティとの再戦を制すとともにベルトを巻いた。
海人は「見てもらった通り、まだまだなんですけど、KNOCK OUT、RISE、SBのベルトを世界一のベルトにします。次は日本を背負って世界に行って世界一になります」とアピールした。
バックステージのインタビューで海人は「自分の動きにもペティ選手の動きにもイラついて、熱くなってしまいました。カーフとかボディとかを効かせたんですけど、倒しきれなかったです」と試合内容については反省しつつも「今年の目標的にはGLORYのベルトを取らせてもらいたいです。今年中に組んで欲しいです。向こうのリングで向こうのチャンピオンと戦わないと意味が無いので、やる時は向こうで取りたいです」と話し、ヨーロッパでのGLORYのリングに乗り込む構えを示した。
山田ツインズがタイ勢を1R KO「他団体の強豪倒します(彪太朗)」
第9試合 58kg契約 3分3R(無制限延長R)
○山田虎矢太[こやた](シーザージム/SB日本スーパーバンタム級(55kg)王者)
×タンワレック・ルックサウン[Tanwalek Luksaun](タイ/ジットムアンノン認定スーパーバンタム級5位)
1R 1’25” TKO (レフェリーストップ:左ボディフック)
山田彪太朗・虎矢太の双子王者は、タイの選手と対戦した。弟・虎矢太はプロデビューから10戦全勝。2月大会で植山征紀を5R KOしSB日本スーパーバンタム級王者となってからの初戦。タンワレックはムエタイ65戦48勝16敗1分の21歳でSBは初戦。
1R、お互い軽い攻撃の応酬から始まったが、虎矢太がタンワレックを下がらせると、右のバックスピンキックをタンワレックのボディにクリーンヒットしダウンを奪う。タンワレックはダメージが大きく、虎矢太がボディと顔面にパンチを連打して再びダウンを奪うと、すぐさまレフェリーがストップした。
第8試合 58kg契約 3分3R(無制限延長R)
○山田彪太朗[こたろう](シーザージム/SB日本フェザー級(57.5kg)王者)
×オートー・ムアンパープーン(タイ/ノーナクシンムエタイジム/元ラジャダムナン認定バンタム級6位、元ムエサイアム認定タイ中部フライ級王者)
1R 1’26” KO (左ボディフック)
山田兄弟の兄・彪太朗は4月大会で川上叶に勝利しSB日本フェザー級王者となってからの初戦。対するオートーは昨年10月のホーストカップで滉大に判定勝ちし、11月のスックワンキントーンで同じタイ人のコンコム・レンジャージムに判定勝ちしている。
1R、左右のミドルを当てるオートーに対し、彪太朗は左ボディで応戦。右ロー、左ジャブ、右ストレートも絡め、じわじわオートーを追い詰めると、右ストレートを当てた直後に左ボディフックをクリーンヒット。ダウンしたオートーは顔をしかめたまま動けず、彪太朗が1分半足らずで見事KO勝ちした。
彪太朗の試合後、虎矢太もほぼ同じ時間でKO勝ちすると、彪太朗もリングインし、二人ともベルトを肩にかけながらマイクを持ち、虎矢太は「1個前の試合で彪太朗がKO勝ちしてハードルが上がったんですけど、1Rで倒すことできてうれしいです」と話し、彪太朗は「これからもSBはもちろん他団体の強豪倒します。山田ツインズ、よろしくお願いします」とアピールした。
佐藤執斗、サンチャイにリベンジ
第7試合 オープンフィンガーグローブマッチ バンタム級(52.5kg)(ノンタイトル戦) 3分3R(無制限延長R)
○佐藤執斗(グラップリングシュートボクサーズ/SB日本バンタム級王者)
×サンチャイ・TEPPENGYM(タイ/TEPPEN GYM/元ラジャダムナン認定ミニフライ級王者)
2R 1’46” KO (3ダウン:パンチ連打)
SBのオープンフィンガーグローブ(OFG)マッチは4月大会で初めて行われ、笠原弘希がタイ人のランボー・モーラッタナバンディットに判定勝ちし、ヘビー級の遊笑が坂本優起に判定勝ちしている。今回はOFGマッチ2大会目で3試合が組まれた。
佐藤は4月の名古屋でのムエタイスーパーファイトでノーンガティンに3R KO勝ちし3連勝中。所属先のGSBはMMAも教えるジムのため、佐藤はOFG慣れしている。サンチャイとは21年10月のSB愛知大会で対戦し、サンチャイがシュートポイント1を2つ奪い判定勝ちしている。
