修斗 9.19 後楽園ホール(レポ):新井丈、猿丸ジュンジを1R KOし世界ストロー級王者に「もっと大きい舞台、みんなと行けたら」。西川大和、草・MAXとの接戦制す。関口祐冬、ROAD TO UFC帰りの内田タケルから一本
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プロフェッショナル修斗公式戦 PROFESSIONAL SHOOTO 2022 Vol.6
2022年9月19日(月/祝)後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
新井丈、猿丸ジュンジを1R KOし世界ストロー級王者に「みんなともっと大きい舞台に行けたら」
第10試合 メインイベント 修斗世界ストロー級チャンピオンシップ 5分5R
×猿丸ジュンジ(修斗GYM東京/王者)※初防衛戦
○新井 丈(キングダムエルガイツ・和術慧舟會HEARTS/世界1位)
1R 1’50” KO (右フック)
※新井が王者に
ONEに参戦中の箕輪ひろばが修斗世界ストロー級王座を返上し、同級暫定王者の猿丸が正規王者に認定され、今回初防衛戦を行った。
猿丸は昨年11月のスタジオコースト大会での暫定王者決定戦で元王者の黒澤亮平に1R一本勝ちしベルトを獲得。35歳、デビューから15年、5度目の王座挑戦で一つの目標を達成した。
新井は18年のインフィニティリーグで4試合とも一本負けし、キングダム等他団体の3試合含め9連敗した時期もあったが、19年10月から6連勝・3連続KO勝ち中と絶好調。昨年6月に飯野タテオを、今年1月に木内崇雅を1R KOし、5月大会では黒澤を打撃で圧倒し2R TKO勝ちした。元ストロー級王者・猿田洋祐のいるHEARTSに練習拠点を移してから着実に総合力を増している。
7月の後楽園大会でこの試合が発表されると、新井は「俺でもやっとここまで来たんだなって感じです。修斗のベルトに5回挑戦してやっとベルトを取った猿丸ジュンジと、9連敗から這い上がってそのベルトに挑戦する新井丈、9月、どっちがキツいことできんのか、どっちが根性あんのか、どっちが最後まであきらめないのか、ぜひ会場で見届けてください」と見所をわかりやすく紹介しつつ意気込みを述べた。単に勝ち続けただけでなく、一回一回のマイクで明快なアピールを続けたことも、今の位置まで急上昇できた一因ともいえよう。
試合はそんな新井による、マイクまで含めた見事なショーとなる。1R、新井がプレッシャーをかけると、猿丸は回って左ジャブ、前蹴りで距離を取りつつ、右のカーフキックを当て続ける。新井は足が流れるようになるが、それでも前に出ると、右ボディ、左フックを立て続けにヒットする。猿丸はひるみつつも、その体勢からタックルを仕掛けて押し込む。新井は膝をつくが、すぐに立つ。離れ際に猿丸は右膝を顔面に放つが、新井はダメージは小さい様子だ。
新井は少し距離を取ってから再び前に出て、左右のフックを振るう。猿丸はまたタックルを仕掛けるが、やや腰が引けた状態で、新井は突き放す。すると今度は猿丸が中央で構える側となり、左右のパンチを振るって詰めて来る。
だが新井は頭を振って猿丸のパンチをかわすと、左右のフックを振う中で、右フックを猿丸のアゴにヒット。猿丸が腰から崩れ落ちて倒れ、マットに背中をつける。新井によると猿丸の「目が飛んでいた」といい、新井が右の鉄槌で追撃しようとしたところで、すぐさま片岡レフェリーがストップした。なお、猿丸はストップ直後からすぐ動き、タックルを仕掛けようとする動作をしていたため、ストップが早かったのではという声もあったが、新井の鉄槌の追撃が顔面に命中していた可能性の高さを考慮すれば、ストップの判断は妥当な範囲内と考えていいだろう。
9連敗から7連勝・4連続KO勝ちでベルトを巻いた新井はハチマキに書かれた文字を指差し「Never Give Up」と叫ぶ。そして「思い返すと、MMAってのを知って、神の子・KID(=山本“KID”徳郁)に魅せられて、KIDさんがデビューした修斗で縁があって戦うことができて、意気揚々にデビューしたんですけど、コテコテのグラップラーばっかで、練習に真面目じゃなかった俺は9連敗しました。駆け出しの時点で俺より強い奴が9人いるって、やってられないですよね。でも、そこで辞めたり、投げ出したりしてたら、このベルトはここに無いっす。みんなの人生、みんなが主役だと思うんで、みんなにもあきらめるななんて言えないですけど、俺は俺の人生を使って、そんな姿を一人でも多くの人に見てもらうために、さらに努力しますんで、一緒にもっと大きい舞台、みんなで行けたらと思います。ありがとうございました」とアピールした。なお、新井は右の太ももに、KIDら憧れのファイターの名前の英字のタトゥを彫り込んでいる。
