シュートボクシング 12.26 後楽園ホール(レポ):海人、2R TKO勝ち。天心×武尊の“中立”大会では「野杁さんとやりたい」。笠原弘希、重森陽太にスープレックスでリベンジ
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SHOOT BOXING 2021 Champion Carnival
2021年12月26日(日) 後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
第7試合 メインイベント スーパーウェルター級(70kg)(肘有り) 3分3R(無制限延長R)
○海人(TEAM F.O.D/SB日本スーパーウェルター級1位、元SB日本スーパーライト級(65kg)王者、S-cup 2018 65kgトーナメント優勝、KNOCK OUT-BLACKスーパーウェルター級(70kg)王者)
×ジョー・FELLOW GYM(タイ)※ジョー・セイシカイ 改め
2R 2’08” TKO (レフェリーストップ:左膝蹴り)
シュートボクシングは例年、年末に両国国技館やTDCホールといった大規模会場でS-cupとGROUND ZEROを隔年で開催してきたが、昨年からのコロナ禍の影響で、昨年は大会が無く、今年はホーム会場の後楽園ホールにて、「Champion Carnival」と題し、日本の選手によるタイトルマッチや王者のワンマッチを並べた。
SB男子のエース・海人はSB日本スーパーライト級王座を返上し、今大会ではSB日本スーパーウェルター級王座決定戦を予定していた。日本タイトルではあるが、SB協会は対世界を意識する海人の思いも考慮してか、外国人選手の招へいを計画。しかしオミクロン株への水際対策として政府が外国人の新規入国を11月30日に停止。それから約3週間後、試合5日前にようやく、通常のワンマッチの対戦相手が発表された。
海人は9月のSB後楽園大会でチャンスック・バーテックスジムに判定勝ちし、SBでは2戦連続でタイ人との戦いに。11月には地元大阪でのRISEに出場し、中島将志に判定勝ちし連勝を8に伸ばしている。
在日タイ人のジョーは19年6月、NJKFで健太と64.5kg契約で対戦し、2R右フックでKO負けしている選手。昨年2月のILFJラウェイ大阪大会に出場し(65kg契約)、本場ミャンマー人選手とダウンを奪い合う攻防を繰り広げた末、5R時間切れドローとなっている。当時までは誠至会所属だったが、今は同じ大阪のFELLOW GYMに移っている。
試合は海人のワンサイドゲームに。1R、序盤から海人が圧力をかけ続け、ジョーは右ハイ、ミドルを再三出すが、海人はブロックする。中盤から海人が右のカーフキックを度々ヒットし優勢に。記者採点は海人。
2Rも海人が圧をかけ続け、右のカーフをヒット。ジョーは耐えられずスイッチする場面も。ジョーは前に出て来るが、海人は下がってかわし、右のカーフを効かせつつ、パンチで追い詰める。そして左ボディを効かせ、追い打ちの右ストレートでダウンを奪うと、最後は右のカーフキックと左膝の連打でダウンを奪ったところでレフェリーがストップした。
2021年のSBを締めくくるのにふさわしい派手な決着となったが、海人の実力を考えれば食い足りない相手だったのも事実。完勝の海人はマイクを持つと「今年は全勝できたんですけど、正直、納得行けてないのもあって、世界と渡り合えてないのが一番の悔しい思いです。来年は必ず世界と戦っていくのでこれからもよろしくお願いします。来年もSBと海人をよろしくお願いします」とアピールした。
海人は大会前のSB公式インタビューで、戦いたい相手について久保優太の名前を上げ「大晦日の久保選手の相手(=シバター)がやる気のないような動画をアップしていましたよね?もし僕が今回勝って問題なければ、大晦日まで5日間しかスパンはありませんが、その選手の代わりに僕が出てもいいのでぜひ久保選手との対戦を実現させて下さい」と話していた。ジョー戦で勝利後のバックステージでのインタビューでも、海人は「久保選手とやりたいです。来年でもいいので、やらせてもらえる機会があれば。MMAに転向しているので複雑かもしれないですが」と、久保の立場にも配慮しつつ改めて意欲を示した。
