修斗 11.6 USEN STUDIO COAST(レポ):SARAMI、黒部三奈との3度目の対戦で初勝利し女子スーパーアトム級王者に。猿丸ジュンジ、1Rで勝利しストロー級暫定王者に
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プロフェッショナル修斗公式戦 PROFESSIONAL SHOOTO 2021 Vol.7 Supported by ONE Championship
2021年11月6日(土)東京・USEN STUDIO COAST
レポート&写真:井原芳徳
第6試合 メインイベント 修斗女子世界スーパーアトム級(50kg)チャンピオンシップ 5分5R
×黒部三奈(マスタージャパン東京/王者、元DEEP JEWELSアトム級王者)※初防衛戦
○SARAMI(パンクラスイズム横浜/世界1位)
判定0-3 (長瀬46-49/豊永45-49/豊永47-48)
※SARAMIが第2代王者に
プロ修斗公式戦の主要シリーズは後楽園ホールがホーム会場だが、今回は昼に修斗、夜にVTJという2部構成で、新木場のUSEN STUDIO COASTに会場を移して開催された。メインイベントでは19年に初めて創設された女子世界王座のチャンピオンシップが置かれた。
黒部とSARAMIはDEEP JEWELSで2度対戦。14年の初対決では黒部が1R裸絞めで勝利し、18年の再戦では1Rに左フックでSARAMIがダウンを奪うも、2R以降は黒部がロープに押し込んでの打撃で主導権を維持し逆転判定勝ちすると共に、当時持っていたDEEP JEWELSアトム級王座を防衛した。その後、黒部はRIZIN、SARAMIはONE WARROR SERIESでの戦いを経て、修斗で再び相まみえる。黒部は19年から修斗に上がり、大島沙緒里、杉本恵らに勝利し女子初代スーパーアトム級王者に。SARAMIは昨年から修斗に上がり、杉本と中村未来に連勝し王座挑戦の権利を得た。2人とも練習仲間だが、SARAMIが近年の技術の進化を示す内容に。
1R、パンチの攻防の後、黒部が胴タックルから押し込むがSARAMIは耐える。終盤にも黒部は押し込み、細かくパンチと膝を当てるが、与えるダメージ自体はまだ小さい。SARAMIは離れ際に左ハイ、右肘を当てる場面も。記者採点ば10-10もアリの修斗ルールを考慮しイーブン。ユニファイドルール式のマストならアグレッシブさで評価し黒部か。ジャッジは3者とも黒部。試合は3年前の2度目の対決の2R以降と似た構図となる。
2R、黒部は序盤から金網への押し込みを繰り返すが、SARAMIも膝を当て、時折押し返し、完全に黒部に主導権を握らせない。記者採点はイーブンだが、マストだとどっちに振るか難しく、SARAMIの膝の的確さも評価できる内容だ。ジャッジは割れ、片岡サブレフェリーのみ黒部、他の2者がSARAMIにつける。これで2者がイーブンに。
3Rも黒部は執拗に押し込むが、SARAMIはボディへの膝、突き放しての肘のヒットを増やし、離れればボディへの右前蹴り、右フックをヒット。終盤には突き放してからの左ハイをクリーンヒット。最後は倒して鉄槌を当てて追い詰める場面も作り、完全に主導権を握る。記者採点はSARAMIで修斗の基準に沿い8-10。ユニファイドなら9-10か。豊永サブレフェリーは8-10とつけ、他の2人は9-10とする。
4R、黒部は変わらず押し込み、SARAMIは捕まるものの、力んで体力は使うようなことはせず、チャンスを伺っている様子。離れればSARAMIは回って距離を取り、右フックを的確にヒットする。だが黒部も雄たけびをあげながらパンチを振るい、まだまだ気持ちを切らさない。記者採点はSARAMI。ジャッジ3者も同様だ。