新井は控室で、左スネを冷やしながらインタビューに応じ「(猿丸の)カーフは3発目ぐらいで効いてきました。2~3(R)続いたら危なかったですね」と話しつつ苦笑した。今後については「防衛は必ずします。箕輪君に早く(ベルトを)返せと煽ったんで、防衛戦しないと筋通らないんで、しっかり責務を果たしたいです」と話し、上がりたい「大きい舞台」については「具体的には無いですね。RIZINも階級が無いんで、勝ってから考えようとしていました。大沢(ケンジ・HEATRS代表)さんがいるんで、うまくやってくれると思います」と話し、現在はノープランなことを明かしている。
“西川劇場”封印? 西川大和、草・MAXとの僅差の打撃戦制す「まだチャンピオンの器じゃない」
第9試合 セミファイナル ウェルター級 5分3R
○西川大和(西川道場/修斗ライト級世界王者)
×草・MAX[クサマックス](TEAM CLIMB/GRABAKA赤羽/元HEATライト級王者、パンクラス・ネオブラッドトーナメント2011ウェルター級優勝)
判定3-0 (柴田30-27/橋本30-27/片岡30-27)
西川は昨年9月、修斗史上最年少の18歳で世界王座を獲得。水抜き減量が実質禁止されているONE参戦を見据え、1階級上のウェルター級で3月に山田崇太郎と対戦し勝利した。だがONEの開催されているシンガポールに行くには新型コロナウイルスのワクチン接種が必須となっている。西川はワクチン接種を拒否しており、山田戦直後のマイクアピールでは日本で行われているRIZIN参戦に目標を変更していた。6月には地元北海道での試合で韓国のチェ・ジウンに1R TKO勝ち。連勝を13に伸ばした。(修斗とVTJでは9連勝)
この試合もウェルター級で、試合後のマイクでは「次、RIZINでストラッサー起一選手、僕とやりましょう」と、元HEATウェルター級王者・起一を指名した。起一は自身のYouTubeチャンネルで「RIZINで試合が組まれるんならやったるし、逃げるつもりもないです。若いから勢いがあるけど、大人の強さ見せつけてやろうと思っています」と回答したが、7月に右膝の手術を行ったため、対戦実現は当面先となりそうだ。
今回の相手の草・MAXはMMA 28戦11勝11敗6分。18年までパンクラスに、20年からHEATに上がり、2戦目の20年9月に阿部右京にTKO勝ちしHEATライト級王座を獲得した。だが今年5月大会では岡野裕城に2R一本負けしベルトを失っている。山田、起一とも東京・大久保のGENスポーツアカデミーで共に練習している。起一も草と同学年で同じ41歳だ。
試合は、そしてマイクも、ここのところ波紋を呼び続けた“西川劇場”は封印で、比較的地味目な内容に。1R、スタンドの攻防が続き、西川はサウスポー主体で度々スイッチし、ローを当て、パンチの連打でも時折前に出る。草はサウスポーで固定し、序盤から右のインローカーフを当てるが、中盤以降は攻撃が減る。西川は3度組み付いて押し込むが、草は突き放し続ける。記者採点は僅差だがやや積極的だった西川。
2Rもスタンドの打撃戦が続く。草がプレッシャーをかける時間が長く、西川はスイッチを繰り返し回るが、下がる足取りも前に出る足取りもややぎこちない。しかしその中でも終盤には左ロー、右ハイといった攻撃を増やし、積極性を印象付けて終える。記者採点は西川。
3R、西川はスイッチを繰り返しつつも、プレッシャーをかける時間が長くなり、左右のミドルを随所で当てやや優位を維持する。終盤には草も左肘を当てるが、西川が右ストレート、ハイ、左前蹴り等で手数多く攻め続けて終了する。記者採点は西川。合計30-27で西川。ジャッジ3者も同様で、西川がやや慎重な試合運びながらも判定勝ちした。
マイクを持った西川は「集まっていただいたファンの方には、試合外でも感謝の気持ちしかないです。草MAX選手、対戦を受けてくださって心より感謝申し上げます。ありがとうございました。次、11月(27日の後楽園大会に)出たいんで(主催のサステインの)坂本(一弘)代表、いいですか?まだチャンピオンの器じゃないんで、強くなっていきたいので、協力何卒よろしくお願いします」と、今回はこれまでになく謙虚な内容ながらも、早期の次戦を希望した。