また、2日前には那須川天心と武尊のビッグマッチが来年6月に行われることも発表され、大会のプロデューサーを務めるRIZINの榊原信行CEOは、アンダーカードについて「中立な舞台ですから、各団体の垣根を超えたマッチアップにしたい。RISE、K-1、RIZINもですし、その他の団体も含めて、ファンが期待するカードをラインナップしたい」と話していた。その大会への期待を海人に聞くと「70か67.5であれば野杁(正明)さんとかとやりたいですね。野杁さんに勝てるのは僕しかいないと思います。本物の日本一を証明するのに野杁さんがあと一人おる感じなんで、そこで勝って世界に行けたらもっといいですし、できなくっても普通に世界が目的なんで、世界で必ずやりたいです」と話し、K-1 WORLD GPウェルター級(67.5kg)王者の野杁との対戦に意欲を示した。
(追記:この発言を知った野杁は大会翌日に「面白いじゃん。こちらは何キロでもいいですよ」とツイートしている。)
第6試合 セミファイナル ライト級(62.5kg)(肘有り) 3分3R(延長無制限R)
○笠原弘希(シーザージム/SB日本ライト級(62.5kg)1位、元SB日本スーパーフェザー級(60kg)王者)
×重森陽太(伊原道場稲城支部/KNOCK OUT-RED&WKBA世界ライト級王者)
判定3-0 (茂木30-28/津山30-28/若林30-28)
笠原兄弟の兄・弘希は階級を上げ、SB日本ライト級王者・西岡蓮太に挑戦予定だったが、西岡の怪我により延期となった。重森とは19年12月のTDCホール大会で対戦し、延長R(4R目)に重森が肘打ちで切り裂きTKO勝ちしている。弘希は9月のパランラック・FELLOWGYM戦で勝利し5連勝中。重森は所属先の新日本を主戦場にしつつ、KNOCK OUTでも活躍し、7月にスアレック・ルークカムイを下しKNOCK OUT王座を獲得した。
1R、お互い慎重だが、重森が距離を取って回り、自分の左ミドル、右ロー、前蹴りを随所でヒット。弘希はあまり攻撃が出せない。記者採点はイーブン。
2R、弘希が左ボディ等のパンチを当てるが、重森が細かく蹴りを当て続けて主導権を維持。随所で肘も当て、弘希を脅かすが、まだ大きなダメージを与えるほどにはならない。記者採点はイーブン。
3R、重森が回って距離を取りながら、左ミドル、前蹴り、右ローを何発もヒット。終盤に進むに連れ、ヒットが増え、完全に重森ペースだったが、終了間際、弘希が重森の背後にしがみつくと、ジャーマンスープレックス(後方への投げ)でシュートポイント2を奪い、そのまま終了する。記者採点は9-8で弘希。合計29-28で弘希。ジャッジは3者とも30-28とつけ、弘希がSBルールの特徴を活かしてリベンジに成功した。
第5試合 SB日本スーパーフェザー級(60kg)王座決定戦 3分5R(無制限延長R)
○笠原友希(シーザージム/1位、元SB日本フェザー級王者)
×手塚翔太(Sublime guys・GONG-GYM坂戸/2位)
判定3-0 (北尻49-46/津山49-46/若林50-46)
※笠原が王者に
笠原弘希が返上したスーパーフェザー級王座に、弘希の弟の友希が挑戦する。友希と手塚は過去2度対戦し、19年4月の初対決は友希が1R KO勝ち。2度目の対戦となった昨年11月のSB日本フェザー級王座決定戦では、ダウンの応酬の末、友希が4R KO勝ちしている。その後、友希は3連勝、手塚もSBで連勝している。
1R、友希がサウスポーに構え、お互い序盤は慎重だったが、中盤から手数を上げると、友希が左ストレート、左ローのヒットを増やす。終盤、手塚も右のバックハンドブローで友希をひるませ、好印象を作る。記者採点もジャッジもイーブンだが手塚についても不思議ではない。