5R、黒部が押し込み、声を上げ前に出続けるが、SARAMIは中盤から右フック、左ジャブ、膝、前蹴りのヒットを増やし、足を掛けての崩しも再三決めてパウンドも当てる等、テクニックで差をつける。ジャッジ3者とも黒部。記者採点は黒部。合計46-50でSARAMI。ジャッジ3者は2Rと3Rの評価が違った影響で1~4点差とバラついたが、SARAMIが3者から支持されSARAMIが勝利した。
勝敗が告げられると、黒部はSARAMIを抱きしめ称えた。ベルトを巻いたSARAMIは涙を流しつつ「ずっとチャンピオンになりたくて取れなかったのに、今日取ることができて、あきらめずやってきて良かったです。黒部さんみたいにできた人間じゃないですし、面白いことも言えないですけど、これからも応援してくれたらうれしいです」と話した。
インタビューでSARAMIは「押し込まれるのは嫌だなと思ったんですけど想定内でした。1Rから黒部さんに攻撃が効いていた感じでした。4Rを終わったあたりからこれで勝てると思いました。練習では得意だった動きが全部出た感じです。修斗に来た時は狙っていたベルトじゃなかったですし、あえてベルトを狙って追い込まないよう、自分に言い聞かせてやっていました。ずっと冷静にいられました。3年前に黒部さんと試合したから強くなれた感じで、お母さんみたいな感じです」と語り、今後については「もうちょっと格闘家だと知ってもらいたいです。メジャー団体に出たり」と話した。
第5試合 セミファイナル 修斗世界ストロー級暫定チャンピオン決定戦 5分5R
○猿丸ジュンジ(修斗GYM東京/世界1位)
×黒澤亮平(パラエストラ松戸/世界5位、元王者)
1R 3’23” 裸絞め
※猿丸が暫定王者に
ストロー級世界王者・箕輪ひろばがONE参戦中のため暫定王座決定戦が組まれた。猿丸と黒澤は15年に対戦し、キャリアで勝る猿丸が1R右ストレートでKO勝ちしている。その後、先に黒澤が王者になるも、怪我のため防衛できず返上し、2年半のブランクを経て4勝1敗。猿丸は18年の王座挑戦者決定戦で村田一着にまさかの1R KO負けを喫したが、それ以降は4勝1分。黒澤は前回、マッチョ ザ バタフライに判定勝ちし、猿丸は飯野タテオに1R KO勝ちし、両者満を持しての暫定王座戦となる。猿丸はデビューから15年、5度目の王座挑戦だ。
試合は猿丸の速攻が功を奏す形に。1R、猿丸は右のカーフを積極的に蹴ってから、タックルで倒し上になる。立たれてもすぐ倒し、トップをキープする。それでも中盤、黒澤は立ち上がり、伸びのある右ストレートを連続で放つが、猿丸は防御すると、またもタックルで倒し上に。黒澤が金網際でもがくと、素早くバックを奪い、裸絞めを極めタップを奪取。猿丸は雄たけびをあげ大喜びした。
猿丸は「逃げずあきらめず、修斗でずっとやって、あきらめなくて良かった。みんなが応援してくれたおかげです。みんなのチャンピオンベルト、今度巻いてね」と喜びを語った。
第4試合 フェザー級 5分2R
×結城大樹(マスタージャパン福岡/世界9位)
○岩本健汰(ロータス世田谷)
判定0-2 (福田19-19/田澤18-20/片岡18-20)
強豪グラップラー・岩本は9月の後楽園大会で椿飛鳥に1R裸絞めで一本勝ちし、今回がMMA 2戦目。
1R、岩本が右のカーフを連打しつつ、序盤から組み付き、再三、結城を倒すが、結城は立つ展開を続ける。中盤過ぎ、ようやく岩本が金網際でトップキープに成功する。その先に持ち込めないが、結城も防戦一方だ。記者採点は岩本。
