VTJ 11.6 USEN STUDIO COAST(レポ):平良達郎、南米チリ王者ムアイアドを1R葬「UFCフライ級王座目指す」。西川大和「青木さん、来年、MMA、教えてくださいよ、試合で」、青木真也「ちゃんと場所作っとけ」
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VTJ 2021
2021年11月6日(土)東京・USEN STUDIO COAST
レポート&写真:井原芳徳
第6試合 メインイベント 58.5kg契約 5分3R
○平良達郎(THEパラエストラ沖縄/修斗世界フライ級王者)
×アルフレド・ムアイアド[Alfredo Muaiad](チリ/ブラックハウス・サンチアゴ/チリLive Fight Nightフライ級王者)
1R 4’12” 裸絞め
修斗が国際戦・他団体との交流戦を主軸に行ってきたVTJが5年ぶりに復活した。VTJの前身の「VALE TUDO JAPAN」は第1回UFCの開催された翌年の94年に初めて開催され、ヒクソン・グレイシーを日本に初めて招聘し、その後もブラジルの強豪や元UFC王者のランディ・クートゥアを呼び、エンセン井上、佐藤ルミナら当時の修斗のトップ選手が迎え撃った。99年まで6大会開催された後休止するが、09年に1度復活。再び3年休み、12年に「VTJ」に名前を改め復活すると、13年には堀口恭司×石渡伸太郎、16年には斎藤裕×ISAOといったパンクラスとの王者対決を実現させ、14年のVTJフライ級トーナメントでは扇久保博正が優勝し、UFCのトライアウトへの道筋となった。
今回VTJは、昨年からのコロナ下、閉ざされた世界への道をこじ開けることをテーマに3たび復活した。メインイベントの赤コーナーに立つ平良達郎は、7月に福田龍彌を1Rで下し修斗世界フライ級王者になったばかりの21歳の新鋭。18年のデビューから9連勝。UFC出場を目標に掲げており、10戦目の今回、南米チリのLFNという大会の王者・ムアイアドを迎え撃った。
修斗はコロナ下で海外選手を招へいするため、来週日曜の大会でタイ人の強豪を招へいするRISE、修斗とRISEを放送するABEMAと協力。元格闘家の須藤元気参院議員の仲介により、外務省、スポーツ庁に対して9月から交渉した。その後、コロナの感染者が大幅に減少し、政府は11月8日から、海外からのビジネスでの来日者の隔離期間を10日から3日に短縮する。修斗はそれに先駆けての特例で、3日の隔離でのムアイアドの招へいを果たしている。修斗・RISE関係者らの政府への働きかけが、規制緩和を少しは後押しした可能性もあるだろう。
大会の開会式では北森リングアナが、地球の裏側からやってきたムアイアドを称える拍手を観客に呼び掛けた。ムアイアドの登場するメインイベントの前には須藤議員がケージに入り「青木真也選手のマイクに熱くなり、同世代の宇野薫選手の試合に興奮し、現役復帰を考えましたが、先ほど立ち上がろうとした瞬間、腰が痛くなりました」と、街頭演説で磨かれたジョークを絡めつつ「これからもVTJ、日本の格闘技をしっかりサポートしたいです」と宣言し、場内は拍手で包まれた。
ムアイアドはムエタイがベースのストライカー。8月のLFNの王座決定戦では度々テイクダウンを奪われるも、スタンドに戻し続け、4Rにボディへの膝とパンチをまとめTKO勝ちしている。試合はそんなムアイアドに平良が打撃で挑む展開に。
1R、スタンドの展開が続き、平良は右のカーフキック主体の攻め。ムアイアドは少しひるむが、すぐ持ち直す。平良は右ミドルをつかまれると、そこから組みに持ち込もうとするが、ムアイアドは寝技を警戒してか突き放す。
その後も平良は執拗に右のカーフを放つが、ムアイアドもある程度カットし、対応できるように。中盤過ぎにはムアイアドが平良を金網に詰め、右フックと左ボディを連打し、場内をどよめかせる。それでも終盤、平良は打撃戦を続行し、左ミドルを時折ヒットする。