2R、友希は左ミドルを度々当てるが、手塚はある程度ブロックできており、自分の右ストレートを随所で返す。とはいえまだ均衡は崩れない。記者採点もジャッジもイーブン。
3R、友希は左ミドル、ローを当てつつ、左ハイも時折ヒット。手塚も右ローを返すが、友希の左ローが効き目を発揮。終盤に手塚は足に力が入らなくなり、友希が左ローでダウンを奪う。記者採点もジャッジも10-8で友希。
4Rも友希が随所で左ローをヒット。終盤には組み倒しただけのようにも見えたが、左ローでダウンを奪う。記者採点は10-8で友希。
5R、友希は疲れが目立ち、手塚が右ストレート、右ローで少し友希をひるませ挽回するが、ダウンやKOには至らず。記者採点は手塚。合計49-46で友希。友希が判定勝ちで2階級制覇を果たした。手塚は対友希で3連敗となったものの、シーザー武志・SB協会会長は「手塚が良かった。これまでならあきらめていたけど、最後までよくやった」と高く評価した。
第4試合 SB日本スーパーバンタム級(55kg)タイトルマッチ 3分5R(無制限延長R)
○植山征紀(龍生塾ファントム道場/王者)
×竹野元稀(風吹ジム/1位)
3R 0’54” TKO (レフェリーストップ:左フック)
※植山が防衛
両者は17年6月に対戦し植山が判定勝ち。竹野は19年、王座挑戦権を懸けたリーグ戦を制したが、コロナ禍の影響で延期が続いていた。最近の植山は志朗や江幡塁らに敗れているが他団体に積極的に上がり、竹野は2年ぶりの試合だ。
1R、開始すぐから竹野が距離を詰め、パンチを積極的に出すが、植山はクリンチや投げでしのぐと、終盤に右フックでダウンを奪取。最後の打ち合いでも左フックでダウンを奪い、大差をつける。記者採点は10-7で植山。
2R、竹野はそれでも打ち合いを仕掛けるが、攻撃が荒く、植山が的確にパンチを当て続け、右ハイも絡め優位に進める。記者採点は植山。ジャッジ2名がイーブン、1名は植山につける。
3R、竹野は変わらず打ち合いを仕掛けるが、植山は冷静に対処し左フックでダウンを奪う。竹野は立ち上がるが足元がフラつき、レフェリーがストップ。植山の完勝に終わった。
第3試合 SB日本スーパーライト級(65kg)王座決定戦 3分5R(無制限延長R)
×村田聖明(シーザージム/1位、元SB日本スーパーフェザー級王者)
○イモト・ボルケーノ(グラップリングシュートボクサーズ/2位)
判定0-3 (北尻45-50/津山46-50/若林46-49)
※イモトが王者に
海人が階級アップのために返上したスーパーライト級王座を懸けた一戦。村田は7連勝中。イモトは7月のSB愛知大会でモハン・ドラゴンに勝利し2連勝中。
1R、村田が圧力をかけ続け、パンチ主体の攻防の中で、終盤に左ボディを強打。だがイモトは組み付き、背後に回ると、バックドロップでシュートポイント2を奪う。記者採点もジャッジも8-10でイモト。
2R、村田は変わらず左ボディを強打し続けるが、そこからの打ち合いになると、イモトも右フックをお返し。村田は時折フラつくが、なんとか持ち直す。記者採点もジャッジもイーブンだが、イモトについても不思議ではない内容だ。
3Rもパンチ主体の攻防で、イモトも随所でジャブなどを当てるが、村田の執拗な左ボディ打ちが目立つ展開。とはいえイモトも表情を変えずひるまない。記者採点もジャッジもイーブンだが、村田についても不思議ではない内容だ。
4Rも執拗に村田がボディにパンチを当てる。だがイモトが耐え続け、右のカーフキックを随所で当てていると、村田は足が流れ、口も開き、左ボディに力が入らなくなる。するとイモトが終盤、組んで膝を当て、パンチのヒットを増やし、右フックで村田を倒し、ダウンを奪う。記者採点は8-10でイモト。
5R、村田はパンチを出すが荒くなり、逆にイモトが右ストレート、アッパー、組んでの膝を的確にヒットし続ける。打ち合いでイモトも被弾するが、トータルのヒットで上回り終了。記者採点はイモト。合計45-50でイモト。イモトが大差をつけ判定勝ちしベルトを巻いた。