1R、開始すぐに佐藤が詰めて左の前蹴りを放つが、サンチャイは足をつかんでから、左フックを当ててダウンを奪う。その後も同じようにパンチを振るい、佐藤が投げを狙えば逆に投げ返し、このルールでも適応する。
だが2R、またも開始すぐ、同じようにサンチャイが蹴り足をつかんだ後、足を離した佐藤が、左フックを当ててダウンを奪い返す。サンチャイはダメージが大きいながら、首投げでシュートポイント1を奪って観客を驚かせたが、佐藤は右フックで再びダウンを奪うと、最後はロープに詰めてのパンチ連打で3ダウン目を奪い、見事リベンジに成功した。
西岡蓮太が引退セレモニー。今後はTEPPEN GYM大阪のトレーナーとして「最高の刺客を送り込む」
第7試合の後、4月に引退表明していた西岡蓮太(龍生塾/元シュートボクシング日本ライト級(63kg)王者、元KNOCK OUT-BLACK 64kg級王者)の引退セレモニーが行われた。西岡は「左手の痛みが悪化し、格闘技を続けさせることができないとドクターストップがかかりました。悔いが全くないとは言い切れないんですけど、本当にたくさんの人に応援していただいて、充実した格闘技人生を送れたと思っています」と話し、トレーナーや練習仲間やスポンサーに感謝の言葉を述べた。続けて「これからTEPPEN GYM大阪のトレーナー頑張っていくことになりました。シュートボクシングに感謝をこめ、最高の刺客を送り込めるようなトレーナーになります」「ロングスパッツを履いて他団体に乗り込めたことを誇りに思います。シーザー会長ありがとうございました」「5歳の時に格闘技の世界に入れてくれた親に感謝しています」と話し、涙を流した。
シーザー会長は「SBに命を懸けてくれた西岡に感謝します。今日で蹴りをつけますけど、必ず(治せる医者を)見つけてここに戻してあげたいと思います」と話した。
BRAVEの芦田崇宏と伊藤空也、SB OFGルール初挑戦は僅差の判定負け
第6試合 オープンフィンガーグローブマッチ 68kg契約 3分3R(無制限延長R)
○イモト・ボルケーノ(グラップリングシュートボクサーズ/SB日本スーパーライト級(65kg)王者)
×芦田崇宏(BRAVE/元DEEPフェザー級(65.7kg)王者)
4R 判定3-0 (若林10-9/津山10-9/大村10-9)
3R 判定0-0 (若林30-30/津山30-30/大村30-30)
SBのOFGマッチ第2弾には、RIZINにも出場しているBRAVE勢2名が、SB所属のランカーと対戦した。
1R、芦田はサウスポーで構え、キックボクシングに近い高めの重心で、左ボディを散らしつつ、左ハイ、左のオーバーハンドフックを度々当てる。イモトはある程度ブロックしており、自分も右ハイを返し、まだ僅差を維持するが、攻撃数では劣ってしまう。記者採点はイーブンだが芦田につく可能性はある。
2R、序盤に芦田がタックルから倒す場面もあったが、基本的には打撃勝負を貫く。イモトも右ミドル、ストレート等を増やすが、積極性では芦田が上回る状態が続く。
3R、芦田は2R同様の攻めをしつつ、左ハイ、ボディフック等のヒットをやや増やす。イモトも攻撃を返すが手数差のあるまま終わる。記者採点は3Rのみ芦田につけ29-30で芦田。MMA的なラウンドマストなら27-30だろう。ジャッジ3者は30-30で延長へ。
4R、芦田が左ハイ、ボディを当てる場面もあるものの、ようやくイモトの右ハイ、ストレートのクリーンヒットが増え、若干イモト優位で終わる。記者採点は僅差だがイモト。ジャッジ3者ともイモトを支持し、イモトの判定勝ちとなったが、健闘した芦田にも退場時に拍手が起こった。
第5試合 オープンフィンガーグローブマッチ 63kg契約 3分3R(無制限延長R)
○基山幹太(BELLWOOD FIGHT TEAM/SB日本ライト級(62.5kg)2位)
×伊藤空也[くうや](BRAVE/元GRACHANバンタム級(61.2kg)王者)
判定2-0 (大村30-29/若林30-30/津山30-28)
