ONE 10.1 シンガポール(レポ):高橋遼伍、オ・ホテクにカーフ効かせるも消極的と評価され判定負け。ション・ジンナン、アンジェラ・リーとの3度目の対決制し2勝1敗に
MARTIAL WORLD PRESENTS GYM VILLAGE
センチャイムエタイジム中野
本場のムエタイ、教えます。初心者、ダイエット目的の方も大歓迎!まずは見学・体験を!
ONE Championship「ONE on Prime Video (ONE FIGHT NIGHT) 2: Xiong vs. Lee III」
2022年10月1日 (土) シンガポール・インドア・スタジアム
レポート:井原芳徳 写真:(C)ONE Championship
第3試合 MMA フェザー級 5分3R
×高橋遼伍(KRAZY BEE/5位、元修斗環太平洋王者)
○オ・ホテク
判定1-2
高橋は19年からONEに上がり2勝3敗。今年3月のONE 10周年大会「ONE X」ではアミール・カーンをカーフキックとパウンドで苦しめたが、判定1-2という不可解な裁定で敗れている。ホテクはMMA 11戦8勝2敗1分の29歳。韓国の大会で試合を重ね6連勝中で、4月のBRAVE CF韓国大会ではUFC出場経験のあるロランド・デイに1R裸絞めで一本勝ちし、今回ONEに初参戦した。
1R、高橋がじわじわプレッシャーをかけ、右のカーフキックを随所でヒットする。中盤、長身のホテクの伸びのある右フックが炸裂すると、髙橋は少し腰が落ち、しばらく下がる。終盤には圧をかけ返すが、最後はホテクが前に出るように。お互い攻撃は少ないが、ホテクの一撃が印象に残るラウンドに。
2R、序盤こそもつれて髙橋が上になるが、すぐスタンドに戻る。高橋が右のカーフでスリップさせる場面もあるが、すぐホテクは立つ。お互い攻撃が少なく、中盤にはモハメド・スレイマン・レフェリーが両者に攻撃を促す。するとホテクは前に出て、組んで右膝を当てる。それでも高橋は距離を取り続けると、レフェリーは高橋にイエローカードを出す。ホテクがタックルを仕掛けると高橋は切るが、その後もホテクの圧に押され続ける。
3Rも序盤から距離を取る高橋に対し、レフェリーはイエローを再び出す。だが1枚目同様、普段のONEの試合に比べるとイエローの出されるタイミングが早すぎる感は否めない。するとホテクはタックルを仕掛けてからバックを取りオンブになる。高橋は振りほどき離れるが、印象の悪い状況に。終盤、カーフを効かされているホテクは下がり気味になり、高橋は圧力をかけるが、レフェリーは「アクション」と声を度々かける。結局、ホテクは耐え続け終了する。
記者採点は1Rに右フックで高橋をひるませ、3Rにもオンブで印象を作ったホテク。ジャッジは割れ、2者がホテクを支持しホテクの判定勝ちとなった。だがレフェリーがイエロー2枚を出したにも関わらず高橋を支持したジャッジもいたことは、ONEの審判団のポリシーにバラつきがあることを改めて示す形に。スレイマン・レフェリーの早すぎるイエローカードが選手心理に影響を与えた感もぬぐえず、すっきりしない試合となってしまった。今日はメインイベントに登場したション・ジンナンも下がる場面が多かったが、ハーブ・ディーン・レフェリーはイエローを出しておらず、高橋×ホテクのレフェリーがディーン氏なら、違う評価・展開になっていた可能性もあっただろう。
ション・ジンナン、アンジェラ・リーとの3度目の対決制し2勝1敗に
第9試合 ONE MMA女子ストロー級チャンピオンシップ 5分5R
○ション・ジンナン(王者)
×アンジェラ・リー(挑戦者、MMA女子アトム級王者)
判定3-0
※ションが7度目の防衛
Amazonプライムビデオを通じ北米に配信される「ONE on Prime Video」は、8月27日に続き今回が2度目となる。北米の夜の時間に合わせ、東南アジアのシンガポールの昼間に開催された。