そしてフィニッシュは突如訪れる。ムアイアドが左ハイを軽く当て、平良も右ハイで呼応すると、今度は両者のパンチが交錯。ムアイアドの左に平良が右フックを合わせると、ムアイアドの腰が落ちる。足の止まったムアイアドに、さらに平良が右ストレートを当ててバランスを崩させると、その隙を逃さず、すぐさまバックを奪い、裸絞めを極めながら足4の字でガッチリと捕まえ、首を絞め上げてタップを奪った。
肉食獣のようにワンチャンスを逃さず速攻で仕留める、平良の魅力が凝縮された内容での完勝。マイクを持った平良は「こんな状況で来てくれたアルフレッド選手、ありがとうございます。強かったです。相手は打撃の選手ですが、自分の打撃を試せて良かったです。僕はUFCのフライ級のでベルトを取ることを目指しています。今年、修斗のベルト巻けて、本気で格闘技で生活していきたいと思うようになりました。日本を代表して、強い外国人選手をUFCで倒します」と宣言し、「来週(14日)、修斗沖縄大会をやりますので、見てください」と、所属先の主催大会のアピールをした。
大会後のインタビューで平良は「打撃の距離感を大事にし、常にリラックスして戦おう、憧れだったVTJを楽しもうというテーマで戦いました。相手もカーフで足がちょっと効いていると思って、自分の攻撃も当たっていて、終盤に相手が焦って来ると思ったところで、右が当たった感じです」と試合を振り返った。世界と戦える手応えを得たか?という問いには「「もともと世界で戦えるとは思っていて、これで自信が確信になったわけじゃないですけど、自信はつきました。結果的に流れで極められて、打・投・極が向上しているのがわかって良かったです」と答えた。
また、「大晦日(のRIZIN参戦)に興味はありますか?」という質問には「他団体の王者や外国人とのドリームカードがあれば興味あります。UFCに出たいですし、契約もありますが、周りから出て来いと言われれば出ます」とコメント。「最短でUFC出たいです」とも話しているため、仮に交渉するとしてもRIZINとの契約試合数がネックとなりそうだ。
また、大会後には須藤議員も平良の健闘を称え、平良も「ずっと須藤さんの試合を見ていました」と対面を喜んだ。VTJ実行委員会の坂本一弘・サステイン代表は「須藤先生がいなければ外国人を招へいできなかったです」と須藤氏を称えた。
須藤氏は「やっぱり外国人がいると大会が盛り上がりますね。宝箱のように選手が日本に来てみないとわからないのも楽しさの一つです。相手が強ければ日本人も成長できます」と外国人選手招へいの重要性を語り、「今回ロールモデルができたので、もっと外国人が戦いやすい環境を作りたいです」と、今後の改善にも意欲を示した。
コロナ下では格闘技大会の収容人数が制限され、各プロモーターは収益面での苦難が続いている。他のスポーツで実証実験が行われているワクチン接種証明導入によるイベントの人数制限緩和や、声援の有無による人数制限の違いについても、須藤議員の考えを尋ねたが「コロナに関しては誰も予想がつかないので僕の判断ではできない部分ですが、しっかりした対策が大事なので、僕も働きかけたいです」と答えるに留めた。
西川大和「青木さん、来年、MMA、教えてくださいよ、試合で」
第4試合 70.3kg契約(ライト級相当) 5分3R
○西川大和(西川道場/修斗世界ライト級王者)
×菅原和政(マスタージャパン福岡)
1R 3’40” 裸絞め
18歳の西川は9月に修斗史上最年少王者となってからの初戦。今回は平良同様、世界へのステップとして、欧米人選手との国際戦が準備され、平良のカード発表と近いタイミングで発表される予定だった。しかしその選手のコロナ感染で実現せず。菅原が相手に決まったのは大会5日前で、西川は「1試合見ただけで、対策練習ができず、ずっと減量の水抜きをするだけでした」といい、試合もその影響が出ることに。