第2試合 SB日本バンタム級(52.5kg)王座決定戦 3分5R(無制限延長R)
×伏見和之(RIKI GYM/2位、元SB日本スーパーバンタム級王者)
○佐藤執斗(グラップリングシュートボクサーズ/3位、MAX FCフライ級王者、WMC I-1 51kg級&54kg級王者)
4R 2’59” TKO (レフェリーストップ:左フック)
※佐藤が王者に
川上叶が階級変更により返上したバンタム級王座を懸けた一戦。両者は昨年2月に対戦し伏見が判定勝ちしている。
1R、佐藤が圧力をかけ続け、ロー、前蹴り、ミドルを度々ヒット。当たりは浅く、伏見はひるまないものの、動きは硬く、なかなか攻撃が返せない。記者採点もジャッジもイーブン。
2R、佐藤が顔面への前蹴りをきっかけに、左ボディ、右フック等、パンチのヒットを増やすが、中盤、伏見も右フックで佐藤をひるませ、わからない展開に。だが佐藤も終盤にはパンチで伏見をひるませ、トータルのヒット数では差を広げる。記者採点はイーブン。ジャッジ2名はイーブンで、1名は佐藤を支持する。
3Rも佐藤が手数で上回る展開。顔面、ボディ、足元に攻撃を散らし、満遍なくダメージを与える。記者採点もジャッジも佐藤。
4Rも佐藤が細かく攻撃を当て続け、優位を維持する。だが伏見もロー、左ボディを返し、中盤過ぎ、右フックで佐藤をひるませる。だが佐藤は耐えると、顔面狙いの左前蹴りを伏見に当て、伏見を逆にひるませる。佐藤はパンチの打ち合いで伏見を追い詰める。佐藤も被弾するが伏見のダメージの方が大きく、伏見が棒立ちになったところで平レフェリーはダウンを宣告する。佐藤はパンチラッシュで伏見を追い詰め、最後は左フックで2度目のダウンを奪ったところでレフェリーがストップ。劇的な形で佐藤がベルトを獲得した。
第1試合 SB日本女子アトム級(46kg)初代王座決定戦 3分5R(無制限延長R)
○MISAKI(TEAM FOREST/SB日本女子ミニマム級(48kg)1位、元J-GIRLSミニフライ級王者)
×田渕涼香(拳聖塾/RISE QUEENフライ級(52kg)1位)
判定3-0 (茂木50-46/津山50-46/若林50-46)
※MISAKIが王者に
MISAKIはこれまでミニマム級でMIOと女神を相手にベルトを争ったがいずれも敗れ、今回は2kg軽い適正階級のアトム級で3度目の王座挑戦。最近は3連勝中だ。田渕は兄の田渕神太と共に幼少からフルコンタクト空手を習い、昨年12月にはRISE QUEENフライ級暫定王者・小林愛三からダウンを奪い判定勝ちし名を上げた。再戦では小林に敗れたが、これまでの実績が評価され、SB初参戦で王座挑戦権を得た。
1R、田渕が細かくステップして左右に動き、距離を取って細かく蹴りつつ、右のストレート、フックを的確に当て、打撃ではやや優位。だがまだMISAKIもひるまず、中盤過ぎには首投げでシュートポイント1を奪い、早速差をつける。記者採点は10-9でMISAKI。
2RもMISAKIは投げを随所で狙うが、田渕は対処し、自分のパンチ、ロー、ミドル、前蹴り等をコツコツ当て続け、手数で差をつける。だが与えるダメージはまだ乏しい印象だ。記者採点もジャッジもイーブン。
3R、MISAKIもパンチが当たりだすと、田渕の前蹴りのタイミングで右ストレートを当て、田渕を倒す。ややスリップ気味だがレフェリーはダウンを宣告。ポイントで差を広げる。記者採点もジャッジも10-8でMISAKI。
4R、組んでお互い膝を出す場面も増えるが、離れての攻防では両者攻めあぐね、ほぼ五分の状態が続く。記者採点はイーブン。
5R、MISAKIは序盤から右フックを当てると、組んでギロチンも仕掛ける。中盤、右ボディを効かせると、左ミドル、左ボディも当て、田渕は顔をしかめるように。終盤もMISAKIが右フック等、打撃でもようやく差をつける。記者採点もジャッジもMISAKI。合計50-46でMISAKI。ジャッジ3者もMISAKIを支持し、MISAKIが判定勝ちでベルトを巻いた。