2Rも岩本がカーフを当てつつ、タックルを繰り返し、中盤からトップキープする、1R同様の展開に。記者採点は岩本。合計18-20で岩本。2Rに結城が細かく当てた打撃を評価するジャッジもいたが、ジャッジ2者は順当に主導権を維持した岩本を支持し、岩本の勝利となった。
第3試合 インフィニティリーグ2022 女子アトム級(47.6kg) 5分2R
×中村未来(マルスジム/勝ち点0)
○澤田千優(AACC/勝ち点0→2)
判定0-2 (片岡19-19/豊永18-20/田澤18-20)
初代女子アトム級世界王者を決める5選手参加のリーグ戦が今大会からスタートする。リーグ戦の概要はこちら。既にONEに参戦中の澤田龍人の妹・澤田千優、中村未来、加藤春菜、小生由紀の4選手が発表されていた。
そして今回新たに、ゼロ年代に活躍した元DEEP女子ライト級(48kg)王者・渡辺久江改め久遠[ひさえ]の出場が発表された。久遠はMMA 27戦20勝(12KO/3一本)6敗1分。かつてはキックも並行し、インターナショナル女子ムエタイライトフライ級王座を獲得。10月31日のNJKFでのキックの試合で現役復帰したが判定負けしている。
久遠は子連れでケージインし「女子格闘技を盛り上げに帰ってきました。先日、復帰したんですけど、47.6kgがベスト体重です。私のために新設されたと思っています。秋から練習を再開したのですが、1年続くリーグ戦ですので、1年後には完全に仕上がった状態でベルトが巻けると思います。全試合KOします」とアピールした。
中村×澤田は1R、両者サウスポーに構え、打撃狙いの中村に対し、レスリング出身の澤田がタックルを決めテイクダウンに成功するが、中村は長時間グラウンドキープさせず立つ。終盤、澤田が押し倒した後、サッカーボールキックを軽く当ててしまい、警告を受ける。終盤、澤田が左ローを当てつつテイクダウンを奪い好印象を残す。片岡サブレフェリーのみ中村を支持する。
2Rも中村がスタンドでパンチ、グラウンドで足関を狙う場面もあったが、澤田がタックルでのテイクダウンを繰り返し、パウンドを随所で多く当てて好印象を作り判定勝ちした。記者採点は18-20で澤田。
第2試合 フライ級 5分2R
×高橋SUBMISSION雄己(和術慧舟會HEARTS)
○山内 渉(FIGHT FARM)
判定0-3 (福田18-19/片岡19-19/豊永18-19)
1R、今成正和の元で寝技を学ぶ高橋は、低空タックルでグラウンドに持ち込み、ヒールフック、三角絞めで山内を追い詰める。だが山内はギリギリで防御を続け、パウンドを随所でクリーンヒットし好印象を残す。記者採点は山内。
2R、高橋は相変わらず低空タックルを繰り返すが、グラウンドに持ち込めず。ようやく中盤に下になったが、山内は上から押さえ、左肘を的確に当てる。最後までトップキープし、パウンドを当て続け終了。高橋は途中で右肩を痛めた様子で、右腕をダランとさせた状態で立ち上がる。記者採点は山内。合計18-20で山内。ジャッジは3者とも1Rは高橋、2Rは山内に2者が8-10、1者が9-10とし、山内の勝利となった。
第1試合 ミドル級 5分2R
○岩﨑大河(大道塾/パラエストラ東京/空道北斗旗全日本体力別選手権2017 2018優勝・無差別選手権2019準優勝)
×清水洸志[ひろゆき](MMA RANGERS GYM)
1R 3’13” 裸絞め
1R、サウスポーの清水に対し、岩﨑が右ミドルを当て続けてから、右ストレートを当てつつ組み付き、抱え上げて倒す。ハーフ、マウント、バックマウントとすんなり移行すると、裸絞めを極めタップを奪った。岩﨑は修斗2連勝、MMAデビュー5連勝。デビュー1年以上経過しており、来年はもう少し上のレベルの相手との試合が見たいところだ。