1R、両者サウスポーに構え、開始まもなくから菅原の左ストレートがヒット。西川はタックルを仕掛け、そのまま今成正和のように回りながら引き込んで足関を狙ったり、飛びついて三角を狙ったりと、寝技勝負を望む。だが長身の菅原は、立った状態からの伸びのあるパウンド、スタンドに戻しての左ストレート等を的確にヒット。西川はタックルで押し込んで倒そうとするが、菅原は耐える。西川は右目を腫らし、鼻血を出し、大きなダメージを負っている。だがこれでレフェリーストップの危機感を持った様子の西川は、仕掛けを早めることに。金網際でオンブになると、裸絞めを極め、そのままグラウンドに引き込んで絞め上げてタップを奪った。
なんとか勝利をものにした西川は「言い訳になりますけど、外国人と元々やる予定が、ほぼ1週間前に相手が決まり、対策ができず、危ない試合でした。緊急オファーの相手でも対応できるよう、普段から弱点の穴埋めしないといけないと思いました。100点満点で0点でもおかしくないです」と内容を反省した。
だが西川は続けてのアピールで観客を驚かせる。「こんな顔で言うのも何ですが(中継の)解説に来ている青木さん、来年、MMA、教えてくださいよ、試合で。僕がやっていることがMMAじゃ無いんだったら」と、西川を評価しない発言をしていた青木真也に呼びかけた。すると青木はケージに入り、西川に襲い掛かり、右肘を首元に連打し、関係者が制止した。
制止されながらもマイクを渡された青木は「オイ、誰の名前出してるのかわかってんのか。簡単に出していい名前じゃねえんだよ。ふざけんじゃねえよ」と怒り示しつつ「こんなインディなところでやってやんねえよ。ちゃんと場所作っとけ、お前ら」と、修斗およびONE Championship関係者に呼びかけた。
青木が退場すると、西川は「皆さん大人なると、『俺の名前出していいのか』とか言うのは、気持ち的にはわかります。でも若い選手は必ずどこかで当たる壁なんですよ。(前回のタイトルマッチで)川名選手やった時も同じなんですよ。『若いのに調子乗るな』って。世代交代なんで、しっかり準備して。今日は青木さんが怒って乱入されましたけど、青木さんが怒らないような、満足する試合ができるよう磨き上げます」と、18歳とは思えない冷静さで心情を説明をすると、場内は拍手に包まれた。
大会後のインタビューで西川は「思ったより相手の体が強くて、蹴った時に足が痛かったので、寝技に行きました」「トニー・ファーガソンが今成ロールから試合を作る夢を見たので、試合で試したら失敗しました」と振り返りつつ「ONEでは(計量システムの都合で実質の)階級が上がるので、体を作らないといけないと思いました」「色んな選手が早い時期にUFCやONEに行って失敗するパターンがありますが、今のうちに失敗して学ばせてもらって良かったです」と試合を総括した。
来年実現するかもしれない青木戦や今後の展望について聞かれると「あいつを倒したらこれからどうなるかという気持ちは特には無いです。色んな選手からいいところ学ばせてもらう、出稽古感覚で試合に臨んでいます。青木さんからいろいろ学ばせてもらうつもりで試合に臨みたいです」と冷静にアピールの真意を説明した
佐藤将光、2年ぶり日本で勝利「明日からも好き勝手生きていきます」
第3試合 63kg契約 5分3R
○佐藤将光(坂口道場一族/ONEバンタム級5位、元修斗世界バンタム級王者)
×河村泰博(和術慧舟會AKZA/Fighting NEXUSバンタム級王者)
1R 2’38” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
ONEで活躍する佐藤は2年ぶりの日本での試合。1R、河村は序盤から左ジャブを立て続けに当てる。河村はタックルを仕掛け、佐藤が潰すと、そのままサイドを取る。佐藤はそこからバックマウントに移り、パウンドをヒット。バランスが崩れて落ちそうになりながらもポジションをキープし、佐藤のグローブとマットにサンドイッチするような形で河村の頭にパウンドを連打。河村の動きが止まったところでレフェリーがストップした。