控室でのインタビューで西川は「今日は色々試したかったのでこうなりました。札幌では空手の選手数人しか打撃の練習のできる相手がいないので、試合で試せて良かったです。(那須川)天心選手のように場数を踏んで経験を積んで、練習の動きが試合でも出せるようになりたいです。他団体のオファーがあればやりたいですけど、無いものねだりをして、経験の無いまま待っていても強くなれないので、たくさん試合をしたいです」と話した。減量するとコンスタントに試合をするのが難しくなるという考えから、今後もウェルター級での戦いを続けるとのことだった。
関口祐冬、ROAD TO UFC帰りの内田タケルから一本「いいオファー待ってます」
第8試合 フライ級 5分3R
○関口祐冬(修斗GYM東京/修斗世界1位)
×内田タケル(パラエストラ松戸/修斗世界8位)
1R 4’46” 腕ひしぎ十字固め
関口は19年6月、後にフライ級世界王者となりUFCに上がる平良達郎に判定負け。だが以降は4連勝中で、7月の修斗大阪大会ではキックルールのトーナメントでの試合も経験した。内田は19歳で、6月のシンガポールでのROAD TO UFCでオーストラリアの選手に1R裸絞めで勝利し、5連勝・5連続一本勝ちと勢いに乗る。
1R、関口が開始すぐからサウスポーの内田に右ストレートを当てて先手を取る。さらに右の飛び膝を放つと、内田がタックルを仕掛けて倒す。関口は横三角絞めで捕獲するが、極まりは浅く、関口が足を解くと、内田が金網際で押さえる。内田は関口の頭を内側に向け、上からパウンドをコツコツ当てる。終盤、内田はハーフに移ると、右肘も連打する。関口はガードポジションに戻し、下から右肘を当てると、内田は負けじとパウンドを連打する。だがこれが裏目となり、関口はじわじわ足を登らせると、内田が左の肘を落とした直後に腕をつかみ、腕十字を仕掛ける。関口はクラッチを切って完全に伸ばしきりタップを奪った。
新鋭対決を制した関口は「いいオファー待ってます」とシンプルにマイクアピール。王者・平良がUFCと契約しているため、王座戦線は不透明だが、当面他団体進出するにしても、内田に勝ったことは、いいアピール材料となるだろう。
第7試合 バンタム級 5分3R
○後藤丈治(TRIBE TOKYO MMA/修斗世界5位、環太平洋2位)
×加藤ケンジ(K.O.SHOOTO GYM)
2R 3’52” KO (レフェリーストップ:左フック)
後藤は昨年9月、石橋佳大に判定負けしたが、今年3月のダイキ・ライトイヤー戦では2Rに左フックでダウンを奪い判定勝ち。加藤は20年8月のRIZINで山本アーセンを1R KOし知名度を上げた選手。最近では2月のRIZINで倉本一真に敗れ、7月の修斗大阪大会ではダイキを1R KOしている。
試合はランカーの後藤が打撃スキルの差を発揮する内容に。1R、両者サウスポーでのスタンドの打撃戦が続き、後藤が高めに構えて左右のロー、左前蹴り、左ストレートを当て、加藤が低めに構えて右のアッパー、ジャブストレートを当てる。ほとんど差は無いが、攻撃数ではやや後藤が上か。記者採点は後藤。
2R、後藤が左のカーフキックを当てていると、次第にヒットが増え、加藤はカーフを嫌ってオーソドックスに切り替えるように。加藤はパンチで突っ込むが、後藤は軽々とかわし続ける。加藤はサウスポーに戻すが、後藤が左カーフを当て続けつつ、左ハイも当てると、最後は左フックでダウンを奪ったところで、すぐさま柴田レフェリーがストップした。
第6試合 フェザー級 5分3R
○飯田健夫(フリー/修斗世界1位、環太平洋1位)
×論田愛空隆[ろんだ あくり](心技館)
3R 1’13” KO (レフェリーストップ:右フック)
飯田は3月の岩本健汰戦の体重調整中に体調不良を起こし、病院に搬送され欠場したが、7月の大阪大会で当時フェザー級世界1位の山本健斗デリカットに1R裸絞めで勝利し、ランキング圏外から1位まで一気にジャンプアップした。対する論田は昨年7月の中村倫也戦で敗れて以来1年2か月ぶりの試合で、バンタム級から階級アップしての初戦となる。
1R、論田は右のロー、カーフを時折当て、やや優位に進めるが、中盤以降、飯田の左フックが当たり出し、左フックでダウンを奪うと、素早くバックマウントを奪い、裸絞めを狙い続け追い詰める。記者採点は飯田。
2Rも論田が左右のパンチを当て続け優位に運ぶが、中盤にはスタミナが切れ、またも飯田がパンチを当てて反撃し、最後は倒して腕十字を狙って終える。記者採点は飯田。
