DEEP 7.4 後楽園ホール:牛久絢太郎、ピンチ乗り越え中村大介にリベンジし初防衛。ジョアンオ・バティスタ・吉村がミドル級王者、大原樹里がライト級暫定王者に
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skyticket Presents DEEP 102 IMPACT ~20th Anniversary~
2021年7月4日(日) 後楽園ホール
レポート&写真:井原芳徳
第9試合 DEEPフェザー級タイトルマッチ 5分3R
○牛久絢太郎(K-Clann/王者)
×中村大介(夕月堂本舗/挑戦者、元ライト級王者)
判定4-1 (29-28/28-29/29-28/29-28/29-28)
※牛久が初防衛
牛久は昨年9月、弥益ドミネーター聡志に判定勝ちしフェザー級王座奪取。だが今年2月のTDCホール大会の中村戦では、2Rにタックルを仕掛けた際、中村が右膝蹴りを合わせてTKO勝ちした。中村は41歳。昨年9月に4年ぶりにMMAに復帰し、長倉立尚を2R右フックでKOし、復帰後2連続KO勝ちと絶好調だ。また、RIZINが秋から開催を計画しているフェザー級GPに向け、両者とも絶好のアピール機会となる。
1R、中村がガードを低く構えながら圧をかけ、サウスポーの牛久に右ミドルを度々強打し主導権。中盤からは右ストレートも当ててじわじわ追い詰める。すると終盤、組み付いて腰投げを決めると、すぐさまバックに回り、そこから崩れて腕十字を仕掛ける。極まりそうになるも、牛久は間一髪で防御。牛久は外してトップキープするが、反撃できず終える。記者採点は中村。10-9としたが、10-8としようか考えたほどの差はあった。
2R、打撃戦の後、牛久から足元にタックルを仕掛けると、中村に押し返されるが、両脇を差し返し、倒すことに成功する。牛久は金網際で上になるが、30秒ほどで中村は立ち、押し込んで膠着ブレイクがかかる。中盤、中村がプレッシャーをかけ続けるが、さすがに歳もあり、1Rにエネルギーを使い、疲れて来たか?右ローや右ストレートを当て、主導権は維持するものの、ヒット数も威力も1Rより下がる。終盤、牛久のセコンドの横田一則氏から「行け」という声が何度も飛ぶと、牛久は前に出て、右フックを当てて少し中村をひるませる。牛久は首投げを放つが、すっぽ抜けてしまう。中村が押さえ、腕を取りに行くがこれは防御され、最後はサイドで押さえて終える。記者採点は中村だが、牛久についていても不思議ではない。
3R、牛久は序盤からテイクダウンを繰り返すが、しっかりトップキープしてパウンドにつなげることはできず、その都度中村は立つ。とはいえ牛久の組みから逃れられず、最後は牛久がトップキープし、パウンドをまとめて好印象で終える。記者採点は牛久。合計28-29で中村。ジャッジは1者が中村、4者が牛久を支持し、牛久の防衛となった。
判定結果が読み上げられると、牛久は安堵からか、勝ち名乗りを受ける前にマットに倒れて大の字になって喜んだ。牛久は「試合内容は情けないですけど、前回の試合前におじいちゃんが亡くなって、母親との絶対勝つ約束が守れず やっと今回母親との約束が守れて、うれしくて涙が出ちゃいました。母親は会場に見に来たことがないんですけど、母親がいつか会場で見てくれるような立派なファイターになります」とアピールした。
バックステージでのインタビューで牛久は1Rの腕十字のピンチについて「練習でも逃げられていたので、自分の中で逃げられると思った」とのこと。母親が会場に来ないのは、息子が傷つけられるのが怖くて見に来れないということだと説明した。次の目標について聞かれると「この試合のことしか考えていなかったので、無いです」とだけコメントした。
DEEPの佐伯繁代表は大会後の総括で「牛久選手は前回の弥益戦と同じで、なんとか最後粘って勝ちましたけど、まだ上の舞台に期待できる感じではないので、もう一つ頑張って欲しいですね」と話し、薄氷を踏んで防衛した王者・牛久のRIZIN等大舞台への推薦にはまだ慎重な考えだった。
第8試合 DEEPミドル級タイトルマッチ 5分3R
×水野竜也(フリー/王者)※初防衛戦
○ジョアンオ・バティスタ・吉村[ジョン・バチスタ・ヨシムラ](ブラジル/TOP 1 FITNESS GYM/挑戦者)
2R 0’32” TKO (レフェリーストップ:左フック→グラウンドパンチ)
※吉村が王者に