佐藤「なかなか試合が組まれず、試合ができ、単純に楽しかったです。この時代、やりたいことをやっているといろいろ言われますけど、何言われても自分のやりたいように生きて、明日からも好き勝手生きていきます」とアピールした。
GLADIATOR王者・原口央、憧れの宇野薫に完勝も涙
第5試合 セミファイナル 65.8kg契約(フェザー級相当) 5分3R
×宇野 薫(UNO DOJO/元修斗ライト級(70kg)王者)
○原口 央(BRAVE/GLADIATORフェザー級王者)
判定0-3 (片岡27-30/長瀬27-30/豊永27-30)
60戦・46歳の宇野と、7戦5勝2敗の26歳・原口の一戦。1R、両者サウスポーに構え、序盤から原口はタックルから肩で抱えてテイクダウンを奪う。その後も原口はテイクダウンを繰り返し、バックを狙う。宇野は後ろの原口に肘を当てたり、立って金網際でアームロックを狙って引き込むが、原口はダメージは無く、アームロックにも対処している。記者採点は原口。
2Rも宇野は執拗にアームロックを狙い続ける、原口はパワー差も活かしつつ潰し上に。宇野もグラウンドで対応を続けるが、主導権を握り続けているのは原口。終盤にはジャーマンで倒し、パウンドも当てる。記者採点は原口。
3Rも原口がテイクダウンを奪い、立ち際に左ストレートを当て、その後もグラウンドでコントロールを続ける。原口は中盤過ぎ、バックを取ると裸絞めを狙い、最後はパウンドをまとめ終了。記者採点は原口。合計27-30で原口。原口が判定勝ちした。
試合後涙を流した原口は「憧れの宇野選手と対戦できたのはうれしいんですけど、今日の内容じゃ練習の1割も出せてなくて、まだまだです。もっと練習して上を目指します」と反省した。
原口伸の試合は無効試合に。宇佐美正パトリックはプロ2連勝
第2試合 70.3kg契約(ライト級相当) 5分2R
―岡澤弘太(佐山道場)
―原口 伸(BRAVE/レスリング全日本選手権2019年男子フリー70kg級優勝)
1R 2’23” ノーコンテスト
原口は第5試合に登場した央の弟で22歳。今年大学を出てMMAデビュー戦で勝利し2戦目だ。1R、原口がサウスポーでプレッシャーをかけ、左フックを軽く当てると、寝技狙いの岡澤はそのまま金網際で寝ころぶが、原口は付き合わずスタンドに戻す。
その後も原口が左フック、岡澤が右ストレートを当てる。すると中盤、接近戦でパンチが交錯すると、岡澤はうつぶせでダウンする。原口が追い打ちのパウンドを連打したところで、すぐさま片岡レフェリーがストップし、原口のTKO勝ちを宣告した。だが、映像検証でバッティングによるダウンと判明し、審判団は偶発的なものと判断し、ノーコンテストに訂正された。
第1試合 70.3kg契約(ライト級相当) 5分2R
○宇佐美正パトリック(EXFIGHT・LDH martial arts)
×野村駿太(BRAVE)
判定3-0 (豊永20-18/福田20-17/片岡20-17)
宇佐美はボクシング高校6冠。野村はオリンピックと同じ伝統派空手の全日本選手権6位の実績があり、両者プロ2戦目。1R、野村は伝統派特有の低い構えから、右ロー、右肘をヒット。宇佐美は時折押し込んでいると、中盤過ぎに左ボディをクリーンヒットし、野村を下がらせ、組んでの膝の連打で追い詰める。
2Rも宇佐美がパンチ、組んでの膝、肘を随所で当て優勢。野村もパンチを当てるが、宇佐美は勢いを切らさず、終盤には左フックでダウンさせ、最後もパンチをまとめ優位を維持し判定勝ちした。記者採点は20-18で宇佐美。ジャッジは2Rに2者が10-8で宇佐美につけた。なお、VTJの採点基準はUFC等の米国のMMAで採用されているユニファイド(統一)ルールと同じだという。
修斗 11.6 USEN STUDIO COAST(レポ):SARAMI、黒部三奈との3度目の対戦で初勝利し女子スーパーアトム級王者に。猿丸ジュンジ、1Rで勝利しストロー級暫定王者に