1R、サウスポーの基山に対し、伊藤は左右のローや右ハイ、右フックで攻めつつ、時折組んで倒そうとする。倒す場面もあるが、普通のMMA同様に高く抱え上げない形が続く。SBのシュートポイントは腰より上まで持ち上げないとつかない。基山もキックボクシングより間合いの遠い伊藤を詰め切れず、左ストレートを当てる場面もあるが、まだ有効打は少ない。2Rも基本的に同じような攻防が続く。
すると3R、基山が距離を縮めると、左ストレート、ミドル、膝のヒットを増やし、やや優位に。伊藤も負けじとパンチの打ち合いの展開で右フックを返すが、有効打は乏しく終了する。
記者採点は3Rのみ基山につけ30-29で基山。ジャッジはまちまちだったが、2者が基山を支持し基山が判定勝ちした。
第4試合 オープンフィンガーグローブマッチ 64kg契約 3分3R(無制限延長R)
×奥田啓介(ANIMAL☆PLANET/BLUE DOG GYM)
○銀・グラップリングシュートボクサーズジム(GSB大須MACS)
2R 1’41” TKO (ドクターストップ:パンチによる右まぶたのカット)
1R、銀が右ストレートを効かせてから、左ストレートを当てダウンを奪う。ダメージの大きい奥田に対し、銀は終盤にも左と右のストレートを連打してダウンを奪う。
2Rも銀がパンチを当て続け、左ストレートでダウンを奪う、奥田はパンチをもらうと度々倒れるが、竹村レフェリーはなかなかストップしない。奥田は1Rからカットしていた右まぶたの出血が増え、ドクターチェックが入り、ストップがかかり、銀の勝利となった。
第3試合 女子アトム級(46kg)(ノンタイトル戦) 3分3R(無制限延長R)
○MISAKI(TEAM FOREST/SB日本女子同級王者、元J-GIRLSミニフライ級王者)
×ホンヨック・パッサノンジム(タイ)
1R 1’43” TKO (レフェリーストップ:左フック)
ホンヨックは38戦25勝12敗1分の20歳でSB初参戦。1R、開始すぐからMISAKIがサウスポーのホンヨックをコーナーとロープ際に詰め、右ミドル、右ボディ等を何発も当てて圧倒すると、左フックでダウンを奪う。ホンヨックは倒れたままで、MISAKIのKO勝ちとなった。
第2試合 68kg契約 3分3R(無制限延長R)
○村田義光(シーザージム/SB日本ウェルター級(67.5kg)1位)
×青谷秋未[あきひ](正道会館健明館/S-BATTLEミドル級王者)
判定3-0 (大村30-28/津山30-28/若林30-28)
1R、タックル狙いで低い構えの青谷に対し、長身の村田が組んで押さえつつ膝を当てる場面がやや目立つものの、まだ有効打が少ない。2R、青谷は胴や足へのタックルから投げを狙おうとし続けるが、村田は難なく対処し、終盤には膝のヒットを増やし、最後はギロチンチョークも極め、キャッチポイント1を獲得する。3Rも村田がパンチと膝を当て続け優位を維持し判定勝ちした
第1試合 スーパーフェザー級(60kg) 3分3R(無制限延長R)
○手塚翔太(Sublime guys・GONG-GYM坂戸/SB日本スーパーフェザー級(57.5kg)1位)
×土井涼雅(GSB多治見)
判定3-0 (大村30-27/津山30-26/若林30-25)
上位ランカーの手塚がノーランカーの土井を圧倒する試合に。1R、手塚がプレッシャーをかけ続け、左ボディ、右ローを当てつつ、右ストレートも当て主導権を握る。2Rもコーナーに長時間詰めてパンチと蹴りを当て続け、終盤に右と左のボディフックを連打してダウンを奪う。3Rは手塚がバックドロップでシュートポイント2を獲得し、打撃でも優位を維持し、点差をさらに広げ判定勝ちした。
オープニングファイト第2試合 53kg契約 3分3R(最大延長2R)
○小林大樹(龍生塾)
×アン・ジョンホ(韓国)※風太(岡山ジム)が減量中の体調不良により欠場しアンに変更
1R 3’00” KO (左ミドルキック)
オープニングファイト第1試合 57kg契約 3分3R(最大延長2R)
○魅乃麒[みのき](ROAD GYM TEAM CRAZY DOG’s)
×石井拓也(TEAM FOREST)
3R 0’38” TKO