ジンナンとアンジェラは今回が3度目の対戦。これまで2試合とも日本で戦っており、19年3月の初対決ではジンナンが1階級下のアンジェラ相手に5R KO勝ちし防衛に成功した。19年10月の再戦では、逆にジンナンが1階級下げてアンジェラの王座に挑戦したが、今度はアンジェラが5R裸絞めで一本勝ちしている。
その後、ジンナンはティファニー・テオ、ミッシェル・ニコリニ、三浦彩佳を相手に3連勝しストロー級王座を6度防衛。リーは2度目のジンナン戦後、産休に入り、今年3月のONE Xで復帰すると、女子アトム級GPを制して王座挑戦権を獲得したスタンプ・フェアテックスに一本勝ちし復活を遂げた。
3度目の対決も、本来の階級のジンナンが強さを発揮することに。レフェリーはUFCでおなじみ、ハーブ・ディーン氏が務める。
1R、アンジェラが前に出続けるが、ジンナンはかわし続けると、中盤に右ストレートを当ててダウンを奪う。すぐスタンドに戻るが、ジンナンは右ストレートを連打して追い詰める。アンジェラの苦し紛れのタックルもジンナンは対処し、随所でパウンドも当てる。既にアンジェラは顔を腫らしている。
2R、アンジェラは執拗に組み付き、テイクダウンを奪ったり、金網に押し込んで膝を宛、時折引き込んでギロチンを狙う。ジンナンは対処を続けており、なおかつダメージも目の下を少し腫らす程度であまり負わず、押し込まれても無理に動かないため、消耗はほとんどしていない様子だ。逆に離れると、顔面へのパンチや左ボディストレートを当て、きっちりアンジェラを削る。
3R、アンジェラは執拗に前に出て、時折パンチや蹴りを当てるが、2Rのようには組ませてもらえない。ジンナンは金網を背負って守勢が続くが、時折パンチを返し、強打は被弾しない。1Rのジンナンの好印象の攻めを覆す攻撃にアンジェラは持ち込めない。UFC的なラウンドマスト採点の積み重ねなら、アンジェラが逆転しているが、トータルマストの判定をジンナンは意識して戦っている様子だ。UFCに慣れた北米の視聴者にどの程度その違いが伝わっているかも少し気になる。
中盤を過ぎた4R、アンジェラのプレッシャーはやや弱まり、ジンナンも少し前に出るようになり、中央付近での打撃戦が増える。最後、アンジェラが金網に押し込んで膝と肘を放つが、強打にはつなげられない。
最終5R、アンジェラは序盤から組み付き、足を掛け倒すことに成功し、金網際で押さえる。アンジェラは背後に回ろうとするが、ジンナンは立ち上がって対処し、中盤にはスタンドの展開に戻し、アンジェラのようやく巡ってきたチャンスを潰す。アンジェラは前に出るが、回るジンナンを詰め切れない。その中でジンナンは時折右フックを当て、攻めの姿勢をきっちり見せつつ逃げ切りに成功する。
記者採点は1Rに2度ダウンを奪い、その後も相手に反撃を許さなかったジンナン。ジャッジ3者も同様で、ジンナンが判定勝ちし、対アンジェラの戦績を2勝1敗とすると共に、7度目の防衛を果たした。
ONE初のグラップリング王座戦はムスメシが勝利。ルール設定、レフェリングに課題
第8試合 ONEサブミッショングラップリング・フライ級初代王者決定戦 10分1R
○マイキー・ムスメシ
×クレベル・ソウザ
判定3-0
※ムスメシが王者に
最近少しずつ選手が増えているONEのグラップリング部門で、今回初めて王座が制定された。ムスメシは柔術世界選手権(ムンジアル)を4連覇し、4月のONEでは今成正和に裸絞めで一本勝ち。ソウザとは17年に柔術で2度戦い1勝1敗だ。今回はテイクダウンやポジション取りでのポイントの無いONEルールでの戦いとなる。
1R、青いトランクスのムスメシが開始するから寝転んで、近づいてくるソウザに、ヒールフック等の足関節技、腕十字を狙う展開が繰り返される。ソウザは防戦が続き、思うような展開を作れない。
中盤、ソウザは離れ、両手を叩いてムスメシを立たせようとアピールするが、ムスメシは付き合わず寝転んだ状態を続ける。その後も似たような状態となり、ムスメシが寝転んだままソウザに近づくと、観客から笑いも起こる。その後も度々ムスメシが腕、足を取ろうとするが、キャッチには至らない。