3Rは序盤から飯田が圧をかけて優位を維持し、右フックを当てて論田を倒すと、論田の消耗が激しいと判断したか?レフェリーが試合をストップした。
飯田は「(フェザー級世界王者の)SASUKE選手が10月にROAD TO UFCに出るので、暫定王座決定戦、やらせていただけませんか。北海道で嫁が僕の帰りを待っています。今の僕、めっちゃ強いです」とアピールした。
第5試合 女子フライ級 5分3R
△ライカ(RIGHT THING ACADEMY/ボクシング元OPBF東洋太平洋女子ライト級(61.2kg)王者)
△杉本 恵(AACC/修斗スーパーアトム級世界3位)
判定1-0 (長瀬20-18/橋本19-19/豊永19-19)
パンクラスを主戦場としてきたライカが今回修斗に初参戦する。ここのところ修斗、パンクラス、DEEPの間で、女子選手の行き来が活発になっており、選手が少ない影響で試合機会の少ない女子選手にとっては歓迎すべき状況だろう。今回は現修斗スーパーアトム級王者のSARAMIにONEウォリアーシリーズで勝利した実績のあるキム・ソユルがライカと戦う予定だったが、韓国からのビザ発給が間に合わず、急きょ杉本が約6kg重い2階級上での試合を引き受けた。
1R、杉本が序盤から組み付いてライカを押し込み、テイクダウンを狙う。杉本はタックルで倒しにかかるが、ライカは切り、体格差を活かし、がぶりの状態で押さえ続ける。記者採点は僅差だが杉本。
2Rも杉本が押し込み、今度は首投げで倒してから押さえることに成功する。数十秒でライカは脱出し、またもがぶりの状態となり膠着する。それでも杉本が寝かせ、金網際でライカの両足へのマウントを取って押さえ、最後も立った状態で押し込んで終える。記者採点は杉本で、合計18-20で杉本。ジャッジは1者がライカ、2者がイーブンとしドローとなった。
第4試合 バンタム級 5分2R
×齋藤 翼(総合格闘技津田沼道場・FIGHT FARM)
○スソン(KRAZY BEE)
判定0-3 (福田18-20/片岡18-20/豊永18-20)
スソンはテコンドーがベースで、ABEMA「格闘代理戦争」にKIDの推薦で出場していた選手で、KIDがデビュー当時に上がっていた修斗に初参戦した。
1R、両者サウスポーで構え、お互い左のカーフキック主体で攻める。打ち合いでバッティングとなり、両者とも左まぶたカットしドクターチェックが入る。スソンに注意が入る。再開後、両者スイッチを繰り返しつつ距離を取って見合う中で、スソンが左ミドル、テンカオを強打し、やや好印象を残す。
2R、スソンが右ミドル、ローを的確に当て続け、終盤、左ハイ、左フックで齋藤をひるませる。齋藤は金網際で組み付きオンブになり裸絞めを狙うが時間切れに。スソンが2Rともポイントを取り判定勝ちした。
マイクを渡されたスソンは「昨日KIDさんの命日でした。KIDさんに勝利を見せれなくて、この何カ月間、日本で一番練習してきたと思います。KIDさん、やっと勝てました。これは序章に過ぎないんで、ずっと見守ってください」とアピールした。
インフィニティリーグ2022 女子アトム級 5分2R
○澤田千優(AACC/勝ち点5→8)
×加藤春菜(NACER DO SOL/勝ち点1)
不戦勝 (加藤選手が前庭障害・良性発作性頭位目眩症と診断され欠場)
第3試合 インフィニティリーグ2022 女子アトム級 5分2R
×久遠[ひさえ](ZERO/勝ち点4)
○小生[おの]由紀(グランドスラム沖縄A・P・P/勝ち点1→4)
2R 2’13” 腕ひしぎ十字固め
初代女子アトム級王者を決めるインフィニティリーグ2022は澤田千優が1位で、上記のとおり今回不戦勝となり3点を獲得し、2位の久遠と中村未来との差がより広まっている。
1R、小生が序盤から一発目のタックルでテイクダウンに成功すると、サイド、バックと動き、裸絞めで久遠を追い詰める。
2Rも小生がタックルで倒すと、久遠は背中をつけず脱出しようとしたが、下になった小生が腕十字を極めてタップを奪い、勝ち点4を獲得し、2位に浮上した。
第2試合 2022年度新人王決定トーナメント・フェザー級準決勝 5分2R
○椿 飛鳥(トライデントジム)
×工藤圭一郎(グランドスラム沖縄A・P・P)
判定3-0 (福田20-18/柴田20-18/片岡20-18)
第1試合 2022年度新人王決定トーナメント・フライ級一回戦 5分2R
○須藤晃大(EXFIGHT)
×大谷あっくんボンバー(タトル)
2R 3’04” 裸絞め