水野対吉村も再戦の構図。水野は18年2月に奥野泰舗を下して王者となり今回が初防衛戦。昨年11月のDEEPでの吉村戦では、吉村にカーフキックを効かされ、2Rに左ストレートでダウンしてからパウンドをもらいTKO負けしている。
水野は負けられない試合だが、再戦も同じ展開での決着に。1R、両者サウスポーに構え、水野は相手が打つ前に積極的にロー、パンチを出す。だが水野の左ローを吉村がすくって倒し、上からパウンドを当て攻勢に。水野は下から三角を狙うが、吉村は立ち、猪木アリ状態になりブレイクがかかる。すると吉村が積極的にパンチと蹴りを出し、水野は後手に回る。前回同様に吉村が左のカーフキックを効かせ、水野の足取りが悪くなる。
すると2R、吉村は左のカーフを連打し、水野の足を止めると、左フックをクリーンヒットし、水野をダウンさせ、パウンドをまとめたところでレフェリーがストップした。吉村は何度も雄叫びをあげ大喜びした。試合後のマイクで吉村は、1階級下のウェルター級制覇にも意欲を示した。バックステージではウェルター級がベスト体重だと話し、「RIZINに出たい」とも話した。
第7試合 DEEPライト級暫定王者決定戦 5分3R
○大原樹里(KIBAマーシャルアーツクラブ)
×大木良太(KRAZY BEE)
3R 0’07” テクニカル判定5-0 (29-28/29-28/30-26/30-26/30-27)
※大原が暫定王者に
ライト級王者の武田光司は19年12月に大原に3Rアームロックで一本勝ちし2度目の防衛に成功。3月のRIZINでの久米鷹介戦で負傷し、DEEPで防衛戦ができないことから、暫定王者決定戦が組まれた。
大原は武田に敗れて以降は3連勝中で、昨年9月にRIZINに初参戦し矢地祐介に判定勝ち。最近では2月のTDCホール大会で元DEEPライト級王者の北岡悟にTKO勝ちしている。対する大木は19年10月にDEEPでデビューし、4戦全勝で王座に初挑戦する。
1R、長身の大原がサウスポーの大木に対して圧力をかけ続け、右ミドルを度々強打する。接近戦で右ストレートを当てる場面も。大木も左フックや左ハイを返すが、ヒット数で劣り、回る時間が長いため印象が悪い。記者採点は大原。
2R、序盤から大原が右ミドルを強打するが、大木はそこから距離を詰めると、左フックを連続でヒット。大原はひるみ、クリンチで難を逃れる。そして離れると、大原は右ミドルを度々強打。大木は脇の下が内出血で真っ赤に。さすがに効いてきた様子で、大原はそこから右ストレートを効かせダウンさせる。その後も下がる大木に、大原が何発もパンチと膝を当て、レフェリーストップ寸前まで追い詰める。だが大原もラウンド序盤のダメージに攻め疲れもプラスし、最後は詰め切れずお見合い状態に陥る。記者採点は大原。
3R、開始すぐの大木の左ローがローブローとなり一時中断する。大原は疲れも影響してか、休んでもなかなか回復できず、結局、規定の5分を経過したところで、ドクターやレフェリーが相談しストップがかかった。ここまでの内容で判定が行われ、ジャッジ5者が順当に大原を支持し、大原の判定勝ちとなった。DEEP育ちの大原は悲願のチャンピオンベルト獲得となったが、ダメージに配慮し、ケージの中でのベルトの贈呈は無く、すぐさまセコンドらに支えられケージを後にした。大原はバックステージでベルトを受け取った。なお、中継の解説を務めた正規王者の武田は「リマッチでもいいんじゃないですか」と話している。
第6試合 フライ級(ノンタイトル戦) 5分3R
○藤田大和(リバーサルジム新宿Me,We/DEEPフライ級暫定王者)
×山本聖悟(フリー)
3R 2’43” TKO (レフェリーストップ:右ハイキック→グラウンドパンチ)
藤田は2月のTDCホール大会でのフライ級暫定王者決定戦で渋谷カズキに右ローを効かせつつ、サッカーボールキックを当ててTKO勝ちして以来の試合。今回はノンタイトル戦だ。
対する山本はGRACHAN、韓国のROAD FCを経て、3月のRIZIN名古屋大会に参戦したが、村元友太郎に1R右ストレートでKO負けしている。
1R、山本が右のバック肘を当ててから、飛び膝で襲い掛かるが、藤田はギロチンで迎撃する。極まりは浅く、山本は外してスタンドに戻す。お見合いの多い中で、藤田の右ミドル、カーフキック、渋谷戦でも駆使した膝裏狙いのローのヒットがやや目立つが、まだ大差はない。記者採点は藤田だが、最初に攻め込んだ山本につく可能性もある。