2分を切り、ムスメシがアキレス腱を取りかけると、モハメド・スレイマン・レフェリーは「キャッチ」とコールするが、明らかに極まっておらず、ソウザは首を振り、ムスメシも同時に腕を動かして違う形で極めを狙う動きに移行してしまう。
結局最後までムスメシが関節技を狙い続けて終了。ジャッジ3者の判定の結果、キャッチが1つあったムスメシに軍配が上がったが、ルール設定、レフェリングで改めて課題が多く見える試合になってしまった。ムスメシはMMAフライ級王者・デメトリアス・ジョンソンとの試合を希望した。ロッタン戦のようなミックスルールでもないと、DJが受ける可能性はあまり高くはなさそうだが、今後はMMAのトップ選手と絡めば、グラップリング部門が盛り上がる道もありそうだ。
王者スーパーボン欠場。グレゴリアンが王座挑戦権者のオズカンに判定勝ち
第4試合 キックボクシング フェザー級 3分3R
○マラット・グレゴリアン(2位)
×タイフン・オズカン(5位)
判定3-0
今大会では元々、キック・フェザー級王者のスーパーボンが、8人参加のGPを制したチンギス・アラゾフを相手に防衛戦を行う予定だった。だが1週間前、アラゾフが負傷欠場し、グレゴリアンと対戦予定だったオズカンがスーパーボンへの挑戦権を獲得したと発表された。ところが前日計量時にスーパーボンが体調を崩し、また、グレゴリアンと対戦予定だったジャマール・ユスポフも体調不良となり、2選手が欠場。余ったグレゴリアンとオズカンが元に戻る形で対戦することになった。ONEの各階級のGPとその後の王座戦は、今回のように主力選手が途中欠場することが多く、最強を決める道筋がなかなか整わない。
1R、グレゴリアンはガードを固めながらプレッシャーをかけ、右ロー、カーフ、左奥ローをじわじわ増やすと、右ボディストレートもヒットし、オズカンを削る。オズカンも右アッパーを返すが、グレゴリアンは勢いが止まらず、連打から左アッパーをお返しし、右カーフも効かせて追い詰める。記者採点はグレゴリアン。
2R、グレゴリアンの圧力がやや落ちると、オズカンもガードを固めつつ前に出て、左前蹴りで下がらせつつ、右ロー、右アッパーを当て、手数で上回るように。とはいえオズカンも攻めきれず、グレゴリアンも中盤以降は前に出返し、左アッパー、ローを返して巻き返す。記者採点はオズカンだがイーブンでも不思議ではない。
3R、グレゴリアンは巻き返すべく序盤から手数を上げるが、オズカンも耐えてからボディ、顔面へのパンチ連打を返し、どちらも引かない削り合いに。サークルケージの中央付近でガードを固めた2人がパンチと蹴りを出し合う展開が続く。手数ではグレゴリアンも負けず劣らずだが、オズカンが左アッパー、右フックを当てるとグレゴリアンがのけぞり、場内がどよめき、やや好印象を残す形に。
3R記者採点は僅差だがオズカン。合計28-29でオズカン。2R以降は僅差だったせいもあり、ジャッジ3者はグレゴリアンを支持したが、オズカンはビッグネームのグレゴリアン相手に十分渡り合い、評価を上げる試合だった。また、両者とも相手変更のゴタゴタでベストを出しきれない環境だったことは考慮すべきだろう。
第7試合 MMA 女子アトム級 5分3R
○スタンプ・フェアテックス(1位)
×ジヒン・ラズワン(5位)
判定3-0
※ラズワンの計量オーバーでアトム級(115ポンド)から120.75ポンド(54.77kg)契約に変更
第6試合 MMA フェザー級 5分3R
×マーティン・ニューイェン(3位)
○イリヤ・フレイマノフ
1R 3’33” TKO
第5試合 MMA ライト級 5分3R
×ティモフィ・ナシューヒン(3位)
○ハリル・アミール
2R 0’58” KO
第2試合 ムエタイ 女子アトム級 3分3R
○アニッサ・メクセン
×ダオコンファー・バンチャメーク
判定3-0
第1試合 キックボクシング・ヘビー級GP交替試合(リザーブファイト) 3分3R
○ラーデ・オパチッチ
×ヤニス・ストフォリディス
2R 1’52” KO (パンチ連打)