2R、藤田が右ミドル、右ローを随所で当て主導権を維持する。山本は度々スイッチするが、金網を背負い続け、攻撃が返せず、印象が悪い。記者採点は藤田。藤田も慎重なため、福田レフェリーは両選手に消極的だとして警告を出す。
すると3R、藤田のローが効き目を発揮し、藤田が左フックを当てた後、一瞬遅れて山本がバランスを崩す。藤田はさらに右のローを当てて山本の足を止めると、右ハイでダウンを奪い、パウンドをまとめてフィニッシュした。
藤田は「暫定フライ級王者になって、気を引き締めて臨みましたが、最初あまりアグレッシブに行かなくてすみません。フライ級、盛り上がってきているんで、もっと強くなって、トップ目指して頑張ります」とアピールした。バックステージでは今後については「一歩一歩勝って、その先に大舞台があると思います」と話した。佐伯代表は「フライ級が面白くなってきたので、来年賞金懸けてトーナメントをやってもいいと思う」とも話している。
第5試合 バンタム級 5分2R
×雅 駿介(CAVE/元ムエタイオープン・スックワンキントーン・WMC日本ライト級(61.2kg)王者)
○RYUKI(フリー/中国英雄伝説2017年-60kg級アジア王者)
1R 2’18” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
ムエタイ国内3冠の雅は、2月のMMAデビュー戦での勝利に続き2戦目。今回は同じくキックからの転向組で、DEEP初参戦のRYUKIとの試合が組まれた。RYUKIは昨年10月のMMAデビュー戦が1R三角絞めで一本負けに終わっていた。
1R、サウスポーのRYUKIが、オーソドックスの雅に対し、右のショートフックを軽く入れると、雅は足元へタックルを仕掛けるが、RYUKIは軽々と突き放す。雅が左のパンチを振りながら近づくと、RYUKIの右のショートフックが再び当たり、雅は少しひるむ。雅は押し込んで、片足タックルから抱え上げて倒す。雅はサイドで押さえるが、マウントを狙うと、RYUKIは引っ繰り返して上に。するとRYUKIは腰を上げ、左のパウンドをアゴにクリーンヒット。一発で雅の目が飛び、RYUKIが連打を始めたところで豊永レフェリーはストップ。RYUKIのTKO勝ちとなった。
MMA初勝利のRYUKIは「雅選手も僕と一緒で元々キックやってて、僕は昔からやりたかった総合に腹くくって転向して、デビュー戦でグラップラーに寝技で仕留められて、結果出せませんでした。雅選手も強いのを知っていたので怖かったんですけど、勝てて良かったです。1Rで勝てたので、次呼んでもらえたら応援よろしくお願いします」とアピールした。
第4試合 ライト級 5分2R
○大山釼呑助(INFIGHT JAPAN)
×泰斗(高本道場/真月流)
判定2-1 (橋本19-19○/松宮20-18/福田○19-19)
第3試合 バンタム級 5分2R
×原 虎徹(CAVE)
○吉野 光(フリー)
判定1-2 (豊永○19-19/松宮18-19/橋本19-19○)
第2試合 67kg契約 5分2R
×海飛(和術慧舟會HEARTS/DEEPフューチャーキングトーナメント2020同級優勝)※吉村海飛 改め
○佐藤拳駿(K-Clann)
判定1-2 (植松18-20/松宮○19-19/豊永19-19○)
第1試合 60kg契約 5分2R
○鶴屋 怜(パラエストラ松戸)
×荒木 凌(ロータス福岡 古賀道場)
1R 2’05” フロントチョーク
第1試合では、名門パラエストラ千葉ネットワークの鶴屋浩代表の次男・鶴屋怜が、2月のTDC大会でのデビュー戦での勝利以来2戦目。前日計量では1分以内での勝利を公約していた。
1R、開始すぐから鶴屋がタックルで倒して上になると、パウンドを連打し、早期決着を狙う。荒木もギロチンや三角絞めを狙って抵抗するが、鶴屋は外してパウンドでダメージを与えると、最後は立った状態で、押しつけながら首をひねってタップを奪った。
試合時間は2分5秒。マイクを持った鶴屋は「急なオファーで対戦してくださった荒木選手、ありがとうございます。1分以内で倒すことはできなかったんですけど、これからもっと面白い試合するんで注目してください」とアピールした。ちなみに計量での「1Rじゃない、1分で倒します」の発言は、「あしたのジョー」の矢吹丈戦での力石徹を真似たといい、同じ日に行われた朝倉未来主催の1分マッチ「Breaking Down」とは無関係とのことだった。